ブリッジレポート
(4319) TAC株式会社

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ブリッジレポート:(4319)TAC vol.10

(4319:東証1部) TAC 企業HP
斎藤 博明 社長
斎藤 博明 社長

【ブリッジレポート vol.10】2014年3月期第1四半期業績レポート
取材概要「新聞報道によると、「自己投資」をテーマに日経新聞者とNTTコムオンライン・マーケティング・ソリューションの「gooリサーチ」が共同で実施し・・・」続きは本文をご覧ください。
2013年8月20日掲載
企業基本情報
企業名
TAC株式会社
社長
斎藤 博明
所在地
東京都千代田区三崎町3-2-18
決算期
3月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2013年3月 20,999 136 377 977
2012年3月 22,578 -606 -530 -799
2011年3月 24,575 465 283 -244
2010年3月 23,991 623 442 40
2009年3月 21,092 1,330 1,352 669
2008年3月 20,741 1,069 1,230 443
2007年3月 20,553 1,173 1,333 742
2006年3月 19,828 421 631 249
2005年3月 19,669 459 558 81
2004年3月 19,542 988 943 470
株式情報(8/14現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
225円 18,234,832株 4,103百万円 35.5% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
1.00円 0.4% 24.51円 9.2倍 181.59円 1.2倍
※株価は8/14終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
TACの2014年3月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
「資格の学校TAC」として、資格取得スクールを全国展開。社会人や大学生を対象に、公認会計士、税理士、不動産鑑定士、社会保険労務士、司法試験、司法書士等の資格試験や公務員試験の受験指導を中心に、企業向けの研修事業や出版事業等も手掛ける。
 
 
【沿革】
1980年12月、資格試験の受験指導を目的として設立され、公認会計士講座、日商簿記検定講座、税理士試験講座を開講。2001年10月に株式を店頭登録。03年1月の東証2部上場を経て、04年3月に同1部に指定替えとなった。09年9月には司法試験、司法書士、弁理士、国家公務員Ⅰ種・外務専門職等の資格受験講座を展開していた(株)KSS(旧・早稲田経営出版)から資格取得支援事業及び出版事業を譲受。これにより、会計分野に強みを有する同社の資格講座に法律系講座が加わると共に、公務員試験のフルラインナップ化も進んだ。
 
 
 
2014年3月期第1四半期決算
 
売上高について
各講座の受講者は受講申込時に受講料全額を払い込む必要があり(同社では、前受金調整前売上高、あるいは現金ベース売上高と呼ぶ)、同社はこれをいったん「前受金」として貸借対照表・負債の部に計上する。その後、教育サービス提供期間に対応して、前受金が月毎に売上に振り替えられる(同社では、前受金調整後売上高、あるいは発生ベース売上高と呼ぶ損益計算書に示される売上高)。損益計算書に計上される売上高は、「発生ベース売上高(前受金調整後売上高)」だが、その決算期間のサービスや商品の販売状況は現金ベース売上高(前受金調整前売上高)に反映され(現金収入を伴うためキャッシュ・フローの面では大きく異なるが、受注産業における受注高に似ている)、その後の売上高の先行指標となる。このため、同社では経営指標として現金ベース売上高(前受金調整前売上高)を重視している。
 
 
コスト削減の進展で前年同期比54%強の営業増益
講座の申し込み状況を示す現金ベース売上高は前年同期比0.4%増の47億17百万円。6月に前年同月を下回る等、個人教育事業を中心に力強さに欠けた面はあるものの、3月以降、持ち直し傾向にあり、状況は改善している。セグメント別に見ると、法人研修事業や人材事業の売上が増加する一方、個人教育事業の売上がわずかに減少した。現金ベース売上高の減少に伴う前受金残高の減少で前受金戻入れの勢いも鈍化しており、損益計算書に計上される売上高である発生ベース売上高は56億42百万円と同6.6%減少した。
 
一方、コスト面では、賃借料、人件費、外注費、広告費等、主要費目でスリム化が進み営業費用が49億02百万円と同11.9%減少。営業利益は7億40百万円と同54.4%増加した(Wセミナー買収に伴うのれん償却が前期で終了した事も32百万円の増益要因となった)。投資有価証券運用損益(△6百万円→77百万円)を中心に営業外損益が改善したものの、前年同期に移転補償金17億50百万円を特別利益に計上した反動で四半期純利益は同58.1%減少した。
 
 
 
個人教育事業の現金ベース売上高は前年同期比0.5%減の31億15百万円。会計系、法律系の講座での売上減少を公務員講座がカバーして、ほぼ前年同期並みの売上を確保した。一方、発生ベースでは売上高が39億74百万円と同9.1%減少したものの、前期に実施したコスト削減効果で、賃借料、講師料、教材制作のための外注費等の営業費用が同15.1%減少したため、セグメント利益が5億74百万円と同56.5%増加した。
 
法人研修事業の現金ベース売上高は前年同期比3.4%増の11億17百万円。このうち、主力の企業研修はほぼ前年同期並みの売上を確保。簿記会計系研修(同13.9%減)、証券アナリスト研修(同9.8%減)、ビジネススクール研修(同15.9%減)等が苦戦したものの、宅建研修(同37.4%)、新規開発のヒューマンスキル系研修(同91.9%増)、情報処理研修(同4.9%増)、CompTIA研修(同23.5%増)等の好調でカバーした。この他では、提携校事業(同5.2%減少)や税務申告ソフト「魔法陣」事業(同14.6%減)の売上が減少したものの、専門学校に対するコンテンツ提供(同20.9%増)、自治体等の委託訓練(同5.3%増)が増加。大学内セミナーも前年同期並みを維持した。一方、発生ベースでは売上高が11億83百万円と同0.2%減少したものの、コスト削減でセグメント利益が3億70百万円と同3.3%増加した。
 
出版事業(前受金調整がないため現金ベース売上高と発生ベース売上高が一致)の売上高は前年同期比1.8%減の4億01百万円。このうち同社が展開する「TAC出版」は、刊行点数が81点(前年同期は74点)と7点増加した事に加え、FP講座書籍でヒットが出たこともあり、売上が増加。一方、子会社(株)早稲田経営出版が展開する「W出版」は司法書士講座書籍の刊行点数減少が響き売上が減少した。前期に実施したコスト削減や在庫圧縮の効果があったものの、減収の影響でセグメント利益は79百万円と同1.6%減少した。
 
子会社の(株)TACプロフェッションバンクが手掛ける人材事業(前受金調整がないため現金ベース売上高と発生ベース売上高が一致)の売上高は前年同期比9.9%増の93百万円。夏の就職説明会に大手4大監査法人が全て出展を決める等で売上が増加したが、過去最高158社の出展等に対応するため、説明会用の会場費・冊子印刷費・求職者募集のためのホームページ改修等の営業費用が増加したため、セグメント利益はトントンとなった。
 
 
財務・会計分野
発生ベース売上高は前年同期比17.0%減の8億70百万円。申し込み状況を示す現金ベース売上高では、新規学習者向けの入門コースが前年同期並みを維持したものの、受講料の高い再受験者向けの上級コースの苦戦で公認会計士が同22.2%の減収。簿記検定の売上高も同8.4%減少した。
 
経営・税務分野
発生ベース売上高は前年同期比9.7%減の13億77百万円。現金ベース売上高は、前期の大量合格の反動が懸念された中小企業診断士が微減収にとどまったものの、税理士講座が同13.7%減と落ち込んだ。
 
金融・不動産分野
発生ベース売上高は前年同期比9.4%増の6億91百万円。企業研修が好調な宅建(同21.8%増)やリニューアルした出版物が好評で講座申込みも増加したFP(同28.7%増)が増加する一方、不動産鑑定士(同10.0%減)、証券アナリスト(同10.6%減)、ビジネススクール(同15.7%減)等が減少した。NISA(少額投資非課税制度)口座営業のための証券外務員等も堅調に推移。不動産鑑定士講座も、未だ受験者市場に波及してはいないものの、景気回復により実需が盛り上がりつつあるという。
 
法律分野
発生ベース売上高は前年同期比17.7%減の5億73百万円。現金ベース売上高は、予備試験受験者数が1万人を超える等、明るい兆しが見えてきた司法試験が微減。司法書士は個人申込みが前年同期を超えているものの、前期に出版部門が好調だった反動で同12.8%減。弁理士は新規受験者向けコースが鈍かったことに加え、短答式本試験の難易度が急激に上がったため、再受験者向けコースの申込みも減少し同23.0%減。一方、行政書士は同9.0%増と好調を維持。
 
公務員・労務分野
発生ベース売上高は同0.4%増の14億68百万円。現金ベース売上高は、景気回復で民間企業の就職状況が改善していることもあり、国家総合職・外務専門職コースが同微減となったものの、全体として公務員人気が加速している面のほうが強く、国家一般職・地方上級コースが同21.0%増加したのは特筆に値する。全講座中、売上規模第2位に成長している公務員講座が、会計系・法律系の落ち込みをカバーしている格好となった。この他、前年同期に大きく伸びた反動が懸念された社会保険労務士講座も同3.2%増と健闘した。
 
情報・国際分野
発生ベース売上高は同1.2%減の3億71百万円。現金ベース売上高は、CompTIAが企業研修を中心に同16.7%増と伸び、米国公認会計士講座はTOEICコースが順調に集客でき同3.9%増となった。一方、情報処理は同2.1%減となった。
 
その他
売上高(現金ベース売上高=発生ベース売上高)は同3.4%減の2億89百万円。夏に開催する会計業界向け就職説明会の引き合いが好調で人材子会社TACプロフェッションバンク(株)が手掛ける人材関連売上が同7.4%増加したものの、税務申告ソフト「魔法陣」の売上高は同14.6%減と減少した。
 
 
受講者全体では同0.2%増の73,815人。内訳は、減少に歯止めがかった個人受講者が50,645人と前年同期比0.7%増加。一方、法人受講者は、大学内セミナー(同13.0%減)が減少したものの、自治体等の委託訓練(同16.7%増)や通信型研修(同11.5%増)がカバーしたことで23,170人と同0.9%の減少にとどまった。講座別では、公認会計士が同18.6%減、税理士が同9.4%減、簿記検定が同10.0%増、宅建が同10.9%増、司法書士講座が同11.9%減。公務員講座は国家一般職・地方上級コースが同35.0%増。
 
 
2014年3月期業績予想
 
 
営業利益が前期比5.1倍のV字回復へ
現金ベース売上高は前期比4.6%減の195億円。予想数字自体は保守的だが、公認会計士試験合格者を取り巻く環境が改善傾向にある中、前期に立ち上げた建築士講座(12年12月開講、13年1月から本格化)や教員試験対策コース(秋に開講の予定)の寄与等を見込んでいる。前受金戻入れも減少し、発生ベース売上高も199億円と同5.2%の減少を見込む。
 
一方、営業利益は7億05百万円と同5倍強に拡大する見込み。人事制度改訂等による人件費の絞り込み、講師料の見直しの継続、更には賃借料削減効果のフル寄与といったコスト削減効果を織り込んだ(売上原価:132億52百万円→119億65百万円)。1株当たり1円の復配を予定している。
 
なお、来期以降の収益貢献を念頭に、(株)オンラインスクールの事業化や(株)プロフェッションネットワークによる実務家向けビジネスの拡大等、新規事業の育成・強化にも取り組んでいく考え。
 
 
 
今後の注目点
新聞報道によると、「自己投資」をテーマに日経新聞者とNTTコムオンライン・マーケティング・ソリューションの「gooリサーチ」が共同で実施した調査において、自己投資を増やすと回答した人が全体の25.0%を占め、年収が「増えそう」と答えた人に限ると、「自己投資を増やす」と答えた人が67.1%に達したという。記事には「景況感の改善や所得の増加で自己投資を増やす人が増えそう」というコメントが付け加えられていた。第1四半期決算が示すように同社の収益力強化が進む中、いずれ同社の現金ベース売上高に反映されてくるであろう個人の自己投資意欲も回復に向かっているようだ。
 
前期決算において、同社の主力分野は財務・会計分野や経営・税務分野からすでに公務員・労務分野へと移行しており、当第1四半期においても、公務員講座が現金ベースで前年同期比21.0%増と、その傾向は継続している。同社の公務員講座の強みは、親身な担任制講師と実戦さながらの模擬面接等にある。非公式ながら関東圏の大学生協での同社公務員講座はトップシェアであるという。こうした特徴を活かしつつ、同社は満を持して教員試験対策講座を13年秋に開講する予定だ。先行する競合他社の受講単価を参考に算出した同試験の市場規模は約600億円と推定され、同社にとって魅力的な市場だ。14年3月期への寄与は少ないとみられるが、競合他社との差別化を活かし、中期的にどれだけのシェアを獲得することができるのかを注目したい。
一方、過去3期の減収要因となってきた公認会計士市場にも変化の兆しが出てきた。平成25年度公認会計士試験は、第Ⅰ回・第Ⅱ回合わせて出願者数合計が前年比24.9%減の13,224名(前年17,609名)と、試験合格者の未就職問題が顕在化した内部統制監査導入前の出願者数にまで低下してきており、今年も合格者数の減少が予想される。これに対して、平成24年の大手4大監査法人の採用数は1,100名程度(子会社(株)TACキャリアサポートセンター調べ)とされ、関東圏では採用需給が逼迫してきたようだ。(株)TACプロフェッションバンクが手掛ける夏の就職説明会でも大手監査法人の出展意欲が強かったといい、合格者の就職環境の良化が受験者市場に波及する流れが見えてきた。
加えて、2013年4月以降開始された「教育資金の一括贈与に係る非課税措置」も注目される。
新聞報道では、信託銀行各行に設定された教育資金贈与信託はすでに1,000億円を突破しているといい、「教育」に対する投資、資金シフトは着実に強まっているようだ。
同社は同制度の対象となった場合でも学校法人ではないため、適用される非課税限度額は1,500万円ではなく500万円にとどまるが、同制度は孫の年齢が30歳になるまで使えるため、大学入学後の就職活動や社会人となった後の資格取得にも利用可能であり、そうした活用方法の認知が高まれば、同社を始めとした業界にとっては大きな追い風となる可能性もあるだろう。