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(2426)

ブリッジレポート:(2426)ピーアンドピー vol.9

(2426:JASDAQ) ピーアンドピー 企業HP
山室 雅之 社長
山室 雅之 社長

【ブリッジレポート vol.9】2012年3月期業績レポート
取材概要「13/3期については前期にスタートしたアウトソーシング案件が2年目を迎え本来の収益性を発揮する。また、改正労働者派遣法が成立した事で・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年6月19日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社ピーアンドピー
社長
山室 雅之
所在地
東京都新宿区新宿3-27-4
決算期
3月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年3月 22,689 507 512 281
2011年3月 21,445 511 509 235
2010年3月 21,934 374 377 67
2009年3月 18,853 635 642 372
2008年3月 15,808 822 827 404
2007年3月 14,056 678 684 340
2006年3月 6,075 269 255 133
2005年3月 4,667 312 295 156
2004年3月 3,637 281 270 110
2003年3月 2,586 171 172 93
2002年3月 1,891 151 158 28
株式情報(5/30現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
18,100円 107,459株 1,945百万円 9.2% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
980.00円 5.4% 2,977.88円 6.1倍 29,251.05円 0.6倍
※株価は5/30終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
ピーアンドピーの2012年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
携帯電話、デジカメや薄型TV等のデジタル家電、或いは食品等、様々な商品の販売促進活動を受託するセールス・プロセス・アウトソーシング(SPO)を中心に、小売店向け棚卸サービス等も手掛けている。全国に広がるサービスネットワークと、接客マナー研修、販売技術研修、商品知識研修などスタッフのスキルアップを支援する充実した教育・研修システムを強みとする。グループは、同社の他、一般事務及びコールセンター事業に強みを持つ(株)ピーアンドピー・キャリア(以下、PPC)、棚卸サービスの(株)ピーアンドピー・インベックス(同、PPI)、携帯ショップへの人材派遣を手掛ける(株)ジャパンプロスタッフ(同、JPS)、及びPPIの100%子会社である迎倍客股有限公司(台北市)。
 
【沿革】
1987年1月、メーカーの商品販売促進活動の支援を目的に設立。2000年8月に一般労働者派遣事業の許可を、03年10月に事業分野拡大を目的に有料職業紹介事業の許可を、それぞれ取得。04年12月、JASDAQに株式を上場した。現在、全国27の主要都市に展開しており、北海道から沖縄まで国内一斉のセールスプロモーションをワンストップで実現できる。
 
【事業内容】
事業セグメントは、アウトソーシング(業務請負)と人材派遣に分かれ、売上構成比(12/3期、以下同じ)は39.6%、60.4%(営業ベースでは83.5%、16.5%とアウトソーシングの収益性の高さが目に付く)。また、取扱商材別では、SPO(セールス・プロセス・アウトソーシング)サービス、ストアサービス、人材サービス、棚卸サービスに分かれ、売上構成比は、それぞれ57.5%、8.6%、25.0%、8.9%。地域別では、中部(愛知県、三重県、岐阜県)、甲信越(長野県、新潟県)以東の東日本地区(18拠点)が67.3%、西日本地区(9拠点)が32.7%。
 
SPO(セールス・プロセス・アウトソーシング)サービス
放送・通信キャリア、一般消費材メーカー及び各関連企業等をクライアントとし、販売支援、営業支援に係る各種サービスを提供しており、店頭調査をはじめとした各種調査業務や事務局運営等、幅広く販売及び営業活動を支援する。
 
ストアサービス
生鮮加工技術と現場管理能力を備えた生鮮技術者の派遣・請負、レジトレーナーの派遣・業務請負、マニュアル作成等も含めたレジ業務スタッフの派遣・請負サービス及び、店舗への集客を支援する。
 
人材サービス
コールセンター業務、事務・IT人材の派遣、及び人材紹介、採用代行等のサービスを提供。
 
棚卸サービス
子会社の(株)ピーアンドピー・インベックス(国内大手コンビニ向け)と台湾迎倍客股有限公司のサービス分野。棚卸業務を代行し、業務の効率化と営業時間の有効活用を実現する。365日、24時間体制で多様なニーズに対応。
 
【市場環境と戦略】
(1)市場環境
2012年3月に「改正労働者派遣法」が国会で可決された。法案成立をにらみ、業界では派遣から請負(アウトソーシング)へのシフトを進めていたが、懸念されたほどの過度な規制強化には至らなかった。ただ、30日以内の日雇派遣が原則禁止されたため、同社も一部のサービスが影響を受ける可能性がある(例外として「雇用機会の確保が特に困難な場合等」が挙げられているため、実際の影響はほとんど無い可能性もある)。このため、同社ではPPRシステム(P&P Reporting System)を用いたSPOサービスによる請負案件の獲得に注力しつつ、改正労働者派遣法の範囲内で派遣需要を取り込んでいく考え。
一方、グループ企業内派遣の割合が上限8割に規制された事は同社にとってビジネスチャンス。グループ企業内派遣規制回避のために、グループ外への業務発注が拡大する見込みだ。
市場別の動向と同社の基本的な取り組みは次の通り。
 
 
(2)戦略
派遣から請負(アウトソーシング)へのシフトを進めると共に請負の利益率向上を図る事で既存ビジネスの拡大を図ると共に、12/3期に開始したWeb SPOサービス「もにったー」や事業譲受した求人プラットフォーム「おいしい仕事」によるWeb事業を新規市場として育成していく。また、優れた財務体質を活かし、M&Aにも機動的に対応する事で収益基盤の強化・拡充を図る他、事業ポートフォリオの適切な管理を可能にするべくホールディングカンパニー化に移行する。
 
①既存ビジネスの拡大と利益率の向上
サービス面において、派遣から請負へのシフトを進めるべく提案営業を強化する他、収益性が高く、かつスタッフのOJT(実際の業務を通しての業務訓練)の場としても有効なキャンペーン案件の獲得に注力する。一方、商品面では、家電量販店で取扱高が拡大しているエコ関連商材やネットワーク家電、或いは、国内市場でシェアを伸ばしつつある海外メーカーの商品も強化する。また、自社開発のレポーティングシステム「PPRシステム」の導入によるサービスの高付加価値化と顧客の利便性向上をアピールしていく。尚、「PPRシステム」とは、リアルタイムに店頭の情報をフィードバックできるレポーティングシステムで、様々な店頭での情報をシステム上で即座に集約できる(写真により店頭販促の状況を確認したり、販売員が入力した接客データベースをCSV形式で出力し加工したりする事が可能)。

ただ、12/3期はモバイル関連で請負案件の取り込みが進む一方、一時的な要因もあり利益率が悪化した。このため、収益性の改善にも取り組んでいく考え。具体的には、引き続き拡大が見込めるモバイル請負案件について、外注スタッフの自社化を進めると共に、接客に長時間を要し採算性の低い案件については派遣化を進める。一方、収益性の高い案件の比率を高めるべく、事務局運営のノウハウを活かせるキャンペーン案件のアウトソーシングする他、人員配置の適正化や提供サービスに適した業務運営体制の構築等、業務の効率化に向けた取り組みも進めていく。
 
 
②新規ビジネスの推進
新規ビジネスとして、Web事業を推進する他、海外事業やSPOサービス領域の拡大にも取り組む。
 
・Web事業の推進
12/3期に開始したWeb SPOサービス「もにったー」をWeb事業の柱として育成していく他、M&Aにより既存事業を発展・拡大させた求人プラットフォーム「おいしい仕事」(サイト運営)を自社の採用効率向上につなげていく。

「もにったー」は、会員制(登録料無料)のモニターサイト。モニターに応募すると、抽選や先着順により無料もしくは配送料を負担するだけでモニター商品を利用でき、意見や感想をメーカーに届ける事ができる。一方、メーカーは、twitter、facebook等のソーシャルネットワークサービスを使いユーザーへ情報発信を行う事ができる上、ユーザー自身による口コミ拡散効果を誘導できる。また、注目度の高い商品を掲載する事でユーザー数や(サイトへの)訪問数を増やす事で、更なる媒体力向上へと繋げる事も可能だ。
また、「もにったー」の新規提案をきっかけに、過去に取引のなかったナショナルクライアントから全国規模のSPO案件を受注する等の成果が上がっている。

一方、求人プラットフォーム「おいしい仕事」は11年9月にビジネスソリューション事業や人材ソリューション事業を手掛ける(株)エスプールから事業譲受した。自社案件の採用効率の向上を目的としており、11年12月に同社が運営していた既存求人サイト「4510181.com」と統合した。現在、訪問ユーザー数の増加に向けた取組みを続けている。
 
 
・海外事業の推進
メーカー、家電量販店、携帯販売事業者、GMS(総合スーパー)、コンビ二等、中国・台湾で事業を展開する日系企業に対してSPOサービスを提供して業務を支援していく。具体的なサービスとして、商品サンプリング(商品を配布し実際に使ってもらう事で需要を喚起するプロモーション)、現地でのイベント開催、PPRによるレポーティングサービス、棚卸支援サービス、導入支援市場調査等を挙げる事ができる。
 
・SPOサービス領域の拡大
具体的には、ECの拡大で需要も増えているバックヤードサポートサービスの提供を開始している。バックヤードサポートサービスとは、仕分け、梱包、ピッキング、商品陳列、売場改装、検品・検査、搬入・搬出といった販売現場のバックヤードにおける人材サービスである。
 
 
④積極的なM&Aの推進
SPOサービスの強化を目的にシナジーが期待できる隣接領域(企画立案、マーケットリサーチ、マーケティング、セールスプロモーション)を中心にM&Aや事業提携を推進していく。特定の地域や顧客基盤に強みを持った企業等がその対象となる。
 
 
⑤ホールディングカンパニー化の推進
グループ戦略策定と事業運営の分離による効率的なグループ経営の実現と、事業会社による経営の迅速化及び経営責任の明確化、更にはM&Aを含むグループ再編の機動的な推進を目的にホールディングカンパニーへ移行する。
具体的には、12年10月1日付けで、株式移転により完全親会社となる純粋持株会社(株式会社P&Pホールディングス)を設立する(この際、(株)ピーアンドピーは純粋持株会社の完全子会社となる)。そして、13年1月に(株)ピーアンドピーが保有する子会社株式及び(株)ピーアンドピーの管理部門を吸収分割により持株会社に承継する。
 
 
 
2012年3月期決算
 
 
前期比5.8%の増収、同0.7%の経常増益
売上高は前期比5.8%増の226.8億円。積極的な営業展開と多様なサービスの提供で顧客ニーズの取り込みが進み、スマートフォン関連を中心にSPOサービスの売上が伸びた他、東日本大震災(以下、震災)後の臨時棚卸案件の獲得等で棚卸サービスの売上も増加した。
ただ、利益面では、社会保険料率の上昇に加え、アウトソーシング案件の急拡大による一時的な外注スタッフの利用増や詳細な説明が必要となるスマートフォンの販売拡大による残業時間の増加で売上総利益率が0.6ポイント低下(このうち0.3~0.4ポイントが、社会保険料率上昇の影響)。事業拡大に伴う人件費や採用・教育費の増加も負担となったが、助成金収入(11百万円)の計上等で経常利益がわずかに増加。特別損失の減少で当期純利益は2.8億円と同19.5%増加した(前期は固定資産除却損や資産除去債務等で特別損失52百万円を計上した)。
 
SPOサービスの積極展開と多様化の推進
業績のけん引役となったSPOサービスだが、積極的な提案営業とサービスの多様化で顧客ニーズの取り込みが進んだ事が好調の要因だ。
スマートフォン・タブレット・モバイルルーター等の販促キャンペーンや全国27か所の拠点網を活かした全国案件の実施等のアウトソーシングに加え、専門知識を持ち説明能力の高い販売員やスマートフォンユーザーへのサポートを行うコールセンターへの人材派遣等、拡大するモバイル市場に対して積極展開。店舗改装、販促用ツール作成、販売用什器、売場作り、PPRを活用したラウンダー業務、更には店頭調査や覆面調査といった人材支援サービス以外の多様なSPOサービスの提供も顧客ニーズの取り込みにつながった。
 
Webサービスの開発
新たな試みとして、同社初のB to Cサービスである消費者とメーカーをつなぐプロモーションサイト「もにったー」の運営を11年6月に開始した他、同年9月に求人プラットフォーム「おいしい仕事」をビジネスソリューション事業や人材ソリューション事業を手掛ける(株)エスプールから事業譲受した。
「もにったー」の新規提案をきっかけに、過去に取引のなかったナショナルクライアントから全国規模のSPO案件を受注する等の成果が上がっている。一方、求人プラットフォーム「おいしい仕事」の事業譲受は、自社求人サイトとして自社案件の採用効率の向上を図る事を目的としたもので、譲受後に既存の求人サイト「4510181.com」と統合。現在、訪問ユーザー数の増加に向けた取組みを継続的に実施している。
 
 
スマートフォンが好調なモバイル分野を中心に請負(アウトソーシング)化の提案営業を推進した成果が現れた他、震災後に発生した臨時棚卸案件の受託も進み、アウトソーシングの売上が89.7億円と前年比 31.3%増加した。一方、人材派遣はアウトソーシングへのシフトで一般事務派遣を中心に売上が減少したものの、提案営業の成果でモバイル関連のコールセンター派遣が伸び、同6.1%の減収にとどまった。
 
 
スマートフォンが好調な放送通信分野を中心にSPOサービスの売上が前期比11.7%増加。震災後の臨時棚卸案件の獲得と既存クライアントにおけるシェアの向上で棚卸サービスの売上も同12.0%増加した。一方、一般事務派遣の案件縮小で人材サービスの売上が減少した他、スーパーマーケット市場の低迷でストアサービスの売上もわずかに減少した。
 
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
期末総資産は前期末比5.3億円増の59.0億円。CFの改善による現預金の増加が総資産増加の要因。有利子負債に依存する事のない無借金経営が維持されている。尚、投資CFが3.9億円のマイナスとなったが、このうちの2.0億円は定期預金の預け入れによるもの。自己資本比率は53.2%。
 
 
 
 
2013年3月期業績予想
 
「市況により業績が激しく変動する事が予測される」として、大阪証券取引所の開示規則に則り、13/3期通期の業績目標をレンジ形式で開示した。
 
 
既存ビジネスの拡大、利益率の向上、新規ビジネスの推進、積極的なM&Aの推進、ホールディングカンパニー化の推進を、13/3期の施策として掲げている。子会社では、一般事務やコールセンターへの人材派遣を手掛ける(株)ピーアンドピー・キャリアがコールセンター案件の拡大と物流系バックヤードサポート業務の推進に取り組む他、棚卸サービスを手掛ける(株)ピーアンドピー・インベックスがGMS等の大型店売上の拡大と既存クライアントであるコンビ二でのシェア拡大、更には携帯ショップへの人材派遣を手掛ける(株)ジャパンプロスタッフがモバイル分野の拡大と通信系コールセンター案件の拡大に取り組む。
 
 
今後の注目点
13/3期については前期にスタートしたアウトソーシング案件が2年目を迎え本来の収益性を発揮する。また、改正労働者派遣法が成立した事で派遣に対する過度な不安が無くなり、アウトソーシングでは受注が難しい案件の派遣での取り込みも進もう。業績は予想レンジの上限に近いところで着地するものと思われる。また、来期以降の成長を考えた場合、Web事業、海外事業、SPOサービス領域の拡大、更にはM&A等がポイントになり、経営基盤整備の一環として進められるホールディングカンパニー化も注目される。上場企業である以上、数値目標の達成も必要だが、中期的な成長を考えた場合、目先の売上や利益の増減に囚われ過ぎると、角を矯めて牛を殺す事になりかねない。そういう意味から、同社は業績予想をレンジで開示したものと考える。今期業績が下限値に近いところで着地したとしても、先行投資によるものであれば、ポジティブに評価したい。