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(4847) 株式会社インテリジェント ウェイブ

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ブリッジレポート:(4847)インテリジェント ウェイブ vol.8

(4847:JASDAQ) インテリジェント ウェイブ 企業HP
山本 祥之 社長
山本 祥之 社長

【ブリッジレポート vol.8】2011年6月期第3四半期業績レポート
取材概要「東日本大震災の間接的な影響の広がりが懸念され、マクロ・ミクロの両面で先行きの不透明感は否めない。しかし、カードショッピングの増勢や・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年5月24日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社インテリジェント ウェイブ
代表取締役
社長執行役員
山本 祥之
所在地
東京都中央区新川1-21-2 茅場町タワー
決算期
6月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年6月 4,956 358 387 211
2009年6月 5,527 228 235 187
2008年6月 6,695 417 403 -5
2007年6月 6,367 389 407 -295
2006年6月 7,137 1,482 1,452 947
2005年6月 5,174 678 688 264
2004年6月 5,257 371 365 156
2003年6月 5,891 1,177 1,161 539
2002年6月 5,505 1,854 1,846 1,003
株式情報(5/13現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
22,640円 263,400株 5,963百万円 4.8% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
500.00円 2.2% 448.56円 50.5倍 17,811.02円 1.3倍
※株価は5/13終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
インテリジェント ウェイブの2011年6月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
クレジットカードの決済システムに強みを持つソフトウェア開発会社。リアルタイム処理が可能な高度なネットワーク技術、システムを止めないためのノンストップ技術、更には高度なセキュリティ技術を技術基盤としており、証券関連の情報集配信システムでも豊富な実績を有する他、カード不正利用検知システムや内部情報漏洩対策システム等も手がける。大日本印刷(株)が議決権の50.61%を保有する筆頭株主。子会社は、米国の販売子会社と韓国の開発・販売会社子会社の2社(いずれも連結子会社)。
 
<事業内容>
事業は、カードビジネスのフロント業務、システムソリューション業務、及びセキュリティシステム業務に分かれ、10/6期の売上構成比は、それぞれ48.6%、37.8%、13.6%。
 
カードビジネスのフロント業務
クレジットカード会社、銀行、大手小売業等向けに、「NET+1」をベースにしたカード決済にかかるフロント業務のシステム構築を行っている。フロント業務のシステムとは、カード利用者の信用照会(オーソリゼーション)等、クレジットカード会社が加盟店や信用情報センターとの接続に必要なシステム。「NET+1」はハードと自社開発のパッケージソフトからなり、大手クレジットカード会社向けではシェア70%の実績を有する。
 
システムソリューション業務
証券取引所等から提供される市況データや気配値等を素早く社内の各端末に配信する「市況情報配信システム」、クレジットカード不正利用検知システム「ACE Plus」等の自社製品及び他社製品(海外商品)を用いたシステム構築を行っている。
 
セキュリティシステム業務
自社製品である内部情報漏洩対策システム「CWAT」や「EUC Secure」を中心にセキュリティ関連の製品・サービスを提供しており、親会社である大日本印刷(株)と共にセキュリティ関連の新事業(サービス)の開発も進めている。
 
<カードビジネスのフロント業務の特徴>
クレジットカードの利用に際しては、その都度、与信限度額や返済状況の確認作業が行われ、また、キャッシシングの際には口座残高の確認も必要となる。こうした確認作業はネットワークを介してリアルタイムで行われ、特にクレジットカードの場合、世界的なネットワークを介しての作業となる。また、システムが止まるとカードが使えなくなるため、24時間365日システムを止めないための技術やノウハウも必要だ。つまり、「カードビジネスのフロント業務」には、リアルタイム処理が可能な高度なネットワーク技術やシステムを止めないためのノンストップ技術、ノウハウ、そして何よりも顧客となる金融機関等からの信頼性が不可欠なため参入障壁は高い。単年度での振れはあるものの、ハードウェアが5年程度で更新を迎える事に加え、技術やネットワークの進歩、或いは様々な社会犯罪等への対応で更新需要が絶えず発生している。
 
 
2011年6月期第3四半期決算
 
 
前年同期比2.6%の増収、同31.0%の経常減益
売上高は前年同期比2.6%増の34.0億円。システムソリューション業務やセキュリティシステム業務が苦戦したものの、業法改正への対応一巡等でカード会社のシステム投資が底打ちした事でカードビジネスのフロント業務の売上が伸びた。ただ、利益率の高い自社パッケージの減少等で売上総利益が減少。開発業務の効率化等で販管費の削減も進んだが、営業利益は86百万円と同25.5%減少した。為替差損の増加で営業外損益が悪化した他、匿名組合投資利益が無くなる一方、資産除去債務会計にかかる損失等を計上した事で特別損益も悪化。四半期純利益は17百万円と同85.2%減少した。
もっとも、第3四半期(1-3月)の3ヶ月間では、増収効果と開発業務の効率化等による販管費の減少で営業利益が148百万円と同22.7%増加した。
 
 
カードビジネスのフロント業務
売上高は前年同期比21.4%増の21.2億円、セグメント利益は同19.6%増の8.5億円。改正貸金業法や改正割賦販売法への対応が一巡し主要顧客であるクレジットカード会社のシステム投資が回復傾向にある中、ハードウェアの更新需要の取り込みが進んだ他、ソフトウェア開発も増加。利益面では、ソフトウェア開発業務の効率化が進み利益率が改善した。
 
主なサブセグメントの増減
ソフトウェア開発   995百万円 → 1,029百万円
自社開発パッケージ  63百万円 →   29百万円
保守         303百万円 →  303百万円
ハードウェア販売   346百万円 →  755百万円
 
システムソリューション業務
売上高は前年同期比19.4%減の10.0億円、セグメント利益は同56.8%減の1.2億円。証券系事業、カード系・その他事業共に売上が減少。利益面では、パッケージの減少が響いた他、シフトウェア開発の利益率も低下した。
 
主なサブセグメントの増減
ソフトウェア開発  735百万円 → 639百万円
自社開発パッケージ 134百万円 → 46百万円
保守        210百万円 → 237百万円
ハードウェア販売  81百万円 → 16百万円
 
セキュリティシステム業務
売上高は前年同期比14.5%減の2.6億円、セグメント損失2.2億円(前年同期は3.3億円の損失)。商談の決定が先送りとなるケースが多い事に加え、東日本大震災の影響による期ズレもあり受注が進まなかった。
 
主なサブセグメントの増減
ソフトウェア開発   20百万円 → 35百万円
自社開発パッケージ  58百万円 → 42百万円
保守         185百万円 → 163百万円
ハードウェア販売    0百万円 →  0百万円
 
 
カードビジネスのフロント業務の受注が回復傾向にあるものの、システムソリューション業務の回復が遅れている。キュリティシステム業務においては、製品販売の動きが依然として鈍いが、保守売上が下支えとなっている。
 
(4)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
第3四半期末の総資産は前期末比2.0億円増の56.6億円。CFの改善で現預金や余資運用の投資有価証券が増加した。有利子負債に依存しない健全な財政状態が維持されており、第3四半期末の自己資本比率は82.9%。CFの面では、運転資金の減少による資金効率の改善等で営業CFが大幅に増加。新規の余資運用が減少したため投資CFのマイナス幅も縮小し、前年同期は1.1億円のマイナスだったフリーCFが3.0億円の黒字に転じた。財務CFのマイナスは配当の支払いによるもので、現金及び現金同等物の第3四半期末残高は22.4億円と前期末比1.6億円増加した。
 
 
 
2011年6月期業績予想
 
(1)事業環境
カード取扱高が前年同月の実績を上回って推移する中、改正貸金業法や改正割賦販売法への対応が一巡した事に加え、収益の圧迫要因であった過払請求引当金も減少に転じる等、クレジットカード会社が先送りしてきたシステムの更新に着手する環境が整ってきた。また、3月11日に発生した東日本大震災についても、同社においては人的・物的共に被害はなく、セキュリティ業務の商談の一部で12/6期への先延ばしが発生したものの、11/6期業績の影響は軽微。12/6期については、消費マインドの低下等の間接的な影響が懸念されるが、こうした懸念は同社に限った事ではない。
 
 
 
セキュリティシステム業務に下振れ懸念があるものの、カードビジネスのフロント業務の上積みでカバーしたい考え。一方、システムソリューション業務については、受託開発を中心に引き続き厳しい受注環境が続くが、証券系事業の受注済み案件を確実に執行する事で計画通りの着地を目指す。利益面では、カードビジネスのフロント業務及びシステムソリューション業務において更なる開発業務の効率化に取り組むと共に、セキュリティシステム業務においては保守売上の確実な取り込みと経費節減で収益性の改善を図る考え。
 
 
通期業績予想に変更はなく、前期比7.5%の増収、同35.4%の経常減益予想
ハードウェアの更新需要の取り込み等で売上が増加するものの、利益面では自社開発パッケージの減少が響く。配当は1株当たり500円の期末配当を予定。
 
 
(4)11/6期の取り組み
①大日本印刷(株)との協業
親会社である大日本印刷(株)との協同営業を強化し、大日本印刷(株)の顧客に同社の製品・サービスの拡販(クロスセールス)を図ると共に印刷周辺のシステム開発の受託につなげる。また、新規事業の育成にも取り組み、11/6期300百万円、12/6期700百万円(うち新規事業230百万円)、13/6期900百万円(同400百万円)の売上を計画している。
 
②カードビジネスのフロント業務
システム運用コストの削減要求に応えるべくオンライン接続システム「NET+1」のLinux 対応版「Linux NET+1」を投入した。従来の「NET+1」は特殊なOSや高価な専用ハードが必要だったが、Linux 対応版は汎用のハード・ソフトでシステムの構築が可能なためハードルが低い。既に金融分野で受注に成功する等、中期的な成長期待の高い製品である。
 
③システムソリューション業務
証券分野において、市況情報配信システム、アルゴリズム取引システム、受発注システム等、証券統合パッケージといった海外パッケージを用いたソリューションを展開しており、足下、商談が活発化している。また、証券ソリューションやクレジットカードの不正利用検知システム「ACE Plus」の海外展開にも取り組んでおり、海外の現地ベンダーやシステムインテグレーターとの協業準備も進んでいる。
 
④セキュリティシステム業務
大日本印刷(株)との協業による新規事業の立ち上げに加え、ITベンダーやシステムインテグレーターとの関係を強化し、「CWAT」を組み込んだソリューション提案に取り組んでいる。また、安定収益源として保守売上の積み上げにも取り組んでおり、今期の当セグメントの業績予想を達成するためのポイントとなっている。
 
 
取材を終えて
東日本大震災の間接的な影響の広がりが懸念され、マクロ・ミクロの両面で先行きの不透明感は否めない。しかし、カードショッピングの増勢や業法改正に伴う貸倒関連コストの減少で主要顧客である大手クレジットカード会社の業績は底打ちしているため、基本的には同社の業績モーメンタムは良好だ。クレジットカード会社に限らず、いつまでもシステム投資を先送りするわけにはいかないため、秋以降のシステム投資の回復を予想する声は少なくない。このため、暫らくは臥薪嘗胆と言ったところで、地道な種まきが必要だ。
こうした観点から(株)インベストメントブリッジが注目しているのが(当面の業績への影響は少ないと思われるが)、2月に発表した韓国Saltlux Inc.(以下、Saltlux)との提携である。Saltluxはセマンティック検索・情報マイニングの専門企業で、セマンティック技術とはコンピュータ自らが情報の意味や関連性を理解し、その理解に基づいて様々な処理を実行する技術の事(セマンティックとは「語義」とか「意味」と訳される)。同技術はコンピュータ・サイエンスにおける長年の主要研究テーマの一つであり、近年、ナレッジ管理、情報の統合、セマンティック・ウェブなど様々な領域で、情報・知識活用のための手段として注目されている。事実、米Googleがセマンティック技術を導入しGoogle Searchの改善に取り組んでいるが、その理由は、ユーザーが検索の際に入力する単語やフレーズの意味を検索エンジンが理解すれば、ユーザーの検索意図を反映した関連性の高い検索結果を表示でき、また、自然言語による検索も可能になるからだと言う。米Googleに限らず、海外では、2007 年以降、欧米を中心に導入事例が増えているそうだが、悲しいかな日本では未だ本格的な導入事例が無い。
ちなみに、Saltlux は、既にセマンティック技術を用いたソリューションで豊富な実績を有し、この分野でアジアではNo.1、世界的にも有数のベンダーであり、国防部・統一部・海軍・特許庁といった韓国の政府行政機関、サムソンやLG 電子等の韓国有力企業、更には欧米諸国を含めた導入実績は400件を超える。
(株)インテリジェント ウェイブは、日本でのセマンティック・ソリューションのパイオニアとして、グローバルに展開している大企業のカルテル対策や特許紛争など国際訴訟におけるe ディスカバリ(電子証拠開示:米国民事訴訟における証拠開示制度)分野でセマンティック技術を用いたソリューションを提供していく考えで、ウェブ検索サービスによる知識・情報の発見と収集支援、金融業界向けの内部監査やマネーロンダリング検知、更にはコールセンタ等での会話解析に基づく顧客向けコンシェルジュ・サービス等への展開も視野に入れている。親会社である大日本印刷(株)の顧客基盤を活用し、同技術によるソリューションを展開していけば同社のビジネスフィールドは格段に広がる。今後の展開に注目したい。