ブリッジレポート
(9616) 株式会社共立メンテナンス

プライム

ブリッジレポート:(9616)共立メンテナンス vol.34

(9616:東証1部) 共立メンテナンス 企業HP
石塚 晴久 会長
石塚 晴久 会長
佐藤 充孝 社長
佐藤 充孝 社長
【ブリッジレポート vol.34】2013年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「上期は寮事業が減収・減益となったが、3月早期入寮の影響を考慮すると実質的には増収・増益。安定収益源としての同事業の位置付けに変わり・・・」続きは本文をご覧ください。
2012年12月25日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社共立メンテナンス
会長
石塚 晴久
社長
佐藤 充孝
所在地
東京都千代田区外神田 2-18-8
決算期
3月
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年3月 91,170 6,017 4,602 2,376
2011年3月 84,983 4,610 3,308 1,052
2010年3月 84,513 4,033 3,012 1,254
2009年3月 82,303 5,349 4,510 2,133
2008年3月 75,606 4,492 4,167 2,740
2007年3月 66,287 3,745 3,787 2,413
2006年3月 63,084 4,611 4,823 2,010
2005年3月 58,014 4,407 4,411 2,343
2004年3月 54,080 4,004 4,059 2,137
2003年3月 50,108 4,148 3,884 2,039
2002年3月 50,064 3,908 3,580 1,821
2001年3月 37,884 2,827 2,643 1,146
2000年3月 36,787 2,368 2,281 906
株式情報(12/12現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,750円 14,111,508株 24,695百万円 7.7% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
38.00円 2.2% 169.36円 10.3倍 2,334.22円 0.7倍
※株価は12/12終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
共立メンテナンスの2013年3月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
"ライフステージにおける様々な場面での「食」と「住」さらに「癒し」のサービスを通じて、広く社会の発展に寄与する"と言う経営方針の下、「現代版下宿屋」(食事付きの寮の運営)を中心にした寮事業、「温泉感覚を取り入れた大浴場」と「美味しい朝食」といった寮事業のノウハウを活かしたホスピタリティ重視のビジネスホテルや「リーズナブルで質の高いリゾートライフ空間の創造と提供」をテーマに掲げたリゾートホテルのホテル事業、オフィス(事務所)・レジデンス(住居)のビルメンテナンス、ビル賃貸及び賃貸代行、駐車場運営等の総合ビルマネジメント事業、外食やレストラン運営受託のフーズ事業等を展開。知名度と実績で他社を凌駕する主力の寮事業を安定収益源とし、ホテル事業の育成により成長を加速している。
グループは、同社の他、連結子会社7社、非連結子会社3社、持分法を適用していない非連結子会社及び関連会社6社。
事業の種類別セグメントと売上構成(12/3期)は次の通りである。
 
 
【沿革】
設立は1979年9月。食の世界に長く携わった創業者 石塚晴久氏が調理人として企業の給食施設の運営受託を開始した。翌80年には千葉県佐倉市に、木造2階建て(四畳半が28室)の民間学生寮「学生会館」第一号棟が誕生。「食」を第一として、「学生の健康と元気こそが親の安心」との考えのもと、提携先の学校名を冠した学生会館事業を展開。東京・神奈川地区、名古屋地区、大阪地区へとエリアを拡大した。85年4月には、「一室から借りる事ができ、朝夕2食付き」を特徴とし、ゆっくり身体を癒せる「大浴場」も重視した社員寮事業を開始。87年5月には、学生寮、社会人寮、給食施設等の受託事業で培った「賄いのノウハウ」を活かし外食事業に展開。93年6月の現住所(東京都千代田)への本社移転を経て、同年7月に長野県でリゾートホテル事業に、8月に埼玉県でビジネスホテル事業に参入した。翌94年9月、現在のJASDAQ市場へ上場(店頭登録)、99年3月の東証二部上場を経て、01年9月に東証一部に指定替えとなった。
 
 
中期経営計画「Kyoritsu Value Up Plan !」
 
現在、中期経営計画「Kyoritsu Value Up Plan!」(12/3期~16/3期)が進行中である。同計画では、「寮事業の構造改革の仕上げと新たな成長戦略の遂行」、「収穫期入りしたホテル事業の収益拡大の加速」、「第三の柱となる新規事業の育成」、「人材育成と適正配置」を重点施策として掲げ、最終の16/3期に売上高1,377億円、営業利益110億円、経常利益89.5億円の達成を目指している。
 
 
目標達成に向け、(1)コア事業の成長加速と(2)新規事業の育成に取り組んでおり、(1)では「寮事業首都圏98プロジェクト」として最重要マーケットである首都圏の営業力を強化すると共に、個別クライアント(大学、企業)のニーズに応じたエリア開発にも力を入れている。また、ドーミーイン(ビジネスホテル)の海外展開も進めていく考え。(2)では、12/3期にPKP(Public Kyoritsu Partnership:自治体向け業務受託)事業を立ち上げた。
 
(1)コア事業の成長加速
①「寮事業首都圏98プロジェクト」
「寮事業首都圏98プロジェクト」とは、エリア別の定員数のシェアが65%と最も高いものの、期初稼働率(13/3期95.6%)が最も低い首都圏の期初稼働率を98%に引上げようという取り組み。
 
 
期初稼働率引き上げに向け、学生寮では、期中対策として途中退寮の防止や講習・スクーリング等の受講者への営業を強化。期初に向けた対策として、女子学生向け及び推薦入学者・AO入試対象者向けのプロモーション強化や高校との関係強化に取り組んでいる。また、社員寮では、期中対策としてマンスリーキャンペーンの実施、期初に向けた対策としてドーミーイン(ビジネスホテル)事業部との連携による合同営業、業界大手企業OBの採用による人脈活用、提案営業の強化(自社寮保有企業や採用増企業等)、更には人気の高い池袋~渋谷間の営業強化等に取り組んでいる。
 
②ピンポイント開発
開発面では、個別クライアント(大学、企業)のニーズに応じたエリア開発、言い換えると、エリアを絞り込んだ戦略的開発(ピンポイント開発)に注力する。この一環として、情報間口を広げるべく、金融機関、不動産会社、商社、ゼネコンとの連携を強化しており、また、出口戦略としてセール&リースバックを活用した資産の流動化も進める。尚、11/3期にJ-REITに対して行なった物件売却がアナウンスメント効果を発揮し、その後、物件買取りの引合いが顕著に増加していると言う(11/3期に約140億円、12/3期に約48億円を実施)。
 
 
③ドーミーインの海外展開
成長機会の獲得に向け、海外事業にも取り組む考えだ。既にドーミーインの海外展開を進めており、第1弾として14年6月の開業を目指し韓国ソウル市江南区で「(仮称)Dormy Inn Premium Seoul Garosugil St.」の開業準備を進めている。物件の概要は次の通り。
 
住所     :韓国ソウル市江南区新沙洞(カンナムク シンサドン)
建築規模   :地下5階・地上20階建・285室
運営形態   :賃貸借方式(契約期間20年)
※ 2012年11月27日付で韓国共立メンテナンスを 賃借人とする賃貸借契約を締結済み。
 
立地特性
江南エリアを南北に走る大動脈「江南大路」より東へ向かう繁華街に位置する。地下鉄3号線「新沙」駅至近。ソウルを代表するトレンドスポット「カロスキル(街路樹通り)」まで徒歩1分と、ビジネスだけでなく観光ニーズの取り込みも期待されるエリアである。

(同社資料より)
 
(2)新規事業の育成
12/3期に新規事業としてPKP(Public Kyoritsu Partnership:自治体向け業務受託)事業を立ち上げた。この事業は地方自治体向けのアウトソーシング事業で行財政改革のコンサルから業務受託まで一貫して引き受ける。行政のノンコア事業部門を受託し、同社のノウハウを活用してコスト削減と地域の雇用の安定や住民サービスの向上を図る事で行財政改革に貢献する。初年度となった12/3期は、北海道・湧別町や和歌山県・日高川町での包括受託等、16の自治体と37件の受託契約を締結し、売上高9.1億円を計上した。13/3期は64自治体との間で104件の契約締結、売上高30.6億円を計画しており、既に約16億円分についての契約が確定している。
 
 
(3)数値目標
 
 
2013年3月期上期決算
 
 
ホテル事業をけん引役に前年同期比8.0%の増収、同18.5%の経常増益
売上高は前期比8.0%増の473億33百万円。3月入寮(契約金等が前の期に売上計上されてしまう)の増加等で寮事業の売上が前年同期並みにとどまったものの、新規事業所(ドーミーイン4棟、リゾート1棟)の寄与及び既存事業所の好調(稼働率・客数・客単価がそろって向上)でホテル事業の売上が同16.4%増と伸びた。営業利益は同8.8%増の36億53百万円。ビジネスホテル、リゾートホテル共に、客数及び単価が前年同期の実績を上回ったホテル事業の利益が同62.2%増加し、3月早期入寮の増加に伴う契約金等の減少や水道光熱費増加等による寮事業の利益の落ち込みをカバーした。有価証券売却益(63百万円)の計上や支払利息の減少(7億47百万→6億42百万円)等で営業外損益が改善した他、固定資産売却益が増加する一方、投資有価証券評価損(2億51百万円→1億98百万円)が減少する等で特別損益も改善し、四半期純利益は16億19百万円と同41.1%増加した。
 
期初予想との差異
売上高はほぼ期初予想通りの着地となったが、営業利益は期初予想を2億73百万円上回った。ホテル事業において、稼働率、単価が共に予想を上回ったビジネスホテルの利益が2億58百万円、稼働率が予想を上回ったリゾートホテルの利益が1億02百万円、それぞれ上振れ。賃借料の見直しが進んだ事で寮事業の利益も期初予想を93百万円上回った。一方、一部物件の売上が下期に移行したデベロップメント事業(△84百万円)や営業強化に伴い費用が増加したPKP事業(△1億09百万円)等の利益が下振れした。
 
 
寮事業 売上高199億89百万円(前年同期比0.4%減)、利益27億97百万円(同7.8%減)
高い期初稼働率(前年同期の95.3%を上回る96.5%)を背景に稼働室数が増加した事で限界利益が3億42百万円増加したものの、3月入寮増による学生入館費の期ズレ(本来新年度入り後の4月に計上される2億79百万円が前期3月に計上された)、大口留学生契約の減少(1億08百万円。契約の関係で1年毎に1億円強変動する)、水道光熱費の増加(1億09百万円)、更には販促費や外部用役費の増加(81百万円)等の影響をカバーできなかった。9月末現在の稼働契約数は前年同期末比779名増の29,481名。尚、減収・減益の要因となった3月入寮増による学生入館費の期ズレだが、期末の3月には来期入寮分の計上があるため通期業績への影響は軽微であり、寮事業は実質的には増収・増益。寮事業の好不調は期初稼働率で計る事ができ、来14/3期は部屋数が約1,200室増加する予定だが、足元の契約状況から97%程度の期初稼働率が見込まれている。
 
 
ホテル事業 売上高197億52百万円(前年同期比16.4%増)、利益20億65百万円(同62.2%増)
売上高の内訳は、ビジネスホテルが96億33百万円(同15.2%増)、リゾートホテルが101億19百万円(同17.3%増)。ドーミーイン4棟、リゾート1棟を新たにオープンした結果、事業所数はビジネスホテルが49棟・8,149室、リゾートホテルが19棟・1,964室。また、利益が前年同期に比べて7億92百万円増加したが、内訳は、レジャー需要の取り込みが進んだ首都圏事業所の好調等でビジネスホテル事業が4億15百万円の増益(既存事業所の収益改善3億51百万円、開業負担の減少等64百万円)、リゾートホテル事業が3億77百万円(既存事業所の収益改善3億93百万円、開業負担増等 △16百万円)。尚、同社は、サービス産業生産性協議会 2012年度JCSI(日本版顧客満足度指数)によるビジネスホテル部門で顧客満足度第1位を受賞した他、J.D.パワー アジア・パシフィックによる2012年日本ホテル宿泊客満足度調査SMの1泊9,000円未満部門においても宿泊客満足度ランキング 第1位を受賞した。
 
 
 
 
その他 売上高122億67百万円(前年同期比1.7%増)、損失2億89百万円(前年同期は1億27百万円の損失)
食堂・給食受託部門の収益改善でフーズ事業が増収・損失減、ビル賃貸部門の大口解約で総合ビルマネジメント事業が増収ながら損益悪化(利益→損失)、開発物件の売上計上が下期に移行したデベロップメント事業が減収・損益悪化(利益→損失)。PKP事業は増収ながら先行投資で損失が増加した。
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
 
 
上期末の総資産は前期末比62億72百万円減の1,193億77百万円。前期末の現預金には入寮者から受領した年間管理費の前受金が含まれている。上期末は、積み上がった現預金の有利子負債約定返済への充当と経常運転資金への充当により、現預金、前受金、有利子負債が減少。また、有形固定資産の一部売却も実施。
CFの面では、税金費用が増加したものの(9億45百万円→15億41百万円)、利益の増加とたな卸資産を中心にした運転資金の減少等で営業CFのマイナス幅が縮小したが、有形固定資産の売却減少と敷金保証金の差入による支出増で投資CFのマイナス幅は拡大した(12/3期上期の財務CFのマイナス幅が大きいのは社債の償還による)。
上期の設備投資は14億92百万円(前年同期25億65百万円)、減価償却費は14億62百万円(同16億69百万円)。通期で約60億円の不動産流動化を予定している(11/3期約140億円、12/3期約48億円)。
 
 
※ 格付の引き上げ
12年10月23日に、(株)日本格付研究所(以下、JCR)が(株)共立メンテナンスの長期発行体格付を「BBB-」から「BBB」に引き上げた。長期発行体格付の引き上げのポイントは次の3点。
 
①主力の寮事業は、収益の安定性が今後も維持されていく見通しであること(主力の寮事業の安定した収益力)。
②ホテル事業は、集客強化とともにコストコントロールなどマネジメント強化の効果が表れており、収益源として確立したといえること(ホテル事業の収益基盤の確立)。
③寮及びホテルの新設投資は継続的に行われているものの、従前よりも財務バランスを考慮しつつ実施されており、その効果も顕現していること(財務バランスの改善)。
 
 
 
2013年3月期業績予想
 
 
通期業績予想に変更は無く、前期比9.7%の増収、同5.4%の経常増益
売上高は前期比9.7%増の1,000億円。新規開業事業所の寄与等で寮事業及びホテル事業の売上が増加する他、PKP事業を中心にその他の事業の売上も伸びる。ただ、利益面では、値上げ等による水道光熱費の増加、共立メンテナンスのブランド確立に向けた戦略的な広告宣伝費の投下、システムの償却費増、更には障がい者雇用を目的とした特例子会社の設立に伴う業務委託費用等を織り込んだ結果、営業利益が同1.9%の増加にとどまる見込み。また、上期の営業利益が2億73百万円期初予想を上回ったが、この上振れ分を活用してホテル事業のリニューアルを前倒しで行う考え(ビジネスホテルで約2億円、リゾートホテルで約1億円)。設備投資は36億90百万円(前期39億57百万円)を計画しており、減価償却費は35億69百万円(同34億29百万円)を織り込んだ。
 
 
 
ほぼ中期経営計画に沿った進捗となっている。寮事業の見込みが計画を下回るのはスクラップ&ビルドを進めているため。リゾートは経済環境を踏まえて、既存事業所のブラッシュアップを優先している。また、許認可や規制の関係でシニアも計画を下回る見込み。
 
 
今後の注目点
上期は寮事業が減収・減益となったが、3月早期入寮の影響を考慮すると実質的には増収・増益。安定収益源としての同事業の位置付けに変わりはない。収益が厳しい時期もあったホテル事業も、顧客満足度の向上と生産性改善に向けた取り組みが成果をあげ収益基盤が確立されてきた。これらは、財務体質の改善と共に格付機関も認めるところだが、その一方で、PKP(Public Kyoritsu Partnership:自治体向け業務受託)事業やドーミーインの海外展開と言った新たな試みにも取り組んでおり、現在、同社は「主力事業が順調に拡大する中で、健全な赤字部門を有する」と言う好循環の中にある。13/3期は7期ぶりの経常最高益更新が見込まれるが、現在進行中の中期経営計画の最終目標を達成できれば、16/3期の当期純利益は13/3期予想比でほぼ倍増する見込みであり、中期経営計画の進捗が注目される。
余談になるが、同社はメディア協賛企業として、来13年の“関東大学対抗「箱根駅伝」”を支援する事となった。“関東大学対抗「箱根駅伝」”は、東京・大手町の読売新聞社前から箱根までの往路(1月2日)と復路(1月3日)を、前年の上位入賞校と予選を勝ち抜いた関東の大学が襷(たすき)をつないで競うもので、新年の国民的行事の一つとも言える。テレビで生中継されるが、メディア協賛企業に名を連ねた事で、「ヒューマンメンテナンス」をコンセプトにした同社のTVCMも流れる予定だ。13/3期の下期業績は、上期に比べて利益率が低下する見込みだが、こうした共立メンテナンスのブランド確立に向けた戦略的な広告宣伝費(1.8億円)が織り込まれている事もその一因である。
尚、少子化が叫ばれる中でも4年制大学の入学者数と進学率は年々増加・上昇しており、同社は06年以降、新規提携先として4年制大学の開拓に注力している(期初の学生寮契約構成比で見ると、06/3期には29.6%だった4年制大学の構成比が13/3期には52.0%に上昇した)。“関東大学対抗「箱根駅伝」”の支援は、今後の4年制大学の新規開拓にもつながる可能性がある。