ブリッジレポート
(4319) TAC株式会社

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ブリッジレポート:(4319)TAC vol.8

(4319:東証1部) TAC 企業HP
斎藤 博明 社長
斎藤 博明 社長

【ブリッジレポート vol.8】2013年3月期第3四半期業績レポート
取材概要「平成24年度公認会計士試験は、合格率が7.5%(前年は6.5%)とやや上昇したものの、願書提出者数が17,894人と前年比22.7%減少した事で・・・」続きは本文をご覧ください。
2013年2月26日掲載
企業基本情報
企業名
TAC株式会社
社長
斎藤 博明
所在地
東京都千代田区三崎町3-2-18
決算期
3月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年3月 22,578 -606 -530 -799
2011年3月 24,575 465 283 -244
2010年3月 23,991 623 442 40
2009年3月 21,092 1,330 1,352 669
2008年3月 20,741 1,069 1,230 443
2007年3月 20,553 1,173 1,333 742
2006年3月 19,828 421 631 249
2005年3月 19,669 459 558 81
2004年3月 19,542 988 943 470
株式情報(2/8現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
199円 18,234,832株 3,629百万円 - 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
0.00円 0.0% 36.12円 5.5倍 120.17円 1.7倍
※株価は2/8終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
TACの2013年3月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
「資格の学校TAC」として、資格取得スクールを全国展開。社会人や大学生を対象に、公認会計士、税理士、不動産鑑定士、社会保険労務士、司法試験、司法書士等の資格試験や公務員試験の受験指導を中心に、企業向けの研修事業や出版事業等も手掛ける。
 
グループは、同社の他、人材紹介・派遣事業の(株)TACプロフェッションバンク(TPB)、2008年2月に設立され保険関係の企業研修に特化した(株)LUAC、資格取得に関連した出版事業を手掛ける(株)早稲田経営出版(W出版)、TAC出版(単体)とW出版の営業支援を手がける(株)TACグループ出版販売、及び中国大連でBPO(Business Process Outsourcing)を手掛ける太科信息技術(大連)有限公司の連結子会社 5社。なお、W出版は09年9月に(株)KSS(旧・早稲田経営出版)から「Wセミナー」ブランドの資格取得支援事業及び出版事業を譲受した際、「Wセミナー」ブランドの出版事業を行うために吸収分割によって新たに設立された。このため、社名は同じだが、旧・早稲田経営出版とは別会社である。
 
【沿革】
1980年12月、資格試験の受験指導を目的として設立され、公認会計士講座、日商簿記検定講座、税理士試験講座を開講。2001年10月に株式を店頭登録。03年1月の東証2部上場を経て、04年3月に同1部に指定替えとなった。09年9月には司法試験、司法書士、弁理士、国家公務員Ⅰ種・外務専門職等の資格受験講座を展開していた(株)KSS(旧・早稲田経営出版)から資格取得支援事業及び出版事業を譲受。これにより、会計分野に強みを有する同社の資格講座に法律系講座が加わると共に、公務員試験のフルラインナップ化も進んだ。
 
 
 
2013年3月期第3四半期決算
 
売上高について
各講座の受講者は受講申込時に受講料全額を払い込む必要があり(同社では、前受金調整前売上高、あるいは現金ベース売上高と呼ぶ)、同社はこれをいったん「前受金」として貸借対照表・負債の部に計上する。その後、教育サービス提供期間に対応して、前受金が月毎に売上に振り替えられる(同社では、前受金調整後売上高、あるいは発生ベース売上高と呼ぶ)。損益計算書に計上される売上高は、「発生ベース売上高(前受金調整後売上高)」だが、その決算期間のサービスや商品の販売状況は現金ベース売上高(前受金調整前売上高)に反映され(現金収入を伴うためキャッシュ・フローの面では大きく異なるが、受注産業における受注高に似ている)、その後の売上高の先行指標となる。このため、同社では経営指標として現金ベース売上高(前受金調整前売上高)を重視している。
 
 
売上の減少が続くものの、コスト削減が進み損益が改善
多くの講座で受講の申込みが低調に推移しており、同社が経営指標として重視している現金ベース売上高が159億85百万円と前年同期比6.5%減少。前受金調整額も減少したため、発生ベース売上高は160億31百万円と同7.4%減少した。
 
一方、利益面では、夏季各種資格試験終了後の第2四半期後半以降、コスト削減策効果が顕在化、講師料や人件費を中心に売上原価が101億22百万円(同8.8%減)、人件費や広告費を中心に販管費が59億38百万円(同8.8%減)と、それぞれ抑制された。この結果、前年同期は2億56百万円の損失だった営業損益が44百万円の利益に転じた。保有有価証券の評価額回復に伴う投資有価証券運用益1億62百万円の計上(前年同期は9百万円の運用損)等で営業外損益も改善。事業構造改善費用3億58百万円を特別損失に計上したものの、新宿校の移転補償金17億50百万円及び訴訟和解金70百万円を特別利益に計上したため、四半期純利益は7億69百万円(前年同期は2億53百万円の四半期純損失)となった。
 
 
(2)現金ベース売上高からみた事業別動向
 
主力の個人教育事業は講座売上の低迷が続いたものの、コスト削減が進み損益が改善。法人研修事業はコンテンツ提供・提携校・委託訓練の落ち込みを企業研修及び大学内セミナーの増加でほぼ吸収した。この他、商品開発強化による刊行点数増加と販促強化で出版事業が前年同期と同水準の売上を確保。人材事業では監査法人業界の就職状況に好転の兆しがみられる等、会計業界の人材ニーズに底打ち感が出てきた。
 
個人教育事業
資格講座の申込みが低迷しており、現金ベース売上高が109億02百万円と前年同期比8.9%減少した。ただ、夏以降、拠点再編の本格化、講師契約の更改に伴う講師料の削減、教材制作のための外注費絞り込み等を強化した事で営業費用が113億68百万円と同8.9%減少。この結果、前年同期は5億05百万円の損失だった現金ベースのセグメント損失が4億65百万円に縮小した。
 
法人研修事業
法人研修事業は、企業研修、大学内セミナー、地方専門学校に対するコンテンツ提供、提携校事業、自治体からの委託訓練に分かれる。この第3四半期累計期間は、宅建研修(同28.7%増)やビジネススクール研修(同17.5%)など金融・不動産分野の好調で企業研修が同2.3%増加した他、公務員・公認会計士・宅建講座等を中心に大学内セミナーも好調に推移した。一方、専門学校に対するコンテンツ提供(同25.3%減)、提携校事業(同9.4%減)、委託訓練(同18.3%減)が落ち込んだ。この他、税務申告ソフト「魔法陣」事業は同6.1%の増収。この結果、法人研修事業の現金ベース売上高は同1.8%減の33億10百万円とほぼ前年同期と同水準を確保。コスト削減と売上構成の変化による利益率改善で現金ベースセグメント利益は9億24百万円と同24.8%増加した。
 
出版事業
当事業は、同社が展開する「TAC出版」ブランド及び子会社の(株)早稲田経営出版が展開する「Wセミナー」ブランド(以下、「W出版」という。)の2本立てで進めている。この第3四半期累計期間は、会計系資格の入口となる簿記検定受験者の開拓・啓発のための「無敵の簿記」シリーズの充実や、各資格試験における独学者ニーズの取込みのための「独学道場」シリーズの開発等に注力した結果、刊行点数がTAC出版(343点→350点)、W出版(108点→115点)共に増加。また、紀伊國屋書店とのタイアップによる「TAC資格祭り」フェアを開催する等、販促を強化し、資格書籍コーナーにおけるTACグループのプレゼンスの向上と顧客獲得基盤の確立に努めた。なお、TAC出版の売上は11億88百万円、連結調整前のW出版の売上は3億95百万円。
 
人材事業
当事業は現金ベース売上高と発生ベース売上高が一致する。この第3四半期累計期間は売上高が前年同期比8.6%増の3億36百万円、営業利益が同77.6%増の60百万円。監査法人業界の就職状況に好転の兆しがみられ、(株)TACプロフェッションバンクの手掛ける人材紹介の利用も増加傾向にある。
 
(3)分野別動向
 
全般に資格講座の申込みが低迷しているものの、地方上級を中心に国家一般・地方上級が好調を維持している他、ビジネススクール、宅建、証券アナリスト、ファイナンシャルプランナー等、金融・不動産分野で好調な講座が増えてきた。
 
財務・会計分野
発生ベース売上高は前年同期比21.6%減の29億89百万円、受講者数は同14.2%減の29,383人。初学者及び再受験者共に減少した公認会計士講座の売上が同28.7%減、日商簿記検定試験の受験者の継続的な減少(11年65.1万人→12年58.5万人、6.6万人減少)の影響を受け簿記検定講座の売上も同11.3%減少した。
 
経営・税務分野
発生ベース売上高は前年同期比7.1%減の36億12百万円、受講者数は同1.8%増の33,779人。講座別では、税理士が9.4%減、社会人からの人気が継続している中小企業診断士も合格者の増加で再受験者が減少し微減。なお、平成12年度の税理士試験受験申込者数は2年連続の6万人割れとなり(国税庁)、依然として漸減傾向が続いているが、同社の税理士講座においては、簿記論・財務諸表論の合格率がそれぞれ18.8%、20.7%と高かった事もあり、12月開講の受講者数が前年を上回った(1月の申込みは再受験者の減少等で前年を下回ったが)。
 
金融・不動産分野
発生ベース売上高は前年同期比1.7%増の19億49百万円、受講者数は同2.2%増の34,696人。不動産鑑定士やマンション管理が苦戦したものの、好調な講座が増えてきており、ビジネススクール(同17.2%増)、宅建(同9.6%増)、証券アナリスト(同6.2%増)、ファイナンシャルプランナー(同1.5%増)が増加した。また、開講時期の関係で発生ベース売上高にはほとんど寄与していないが、新たに受講者の募集を開始した建築士講座が現金ベース売上高を伸ばしている。
 
法律分野
発生ベース売上高は前年同期比6.6%減の17億23百万円、受講者数は同13.2%減の14,828人。司法試験講座(同33.4%減)は、受験・就職環境に好転の兆しが見えず、同社では体制の再構築も含め答練・オプション講座等の販売に注力している。この他、司法書士(同3.9%減)や行政書士(同6.8%減)が減少する一方、弁理士が同17.7%増と前年同期の実績を大きく上回った。また、通関士も売上規模は小さいものの好調。
 
公務員・労務分野
発生ベース売上高は前年同期比1.8%増の37億70百万円、受講者数は同5.2%増の38,317人。トップレベルの大学生が集まり人気が高まっている地方上級を中心に国家一般・地方上級が同3.8%増加した他、年金アドバイザー資格コースの投入や価格設定等の効果が現れた社会保険労務士や、一流大学の学生を中心に人気に陰りがみられる国家総合職・外務専門職も前年同期と同水準を維持した。
 
情報・国際分野
発生ベース売上高は前年同期比9.3%減の11億07百万円、受講者数は同11.0%増の17,742人。クラウド化の進展に伴うIT業界の案件の集約・減少や企業統合等の影響を受けた情報処理(同11.2%減)、米国公認会計士試験の日本受験が可能になり前年に伸びた反動があったUSCPA(同6.6%減)、及び米国コンピューティング技術産業協会のノンベンダー試験であるCompTIA(同3.6%減)等の売上が減少した。
 
その他
発生ベース売上高(現金ベース売上高と一致)は前年同期比5.0%減の8億77百万円。講座に帰属しないTACBOOK売上が同31.2%減と低迷した他、スクール受講者の減少で受付雑収入も同17.3%減少。一方、税務申告書作成ソフトの「魔法陣」事業(同6.1%増)や人材関連事業(同9.9%増)の売上が増加した。
 
 
第3四半期累計期間における受講者数は前年同期比1.2%減の168,745人。法人受講者が52,879人と同4.3%増加したものの、第2四半期までの流れを受け、個人受講者が115,866人と前年同期比3.6%減少した。講座別では、簿記検定(同13.9%減)、公認会計士(同16.4%減)、司法書士(同11.5%減)等が減少する一方、宅建(同18.5%増)、就職対策(同2.3倍)、公務員[国家総合職・外務専門職](同21.7%増)等が増加した。
 
 
第3四半期末の総資産は前期末比10億28百万円減の180億33百万円。借方では、新宿校の移転補償金にかかる未収入金が増加する一方、季節要因で受講料保全信託受益権(30億69百万円→14億12百万円。流動資産に含まれる)が、校舎の統廃合で差入保証金(49億29百万円→39億48百万円。投資その他)が、それぞれ減少。貸方では、純資産が増加する一方、有利子負債等が減少。財務の健全化が進んだ結果、自己資本比率は16.7%と同5.2ポイント改善した。
 
 
2013年3月期業績予想
 
(1)第4四半期(1-3月)及び通期業績予想
第4四半期予想は、現金ベース売上高59億66百万円(前年同期比27.9%増)、発生ベース売上高59億19百万円(同12.5%増)、営業損失2億20百万円(前年同期は3億50百万円の損失)。売上が下振れする可能性があるものの、損益面での見通しは保守的。季節要因として広告費等が増加するものの、事業構造の改善が進む見込み。 通期予想は、現金ベース売上高219億51百万円(前年同期比0.9%増)、発生ベース売上高219億51百万円(同2.8%減)、営業損失1億76百万円(前年同期は6億06百万円の損失)。
 
 
 
なお、同社の業績には季節性があるため、四半期の業績についてはその特性に注意する必要がある。具体的には、同社が扱う主な資格講座の本試験は、第2四半期(7-9月)及び第3四半期(10-12月)に集中している。特に主力の公認会計士及び税理士講座等においては、第2・第3四半期は試験が終了した直後で、翌年受験のための新規申し込みの時期にあたり、第4四半期(1月~3月)及び第1四半期(4月~6月)は全コースが出揃う時期にあたる。このため、第2・第3四半期は、現金売上や売掛金売上は多いものの、これらは前受金に振り替えられる(つまり損益計算書においては売上計上されない)。一方、経費は毎月一定額計上されるため売上総利益が減少する傾向がある。これに対して第4・第1四半期はこれらの前受金が各月に売上高に振り替えられる期になるため売上総利益が増加する傾向がある。
 
 
 
(2)トピックス    教員採用試験講座の開講
13年10月に関東圏を中心に教員採用試験講座を開講する。教員採用試験は、全国で17万人以上が受験する規模の大きい地方公務員試験であり、近年は受験者数、採用者数共に増加傾向にある(増加要因として、①教員の定年退職者が増加期に入ったこと、②国による教員定数加配措置や自治体独自の少人数学級編成が進んだこと、③受験年齢制限の引上げによる多様な人材の参入、更には④今なお続く民間企業の就職活動の困難さ等を挙げることができる)。
教員採用試験は毎年一定人数の受験が見込まれ、教育というわが国の発展を支える人材育成の根幹に係る裾野の広い市場である。同社では、競合他社の受講料単価を基に市場規模を約595億円と想定しており、10%程度の市場シェア確保を当面の目標としている。
 
 
今後の注目点
平成24年度公認会計士試験は、合格率が7.5%(前年は6.5%)とやや上昇したものの、願書提出者数が17,894人と前年比22.7%減少した事で合格者数は1,347人と同10.9%減少した。また、4大監査法人の採用数は1,000名弱(TACキャリアサポートセンター調べ)とされ、関東圏では採用需給がひっ迫してきていると言う。更に平成25年公認会計士短答式第Ⅰ回試験では、答案提出者数が7,850人と同42.2%減少する中、合格者数は1,071人と同30.6%増加。このため、答案提出者ベースの合格率は13.6%と前年の6.0%を大きく上回った。受験環境と採用状況が好転のサイクルに入ったとも考えられ、政策不況を強いられてきた公認会計士講座に光明が差してきた。今後、安倍政権による「金融・財政・成長」の3本の矢によるデフレ・円高対策が成果をあげれば、景気浮揚を通じて監査法人の採用意欲が一段と高まり、事業環境の改善ピッチも加速しよう。