ブリッジレポート
(2435) 株式会社シダー

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ブリッジレポート:(2435)シダー vol.23

(2435:JASDAQ) シダー 企業HP
山崎 嘉忠 社長
山崎 嘉忠 社長

【ブリッジレポート vol.23】3月期第3四半期業績レポート
取材概要「同社の業績は、関係法令の改正や法解釈、或いは実務的な取扱いの変更といった短期的には経営努力の及ばない要因の影響を受ける。今3Q(累計)は4月の・・・」続きは本文をご覧ください。
2013年6月11日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社シダー
社長
山崎 嘉忠
所在地
北九州市小倉北区大畠 1-7-19
決算期
3月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年3月 9,614 421 430 224
2011年3月 8,746 225 295 158
2010年3月 8,332 408 419 237
2009年3月 7,075 149 100 46
2008年3月 5,921 56 42 16
2007年3月 4,519 -403 -406 -247
2006年3月 4,251 309 297 166
2005年3月 3,649 352 288 164
2004年3月 3,125 122 97 41
2003年3月 2,352 111 104 30
2002年3月 1,594 17 21 11
2001年3月 281 -20 -21 -14
株式情報(2/20現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
412円 5,737,957株 2,364百万円 - 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
- - 2.09円 197.1倍 230.58円 1.8倍
※株価は2/20終値。
 
シダーの2013年3月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
デイサービス及び有料老人ホーム「ラ・ナシカ」を中心とした介護サービスを、本社のある福岡県を中心に全国展開。リハビリテーションに重点を置き、より人間らしく生きるための生活支援を行う事を経営方針としており、総勢115名を数えるリハビリ職員の規模は介護サービス事業者の中では出色。また、有料老人ホームでは施設数で業界10位、総居室数で14位のポジションにある(出所:「月刊シニアビジネスマーケット」2012年10月号より)。
 
 
同社のリハビリトレーニングの考え方
「リハビリを頑張れば、将来元気になれる・・・だから頑張る」というものではなく、今日自分らしく、明日も自分らしく過ごしながら、来月、来年、もっと自分自身の力で、自分らしく毎日を過ごす為の準備を行う事が目的。
 
【事業セグメント】
事業は、同社の施設の来場者にサービスを提供するデイサービス事業、有料老人ホーム等の施設の入居者を対象にサービスを提供する施設サービス事業、及び利用者の自宅を訪問して日常生活訓練や機能訓練等を行うリハビリサービスや日常生活の手伝いを行うホームヘルパーサービス等の介護サービスを提供する在宅サービス事業に分かれる。12/3期の売上構成比は、それぞれ35.0%、57.0%、8.0%。
2012年10月31日現在の拠点数は次の通り。
 
 
【沿革】
 
 
前身は医療機器の販売会社だった(株)福岡メディカル販売。2000年10月に社会医療法人池友会系列の医療機関でリハビリ業務に従事していた山崎嘉忠氏(現社長)等が中心となり(株)シダーに商号を変更し介護事業へ参入。01年1月にデイサービス施設4施設を開設した。デイサービス事業が順調に拡大し、05年3月にジャスダック証券取引所に上場、同年9月には有料老人ホーム事業(現在の、施設サービス事業)に参入した。
06/3期、07/3期と有料老人ホーム事業の先行投資(新施設の立ち上げ費用)が利益を圧迫したものの、08/3期以降は施設の累積効果(ストック効果による事業規模の拡大)で、新規開設負担を吸収して利益を増やせる体制が整った。11/3期は新卒40名の入社による人員の増加や新規開設施設の増加(3事業合計で10/3期:3施設→11/3期:5施設)、更には既存施設のリニューアルもあり利益が減少したものの、12/3期は既存施設の新規利用者獲得が順調に進んだ事に加え、施設オペレーションの効率化で増益基調に転じた。
 
【事業戦略 -地域のリハビリセンターを目指して-】
同社はデイサービスセンターや有料老人ホームにおいて近隣の一般・健康な高齢者向け健康教室等を開催し、地域の病院、ケアマネージャー、老人会等とネットワークを構築すると共に地域に溶け込む事で、施設の稼働率や入居率の向上を図っていく考え。また、このネットワークを活用して訪問介護ステーションやリハビリステーション(在宅サービス事業)とのシナジーも高めていく。
尚、06年度の介護保険の改定の際に、「訪問看護計画において、理学療法士等の訪問が保健士又は看護師による訪問の回数を上回るような設定がなされることは適切ではない」との規制が盛り込まれたため、在宅リハビリには大きな逆風が吹いた。この影響で同社も在宅サービス事業の積極的な活動を控えたが、09年度の改定でこの規制が緩和されたため積極的に在宅リハビリのニーズに応える事が可能となった。
 
 
甲府市の他、松山市(森松デイサービス(サービスセンター内に訪問看護ステーション準備室)、有料老人ホーム)、北九州市八幡西区(黒崎デイサービス、鳴水デイサービス、グループホーム黒崎、水巻訪問看護ステーション)、北九州市小倉南区(徳力デイサービス(要支援)、徳力デイサービス(要介護)、徳力デイサービス(認知症))、長野県上田市(1施設にデイサービスセンターと有料老人ホームを併設)等でも“地域のリハビリセンター”を念頭においた取り組みが進められている。
また、施設を集積させる事は3事業のシナジーを高まるだけでなく、理学士等の職員が地元で安定して働く事のできる環境作りにもつながる。
 
 
 
デイサービス施設では80人規模施設の大型デイサービス中心に展開している。トレーニングルーム・カラオケ・シアター・大浴場・マッサージ・喫煙ルームなど各個人にあった活動を楽しめるゆとりある空間造りが可能となる。
 
 
施設サービスでは、1階フロアではスタッフがデイサービスと同等のサービスやリハビリテーションを提供、居室では自宅に居るのと同様に訪問リハビリ訪問看護・ヘルパーのサービスを提供する。積極的に開設を行っている。
 
 
12年度の介護保険法改定による影響
 
同社の収益となる各種介護サービス費用は、その1割をサービスの利用者が負担し、9割(ケアプランは10割)は介護保険が負担している。また、介護報酬の基準単位や一単位当たりの単価(介護サービス費用=基準単位×単価)や支給限度額は介護保険法及びそれに基づく政省令により定められており、介護保険法及びそれに基づく政省令の改訂は同社の収益状況にかかわりなく行われる。
 
12年度の改定(12年4月から実施)で同社が影響を受けるのは、デイサービスにおける介護報酬の改定や個別機能訓練加算の再編、及び施設サービスにおける特定施設入居者生活介護費の改定であり、同社は次のような対応を考えている。
 
(1)デイサービス事業における対応
①介護報酬の改定(提供時間区分の再編と報酬の見直し)
今回の改定では時間区分が再編され、介護報酬の基準単位の見直しが行われた。具体的には、提供時間が5時間以上7時間未満では介護報酬の基準単位が引き下げられ(8.8%~11.1%のダウン)、7時間以上9時間未満では基準単位が引き上げられた(1.9%~5.6%のアップ)。
 
 
尚、通所介護施設は、1月当たりの平均延人員数が300人以下の小規模型、301人以上750人以下の通常規模型、751人以上900人以下の大規模型(Ⅰ)、及び901人以上の大規模型(Ⅱ)に分かれ、同社の施設は全て大規模型(Ⅱ)に該当される。今回の改定では、小規模型、通常規模型、大規模型(Ⅰ)、大規模型(Ⅱ)の全ての区分で上記の見直しが行われた。
 
同社の対応
「介護職員の処遇改善がうたわれる中、時間外勤務の発生が避けられないような業務体制はとらない」との考えから、同社は“5時間以上7時間未満”を選択した。
“7時間以上9時間未満”を選択した場合、女性スタッフが多い中で業務体制が悪化すれば離職率が高まり、結果として人件費用が増加する可能性があった。
 
 
ただ、“5時間以上7時間未満”を選択すると、利用1回当たりの単価が下がるため売上が減少する。同社はこれを新規利用者の確保で補う考え(他社がサービスを長時間化すれば、相対的に同社のサービスを安価に利用できる事になり、新規利用者の開拓が見込める)。
 
 
②個別機能訓練加算の再編
 
※新設された個別機能訓練加算(Ⅱ)の算定要件
5人程度以下の少人数のグループを対象に、専従の理学療法士、作業療法士等が週1回以上、日常生活における生活機能の維持・向上に関する目標を設定し、訓練を実施した場合に算定できる。又、個別機能訓練加算(Ⅰ)との併算定が可能。
 
同社の対応
全体で1%程度の減収要因となる見込み。デイサービス内でのグループ分け等を行い、算定可能な施設は積極的に加算を算定していく。
 
(2)施設サービス事業における対応
特定施設入居者生活介護費の改定
特定施設入居者生活介護費の介護報酬の基準単位の見直し(引き下げ)が行われた。
 
 
同社の対応
既存入居者1人当たりの収益が減少するものの、新規入居者の促進を図る事でカバーしていく考え。
 
 
2013年3月期第3四半期決算
 
 
新規開設や新規連結により6.5%の増収、初期費用や介護報酬改定の影響で97.9%の経常減益
昨年10月に福岡県内で有料老人ホーム「小文字の郷」(福岡県北九州市:52室)及び「わじろの郷」(福岡県福岡市:99室)の2施設(いずれも満床)を運営する(株)パイン(本社:福岡県福岡市)の全株式を取得した。このため、12.3期2Qまでは非連結であった。
 
売上高は前年同期との比較で6.5%増の7,611百万円。デイサービス1施設、有料老人ホーム4施設を新規開設、積極的な施設展開を図った。利益面では、効率的な施設運営と経費削減に取り組み利益率の改善に注力したものの、新規開設に伴う初期費用の計上や介護報酬の改定によるデイサービス事業におけるサービス提供時間の短縮などの影響により営業利益は同61.4%減の151百万円、支払利息負担により経常利益は同97.9%減の7百万円、純損失8百万円(前年同期は純利益205百万円)となった。
 
 
デイサービス事業
売上高は前年同期との比較で5.5%減の2,412百万円、セグメント利益は同50.0%減の187百万円。既存デイサービス施設のサービスの質の向上により施設稼働率の向上に努めた。また、長野県上田市には「あおぞらの里 上田原デイサービスセンター」を新規開設し、積極的な営業活動を展開した。しかし、介護保険改定によるサービス提供時間の短縮の影響等を受けて減益となった。
 
施設サービス事業
売上高は前年同期との比較で14.7%増の4,606百万円、セグメント利益は同33.4%減の381百万円。既存の有料老人ホームの入居者獲得に注力し、入居率の向上に努めた。また、栃木県足利市に「ラ・ナシカ あしかが」、長野県上田市に「ラ・ナシカ うえだ」、長野県松本市に「ラ・ナシカ まつもと」、山梨県山梨市に「ラ・ナシカ やまなし」を新規開設した。しかし、新規開設に伴い多額の初期費用を計上し減益となった。
 
在宅サービス事業
売上高は前年同期との比較で2.7%増の592百万円、セグメント損失は1百万円(前年同期は6百万円の利益)。利益率の改善のため人員配置や業務手順の見直し等、効率的な運営に取り組むことに注力した。
 
 
3Q末の総資産は前期末比28百万円減の13,180百万円。負債については同65百万円増加し、11,857百万円となった。また、株主資本は同94百万円減少して1,323百万円となった。自己資本比率は10.0となり前期末比0.7ポイント低下した。
 
 
2013年3月期業績予想
 
 
前期比7.4%の増収、同90.3%の経常減益予想
13/3期通期予想は上期決算発表時に修正した。今回は修正なく、売上高は前期比7.4%増の10,324百万円、営業利益は同44.5%減の234百万円を見込む。稼働率・入居率が高水準に推移するものの、新規開設に係る先行投資負担と介護報酬改定の影響を受ける。
 
デイサービス事業では12年6月に上田原デイサービスセンター(長野県上田市、定員40人)を開設。施設サービス事業では、12年4月に「ラ・ナシカ あしかが」(栃木県足利市、30室)、6月に「ラ・ナシカ うえだ」(長野県上田市、53室)、7月に「ラ・ナシカ まつもと」(長野県松本市、29室)、10月には「ラ・ナシカ やまなし」(山梨県山梨市、29室)をオープンした。この他、(株)パインの「小文字の郷」(52室)及びわじろの郷(99室)の2施設(共に福岡県)が通期で寄与する。
 
業績向上への取り組みも強化している。地域の催しに出店を行ったり、施設での体験・見学会を積極的に開催して地域住民にアピール、新規利用者獲得につなげる考え。施設のリニューアルを進め、サービスの質の向上に努め、既存利用者の利用回数増も図る。
 
 
損保ジャパンとの資本・業務提携と来期以降の展開
 
昨年9月20日に高齢社会戦略1号投資事業有限責任組合(出資者99.25%株式会社損害保険ジャパン)により公開買付けが行われた。同組合(実質損保ジャパン)はシダーの34%を保有する筆頭株主となる。損保ジャパンと業務提携を結び、損保ジャパンの数多くある支店や代理店を活用し、入居者や利用者を紹介するというメリットが生じることとなる。
また、来期以降も積極的に開設を行う見通し。
 
 
 
今後の注目点
同社の業績は、関係法令の改正や法解釈、或いは実務的な取扱いの変更といった短期的には経営努力の及ばない要因の影響を受ける。今3Q(累計)は4月の介護報酬改定の影響や新規開設に伴う初期費用負担もあって大幅な経常減益となった。しかし、高い稼働率や入居率を有する優良なストックが積みあがってきた事で影響は限定的なものにとどめたともいえるだろう。業績向上への取り組みも強化しており、今後はその効果も期待できる。
介護報酬改定の根幹を成す改正介護保険法(施行から5年を経て実施された改正。11年6月公布、12年4月施行、一部は11年6月施行)のポイントは、“高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるよう、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスを切れ目なく提供する「地域包括ケアシステム」の実現”である。つまり、地域に密着して、デイサービス、施設サービス、在宅サービスの総合的提供を目指す同社の経営方針に合致するものであり、同社の強みを活かす事ができるものと考える。
今後も施設を積極展開する。設立来続く増収基調は今後も継続するだろう。今期は減益となる見込みであるが、増収効果で初期投資の負担は徐々に軽くなり、介護報酬改定の影響も吸収する見通し。損保ジャパンとの提携効果については来期以降の収益貢献が期待される。