ブリッジレポート
(4829) 日本エンタープライズ株式会社

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ブリッジレポート:(4829)日本エンタープライズ vol.26

(4829:東証2部) 日本エンタープライズ 企業HP
植田 勝典社長
植田 勝典社長

【ブリッジレポート vol.26】2014年5月期第1四半期業績レポート
取材概要「変化への対応力が同社の強みである。フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行で会員減少に悩まされる同業者もある中、同社は、商品開発・・・」続きは本文をご覧ください。
2013年10月8日掲載
企業基本情報
企業名
日本エンタープライズ株式会社
社長
植田 勝典
所在地
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-17-8
決算期
5月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2013年5月 4,134 372 391 354
2012年5月 2,790 304 318 170
2011年5月 2,370 266 283 168
2010年5月 2,147 150 173 77
2009年5月 2,475 292 317 175
2008年5月 3,123 572 578 272
2007年5月 3,677 774 783 447
2006年5月 3,416 694 688 418
2005年5月 3,018 587 570 348
2004年5月 1,958 205 168 226
2003年5月 1,752 134 131 58
2002年5月 1,704 51 53 23
2001年5月 1,417 301 262 126
株式情報(10/1現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
17,230円 377,000株 6,496百万円 10.3% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
2.00円 - 8.35円 - 9,868.85円 1.7倍
※株価は10/1終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。売買単位は2013年11月27日より100株へ変更。
 
日本エンタープライズの2014年5月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
モバイルソリューションカンパニーを標榜。生活実用系や交通情報等のコンテンツを制作しスマートフォン等に配信するコンテンツサービス事業と、企業のコンテンツ制作・運営、システム構築、アフィリエイト広告、リバースオークションやIP-PBXソリューションといった業務(コスト削減)ソリューション等のソリューション事業が2本柱。また、日本のコンテンツを世界へ広げるべく海外展開にも力を入れており、中国とインドでは国内コンテンツプロバイダの先頭を走る。
 
自社制作へのこだわり
配信するコンテンツを自社制作する事で「提供するコンテンツの権利を自社で保有(高い収益性を実現できる)」する同社独自のビジネスモデルをベースとし、携帯電話販売会社との協業による成功報酬型コンテンツ販売(独自に開発したリアルアフィリエイト)システムと連動させる事でコンテンツの拡販に成功している。
 
企業グループ  連結子会社7社、非連結子会社3社
グループは、広告事業を手掛ける(株)ダイブ、音楽事業等を手掛けるアットザラウンジ(株)、交通情報を中心にした情報提供の交通情報サービス(株)、Web・Mobileサイト開発・保守及びコンテンツ開発等の(株)フォー・クオリア、中国事業の統括に加え、携帯電話販売店を手掛ける因特瑞思(北京)信息科技有限公司、モバイルコンテンツの企画・開発・配信の北京業主行網絡科技有限公司、IT系の教育事業を手掛ける瑞思創智(北京)信息科技有限公司の連結子会社7社、及び音声通信関連のソリューションを手掛ける(株)and One、モバイル向けコンテンツ配信やキャラクタライセンス事業の瑞思放送(北京)数字信息科技有限公司、インド現地法人NE Mobile Services(India)Private Limitedの非連結子会社3社。
 
【成長戦略】
フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行に伴うモバイル環境の変化に対応した施策を国内外で進めている。国内においては、携帯電話販売会社とのアライアンス、移動体通信事業者(以下、キャリア)の定額・使い放題サービスへの自社開発コンテンツ配信(auスマートパス、YAHOO!プレミアム、スゴ得コンテンツ)、業務ソリューションとしてのリバースオークション(日本オープンマーケット)の開設やIP-PBXソリューションの展開等、コンテンツサービス事業とソリューション事業の両事業でスマートデバイス時代に対応するべく事業領域の拡大に取組んでいる。

一方、海外においては、膨大な人口を抱え今後の成長が期待される中国とインドで事業基盤の構築に取組んでおり、中国では、電子コミックの配信事業と携帯電話販売事業(チャイナテレコムの携帯電話販売店を2店舗オープン済み)が軌道化しつつある。また、インドでは電子書籍配信を展開しており、スマートフォンやタブレットの普及が追い風になっている(11年12月に提携先であるインドのライフスタイルマガジン大手MAGNA社が出版している雑誌の電子(iPadアプリケーション)配信を開始した)。
 
 
14/5期の取り組みと進捗状況
 
(1)国内事業  スマートデバイス時代に対応したコンテンツの開発・販売と事業領域の拡大
コンテンツサービス事業  携帯電話販売会社との協業、定額制・使い放題サービスへのコンテンツ提供、メッセンジャーアプリ
フィーチャーフォンからスマートフォンへ移行するユーザーの取り込みが進んでおり、5月にはスマートフォンの月額課金会員が全体の50%を超えた(8月末現在のスマートフォン月額課金会員比率は55%)。キャリアの定額制・使い放題サービスへのコンテンツ提供や携帯電話販売会社との協業が成果をあげており、また、14/5期第1四半期は、メッセンジャーアプリ向けスタンプやスタンプ自体を自ら制作するアプリ「スタンプ工房」(App Store及びGoogle Playストア)の提供を開始する等、新たな取り組みとしてメッセンジャーアプリ関連にも力を入れた。
尚、第2四半期(9-11月)入りした9月には、NTTドコモのiPhone向け月額課金サイトにiPhone発売日の20日に即日対応。また、メッセンジャーアプリ関連では、同月12日に世界230カ国1億人以上の利用者を持つスマートフォン用無料通話・無料メールアプリ「カカオトーク」(英語名:KAKAOTALK、http://www.kakao.co.jp/)で利用できる有料スタンプ「オワタパンダ」の提供を開始した(「オワタパンダ」は同社のデコメール総合サイト「デコデコメール」内で人気のキャラクター)。
 
 
また、「無料」を求める若年層の取り込みを念頭に既存コンテンツのリワードアプリ化にも取組んでおり、既存コンテンツの有効活用とスマートフォン会員の獲得の両面で成果をあげている。
 
 
この他、女性ユーザーから高い評価を得ている、女性の心と体のサポートアプリ「女性のリズム手帳」(9月に150万ダウンロードを突破)について、多言語対応を進めていく考え(英語、中国語、韓国語は対応済み)。
 
ソリューション事業  広告(店頭アフィリエイト)、スマートフォンアプリのアライアンス、業務(コスト削減)ソリューション
他社コンテンツの販売にかかる収益である広告(店頭アフィリエイト)売上やスマートフォンアプリのアライアンス事業の拡大(新たなプラットフォームへの参入等)に取組んでいる。前者では、携帯電話販売店に限らず、対面販売を行う異業種小売店の開拓を進めており、後者では、サンリオのインターネットプロバイダーサービス「サンリオウェーブ」と提携し、7月よりNTTドコモがゲームを提供するモバイルサイト「dゲーム」向けに箱庭ゲーム(箱庭的世界を外から眺めるタイプの育成シミュレーションゲーム)「るんるんはろーきてぃ」(原則無料だが、一部課金あり)の提供を開始した。

また、同社は、新たな収益源として、業務ソリューションの育成にも取り組んでおり、この一環として、6月にリバースオークション専用ポータルサイト「日本オープンマーケット」(http://www.open-markets.jp)を正式にオープンした他、7月にIP-PBXソリューション「AplosOne(アプロスワン)」を開始した。

「日本オープンマーケット」は業界唯一のリバースオークション専用ポータルサイトであり、物品の調達案件を一般公募する事で公明正大な調達を求める企業や教育機関(以下、バイヤー)等と優良な販売業者(サプライヤー)との取引を実現する。7月には、リバースオークション&見積り徴収システム「Profair(プロフェア)」の提供をASP方式で開始した。「Profair」はバイヤー・サプライヤー双方の使い勝手の向上に寄与するため、立ち上げ間もないリバースオークションの利用促進の起爆剤として期待されている(8月に国立大学、私立大学向けに記念キャンペーンを開始した)。

一方、IP-PBXソリューション「AplosOne(アプロスワン)」は、3月に子会社化した音声通信関連のソフトウェア開発会社(株)and Oneの製品で、オープンソースソフトウェア“Asterisk (アスタリスク)”をベースに、日本の電話文化に適応するよう独自開発を加えたソフトウェアIP-PBX。従来高価なハードウェアPBXでしか実現できなかった企業向けの構内電話交換機能を低コストで実現するもので、安価な汎用サーバでIP電話システムを設定する事ができ、通話録音機能やIVR(音声による自動応答システム)の導入等も可能になる。
今後、業務システムとの連携、アプリケーション・ソフトウェアの開発、電話サービスの新商品等、同社グループならではの機能を付加し、内容を充実させていく考え。
 
(2)海外事業  電子コミック配信事業と携帯電話販売事業で進む中国での足場固め
米国の調査会社IDCによると、2013年のスマートフォン出荷台数世界NO.1は3億台を超える中国で(2位米国1億37百万台、3位英国35百万台)、2018年には中国のスマートフォン出荷台数が4億57百万台に拡大すると言う(2位:米国1億83百万台、3位:インド1億55百万台)。同社は中国とインドで事業基盤の構築に取組んでおり、特に中国においては、電子コミックの配信事業と携帯電話販売事業で足場固めが進んでいる。
 
中国事業
中国の作家や出版業界と連携して事業を進めている電子コミック(漫画)配信事業では、中国の人気小説「九鼎記」を漫画化した電子コミックが大ヒットしている((中国の移動体通信トップのチャイナモバイルの「動漫基地」に配信)。
現在、「九鼎記」の配信先の拡大とラインナップの拡充に取組んでおり、中国の移動体通信事業者で3位のチャイナユニコム「動漫基地」への配信が始まった他、同2位のチャイナテレコム(固定電話で中国トップ)「動漫基地」及びチャイナモバイル向けで2つ目の配信サイト「閲読基地」への配信準備が進められている。また、新規タイトルについては10月の配信開始が予定されている。
 
携帯ショップ運営(事業主体は因特瑞思(北京)信息科技有限公司)
チャイナテレコムとの提携の下、12年12月に第1号店「東方路店」をリニューアルオープンし(既存店の運営を引き継ぎ、新たにオープン)、4月に第2号店「黄金城道店」を新規オープンした(共に上海市内)。リアル店舗の出店は中国での新たな事業の創造を念頭に置いたもので、中長期的には移動体通信事業者とのアライアンスによる店頭アフィリエイト(コンテンツ販売)事業に発展させていきたい考え。また、販売ノウハウ(日本式おもてなし、体験型店舗、日本の先進的デザイン等)の吸収といった面で、提携先であるチャイナテレコムの期待も大きいようだ。
足元、9月からのiPhone5sの発売に合わせて、「東方路店」、「黄金城道店」共に販売を強化している。
 
 
2014年5月期第1四半期決算
 
 
先行投資負担が利益を圧迫したものの、売上は順調。四半期ベースで7期連続の増収
売上高は前年同期比26.2%増の11億39百万円。フィーチャーフォンからスマートフォンへシフトするユーザーの取り込みが進み、コンテンツサービスの売上が5億79百万円と同20.8%増加。中国での携帯電話販売事業の寄与と広告(店頭アフィリエイト)売上の増加でソリューション事業の売上も5億59百万円と同32.4%増加した。

一方、営業利益は59百万円と同35.4%減少。中国での携帯電話販売や広告(店頭アフィリエイト)売上の増加による売上構成比の変化で原価率が上昇(51.3%→54.2%)する中、コンテンツサービス事業における積極的な広告宣伝費の投下(59百万円→1億13百万円)等で販管費が4億61百万円と同32.9%増加した。
尚、原価率は、足元、落ち着きつつあり前四半期との比較では横ばい。また、四半期純利益が増加したのは、投資有価証券売却益1億07百万円を特別利益に計上したため。
 
 
 
交通情報、ライフスタイル、電子辞書が増収をけん引。新たにNTTドコモのスマートフォン向け定額・使い放題サービス「スゴ得コンテンツ」へのコンテンツ提供を開始する等、定額・使い放題サービスの好調でキャリア公式サイトでの売上が増加した他、携帯電話販売会社との協業によるアライアンス型月額課金コンテンツ販売も堅調に推移。既存コンテンツのリワードアプリ化やメッセンジャーアプリ関連のコンテンツ強化(メッセンジャーアプリ向けスタンプやスタンプ自体を自ら制作するアプリの提供を開始)にも取り組んだ。
 
 
 
中国での携帯電話販売事業と広告(店頭アフィリエイト)が増収をけん引。前者では、12年12月にリニューアルオープン(既存店の運営を引き継ぎ、新たにオープン)した第1号店「東方路店」及び4月に新規オープンした第2号店「黄金城道店」(共に上海市内)が寄与した。また、後者では、キャリアのスマートフォン販売のプロモーション強化に合わせ、携帯電話販売会社との協業を進めた結果、店頭アフィリエイトの獲得件数が増加。6月に企業向けコスト削減ソリューション「リバースオークション」の専用ポータルサイト「日本オープンマーケット」を開設し、7月からASPサービス「Profair」を正式に開始。また、7月にはIP-PBXソリューション「AplosOne(アプロスワン)」を立ち上げた。
尚、携帯電話販売会社との協業による自社コンテンツの販売については、コンテンツサービス事業のアライアンス型月額課金コンテンツ販売として売上計上され、携帯電話販売会社との協業による他社コンテンツの販売については、ソリューション事業において広告(店頭アフィリエイト)売上として売上計上される。
 
 
 
第1四半期末の総資産は前期末比3億09百万円減の47億59百万円。配当や法人税等の支払で現預金が減少した事が総資産減少の要因。自己資本比率は78.2%と前期末比2.9ポイント上昇した。
 
 
2014年5月期業績予想
 
 
通期業績予想に変更はなく、4期連続の増収、増益へ
売上高は前期比20.9%増の50億円。アライアンスによるコンテンツ販売や定額・使い放題サービスへのコンテンツの提供の増加等でコンテンツサービス事業の売上が25億27百万円と同17.9%増加。ソリューション事業も、スマートフォン関連の開発案件の増加や広告(店頭アフィリエイト)の堅調な推移に加え、中国での携帯電話販売事業の増収が見込まれ、売上が24億73百万円と同24.2%増加する見込み。

利益面では、効率化を念頭に置きつつ広告宣伝費の積極的な投下が続く見込みだが、アライアンスによる自社コンテンツの販売による月額課金会員の増加等による売上構成の良化で売上総利益率が改善。売上の増加と相まって、営業利益は5億20百万円と同39.7%増加する見込み。

尚、13年12月1日を効力発生日として、1株を100株に分割すると共に、100株を1単元とする単元株制度へ移行する予定。このため、配当は1株当たり2円の期末配当となるが、実質的には、20円増配の200円(2期連続の増配)。
 
 
今後の注目点
変化への対応力が同社の強みである。フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行で会員減少に悩まされる同業者もある中、同社は、商品開発力(コンテンツの制作力)とビジネスの創造力、そして的確なM&Aで、フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行に伴うビジネスチャンスを捉える事ができている。他社コンテンツも含めて長期安定収益源となるコンテンツ販売が順調に伸びている事も注目点である(現在の利益水準の岩盤は堅い)。第1四半期が前年同期比35%強の営業減益となる中で、前期比39.7%の営業増益を見込む通期予想に変更はなかったが、特に違和感はない。14/5期は順調なスタートを切ったと考える。