ブリッジレポート
(2714) プラマテルズ株式会社

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ブリッジレポート:(2714)プラマテルズ vol.7

(2714:JASDAQ) プラマテルズ 企業HP
井上 正博 社長
井上 正博 社長

【ブリッジレポート vol.7】2012年3月期上期業績レポート
取材概要「上期の業績が上振れする中で通期の業績予想を据え置いたため、結果として下期の業績予想はかなり保守的なものになってしまった。欧州での信・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年1月10日掲載
企業基本情報
企業名
プラマテルズ株式会社
社長
井上 正博
所在地
東京都品川区北品川4-7-35 御殿山トラストタワー
決算期
3月 末日
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年3月 55,762 899 842 500
2010年3月 47,145 663 621 388
2009年3月 52,550 893 809 489
2008年3月 56,861 1,089 943 704
2007年3月 52,022 1,219 1,115 652
2006年3月 50,673 1,054 1,005 569
2005年3月 46,804 790 746 403
2004年3月 43,720 659 566 309
2003年3月 42,614 685 642 240
株式情報(12/16現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
315円 8,548,416株 2,693百万円 8.6% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
14.00円 4.4% 54.98円 5.7倍 696.30円 0.5倍
※株価は12/16終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
プラマテルズの2012年3月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
合成樹脂関連商品の専門商社。原料メーカーから仕入れた樹脂原料をセットメーカーや成形メーカー及び樹脂の二次加工メーカーに販売しており、最終用途は電子・電機・OA機器、玩具、住宅建材、自動車等。連結子会社9社 (国内2社、中国4社、香港1社、シンガポール1社、フィリピン1社)、持分法適用関連会社1社とグループを形成し、子会社が合成樹脂フィルターの製造・販売も手掛ける。総合商社双日(株)グループにおいて合成樹脂部門を担う双日プラネット(株)が株式の46.5%を保有している。
 
<同社が扱う合成樹脂原料の特徴>
同社は、相対的に単価が高く高付加価値商材であるエンジニアリング系樹脂やスチレン系樹脂の取扱が多い。エンジニアリング系樹脂とは、ポリアミド樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート等でOA・事務機器、光学機器(カメラ等)、精密部品(ギア等の機構部品)、及び電子部品(コントローラー等)等で使われる。また、スチレン系樹脂とは、ポリスチレンやABS樹脂等で、家庭電器製品(テレビ、エアコン、冷蔵庫等)、OA・事務機器(パソコン及び周辺機器、FAX等)、及び玩具等で使われる。

エンジニアリング樹脂市場は、アジアで5%以上の成長が見込まれており、国内でも、当面、現在の市場規模での推移が予想されている。
 
 
<販売先及び市場動向>
販売先業種はOA・事務機器と家電・電子が全体の51%(個別ベース、以下同じ)程度を占めており、次いで玩具・その他が25%程度。その他、建材10%程度、医療機器7%程度、自動車5%程度、容器・化粧品2%程度と、様々な業種に取引先が広がっている。エンジニアリング系樹脂は主にOA・事務機器、カメラ等の光学機器、精密部品、電子部品等に使用され、スチレン系樹脂は主に家電、OA・事務機器、玩具等に使用されている。

エンジニアリング樹脂市場は国内では概ね横ばいだが、アジアでは5%以上の伸びが予想されている。また、同社の顧客は、アジア、中国等の新興市場での販売を強化している他、新しい事業分野の開拓や省エネ・省資源の推進にも取り組んでおり、この一環として、「技術」、「コスト」、「消費地」を念頭に置いた最も合理的な世界最適生産体制の構築を進めている。
 
<コアコンピタンス>
同社のコアコンピタンスとして、最もQCDに厳しい日本の優良企業との継続的取引の中で培われた合成樹脂専門商社としての、(1)合成樹脂原料に関する高い専門性、(2)商社としてのネットワークを駆使した、メーカーを巻き込んでの提案力、及び(3)顧客とのコミュニケーションを高め、少量多品種即納体制の構築、の3点を挙げる事ができる。
 
 
<ジャスダック市場上場10周年(2011年10月11日)>
同社は2011年10月11日にジャスダック市場上場10周年を迎えた。1952年3月の設立以来、合成樹脂を取り扱うエキスパートとして歩みを続け、2001年10月にジャスダック市場に上場。2011年10月はジャスダック市場上場10周年に当たり、12/3期には設立60周年という記念の期を迎える。上場した02/3期の連結売上高は387億円だったが、11/3期は557億円と上場後の9年間で144%増加した。

グループでの拡大戦略や積極的な海外展開も同社の特徴で、03年1月に香港に現地法人を、同年4月に上海に現地法人を、それぞれ設立。その後、シンガポール(04年3月に法人化)に拠点を開設し、04年10月に天津に現地法人、06年2月には東洋インキ製造(株)との合弁でベトナムにコンパウンド製造・販売会社を設立(出資比率20%)。更に09年には1月に深圳、同年8月に大連、11年7月にフィリピンと子会社を相次いで設立し、アジア進出を進める日系企業への供給体制の充実を図っている。尚、コンパウンドとは、目的とする性能や機能を得るために、プラスチックのベース樹脂に強化材や添加剤を配合した合成樹脂。

また、グループに製造部門を有する事も同社の特徴で、上記の合弁会社の他、98年11月に成形加工や二次加工等の(株)富士松を100%子会社化し、更に03年9月にはフィルタレン(株)を設立して(株)化研より合成樹脂フィルターの営業権を取得し、同年10月よりメディカル向け等の合成樹脂フィルターの製造・販売を開始した。
 
 
2012年3月期上期決算
 
 
前年同期比3.9%の増収、同5.6%の経常増益
売上高は前年同期比3.9%増の284.6億円。大連、上海、香港の中国子会社を中心に海外売上高が73.5億円と同11.2%増加。期初には東日本大震災の影響が残った国内も、需要回復が想定以上に早く211.0億円と同1.5%増加した。商材別では、ポリアミド樹脂、ポリアセタール等のエンジニアリング系樹脂やポリスチレン、ABS樹脂等のスチレン系樹脂といった主力の高付加価値商品が、光学・精密・電子・電気向けに堅調に推移。飲料ボトル、自動車部品、玩具向けにPET、MMA、エストラマー樹脂等も増加した。
利益面では、海外からのゲーム機関係の受取手数料が減少した影響で売上総利益率が悪化したものの、コスト削減努力の継続とリスク管理の徹底(貸倒引当金繰入額:52百万円→0円)により販管費が減少。増収効果と相まって営業利益は4.4億円と同7.2%増加した。一方で投資有価証券評価損(18百万円)などを特別損失に計上した事で四半期純利益は同2.1%減少した。
 
期初予想との比較
想定していたように、4-5月は東日本大震災によるサプライチェーン寸断等の影響を受けたものの、在庫確保に取り組んだ事が奏功し、第2四半期(7-9月)に入り回復基調に転じた需要の取り込みに成功し売上が上振れ。コスト面での想定が保守的だった事もあり、営業利益が13.4%、経常利益が14.1%、それぞれ期初予想を上回った。
 
上期末配当を増額
上期末配当を当初の1株当たり6円から1円増配し、7円とした。同社は、安定的な利益還元を経営の最重要政策の一つとして位置づけており、配当政策については、将来の事業展望と経営基盤・財務基盤の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定的な配当の継続を実施していく事を基本方針としている。
 
 
 
 
 
上期末の総資産は前期末比1.2億円増の225.1億円。借方では、売上の回復と手形割引の減少で売上債権が増加する一方、運転資金の増加で現預金が減少。評価損の計上等で投資有価証券も減少した。貸方では、利益計上に伴い純資産が増加した他、運転資金の増加に対応して有利子負債を積み増した。上期末の自己資本比率は前期末比0.2ポイント改善の26.8%。
 
 
定期預金の払戻等で投資CFが改善したものの、受注・売上の回復に伴う運転資金の増加で営業CFがマイナスとなり、フリーCFは前年同期の3.3億円の黒字から7.3億円のマイナスに転じた。長期借入金を積み増したものの、配当の支払いもあり、現金及び現金同等物の上期末残高は15.6億円と前期末比7.3億円減少した。
 
 
2012年3月期業績予想
 
 
前期比3.2%の減収、同7.4%の経常減益
上期業績が期初予想を上回ったものの、「欧州における財政不安の影響による世界的景気の減速感や円高の進行等、種々不安要因も抱えており、先行きの見通しが不透明な状況にある」として、通期の業績予想を据え置いた。下期は顧客企業の動向を適時適切に把握し、スピード感をもって必要な対応を実行していく考え。1株当たり7円の期末配当を予定している。
 
 
(2)事業環境と販売先の動向
欧州での信用不安の高まりや米国での雇用回復の遅れ(高失業率) 等で、顧客企業の商品の消費地である先進国の市場が低迷している。また、国内も、円高の継続に加え、東日本大震災やタイ洪水等の自然災害の発生によるサプライチェーンの寸断、操業の一時停止等で顧客企業を取り巻く環境は厳しい。
 
 
 
(3)海外戦略
同社の取引先は生産拠点を、東南アジアを含むアジア全体に拡大している。このため、同社も、海外拠点整備の重点エリアを中国沿海部だけでなく、東南アジア、中国内陸部に拡大し、変化する顧客ニーズを確実に捉えていく考え。この一環として、11年月にフィリピンの駐在員事務所を現地法人に昇格させ、同年11月には中国内陸部の合肥に出張所を開設した。フィリピンでは申請していた保税取扱免許を11月24日に取得し、取引先の工場立ち上げを支援するべく開設した合肥の出張所は、取引先との関係強化に加え、今後、内陸部へ展開していくに当たっての橋頭保にもなる。
 
 
 
今後の注目点
上期の業績が上振れする中で通期の業績予想を据え置いたため、結果として下期の業績予想はかなり保守的なものになってしまった。欧州での信用不安の高まりや米国での雇用回復の遅れ(⇒取引先の商品の消費地である先進国市場の低迷)に加え、円高、更には東日本大震災やタイの洪水等による生産の停滞と、取引先各社を取り巻く環境の厳しさを考えると、同社が慎重になるのも無理はない。
もっとも、上期決算では、海外拠点の拡充が成果をあげ、現地に進出した日系企業等の深耕が順調に進んでいる事が確認できた。戦略に沿って着実に成果をあげている事は注目に値するし、それだけに中国内陸部や東南アジアへの展開といった新たな戦略にも期待が高まる。しかし、株価には同社の実力が正しく反映されておらず、予想PER5.7倍、予想配当利回り4.4%、PBR0.5倍と割安感が強い。