ブリッジレポート
(2435) 株式会社シダー

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ブリッジレポート:(2435)シダー vol.19

(2435:JASDAQ) シダー 企業HP
山崎 嘉忠 社長
山崎 嘉忠 社長

【ブリッジレポート vol.19】2011年3月期業績レポート
取材概要「有料老人ホームを開設し、地域の病院、ケアマネージャー、更には老人会等との良好な関係を築いた後にデイサービス拠点を開設する戦略が奏功し・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年8月9日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社シダー
社長
山崎 嘉忠
所在地
北九州市小倉北区大畠 1-7-19
決算期
3月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年3月 8,746 225 295 158
2010年3月 8,332 408 419 237
2009年3月 7,075 149 100 46
2008年3月 5,921 56 42 16
2007年3月 4,519 -403 -406 -247
2006年3月 4,251 309 297 166
2005年3月 3,649 352 288 164
2004年3月 3,125 122 97 41
2003年3月 2,352 111 104 30
2002年3月 1,594 17 21 11
2001年3月 281 -20 -21 -14
株式情報(7/29現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
304円 5,738,000株 1,744百万円 13.2% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
10.00円 3.3% 31.23円 9.7倍 217.93円 1.4倍
※株価は7/29終値。
 
シダーの2011年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
デイサービス及び有料老人ホームを中心とした介護サービスを、本社のある福岡県を中心に、北海道、首都圏、関西圏、中国・四国地区、山口県で展開。リハビリテーションに重点を置き、より人間らしく生きるための生活支援を行う事を経営方針としている。有料老人ホームでは施設数で業界13位、総居室数で15位のポジションにある(出所:「月刊シニアビジネスマーケット」2011年4月号より)。
 
<事業セグメント>
事業は、同社の施設の来場者にサービスを提供するデイサービス事業、有料老人ホーム等の施設の入居者を対象にサービスを提供する施設事業、及び利用者の自宅を訪問して日常生活訓練や機能訓練等を行うリハビリサービスや日常生活の手伝いを行うホームヘルパーサービス等の介護サービスを提供する在宅サービス事業に分かれる。11/3期の売上構成比は、それぞれ37.6%、53.9%、8.5%。
2011年3月31日現在の拠点数は次の通り。
 
 
 
2011年3月期決算
 
<東日本大震災の影響について>
拠点が西日本に集中している在宅サービス事業に影響は無かったが、デイサービス事業及び施設サービス事業において軽微な物的被害があった。大きな負担にはならないが、来12/3期に修復費用が発生する見込み。
 
デイサービス事業
人的・物的の両面でオペレーションに支障をきたす様な大きな被害は無かったが、千葉県内の複数の施設で壁に亀裂が入った(修復費用は概算で600万円)他、ガスや水道の不具合により入浴を数日間中止した施設があった。また、千葉県内の施設で震災を理由に利用見合わせが若干見られた。
 
施設サービス事業
デイサービス事業同様、人的・物的の両面でオペレーションに支障をきたす様な大きな被害は無かったが、関東地区の複数施設の壁に亀裂や壁紙の剥がれが発生した(修復費用は概算で500万円)他、「ラ・ナシカひたちなか」(茨城県)で電気・水道が不通となり、3日間避難所生活を余儀なくされた(既に復旧)。また、宮城県仙台市の新規施設「ラ・ナシカながまち」の開設を11年5月から11年8月(予定)へ延期した。
 
 
先行投資負担で同29.6%の経常減益
デイサービス施設2施設、有料老人ホーム2施設、及び訪問看護ステーション1施設を新規開設した他、デイサービス施設3施設でリニューアルを実施。新施設の寄与に加え、既存施設の利用率や入居率も向上し、売上高は87.4億円と前期比5.0%増加した。ただ、新施設の立ち上げ費用や新卒40名の入社に伴う労務費・人件費の増加等、先行投資が負担となり、営業利益率が2.3ポイント悪化。営業利益は同44.7%減の2.2億円にとどまった。尚、営業外損益の改善は、介護職員処遇改善交付金(69百万円→142)等の助成金収入の増加(82百万円→152百万円)によるもので、このうち介護職員処遇改善交付金については、これに対応する費用が売上原価に計上されている。
配当は1株当たり10円の期末配当を予定。
 
 
デイサービス事業
売上高は前期比3.7%増の32.9億円、セグメント利益は同28.2%減の4.1億円。「甲府デイサービスセンター」(10年5月、山梨県甲府市、定員60名)及び「森松デイサービスセンター」(11年2月、愛媛県松山市、定員60名)を新規開設した他、和白、香住ヶ丘、福岡西(いずれも福岡県)の3施設でリニューアルを前倒実施。積極的な営業活動もあり利用者数が増加したものの、新施設の立ち上げやリニューアル等の費用が負担となった。
 
 
尚、「甲府デイサービスセンター」を新規開設した甲府では、先行して開設した有料老人ホーム「ラ・ナシカ こうふ」を中心に、病院、ケアマネージャー、老人会等との地域のネットワーク作りが進んでいたため、「甲府デイサービスセンター」は開設直後から登録利用者が順調に増加し、1年を経ずに単月黒字を達成した。
 
 
施設サービス事業
売上高は前期比6.6%増の47.0億円、セグメント利益は同15.2%増の4.4億円。「ラ・ナシカあきた」(10年5月、秋田県秋田市、部屋数60室)及び「ラ・ナシカちの」(11年2月、長野県茅野市、部屋数75室)を新規開設。既存施設の入居者獲得が進み施設稼働率が向上、新施設を含めた期末入居率が91.0%に達した。期末入所者数は1,206名。
 
 
在宅サービス事業
売上高は前期比0.7%増の7.4億円、損失25百万円(前期は22百万円の損失)。デイサービス事業及び施設サービス事業に経営資源を集中している事もあり、売上・損益共に前期並みにとどまった。尚、10年8月に、水巻訪問看護ステーション(福岡県遠賀郡)を新規開設した。
 
 
2012年3月期業績予想
 
 
前期比6.6%の増収、同8.4%の経常増益予想
有料老人ホーム4施設の新規開設とデイサービス施設1施設の移転拡張を計画。投資負担が増加するものの、リニューアル効果や前期に新規開設した施設の好調で既存施設の利用率や入居率が高水準で推移。介護職員処遇改善交付金の需給開始に伴う影響が無くなる事もあり、営業利益は3.0億円と同35.0%増加する見込み。東日本大震災にかかる修繕費や夏場の電力不足に対応したサービス提供時間の短縮等の影響については、「多分に不確実な要素を含んでいる」として織り込んでいない(既に説明した通り、修繕費については大きな負担にはならない見込み)。配当は1株当たり10円の期末配当を予定。
 
 
デイサービス事業
前期に開設した施設の寄与と既存施設の利用率向上で売上高が34.9億円と前期比6.1%増加する見込み。黒崎デイサービスを拡張・リニューアルして最大定員を39名から80名に引き上げると共に、同施設に隣接していたグループホーム黒崎を移転し、同グループホームに認知症デイサービスを併設する予定(グループホーム黒崎は1階を定員24名の認知症デイサービス施設とし、2階をグループホームとする)。
 
 
施設サービス事業
売上高は前期比7.1%増の50.4億円。前11/3期開設施設を除く既存施設はほぼ満床状態で推移。4施設の新規開設を予定しており、期末の総居室数は1,509室と前期末比183室増加する見込み。
 
 
 
在宅サービス事業
前期に開設した水巻訪問看護ステーションの寄与等で売上高が7.8億円と前期比4.8%増加する見込み。
 
 
取材を終えて
有料老人ホームを開設し、地域の病院、ケアマネージャー、更には老人会等との良好な関係を築いた後にデイサービス拠点を開設する戦略が奏功し、「甲府デイサービスセンター」が予想以上に早く単月黒字を達成した。もっとも、これは単なる事業戦略ではなく、介護保険法の目指す方向に沿ったもの。具体的には、12年4月に改正介護保険法が施行される予定だが、改正のポイントの一つとして、「医療と介護の連携強化」を挙げる事ができ、施行後は、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが連携した要介護者への包括的な支援(地域包括ケア)が推進される。また、施設を集積させる事で、理学士等の職員が地元で安定して働く事のできる環境作りも可能になる。
この他、改正介護保険法には、認知症ケアモデル構築や地域の実情に応じたケアパス作成等、認知症対策も盛り込まれる見込みで、デイサービス利用者の宿泊ニーズへの対応等も検討されている。同社はグループホーム黒崎を移転し、同グループホームに認知症デイサービスを併設する予定だが、こうした施策も認知症関連の法整備を視野に入れたものだ。11/3期のように、決算期毎では、新施設の開設時期によって利益が振れる事があるものの、介護保険法の趣旨に沿った事業展開で順調に業容が拡大していると言え、今後の見通しについても良好だ。