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(4323) 日本システム技術株式会社

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ブリッジレポート:(4323)日本システム技術 vol.26

(4323:東証2部) 日本システム技術 企業HP
平林 武昭 社長
平林 武昭 社長

【ブリッジレポート vol.26】2014年3月期第1四半期業績レポート
取材概要「会社側への取材によれば、第1四半期の業況は昨年より好転しているという事だ。決算短信掲載の受注及び受注残高を見ると、いずれも今第1・・・」続きは本文をご覧ください。
2013年8月27日掲載
企業基本情報
企業名
日本システム技術株式会社
代表取締役社長
平林 武昭
所在地
〒530-0005 大阪市北区中之島二丁目3番18号 中之島フェスティバルタワー29階
決算期
3月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2013年3月 10,139 314 355 168
2012年3月 9,027 284 327 135
2011年3月 8,990 211 264 216
2010年3月 9,322 456 497 300
2009年3月 10,449 806 852 447
2008年3月 10,705 931 945 426
2007年3月 9,711 389 405 138
2006年3月 7,917 111 125 605
2005年3月 8,189 522 502 319
2004年3月 7,767 540 537 67
2003年3月 7,064 676 635 194
2002年3月 6,939 658 606 181
2001年3月 6,285 834 814 282
株式情報(8/6現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
625円 4,775,920株 2,984百万円 3.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
25.00円 4.0% 47.32円 13.2倍 929.70円 0.7倍
※株価は8/6終値。発行済株式数は直近期決算短信より(発行済株式数から自己株式を控除)。ROE、BPSは前期末実績。
 
日本システム技術の2014年3月期第1四半期決算概要などについて、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
ソフトウェアの受託開発(13/3期売上構成比63.9%)、主に教育機関向け業務パッケージの開発・販売(同18.9%)、及び情報システム関連機器等の販売(同16.3%)、その他(同0.9%)を行っている。
 
<沿革>
設立は、1973年3月。JAST(同社)の特徴である教育機関向け業務パッケージには、90年代前半から取り組んでおり、94年10月に学校事務支援統合システムパッケージソフト「GAKUENシリーズ」の販売を、98年8月に大規模大学向けERP「GAKUEN REVOLUTION(学務)」の販売を、2000年2月に学校関係者間の情報ネットワークを実現する統合型Webサービスシステム「UNIVERSAL PASSPORT」の販売を、それぞれ開始。01年11月のジャスダック上場を経て、03年2月に東証二部に株式を上場した。
 
<特徴>
1.理念重視の経営
「情報化の創造・提供による社会貢献」をモットーとして、いかなる企業系列にも属さない完全独立の立場を堅持することにより、業種、技術分野、プラットフォーム等を問わず、常に最新の技術に挑戦しつつ、自由な立場で幅広い分野の開発業務に取り組むことを経営の基本方針としている。
 
この基本方針に則り、顧客、株主、社員、社会がそれぞれWin-Win(双方有益)の関係を築くべく、「四方良し」の理念を掲げ、それぞれの価値を最大化し、全体としての企業価値を高めることにより、安定的成長を実現することを目標としている。
 
また、このような成長の原動力となるのは従業員一人一人の情報システム開発に対する情熱と顧客への誠心誠意のサービスであり、そのためには人間力の研鑽が何よりも先行すべきである、との信念に基づいた「人づくり」経営に徹することにしている。
 
(経営理念の基本的考え方)
「天爵を修めて人爵これに従う」=天爵を修めることで、はじめて人爵を与えられる。人爵を得て、その結果として天爵を与えられることはない。
 
2.広範な情報サービスの提供と自社ブランド確立
メーカーや系列等一切の成約を受けず、自由な立場で広範な分野のサービスを提供することが出来る。
以下の既存3事業をメインとしているが、近年の変化として、自社ブランドサービスの拡大に注力し、構成比引上げを目指している。
具体的には、医療情報(レセプト自動点検等)サービス、銀行向けCRMソリューション「BankNeo」、スマートフォンアプリ群「京都禅寺巡り」などが挙げられる。
 
(事業セグメント)
1.ソフトウェア事業(ソフトウェアの個別受託開発) ⇒ SIerの側面
① ビジネスアプリケーション分野 (事務処理系システム)
② エンジニアリングアプリケーション分野 (制御、技術系システム)
③ イベントアプリケーション分野 (スポーツ・文化イベント関連システム)
④ アウトソーシングサービス (情報システムの一括運営管理)
 
2.パッケージ事業(ソフトウェアパッケージの開発、販売) ⇒ パッケージメーカーの側面
戦略的大学経営システムの開発・販売、導入支援、保守等
 
3.システム販売事業(ハード、ソフトの販売、ITインフラの構築) ⇒ 販社(BtoB)の側面
ハードウェア・ソフトウェアパッケージの販売、保守、ネットワーク構築等
 
3.大手優良企業群との長期取引と新規顧客
富士通(直接取引年数36年)、パナソニック(同31年)、IHI(同31年)など、日本を代表する大手企業群と長期取引が多いのも同社の特色。しかもすべてが直接取引である。
長期取引であるため、先方顧客からは同社が「コア・パートナー」となっている場合が多く、そのため不況期でも受注が大きく落ち込むことが少ない、と会社側は述べている。
一方、一時期80%はあった主要長期大手顧客8社の売上高構成比は現在40%程度まで低下しており、下記の表のように他分野の新規顧客が増加している。
 
 
4.グループ拠点展開
 
 
大阪と東京の2本社制を敷いており、早くから海外に開発拠点を展開している事も特徴。また、2006年8月には、大学向けマーケットを中心とする文教分野での業容拡大を図るべく、首都圏の大規模大学を中心に、システム機器等の販売で実績のあるアルファコンピュータ(株)の全株式を取得した。これにより、パッケージ、情報機器及びネットワーク等を一貫して提供する大学向けSI(システム・インテグレーション)事業の大規模展開が可能となった。
加えて、2012年7月には新日本ニーズ、SafeNeeds、桂林安信軟件有限公司の3社を新たに子会社化し、7社体制に拡大している。
 
5.国内トップシェアの大学業務パッケージ及びその進化
大学向け経営改革ソリューションとして提供している統合業務パッケージは、94年10月の発売以来、337校(13年5月20日現在)への導入実績を有し、文教マーケットにおいて高い評価を受けている。
 
特徴は、大規模な総合大学から小規模の短期大学に至るまで、主要業務を全方位でカバーしているため、パラメーターの設定だけで大学個々のニーズに柔軟に対応できる事。つまり、カスタマイズの必要がないため、ユーザーは導入時及びその後の運用・メンテナンスに関わるトータルコストを削減する事ができる。なお、1案件あたりの導入金額は数10万円~数億円と、導入規模により広範囲にわたる。
 
少子化問題への取り組み戦略のひとつとして、大学各校は優秀な学生を確保するべく、学生向けサービスや経営品質の向上に取り組んでいる。しかし、全国に約1,200校あると言われる大学・短大の大半がメインフレーマー等による手作りのシステムやカスタマイズを前提としたパッケージを使っているという。品質・価格両面での優位性に強み。
 
 
加えて、当初の事務支援から、運用サービス、KIOSK端末等OEM機器、BCP対策、学生育成支援、経営戦略支援など、大学を取り巻く総合ITサービスに進化している点も特徴である。
 
 
6.その他の特長
(人材重視) ⇒ 品質安定、低コスト体質
新卒中心の採用と長期的な人材育成
人材流動の激しい業界内で高い社員定着率を維持
 
(品質、信頼へのこだわり) ⇒ 継続顧客が多い
「一括丸投げ」は行わず、社員中心のプロジェクト編成
請け負ったら顧客が満足するまでやり抜く、途中退場はしない
 
(特徴的な営業戦術) ⇒ 異なる3事業が共存
ソフトウェア事業:SE自らが受注活動
システム販売事業:大手を凌駕する提案力
パッケージ事業:全国規模のマーケティング
 
(徹底したコスト管理) ⇒ 不採算案件が極めて少ない低コスト体質
個人別30分毎の売上・原価管理
非常にコンパクトな本社間接部門
 
 
2014年3月期第1四半期決算概要
 
 
前年同期比比較で増収・減益となったものの、概ね計画通りに推移したとのことだ。
同社事業の特性として、顧客企業の検収時期が多くの企業の会計期末に当たる3月および9月に大きく集中傾向があるため、第1四半期及び第3四半期の収益は、第2、第4四半期と比較して相当に少額になる傾向がある。
 
(2)セグメント別動向
今第1四半期より、セグメント情報に与える金額的重要性が増したため、従来の3事業区分に加えて、医療情報データの点検、分析および関連サービスを提供する「医療ビッグデータ事業」を開示することとした。
 
 
ソフトウェア事業
通信業向け案件は減少したが、サービス、流通、製造業、官公庁向け案件が増加した。
 
パッケージ事業
大学向けPP(プログラム・プロダクト)販売及び導入支援は減少したが、EUC(End User Computing:パッケージの周辺システムの受託開発)や保守業務が僅かではあるが増加した。
 
システム販売事業
サービス、流通業向けの機器販売が減少したが、公共系SI案件や大学向け機器販売が増加した。
 
医療ビッグデータ事業
レセプト自動点検サービスに加え、通知サービスおよびデータ分析などのサービス拡充により保険者との契約を着実に伸ばした。
 
(3)財政状態及びキャッシュフロー
 
投資有価証券等の増加により固定資産は198百万円増加したが、売上債権の減少などで流動資産は255百万円減少し、総資産は57百万円減少した。
一方負債は、短期借入金の増加などで115百万円増加した。
この結果、自己資本比率は2013年3月末の55.0%から53.2%へと低下した。
 
 
営業CFは引き続きプラスとなっている。
投資CFは、投資有価証券を100百万円取得したが、定期預金の取崩し、差入保証金の回収などによりプラスだった。財務CFは短期借入金の増額等によりプラスとなり、今四半期末の現金等の残高は26億円と前年同期末に比べ164百万円増加した。
 
(4)トピックス
◎株式会社ODKソリューションズとの協業を強化
 
同社は一昨年より、(株)ODKソリューションズ(JASDAQ、証券コード:3839)と協業し、大学向けシステムの相互データ連携サービスを提供してきたが、さらなる協業関係の強化を目的として(株)ODKの普通株式3,000株を市場で買い付けた。
 
<協業強化の理由>
同社は学校法人を対象に、パッケージ事業の主要製品であるGAKUENシリーズ製品により、教務を中心に入試・就職等といった学務系事務システムから、経理・管財等の法人系事務システムまでを統合した、戦略的大学経営システムを提供しているが、同じく学校法人を顧客層として入学試験業務を中心とした情報処理アウトソーシングサービスや入試広報支援サービス等を提供する(株)ODKとは協業関係を一昨年より構築し、相互のデータ連携を実現させてきた。
そうした中、協業による実績も蓄積されてきたため、同社と(株)ODKは、相互の強みを活かし事業上のシナジーを発揮することが、両社の企業価値・株主価値向上にとって望ましいとの共通認識に達し、さらに協業関係を強化することで合意した。
 
<協業強化の内容>
学校法人向けサービスを中心に、広範な業種・分野での協業を両社間で検討・決定していく。
また、今後は文教(学校)向けのみならず、両社が事業ドメインとしている金融分野での協業の可能性もあると考えており、順次検討を進めていく。
 
 
2014年3月期通期業績見通し
 
 
現時点で、第2四半期及び通期業績予想に変更は無い。
ソフトウェア事業の伸張などを要因に、増収・増益を計画している。
営業増益の内訳は以下の通り。
 
 
2008年のリーマンショックが情報サービス産業にとっても大きな転換点だったと認識している。
転換点以前は、長期優良顧客が過半数、受託開発で営業利益10%超といった自社の伝統的強みを活かせば好業績に繋げることができたが、転換点以降、環境は激変しており、特に受託開発依存の成長持続は困難と考えている。また足元の戻りも決して本格回復ではなく、不安定な環境は今後も続くと判断しており、そうした環境下、「1.自社ブランドの確立」、「2.アライアンス戦略の推進」、「3.グローバル化」をキーワードとする変革を進めていく。
 
(2)今後の計画
①事業別方針
◎ソフトウェア事業
9%の増収及び利益倍増を計画している。
期首受注残は前期比120%となっており、金融系中心に売上を牽引すると予想している。
BankNeoの販売実績は前期1行であったが、今期は数行を計画しており、先行投資ステージから収益ステージへの転換を見込んでいる。
オフィスの移転・増床による経費増の影響は限定的。
 
◎パッケージ事業
大学向け業務パッケージの総合ITサービス化を継続して推進し、参入障壁をより強固なものとする。
次世代製品の製造段階に入るため、研究開発規模は前期比2.5倍へ。これを主因として事業全体では減益を見込む。
「GAKUEN中国版」をリリースする計画で、中国国内大学への販売に注力する。
 
<次世代製品への取組み>
GAKUENシリーズはリリースより6年が経過し、トップブランドとして定着している一方で、他社製品の台頭、価格競争の激化という状況で、高収益を維持はするものの壮年期を迎え成長性は低下している。
そこで、次世代の新製品開発に注力する。
コンセプトとしては、現行製品のバージョンアップではなく、機能、デザイン、提供サービス、プラットフォームまでを一新するリニューアルを行い、又単に競合への対応ではなく、顧客である大学を取り巻く社会環境の将来像を見据えたうえでの最適解を示すものを開発する。
前期までに基本コンセプトを構築する基礎研究は終了しており、今期以降開発を進め、追加コンポーネントや関連総合サービスを順次リリース。来期以降売上の本格的な拡大、パッケージソリューションの枠を超えた総合文教サービスを提供する考えだ。
2018年3月期には次世代版パッケージの売上は現行版を上回り、20億円超まで成長すると見込んでいる。
 
<中国進出>
下表のように、日本国内において大学情報化市場は成熟期に入ったと見ており、より成長性が見込まれる中国市場の開拓を積極化する。
 
 
この中国進出にあたり、子会社化したSafeNeeds社、桂林安信軟件有限公司が大きな戦力となる。
技術的には、言語の違いや大学制度の違いを理解した上で同社の持つGAKUENのノウハウと中国人SEの協業により販売可能な製品化が可能であることが大きな強みとなる。
 
また営業面においても、当初より、販売チャネルの確保、大学・政府関係者との関係構築、大学情報処理部門へのプロモーション機会の創出、日本製であるという信頼性といった強固なアドバンテージを有している点も同社の大きな強みであると会社側は考えている。
 
2013年5月には湖州師範学院(浙江省湖州市)と大学情報化に関する協定を締結した。
こうして構築した事業基盤をベースに営業を積極展開し、2014年3月期中に複数校での導入を目指している。
 
◎システム販売事業
今期は、大学向け大規模機器導入が谷間となり減益予想だが、来期は回復する見込み。
期首受注残は前期比30%という水準だが、既に年間売上を超える受注見込みを確保している。
 
◎医療情報サービス
自社ブランドサービス確立のための中心的サービスを、第4の事業セグメントとして独立させるべく拡販に注力する。本社共通経費配賦前では黒字化を達成する方針。
 
 
有償サービスを開始した2011年4月以降、レセプト枚数、顧客数とも順調に拡大してきたが、特に2013年に入ってからの伸びが著しい。
会社側では、今期で研究開発投資は概ね終了して、収益獲得ステージに入り、2015年3月期には売上5億円まで成長すると見込んでいる。
 
②中長期事業構想
売上面においては、自社ブランドの確立と新事業の成長で、受託ビジネスとの構成比「1:1」を目指す。
4期ぶりの100億円復帰を契機に着実な拡大へ。
 
利益面においては、自社ブランド事業の継続的開拓による構造改革を推し進め、投資を継続しながらも収益化も図り、収益性の向上を目指す。
 
 
今後の注目点
会社側への取材によれば、第1四半期の業況は昨年より好転しているという事だ。
決算短信掲載の受注及び受注残高を見ると、いずれも今第1半期の水準は、前第1四半期を上回っており、ソフトウェア事業を中心に、明るさが増しているといえそうだ。
また、まだ金額は小さいものの「医療ビッグデータ事業」についても、成長が期待できそうだ。
健康保険組合等が顧客先となる訳だが、従来の目視等によるレセプト点検では調べきれなかったもの(巧みな不正受診等)が処理できるため、健保組合からの評価も高い。また、まさに膨大なビッグデータを集積できるため、例えば、健保財政改善のために使用量の大きい薬品をジェネリックに切り替えることを提案する等、ビッグデータを活用した新たなビジネスの拡大も見込んでいるという。
現在の受託ビジネス中心の事業構造から自社ブランドビジネスへの移行がどのようなスピードで進んでいくかを注目していきたい。