ブリッジレポート
(4829) 日本エンタープライズ株式会社

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ブリッジレポート:(4829)日本エンタープライズ vol.16

(4829:東証2部) 日本エンタープライズ 企業HP
植田 勝典社長
植田 勝典社長

【ブリッジレポート vol.16】2011年5月期第3四半期業績レポート
取材概要「広告事業が好調だ。これまで手掛けてきた“着うたフルとCD”、“デコメキャラクターとぬいぐるみ”といったように、“ネットとリアル”の連動・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年4月19日掲載
企業基本情報
企業名
日本エンタープライズ株式会社
社長
植田 勝典
所在地
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-17-8
決算期
5月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年5月 2,147 150 173 77
2009年5月 2,475 292 317 175
2008年5月 3,123 572 578 272
2007年5月 3,677 774 783 447
2006年5月 3,416 694 688 418
2005年5月 3,018 587 570 348
2004年5月 1,958 205 168 226
2003年5月 1,752 134 131 58
2002年5月 1,704 51 53 23
2001年5月 1,417 301 262 126
株式情報(4/12現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
7,000円 377,000株 2,639百万円 2.8% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
100.00円 1.4% 464.19円 15.1倍 7,577.14円 0.9倍
※株価は4/12終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
日本エンタープライズの2011年5月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
モバイルソリューションカンパニーを標榜。コンテンツの自社開発にこだわり、合言葉は「コンテンツで勝つ!」。音楽やゲーム・デコメ等のコンテンツを制作し携帯等を通じて配信するコンテンツサービスと、企業のコンテンツ制作・運営やシステム構築等を手掛けるソリューションが2本柱。また、日本のコンテンツを世界へ広げるべく海外展開にも力を入れており、第3世代携帯電話(3G)向けサービスが開始された中国で3Gサービスの普及を睨み、各種コンテンツを配信している他、携帯電話の加入者数が急拡大しているインドでは現地法人を設立し、本格的な参入に向けて準備を進めている。
 
コンテンツサービス事業
携帯電話等のキャリア(移動体通信事業者)が運営するi-mode、EZweb、Yahoo!ケータイといったインターネットに接続が可能な携帯電話の公式サイトや、mixi、モバゲーTOWN、GREEといったソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)へ自社開発したコンテンツを提供し、月額課金あるいはダウンロード課金制により、その代金をキャリア等から受取っている。オリジナルキャラクター等によるライセンスビジネスへの参入や、中国事業として、中国の携帯キャリア向けにコンテンツの提供も行っている。
ソリューション事業
コンテンツサービスから派生したビジネス。モバイルサイト構築・運用業務、ユーザーサポート業務、デバッグ業務、サーバネットワークの運用・監視・保守、自社コンテンツの2次利用(以上、ソリューション)、他社コンテンツの制作・運営(ソリューションコンテンツ)、更には、広告、及び物販等を行っており、携帯電話はもちろん、パソコン等のあらゆるメディアに対応したソリューションを提供している。
 
<「ケータイ書店Booker’s」の共同運営>
この2月に国内向けの電子書籍総合販売サイト「ケータイ書店Booker’s」の共同運営を開始した。同サイトは東京都書店商業組合と(株)ACCESS(共に東京都千代田区)が共同運営していたが、今回、(株)ACCESSから運営権を引き継いだ。同社は、これまで日本向けの制作事業(書籍の電子化)と中国向けの制作事業及び配信事業を手掛けていたが、同サイトの共同運営により、日本向けの配信事業がスタートする。急成長を遂げた電子書籍市場だが、スマートフォンの普及に伴い更なる市場拡大が見込まれ、09年度実績で約580億円だった市場規模が、14年度には約1,300億円に拡大するとの予想があるほど。
同サイトは都内約600店舗の書店店頭と連携した販促活動を行っており、書店店員の推薦作品や書評、街の書店情報の検索、書店のイベント情報や売り上げランキング等、“ネットとリアル”を連動させる事で差別化を図ると共に集客を高めている。着うたフルとCD、デコメキャラクターとぬいぐるみ、携帯ショップ(携帯販売代理店)でのコンテンツ販売等、“ネットとリアル”の連動は同社が得意とするところであり、今後の展開に期待が高まる。
 
 
2011年5月期第3四半期決算
 
 
前年同期比8.0%の増収、同84.9%の経常増益
売上高は前年同期比8.0%増の17.5億円。ゲームや音楽の苦戦でコンテンツサービスの売上が8.6億円と前年同期比5.6%減少したものの、順調に売上を伸ばした店頭アフィリエイト(広告)をけん引役にソリューションの売上が8.9億円と同25.5%増加した。利益面では、店頭アフィリエイトの増加が売上原価の増加要因になったものの、売上の増加とコンテンツ制作の内製化(外注費削減)や全社的なコスト管理の徹底による経費削減で吸収。営業利益は1.9億円と同92.9%増加した。尚、上記のセグメント売上高の前年同期比は11/5期のセグメント区分変更に伴い遡及修正した10/5期の実績との比較である(以下、10/5期のセグメント売上高については全て遡及修正済み)。
 
 
 
売上高が9四半期ぶりに6億円台に回復する中、経費削減が進展
前年同期との比較では、店頭アフィリエイトを中心にソリューションの売上が大きく伸びた他、全体では減収となったコンテンツサービスも年末年始需要の取り込みが進んだメール・カスタム(デコメ)の売上が増加。増収効果と経費削減により前年同期は12百万円にとどまった営業利益が92百万円に拡大した。一方、第2四半期との比較では両セグメントの売上が増加した。ソリューションでは、店頭アフィリエイトやスマートフォンを活用したビジネス関連のソリューション売上が増加。コンテンツサービスでは注力分野であるメール・カスタム(デコメ)の売上が10%程度増加した他、ゲームや音楽も堅調に推移。利益面では、積極的に広告宣伝費を投入したものの、経費削減が進み販管費はわずかに減少し、営業利益が56.6%増加した。
 
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
第3四半期末の総資産は前期末比1.6億円増の31.7億円。長期預金からの振替や利益の計上で現預金が増加した。CFの面では、税負担が増加したものの、利益の増加を反映して営業CFが増加。一方、投資CFはマイナスとなったが、これは余資運用によるもので、実質的には投資CF、フリーCF共に黒字。配当金の支払いで財務CFもマイナスとなり、現金及び現金同等物の第3四半期末残高は9.1億円と前期末比2.3億円減少したものの、余資運用分も含めた貸借対照表上の現預金は22.8億円と同3.9億円増加した。
 
 
 
2011年5月期業績予想
 
 
通期業績予想に変更は無く、前期比9.4%の増収、同61.1%の経常増益予想
売上高は前期比9.4%増の23.5億円。コンテンツサービスの売上が11.8億円と同2.5%減少するものの、店頭アフィリエイトやスマートフォン関連を中心にソリューションの売上が11.7億円と同24.8%増加する。利益面では、増収効果に加え、外注費の削減や全社的なコスト管理の徹底により営業利益率が11.5%と4.5ポイント改善する見込み。
尚、コンテンツサービスは通期では減収が見込まれるものの、公式サイトの会員を維持しつつ、新たな成長市場として期待されるソーシャルアプリやスマートフォン市場でのマネタイズ化(現金化、収益化)を図る事で、第3四半期に続き第4四半期も前年同期比増収が見込まれる。一方、ソリューションは、携帯販売代理店との協業による店頭アフィリエイトの拡大やスマートフォン関連の需要取り込みによる受託領域の拡大で期を通して増収基調が続く見込み。
配当は1株当たり20円増配の100円を予定している。
 
 
(2)事業別の見通し
①国内事業
コンテンツサービス事業
アプリ数の増大により競争が激化する一方、消費の変化でマーケットのデフレ化が進んでおり、また、特にスマートフォンの分野では音楽コンテンツ等、既存コンテンツのバリューも低下している。このため、コンテンツプロバイダー各社は事業戦略の変革が必要であり、マネタイズ化も課題となっている。同社はこうした事業環境の変化を踏まえて、デコメ、着うた、健康といった強みを有する分野にフォーカスする事で公式サイトの収益力維持に努めると共に、ソーシャルアプリ及びスマートフォンを強化する事で成長を図る考え。今後は新規のサービスはもちろん、従来の携帯端末向けの提供していたサービスのスマートフォン対応(最適化)も進めていく。
尚、MM総研によると、10年度に895万件だったスマートフォンの契約数が15年度には6,035万件に達し、契約全体に占めるスマートフォンの比率は8.3%から51.0%に高まる見込みと言う。また、NTTドコモでは、光ファイバ通信並みの高速サービスを可能にする次世代の高速移動通信規格「LTE(long term evolution)」を利用した通信サービスの人口カバー率が14年度には70%(10年度は7.0%)に達すると予想しており、携帯端末向けコンテンツ市場は高速通信サービスの普及による市場の更なる活性化が期待されている。
 
ソリューション事業
「タッチポイントの拡大」、「継続収益モデルの確立」、及び「新しい軸の確立」を3本柱として施策を進めている。「タッチポイントの拡大」では、店頭アフィリエイトによりコンテンツ集客力の強化と広告事業の拡大を図る考えで、携帯販売代理店(携帯ショップ)との協業や共通ポイントプログラムをはじめとしたプラットフォームへの参画を進めている。また、「継続収益モデルの確立」では、サイト運営やコンテンツ制作等のランニング業務で収益の安定化とシェアモデルの案件獲得に努めており、「新しい軸の確立」ではスマートフォン分野での企業向けの企画・開発の提案営業を強化し需要の取り込みを図っている。
 
今後、店頭アフィリエイトでは新端末への対応や取扱商材の拡大により携帯ショップの顧客とのタッチポイントの更なる拡大を図る考え。また、ソリューション及びソリューションコンテンツでは、スマートフォンを活用した販促・マーケティング展開が活発している事を受け、企業ニーズに応えるソリューション提案を強化する。
 
②海外事業
「電子書籍事業(中国)」、「携帯通信キャリアとの連携(中国・インド)」、「海外進出支援事業(中国・インド)」を3本柱として施策を進めている。「電子書籍事業」では、配信(中国向け)、制作(中国向け、日本向け)、及び漫画家新媒体連盟を通じたコミックコンテンツ流通の活性化に取り組んでおり、「携帯通信キャリアとの連携」では、中国及びインドにおいて携帯通信キャリアとの強固な関係の構築を念頭に事業を進めている。また、「海外進出支援事業」では、中国やインドに進出する日本企業のサポートを手掛けている。
 
中国事業
中国では、「電子書籍事業」の収益化に向け10年12月にモバイル向け電子コミックストア「漫魚(まんぎょ)」をオープンした。「漫魚」は、同社独自の課金システムによる有料サービスであり、Android端末はもちろん、2G・2.5G携帯端末にも対応し、通信キャリアを問わない。現在、同社が保有する中国オリジナルコミック(300タイトル以上)の他、ソフトバンク クリエイティブ(株)と(株)ハーレクインの協力の下、ハーレクインのロマンス小説を原作としたコミック「ハーレクインコミックス」中国語(簡体字)版(20本以上)を配信している。また、現地の携帯キャリアのサイトや携帯メーカーのサイトへの供給を開始している。
 
 
インド事業
インドにおいては、インド子会社「NEモバイル」がボリウッド関連アプリ 「Bollywood on the GO」の配信を開始した。Bollywoodとはインド・ムンバイ(旧地名「ボンベイ」)の映画産業で、米国のHollywoodを意識して付けられた名称。「Bollywood on the GO」ではボリウッドカレンダー、ボリウッド待ちうけ、ボリウッド占い、ボリウッドニュース、ボリウッドゴシップ、ボリウッド上映スケジュール、ボリウッドレビューを配信している。無料アプリを提供し利用者を増加させる事で広告収入の獲得につなげていく考えで、積極的に新規アプリを投入していく計画。また、インドの携帯端末で利用が一般化している「BTAD(Bluetooth Advertisement)」を利用した企業向けソリューションも展開しており、一部の地域ではあるが、既に日系の自動車メーカーやパソコンメーカーの販売支援で実績を挙げている。尚、「BTAD」とは、Bluetooth技術を活用して携帯電話に、アニメーションを使った広告、ディスカウントクーポン、無料壁紙等を配信する広告で、インドでは企業の販促策として利用が進んでいる(日本では通常Bluetooth機能が「オフ」になっているが、インドでは「オン」になっており、その利用が日常化している)。
 
 
取材を終えて
広告事業が好調だ。これまで手掛けてきた“着うたフルとCD”、“デコメキャラクターとぬいぐるみ”といったように、“ネットとリアル”の連動は同社が得意とするところで、広告事業もこの強みを活かした“携帯コンテンツとリアル店舗(携帯ショップ)”の連動ビジネス。この事業を進めるためには、インフラとして、どのコンテンツを、どの店舗の、どの担当者が販売したか、を管理するシステムが必要であり、コンテンツプロバイダーとして公式サイトでのコンテンツ配信を通じて携帯キャリア各社と緊密な関係を構築してきた実績と自らもシステム開発を手掛ける事で蓄積してきた技術とノウハウがあればこその事業である。このため、同社は事業開始に当たって先行投資を抑える事ができたが、新たに参入しようとするとハードルは高い。
また、コンテンツ開発を含めた携帯向けソリューションを手掛ける同社にとって、高機能で様々な利用方法が考えられるスマートフォンの市場拡大も追い風となろう。東日本大震災が今後の企業活動や個人消費に与える影響は測りかねるが、同社個別に限れば、業績モーメンタムは悪くない。