ブリッジレポート:(2660)キリン堂 vol.23
(2660:東証1部,大証1部) キリン堂 |
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企業名 |
株式会社キリン堂 |
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会長 |
寺西 忠幸 |
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社長 |
寺西 豊彦 |
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所在地 |
大阪市淀川区宮原4-5-36 |
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決算期 |
2月 |
業種 |
小売業(商業) |
項目決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 |
2012年2月 | 102,229 | 1,684 | 1,960 | 184 |
2011年2月 | 100,465 | 1,118 | 1,537 | 188 |
2010年2月 | 104,964 | 1,232 | 1,527 | -443 |
2009年2月 | 106,695 | 1,781 | 2,030 | 500 |
2008年2月 | 106,098 | 2,321 | 2,530 | 804 |
2007年2月 | 72,803 | 1,312 | 1,651 | 577 |
2006年2月 | 66,690 | 1,308 | 1,574 | 753 |
2005年2月 | 58,165 | 745 | 985 | 414 |
2004年2月 | 48,281 | 1,084 | 1,283 | 607 |
2003年2月 | 39,144 | 1,095 | 1,215 | 577 |
2002年2月 | 33,274 | 868 | 982 | 253 |
2001年2月 | 28,192 | 718 | 742 | 341 |
2000年2月 | 25,537 | 535 | 596 | 309 |
株式情報(10/9現在データ) |
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今回のポイント |
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会社の特色 |
関西基盤のドラッグストアチェーン、関西ではトップクラス
小商圏に立地する地域密着型のドラッグストアをチェーン展開する。当社は関西を中心に北陸や四国、関東にも店舗展開をしている。ドラッグストアを主力に、調剤薬局にも力を入れている。2012年8月15日現在、グループで323店舗(FC2店舗)を展開する。当社はこれまでM&Aを積極的に行っており、04年にドラッグエルフを買収(05年に吸収合併)、06年にはジェイドラッグ(12年2月にニッショードラッグに統合)、ニッショードラッグ(12年8月に吸収合併)を子会社化してきた。当社は関西を基盤に成長、6,000~8,000世帯の小商圏でドミナント(立地上の強み)を築こうと力を入れ、関西では業界トップクラスとなっている。キリン堂と旧ニッショードラッグの店舗の違いは、キリン堂が売場面積300坪の郊外大型店(スーパードラッグストアと名付けている)を主力としているのに対し、旧ニッショードラッグは売場面積150坪の比較的小型な店舗を住宅地に展開している点だ。さらに旧ニッショードラッグは当社に比べ、雑貨等の売上構成比が高く、医薬品、健康食品、化粧品という粗利率の高い部門のウエイトが相対的に低い。そのため旧ニッショードラッグにおいても、医薬品、健康食品、化粧品部門の拡販に力を入れており、営業施策の徹底や経営資源の再配置等による効率化を図るため、本年8月16日付でキリン堂へ経営統合した。 健美舎は1973年に設立され、健康食品の企画・開発を手がけてきた。現在は主に、当社のPB商品となる健康食品や化粧品等の企画・開発を手がけ、生産は外部にアウトソーシング(OEM)している。 寺西会長のリーダーシップで「顧客第一」への仕組み作りにシフトし、新社長へバトンタッチ
ドラッグストアの事業展開において、4年前までは売上志向の拡大戦略をとってきた。売上拡大のための商品戦略や売場戦略を強めすぎたため、顧客への本来のサービスという点では課題が蓄積した。さらにこの間、市場は変化し、ドラッグストア業界は成熟色を強めていった。顧客第一の質的サービスを基本とする当社にとって、創業者である寺西忠幸会長は売上拡大だけではこの局面を乗り切れないと判断し、以来事業の見直しに力を入れた。その効果が表れ、業績は回復、2012年5月に長男である寺西豊彦氏(54歳)へ社長を再びバトンタッチした。
未病、セルフメディケーションへのサービスを目指し、「楽・美・健・快」を追求
当社は創業以来、人々が「未病」、つまり病気にならないように早めにサポートすることを経営理念としてきた。一人ひとり自らが健康に配慮して適切な対応をするというセルフメディケーションのためのサービスを心がけてきた。それによって、生活を楽しく美しく健康で快適に過ごせるようにと「楽・美・健・快」を事業の基本としている。未病(病気になる前の状態でいろいろ手を打つこと)と小商圏がキーワードである。その中で、単に規模を追及した成長志向ではない経営を目指そうとしている。それには社員の意識改革が必要であり、そのための社員教育に力を入れている。例えば、店頭での「ありがとう、助かったわ」という感謝の言葉が、社員の意識を変え、そこから新しい社会的価値が生まれる、と強調している。ビジネスモデル(企業価値創造の仕組み)を抜本的に変えようという試みである。 M&Aにも積極的
当社はこれまでM&Aを積極的に行ってきたが、現状では一人当たり売上高という生産性指標でみると、やや人員が多い。これに対し、寺西会長は人員を意図的に削減するのではなく、人を活用して拡大均衡にもっていこうとしてきた。一方、関西地域での競合をみると、従来は当社グループが他社を引き離してトップであったが、2010年10月にアライドハーツ・ホールディングス(以下、アライド)が、ココカラファイングループに入った。共同持株会社であるココカラファインに属する旧アライドとセガミメディクスを合計すると当社グループに肉薄しており、現在、関西では、当社グループとココカラファインを中心としたトップ争いになっている。 市場成熟、業界再編の中で構造改革を推進
トップマネジメントは、いかにお客様と向き合いサービス向上に努めるか、ということに力を入れており、そのための構造改革に取り組んでいる。さらにここ数年、顧客第一主義を徹底するため、主体性・当事者意識をもった従業員を育てる社内教育を行っている。構造改革では、店舗内の無駄な作業種類や量を削減し、その時間を顧客への接客や説明に対応できるように作業改善を行うため、売場改装を進めている。この店舗作業改善をバックアップするのが新物流センターと、前期から導入が始まった需要予測型の自動発注システムだ。自動発注システムも1個売れたら1個発注するのではなく、予想販売数量を一括で発注することで補充頻度が下がるため、作業効率の改善が期待される。 現在、当社は小商圏に合った店作りで、顧客に繰り返し来店してもらえるような仕組み作りを徹底しようとしている。売上も大事だが、それ以上にビジネスの仕組みを顧客に向け、付加価値を高めるようにした。それが進展をみせ、売上、利益の落ち込みにも歯止めがかかり、前2012年2月期の連結業績は大きく上向いた。 地域コミュニティの中核として存在感を高める
当社グループの展開地域は、大阪と兵庫を中心に関西圏に拡がっている。販売管理費の配賦の仕方にもよるが、粗利率の高い商品部門の売上構成ウエイトを高めることで、営業利益段階での利益貢献が大きくなると考えてよい。また、大阪府高槻市に新しく物流センターを開設し、2011年1月より本格稼動を始めている。従来の物流センターは配送センター的な役割だけで、十分な在庫管理機能を持っていなかったが、新センターは店舗の棚ごとの納品を可能にし、返品や回収にも対応できる。これによって、小商圏での店舗効率が大きく高まることになる。
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中期3ヵ年計画 |
カウンセリングを強みとしつつ、地域医療との連携強化を図る
寺西社長は、最近の経営環境について、今は店を作っただけでは売上は十分に伸びない、と認識している。人を育て、人との関係性の中で事業の深掘りをしていく。商品とともに、現場のスタッフが主体的に活動するサービスを提供していく。これが実現できないと、規模に負けてしまう、と考えている。実際、ヘルス&ビューティは単なる規模ではなく、顧客に対するカウンセリングが活きる売場である、という。中期3ヵ年計画は毎年ローリングしていくが、基本方針に変化はない。顧客第一主義の店作り、収益性の改善、中長期の成長に向けた取り組みである。とりわけ、カウンセリング販売の仕組み作り、PB商品の開発、調剤関連の売上拡大に力を入れていく。 前2012年2月期(連結)の売上高経常利益率は1.9%であったが、3年後の2015年2月期には3.0%を目指している。2015年2月期(連結)で、売上高1,165億円、経常利益35億円、当期純利益12億円が目標である。出店も自社出店で年間10店舗以上を目指してしる。 トップマネジメントは、今後の経営方針として次のような基本観を持っている。ドラッグストアのM&Aを行ってきたが、人員は減らさずに新しい事業で吸収することを考えてきた。これからもそうである。調剤薬局を手がけつつ、在宅介護ビジネスに入っていくには薬剤師をもっと鍛える必要がある。基本は6,000世帯くらいの小商圏に調剤薬局を併設したドラッグストアを展開し、顧客に繰り返し来店していただけるような仕組みをつくり固定客化を図っていく。 一方で、子会社のソシオンヘルスケアマネージメント(以下、ソシオン)を活用する。ソシオンは在宅医療に特化したコンサルを本業としている。国の方針は医療費抑制の観点から療養病床を減らそうとしている。病気の治療は病院で行うが、療養は自宅で行ってもらい、それをサポートする仕組みを作っていくという方向である。リハビリのデイケアも必要であり、在宅支援を行うための「かかりつけ薬局」も必要である。こうした分野で、当社が得意とするところをビジネスにしていく。 ドラッグストアでは、セルフサービスを強化しつつ、未病に対してはカウンセリングに力を入れていく。未病とは、病気ではないけれどもすっきりと健康でもない状態をいう。ここに的確なカウンセリングをして、顧客の信頼を得ていこうと考えている。顧客に繰り返し来店していただけるような販促にも力を入れていく。そのためには、店舗作業の改革を行う構造改革が必要であり、人材への専門教育が必須である。 ドラッグストアという物販から顧客サービスを行うだけではなく、ドクターの視点から病院の困っていることもサポートする。同時に、未病で悩んでいる顧客にサービスを提供するという観点から事業を再構築しようとしている。 小商圏のコミュニティがターゲット
当社のトップマネジメントは日本の小売業は抜本的に変わる必要があり、ドラッグストア業界も今までの延長線では経営が続かない、と考えている。小商圏のコミュニティに店舗が根付き、顧客に繰り返し来店していただけるような仕組みを一段と強化する必要がある、と強く意識している。6,000世帯の人々に安心した生活を提供しようというのが基本である。小商圏でのドミナントを形成し、高齢化に対応して地域医療にも適応したサービスの仕組み作りを進めようとしている。厚生労働省の発表によると、がん患者(年152万人)に対し、認知症などの精神疾患患者は325万人に上るとされる。今後、在宅介護がますます必要になってくるだろう。関西でのドミナントを進め、子会社であるソシオンと協働で、医療モール併設型調剤薬局の開設や在宅介護支援を推進し、地域医療に貢献できる企業グループを目指そうとしている。
連結経常利益35億円、店舗数355店舗を目指す
期初に発表した中期3ヵ年計画(連結)では、前期の経常利益19億円に対して、今期22億円、2年目29億円、3年目35億円を目標としている。そのための施策の基本は、既存の事業で収益を上げていくことである。新たな布石としては、ソシオンとの協働による医療モール併設型調剤薬局や大型調剤薬局の開設、在宅介護支援などが注目される。中期3ヵ年計画(連結)では、新規自社出店を1年目11店舗、2年目12店舗、3年目17店舗を予定し、3年後には355店舗となる見通しである。この間、全社的に販管費を削減し、さらに粗利率の向上による経常利益の拡大に結び付けようとしている。 当社グループは毎年3ヵ年の中期計画をローリングしてきた。09年度の時には2015年で売上高2,000億円、店舗数500店舗、売上高経常利益率3%という大きな計画を打ち出していたが、2010年度にはこうした中期計画を一旦取り下げた。 従来の売上拡大志向の事業展開ではなく、効率を高めるための内部固めに入ったのである。出店すれば売れるという考えではなく、地域で信頼される店舗作りにシフトする必要があった。チラシで安さを訴求するのではなく、接客の時間をいかに作っていくかに仕組みを変えようとしている。 調剤薬局の処方せん取扱い店舗は、323店舗中54店舗である。既存店舗は調剤スペースを有しているので、クリニックの開業状況を見ながら、処方せん取扱い店舗数を増やしていく方針である。中期3ヵ年計画(連結)では、調剤売上高を現在の68億円から100億円にすることを目標としている。 また、当社グループのPB商品のウエイトは現在商品売上高(小売事業)の8.9%であるが、これを10%にまでもっていきたいと会社側では考えている。健康食品、化粧品、雑貨などでマーケティングを強化していく。 マツモトキヨシHDと連携、PB商品を強化
当社は前期から、ドラッグストア業界最大手のマツモトキヨシHDとPB商品の開発で連携を図っている。資本提携や業務提携という強いものではない。当社の強みである健康食品をはじめ、PB商品の企画で顧客志向のものを量産できれば、コストを下げることができ、収益性は高まる。ここを狙っている。まずは互いにメリットのあるビジネスで一定の成果を上げることが先決で、そこがうまくいけば次の展開にも拡がってこよう。マツモトキヨシHDとはPB商品の相互供給、共同開発を行うことで合意している。店舗の立地が両社でさほど競合せず、PB商品のバッティングも少ない。そこでまず既存のPB商品をやりとりして、その後に共同開発に入る考えである。PB商品を共同で開発し、生産効果を出し、コストを下げて、顧客に提供しようとしている。300店舗規模(当社グループ)と、1,200店舗規模(マツモトキヨシHD)ではボリュームが違うからである。 マツモトキヨシHDとの連携は単純な規模の追求ではない
社会が少子高齢化に向かう中で、小売業はより地域密着型であることが求められる。地域密着型における各々の良さを追求していくことになる。成長というコンセプトではなく、改革の推進である。単なるボリュームの追求ではなく、新しい商品開発に力を入れていく。そこで互いの強みを活かすことができれば意義は大きいと考えている。
中国での店舗展開は慎重ながら、一歩前進
現在の中国において外資系企業が医薬品販売許可を取得するのは困難である。よって、中国でのドラッグストア展開は慎重を期す必要があることから、まずは、2012年1月に設立した子会社「麒麟堂美健国際貿易(上海)有限公司」を通じて、日用雑貨の輸出入に力を入れてきた。さらに、中国でのドラッグストア展開には、問屋機能が発達していないので、商品の調達に工夫も必要である。こうした中で、本年9月、江蘇省常州市に現地法人「忠幸麒麟堂(常州)商貿有限公司」(資本金1億円)を設立した。常州市は、上海から車で2時間、新幹線で40分のところにある。常州市(人口360万人)に拠点を作って、江蘇省(人口7,900万人)を軸にドラックストアの店舗展開を進めていく方針である。市のバックアップもあり、年内には1号店を出店する予定だ。 中国では、15元(約187円)ストアが伸びている。日本でいえば、100円ショップの価格帯イメージである。中国のドラッグストアには、日本製品に加え、この手の商品も入れていく。まだ、医薬品の販売はできないが、化粧品、ベビー用品、日用品の中で、比較的粗利の高いものをミックスして、ドラッグストアとして攻めていく方針である。まずは単店ベースで黒字化を目指し、その上で多店舗化を進める。いずれ中国国内だけでなく、ここでのノウハウを培って、他のアジア地域へも展開していきたいと考えている。 在宅支援で独自展開、ソシオンとの協業を活かす
2010年8月、ソシオンヘルスケアマネージメント(以下、ソシオン)を子会社化した。6,000~8,000世帯の小商圏に店舗を出すことによって地域密着型のドラッグストアチェーンを成立させると同時に、ソシオンと共に、両社のノウハウを最大限に活かし、医療モールや在宅支援で地域コミュニティの中核になろうとしている。ソシオンは医療機関や介護施設との結びつきが強く、さまざまなコンサルティング事業を手がけてきた。ソシオンは、在宅医療サポートを手がけおり、関東で400人、関西で1,800人をサポートしている。
新たな医療モールで先行
2011年10月、奈良県あやめ池に医療モール「メディカルコートあやめ池」がオープンした。「メディカルコートあやめ池」は、近鉄グループの駅前環境創造プロジェクト「近鉄あやめ池住宅地」の中枢を担う、医療・健康・福祉ゾーンの一画に誕生した医療モールである。医療モールには5つの診療所が開業し、当社は調剤薬局「北あやめ池店」を開局した。本年9月、近鉄あやめ池遊園地跡地に有料老人ホームが完成しており、当社は医療機関と連携し、在宅医療サービスの提供を開始している。このほか現在、複数の医療モール案件を有しており、今後も医療モール併設型調剤薬局をオープンする予定だ。また、本年8月に開院した新百合ヶ丘総合病院の門前に、大型調剤薬局と調剤併設型ドラッグストアの2店舗を開局した。新百合ヶ丘総合病院は、377床の入院施設をもつ地域医療の基幹病院である。当社も地域医療に貢献すべく、当社初の24時間調剤を行うなど、新たな取り組みを行っている。 医療モール案件、大型病院門前の大型薬局案件、いずれも当社の子会社となったソシオンがオルガナイズしているものである。 差別化になる医療ネットワーク作り
こうした医療モールを手がけたいという企業は多いが、ドクターとの結びつきが強くないと中身の充実した施設(モール)とはならない。ソシオンはこの分野で独自のノウハウを有しており、強みを発揮している。こうしたモールができれば、調剤薬局が必要になり、日用生活必需品を取り扱うドラッグストアが担う役割も大きい。ソシオンと共に、在宅医療のネットワークを強化する。地域住民、患者とドクター、介護施設、調剤薬局を結び付けて、かかりつけの新しい仕組みを作ろうとしている。こうした試みが上手くいくと、当社の差別化戦略としては重大な意味をもってこよう。ソシオンは医療機関や患者の目線でサービスを提供することを考える。薬局、薬剤師とドクターを結び付けるのはもちろんだが、施設在宅も考える。施設とドクターを結びつけ、多面的な展開でサービスの質と効率を高め、ビジネスとして成立させることを考えている。ビジネスとして成り立たなければ、在宅医療といっても掛け声だけになってしまう。京都での介護付有料老人ホームでは、認知症の入居者への対応も考慮する。つまりその方々の物販に対するニーズに応えるということだ。在宅患者、施設サービス、ホームドクター、基幹病院、薬局薬剤師がうまく連携できるシステム作りが求められ、ソシオンはこれを担っていく。このシステム化ができると当社にとって、明確な差別化戦略となる。 介護事業はリハビリ型
ソシオンは、在宅支援に力を入れている。一般に病院の医師が在宅医療を行うには、今の仕組みのままでは大きな負担がかかると考えるからである。そこで、新しい仕組みを作って、在宅支援サービスを本格的に普及させようと計画し、推進している。例えば、介護への参入では、機能訓練に軸足を置いた事業にも取り組もうとしている。病院では緊急を要する急性期治療に重点が置かれており、何らかの機能回復を必要とする人は、デイサービスのサポートを求めるが、その役割を担う施設は少ない。 そこで、本年9月、機能訓練特化型デイサービスを行う高齢者向け運動施設(アルバシニアフィットネス代々木上原)を東京の渋谷に開設した。このビジネスモデルが成り立つかどうかを需要の多い東京で実験して、それが上手くいけばキリン堂の本拠地である関西で展開するという方向である。 |
当面の業績 |
2年前に業績は底入れ
過去の業績をみると、2008年2月期の経常利益2,530百万円をピークに、売上は伸び悩み、経常利益はダウントレンドにあった。2年前から構造改革に取り組み、売上志向ではなく、サービス向上にシフトしてきたが、収益面では必ずしもプラスに働かなかった。しかし、2011年2月期は、減収ながら経常利益は横ばいをキープし、業績は底入れする局面に入った。
前2012年2月期の連結営業利益は大きく好転
前2012年2月期(連結)は、売上高102,229百万円(前年度比+1.8%)、営業利益1,684百万円(同+50.5%)、経常利益1,960百万円(同+27.5%)、当期純利益184百万円(同△2.0%)となった。営業利益が大幅に改善したのは、粗利率の向上が寄与したからである。春先の花粉症関連商品の販売増や、震災の影響による生活必需品の需要増に加え、調剤部門や健康食品部門が好調であった。また、2010年8月に子会化したソシオンも粗利率改善に寄与した。経常利益に比べて、当期純利益が少ない要因は、資産除去債務費用△590百万円を含めて、特別損失が△755百万円ほど発生したことによる。資産除去債務は会計ルールの変更に伴い、店舗などの資産を除去する時に要する費用を見積もるもので、一時的に大きく発生する。 2013年2月期(2Q累計)は減益となる
2013年2月期(2Q累計)は、売上高51,126百万円(前年同期比△0.8%)、営業利益668百万円(同△14.8%)、経常利益847百万円(同△13.1%)、四半期純利益531百万円(前年同期31百万円)となった。営業利益、経常利益、四半期純利益で計画は達成したが、前年同期比では減収減益となった。前年同期は大震災の特需(一時的な需要増)があったこと、今期は花粉が少なかったことにより花粉症関連商品が減少したことが響いた。上期は、ドラッグストアで7店舗(大阪2店舗、兵庫2店舗、滋賀1店舗、神奈川2店舗)、調剤薬局では兵庫の大賀薬局3店舗を譲り受けた。一方、2店舗閉鎖したので、店舗数は8月15日現在で7店店舗増の323店舗(うち、処方せん取扱店舗は54店舗)となった。 商品部門別では、化粧品のライトカウンセリングが効果を上げ、調剤の1店当たり処方箋枚数も、1,296枚(同+72枚)と増えている。小売事業の粗利率は、採算の良い医薬品のウエイトがダウンしたのでやや低下したが、人件費、物流費、家賃の引き下げによる施設費の削減等により、販管費が前年同期に比べ削減されたこともあり、かなりカバーした。 2013年2月期(連結)も増益を目指す
2013年2月期(連結)の新規出店は11店舗(上期7店実施、下期4店舗)を予定している。業績は売上高105,300百万円(前期比+3.0%)、営業利益1,880百万円(同+11.6%)、経常利益2,210百万円(同+12.7%)、当期純利益760百万円(同+311.3%)の見通しだ。特別損失を700百万円ほど見込んでいるが、うち減損を600百万円と保守的に見積もっている。
特別損失は前期で一巡へ
2010年2月期(連結)は、会計ルールの変更に伴う、たな卸評価損の発生により当期純利益ベースで赤字となった。2011年2月期(連結)は店舗の減損のほか、退職給付改定損などが発生した。前2012年2月期(連結)は、店舗の資産除却債務が発生した。これらによって、表面の税引き利益は低く抑えられているが、キャッシュフローベースでは必ずしもマイナスとはなっていない。2013年2月期(連結)も減損など一定の特別損失を見込んでいるが、前期までで大きな影響は一巡しており、当期からはかなり正常に戻ってこよう。
財務体質の改善に注力
前2012年2月期(連結)は営業キャッシュ・フロー3,013百万円に対して、投資キャッシュ・フロー1,007百万円となり、フリーキャッシュフローが増え、現預金は1,030百万円増となった。前述の医療モール併設型調剤薬局「北あやめ池店」の開発は、ソシオンがオルガナイズしているが、当社が投じた資金は調剤薬局の開局資金だけである。つまり医療モールの開発で、当社に大きな投資負担が発生することはほとんどない。今後の事業展開は、営業キャッシュ・フローの範囲内に納めることを基本にしており、余裕資金が発生すれば、できるだけ借入金の返済に回していく計画である。 今期の重点施策は5点
寺西社長によると、小売事業の経営統合、既存店の活性化、調剤売上高の拡大などで、連結経常利益の目標を達成するという方針に変わりはない。2013年2月期の重点施策は次の5点である。
(1)小売事業部門の経営統合~キリン堂へ一本化
2012年2月16日付で、ジェイドラッグをニッショードラッグに統合した後、同年8月16日付で、ニッショードラッグをキリン堂に吸収合併した。2006年12月にニッショードラッグのM&A実施後、今回の経営の実質的統合まで5年かかっているが、その理由は、社員の価値観を1つにし、就業規則やその他規程などを統一するのに十分時間をかけたことと、経営統合に伴う税務面での対応でもデメリットが生じないようにしたためである。今後はこの経営統合を通し、キリン堂ブランドの浸透や人材活用の弾力化等により、一層の営業推進を図る方針である。
(2)ライトカウンセリング販売
既存店の活性化に向けた構造改革の推進では、セルフサービス売場の徹底により、健康と美容の相談ができるライトカウンセリング販売体制づくりに力を入れている。売場の改装は、過去2年で150店の実施実績であるが、当期は84店を計画しており、うち上期で42店の改装を実施した。2011年1月に本格稼働した新物流センターの活用、需要予測を自動発注システムの導入(前期115店導入済み)などによって、顧客に合ったセルフサービスで時間の余裕を作り、その時間をカウンセリング販売に当てるという考えである。カウンセリングに力を入れるという当社の方針は着実に浸透しつつある。キリン堂の近くに同業他社が進出してくると食品などの売上げには影響が出る場合もあるが、当社の強みは効果を上げている。
(3)来店回数の増加による顧客の固定化
顧客をいかに引き付けるか。このカスタマー・リテンション(顧客の保持)に向けCRMを利用した固定客作りに力を入れている。リピート客の来店回数を増やすようにDMやクーポンなどを活用するほか、チラシの内容や配布エリアを見直しながら新規顧客の獲得も目指している。 上期が減益の原因は、来店客数が足りなく、売上高が未達となったためである。客単価は上昇(1顧客当たりの買上げ点数、1点当たりの単価も上昇)しており、ポイントカード会員も着実に増えている。とすると、既存顧客を中心に来店頻度をいかに上げていくかが課題である。そのために、①EDLP商品の見直しと売価強化を行い、②重点商品の接客販売に力を入れ、③PB商品の新規投入と値入率の改善を図っていく。例えば、上期マイナス幅の大きかった育児用品部門のベビー用おむつに手を打つ。PB商品では、プレミアムPBに力を入れる、という具合である。顧客の囲い込みという点ではヘルス&ビューティに重点を置いていく。また、CRMを活用して、効率的な値引きで顧客を引き付けていく考えである。 (4)PB商品の販売強化による粗利率の向上
前2012年2月期(小売事業)はPB商品の粗利率が39.4%と1.7%ほど改善している。PB商品は小売事業売上高の8.9%を占めているが、これを一段と上げていく。キリン堂とマツモトキヨシHDとのPB商品の相互供品についても、マツモトキヨシHDから80アイテム導入、キリン堂から21アイテム(健康食品中心)供給というように次第に交流が広がっている。
(5)大型調剤薬局の開設
処方せん取扱い店舗54店舗のうち、ドラッグストアとの併設は34店で、20店は独立店舗である。既存のドラッグストアに調剤薬局を出す余地はかなりあるので、状況を見ながら判断していく。また、ソシオンとの連携で、神奈川県川崎市の新百合ヶ丘に大型調剤薬局と調剤併設型ドラッグストアの2店舗を出店した。新百合ヶ丘総合病院は、日本でも先端の病院経営システムが確立されている模様。この他にも、上期に大賀薬局から3店の調剤薬局を譲り受けている。在宅支援への取り組みでは、訪問服薬指導を行う薬局が既に10店になっている。この中期3ヵ年計画では調剤薬局の連結売上高100億円を目指しており、今期は前期比+8.4%の74億円を計画している。
安定配当志向・・・配当額重視
当社は、配当性向よりも配当額を重視して安定配当を行う方針である。多少業績が変動しても、配当額は安定して確保したいという考えである。過去を見ると、配当額は少しずつ増えてきており、直近3ヵ年は1株当たり年間20円の配当を実施、今期も年間20円を予定している。これで株主に還元していく方向にある。
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