ブリッジレポート
(7776) 株式会社セルシード

グロース

ブリッジレポート:(7776)セルシード vol.8

(7776:JASDAQ) セルシード 企業HP
長谷川 幸雄 社長
長谷川 幸雄 社長

【ブリッジレポート vol.8】2012年12月期第1四半期業績レポート
取材概要「11/12期決算短信に「継続企業の前提に関する事項の注記」が追記された。研究開発型企業の宿命なのだが、営業損失と営業キャッシュフローのマ・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年7月10日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社セルシード
社長
長谷川 幸雄
所在地
東京都新宿区若松町33-8 アール・ビル新宿
決算期
12月末日
業種
精密機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2011年12月 86 -1,418 -1,358 -1,442
2010年12月 66 -1,204 -1,002 -1,009
2009年12月 87 -785 -788 -790
2008年12月 61 -778 -644 -650
2007年12月 40 -809 -614 -616
2006年12月 23 -672 -464 -470
2005年12月 34 -412 -336 -343
2004年12月 53 -257 -214 -215
株式情報(6/29現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
814円 5,446,174株 4,433百万円 - 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
0.00円 0.0% - - 97.55円 8.3倍
※株価は6/29終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
セルシードの2012年12月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
東京女子医科大学の岡野光夫教授が開発した日本発の「細胞シート工学」を基盤技術とし、この技術に基づいて作製した「細胞シート(細胞をシート状に組織化したもの)」を用いて従来の治療では治癒できなかった疾患や障害を治す再生医療「細胞シート再生医療」の世界普及を目指している。事業は、温度応答性細胞培養器材及びその応用製品の開発・製造・販売を行う「再生医療支援事業」と各種用途向けに様々な種類の細胞シートを開発・製造・販売する「細胞シート再生医療事業」に分かれる。
 
細胞シート再生医療事業
細胞シート再生医療医薬品(各種用途の「細胞シート」)及びその応用製品を販売する。現在、共同研究先と5つの再生医療医薬品パイプライン(新薬候補)の研究開発を進めている。
 
再生医療支援事業
細胞シート再生医療の基盤ツールである温度応答性細胞培養器材(世界で唯一当社が製造)及びその応用製品を開発・製造(多額の設備投資を必要とする一部の工程は外部委託)し、世界各国の大学・研究機関等に提供している。当事業は細胞シート再生医療事業の提携先開拓のための戦略的な意義をも有し、収益だけを目的とした事業ではない。
 
 
現在、5つのパイプラインの研究開発を推進している。12/12期第1四半期末現在、全てのパイプラインが臨床研究又はそれ以降の段階に入っており、いずれも計画通りに進捗している。尚、角膜再生上皮シートの欧州事業では欧州医薬品庁に薬事承認申請を提出済みであり、承認されると欧州30ヵ国での販売が可能。
 
 
2012年12月期第1四半期決算
 
 
売上高21百万円、経常損失332百万円
売上高21百万円は再生医療支援事業によるもので、細胞シート再生医療事業の売上は無かった。研究開発費が前年同期の175百万円から191百万円に増加した事に加え、その他の販管費も若干増加した。また、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)より業務受託していたプロジェクトの完了に伴う補助金収入13百万円を営業外収益に計上する一方、円高による再生医療支援事業用棚卸資産の棚卸資産評価損1百万円、及び為替差損12百万円を営業外費用に計上した。もっとも、売上・損益共に期初の想定に沿ったもので、申請中の角膜再生上皮シートの薬事許認可が下りるまでは生みの苦しみが続く。尚、国内外で特許4件が成立した(後述)。
 
 
再生医療支援事業
当事業では、温度応答性細胞培養器材「UpCell」シリーズの研究開発と販売(大学や研究機関を最終顧客とする代理店販売)を行っている。第1四半期は売上高21百万円、セグメント損失6百万円にとどまったが、2月に新型温度応答性細胞培養器材技術(新規アクリルアミド誘導体)に関する国内特許が成立した。この特許は、製品コンセプトを更に発展させた新しい温度応答性細胞培養器材(以下、「UpCell」)を製造するために必要な材料「アクリルアミド誘導体及びその誘導体を含む重合体」に関するもの。この「アクリルアミド誘導体及びその誘導体を含む重合体」を用いると、「UpCell」本来の温度応答性機能を損なわずに培養用表面に荷電を持たせる事ができるため、現行の「UpCell」にはない様々な新機能を付加できる可能性が生まれる(例えば、従来よりも少量の細胞で効率良く細胞シートを作製できる機能、複数種類の細胞の中から特定種類の細胞だけを選び出して細胞シートを作製する機能等)。
 
細胞シート再生医療事業
売上計上は無かったが、米国Emmaus Medical Inc.(以下、エマウス社)との間で11年4月8日に締結した「米国における角膜再生上皮シート共同開発・事業化契約」に係る契約一時金150万米ドルを受領した(前受金として計上)。また、技術面では、心筋再生パッチ関連の特許が国内外でそれぞれ1件ずつ、移植用「軟骨再生シート」の国内特許が1件成立した他、3月に骨格筋芽細胞シートの実用化研究でテルモ(株)と基本合意した。

心筋再生パッチに関する特許は、間葉系幹細胞又は胚性幹細胞からなる心筋再生パッチに関する日本特許(2月)と欧州での心筋再生パッチ基本特許(物質特許、3月)。移植用「心筋再生パッチ」は同社の細胞シート再生医療医薬品パイプラインの中で最大の市場ポテンシャルを有する細胞シート再生医療製品であり、ドナー心臓移植を除いて本質的な治療法がないとされる重度の虚血性心疾患や拡張型心筋症の根本治療を目的としている。2月(日本)に成立した特許と3月(欧州)に成立した特許の主な違いは心筋再生パッチの細胞源の種類の違いによるもので、具体的には、前者は間葉系幹細胞や胚性幹細胞を細胞源とし、後者は心筋組織由来の細胞を細胞源とする(後者は成立済みの製造法特許に続く、物質特許である)。いずれの細胞源も心筋細胞の再生を促す可能性のある細胞として注目されている

また、移植用「軟骨再生シート」の特許は2月に日本で成立した。軟骨再生に必要な培養細胞シートの製造方法及び利用方法に関するもので、その革新性を示す成果と言える。尚、同社は東海大学と共に「UpCell」を用いて培養した軟骨再生シートを膝関節表面に貼る事によって外傷や変性で失われた膝関節軟骨組織を再生する事をテーマとする研究に取り組んでおり、現在、軟骨再生シートに関する臨床研究(疾病の原因・病態の理解やその予防・診断・治療方法の改善等を目的として実際の患者を対象として実施される医学研究)が進行中である(臨床研究は11年にスタートした)。
 
 
 
第1四半期末の総資産は前期末比179百万円減の564百万円。損失の計上に伴う現預金と純資産の減少が総資産減少の主な要因だが、既に説明したとおり、エマウス社から契約一時金150万米ドルを受領したため(前受金として計上)、現預金及び純資産の減少は損失程には膨らまなかった。

尚、エマウス社から受け取った150万米ドルは、この契約に基づいて(株)セルシードから開示・移転した角膜再生上皮シート関連研究開発成果及び技術・ノウハウに関するエマウス社の検収が確認でき次第(12年4月以降となる見込み)、売上高に計上される。またエマウス社からは基本契約に係る契約一時金850万米ドルも今期中に受領する予定だが(上記の150万米ドルは「共同開発・事業化契約」に係るもので、基本契約に係る第1弾と言える)、現在、会計上の取り扱いが確定していない。
 
当面の運転資金に不安は少ない
この850万米ドルに加え、新株予約権を活用した資金調達枠である野村エクイティラインの残額が7億円ある他、来13/12期には提携を通じた資金の獲得として心筋再生パッチの共同研究開発にかかる提携一時金5億円の受領が見込まれている。この他にも商談が進んでいる提携案件が複数ある模様で、また、社会性の高い事業だけに公的補助金や助成金の獲得機会も多い。このため、今期及び来期の研究開発費を含めた運転資金に問題はなく、来期以降は、欧州角膜再生上皮シート事業の収益貢献が期待される(今期中に人道的使用制度に基づく製品提供が始まる予定だが、今期の収益貢献は限定的なものにとどまる見込み)。もちろん経費の抑制にも取り組んでいく考えだ。
 
 
2012年12月期業績予想
 
上期及び通期の業績予想に変更はなく、通期で売上高205百万円、経常損失1,520百万円を見込んでいる。売上の内訳は、再生医療支援事業が76百万円、細胞シート再生医療事業が129百万円。細胞シート再生医療事業の売上はエマウス社から受領した契約一時金150万米ドルにかかるもの。
欧州角膜再生上皮シート事業については、早期の薬事許認可取得に向けて多施設分散型治験が始まる他、期末までには人道的使用制度に基づく製品提供もスタートする見込み。また、今期中に食道再生上皮シートの臨床研究が終了する他、既に説明したとおり、エマウス社から共同研究開発基本契約に係る一時金850万米ドルの入金が予定されている。

尚、同社は、6月から、役員報酬の減額、従業員賞与の支給見送り、及び希望退職の募集を柱とする経営合理化策を進めており(役員報酬の自主的減額を含めた支出削減策は以前から進めていた)、希望退職には30名が応募した。退職一時金46百万円等が発生する見込みだが、経費削減等の効果も含めて、現在、その影響を精査中である。上期決算と同時に発表する業績予想に織り込む考え。
 
 
 
 
 
今後の注目点
11/12期決算短信に「継続企業の前提に関する事項の注記」が追記された。研究開発型企業の宿命なのだが、営業損失と営業キャッシュフローのマイナスが続いている事がその理由だ。しかし、既に説明したとおり、(株)インベストメントブリッジでは今期及び来期の研究開発費を含めた運転資金に問題はないと考えている。早期の収益貢献が期待される欧州角膜再生上皮シート事業は、多施設分散型治験や人道的使用制度に基づく製品提供の開始等、今期から来期にかけて着実に歩みを進めていく。その確かな歩みを確認していきたい。