ブリッジレポート
(8931) 和田興産株式会社

スタンダード

ブリッジレポート:(8931)和田興産 vol.18

(8931:JASDAQ) 和田興産 企業HP
和田 憲昌 会長
和田 憲昌 会長
高島 武郎 社長
高島 武郎 社長
【ブリッジレポート vol.18】2014年2月期上期業績レポート
取材概要「竣工・引渡しが順調な事から今期の業績に不安はない。現在の販売は来期以降の引渡し物件が中心で、来15/2期引渡し予定の75%、再来期引渡物件の・・・」続きは本文をご覧ください。
2013年11月12日掲載
企業基本情報
企業名
和田興産株式会社
会長
和田 憲昌
社長
高島 武郎
所在地
〒650-0023 神戸市中央区栄町通4-2-13
決算期
2月 末日
業種
不動産業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2013年2月 25,396 2,650 1,964 761
2012年2月 22,550 2,569 1,849 671
2011年2月 28,231 2,048 844 428
2010年2月 29,890 573 -370 -226
2009年2月 32,333 2,577 1,548 118
2008年2月 29,564 4,020 3,063 1,613
2007年2月 30,629 3,318 2,736 1,357
2006年2月 25,256 2,769 2,366 1,292
2005年2月 22,965 2,594 2,203 1,162
2004年2月 23,723 2,226 1,689 912
2003年2月 22,080 2,100 1,499 652
2002年2月 22,630 2,296 1,846 917
2001年2月 22,926 3,399 2,941 1,315
株式情報(10/23現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
697円 9,999,832株 6,970百万円 5.3% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
20.00円 2.9% 100.00円 7.0倍 1,427.18円 0.5倍
※株価は10/23終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROEは前期末実績、BPSは第2四半期末実績。
 
和田興産の2014年2月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
明治32年(1899年)創業の老舗不動産会社。全てのステークホルダーとの共存共栄を目指す「共生(ともいき)」を企業理念とする。兵庫県神戸市を主要地盤に、明石市、阪神間で、マンション分譲を展開すると共に、不動産賃貸、土地有効活用等のソリューション、及び木造戸建分譲等を手掛けている。ブランド名「ワコーレ」を冠するマンション分譲は30戸~50戸程度の中規模マンションを中心とし、神戸市内では、12年連続で「供給戸数」第1位、15年連続で「供給棟数」第1位。また、2012年の近畿圏での「供給棟数」第2位の実績を誇り、2013年2月末現在の「累積供給実績」は370棟13,492戸(着工ベース)。
 
 
【沿革】
1899年1月、神戸市で不動産賃貸業を創業。1966年12月に和田興産(有)として法人化され、79年9月に和田興産(株)に改組。分譲マンションの一棟売り等で実績をつくり、91年3月、自社ブランド「ワコーレ」による分譲マンション事業を本格化。95年1月の阪神淡路大震災後は、震災復興のための優良建築物等整備事業にも従事し地域の復興に貢献した。04年12月に株式をJASDAQ市場に上場し、07年6月に「ワコーレ」シリーズが10,000戸を突破(着工ベース)。08年3月には戸建事業推進室を新設し、木造戸建事業を本格化した。
 
【事業セグメント】
事業セグメントは、「ワコーレ」ブランドで展開する分譲マンション販売、「ワコーレノイエ」ブランドで展開する戸建て住宅販売(販売は両事業共に外部委託)、宅地や賃貸マンションの販売等を手掛けるその他不動産販売、マンション(賃貸マンションブランド「ラ・ウェゾン」他)、店舗、駐車場等の賃貸・管理を行う不動産賃貸収入、及び保険代理店手数料など報告セグメントに含まれない「その他」に区分される。
 
 
分譲マンション販売事業
神戸・明石地区(兵庫県神戸市、明石市周辺)、阪神地区(兵庫県芦屋市、西宮市、尼崎市)、及び兵庫県伊丹市、宝塚市周辺を主要エリアとし、大手デベロッパーと競合しない30戸~50戸程度の中規模マンションを中心に「ワコーレ」ブランドで展開。人気の高いエリアにフォーカスし、同一地域で異なるタイプのマンションを供給し消費者の多様なニーズの取り込みと高い販売効率を実現する地域密着戦略、或いは、複数の物件を同時に一つのマンションギャラリーで扱う事で販売コストを抑制するマンションギャラリー戦略等、独自の戦略で高収益な事業モデルを確立している。
 
戸建て住宅販売事業
「ワコーレノイエ」ブランドで展開しており、その他不動産販売事業と共に分譲マンション事業を補完する機能を有する。数多く寄せられるマンション用地情報の中には、立地、面積、地形等の面でマンション分譲よりも戸建分譲に適した物件が少なくない(賃貸マンションに適した物件であれば不動産賃貸事業となる)。また、分譲マンションの事業期間が2年程度であるのに対して当事業は半年~1年と短いため、分譲マンションの収益の谷間を埋める事ができ、資金の回転も効く。マンション分譲で培ったデザイン性や環境面を配慮した設計・施工力等を活かしパワービルダーとの差別化を図っている。
 
その他不動産販売事業
物件情報を有効活用する機能を担っており、宅地の開発・販売や賃貸マンションの建築・販売等を手掛けている。
 
不動産賃貸事業
自社で保有する住居、店舗・事務所、駐車場、及びトランクルームの賃貸事業を行っており、将来的には全社的な固定費負担を賃貸収入でカバーできる体制を構築したい考え。不動産の保有リスクを低減するためにリスク管理も徹底しており、定期的に資産の入れ替えを行っている。特に保有資産の中で大きなウエートを占める住居系の資産(賃貸用マンション)は、一定期間後の入れ替えを念頭に、個人の富裕層等で購入希望者が多い2~3億円の物件を中心とした資産構成となっている。各物件の表面利回りは9~10%と高い。
 
 
【強み】
日本有数の住宅地である神戸、明石、阪神間を主要な事業エリアとする事で高い生産性を実現すると共に情報力で比較優位を確立しており、地域に根差したコミュニティづくりでも定評がある。また、既存の事業エリアに隣接する大阪府北部の優良住宅地への展開余地を残している事も強み。
 
 
また、過度なレバレッジを避け、リスク管理を徹底する事で健全な財務体質を維持しており、資金の調達先もバランスがとれ、かつ、安定している。この結果、多くの上場企業が淘汰されてきた不動産業界にあって、創業から110年以上を超える社歴の中で損失計上はリーマン・ショックの影響を受けた10/2期のみ。配当を継続する事で株主への還元も続けている。
 
 
まとまった用地の供給が少なく大手マンション事業者が得意とする大型物件の開発が難しい神戸市・阪神間では(神戸市等では建築規制も強い)、これまで中堅・中小のマンション事業者との競合が多かった。しかし、リーマン・ショック後の市況悪化で近畿圏では中堅・中小のマンション事業者の淘汰が進んでおり、96年には346社あった同エリアでのマンション供給業者が2012年は104社(11年は106社)にとどまった。(不動産経済研究所調べ)
 
 
 
 
2014年2月期上期決算
 
 
前年同期比13.6%の増収、4億49百万円の経常損失(前年同期は1億19百万円の損失)
売上高は前年同期比13.6%増の79億10百万円。主力の分譲マンション販売において引渡しが順調に進んだ上、管掌部署を戸建事業推進室から戸建事業部へ昇格させ仕入・販売を強化した戸建住宅販売の売上も伸びた。一方、ポートフォリオ入れ替えの一環として前期に物件売却が増加した影響で賃貸収入が減少したものの、住居系の賃貸物件は平均94%以上の高い稼働率を維持した。

営業利益は同53.3%減の99百万円。利益率の高い不動産賃貸の売上減少やその他不動産販売の売上計上(宅地売上)がなかった事に加え、分譲マンション販売での若干の利益率低下、賃貸物件の大規模修繕等もあり、売上総利益が減少する中、大型開発プロジェクトにかかる租税公課(登録免許税)等で販管費が増加した。大型開発物件の仕入等、積極的な用地仕入で金融費用が増加した他、夏の集中豪雨に伴う災害損失1億円を特別損失に計上したため、四半期純利益は3億53百万円の損失となった。

尚、期初予想との比較では、分譲マンションの引渡しが予定を9戸上回った事等で売上が上振れ。販売促進にかかる経費の削減や一部経費の発生が第3四半期以降にずれ込んだ事等で、当初20百万円の損失を見込んでいた営業損益において、99百万円の利益を確保できた。
 
 
分譲マンション販売
売上高60億79百万円(前年同期比15.4%増)、セグメント利益28百万円(同26.0%減)。発売戸数265戸(同18.7%減)、契約戸数371戸(同17.0%増)、引渡戸数196戸(同40.0%増)、契約済未引渡戸数797戸(同12.7%増)。
契約済みマンションの引渡しが順調に進み、引渡戸数が196戸と同40.0%増加。金利やマンション価格の先高感に加え、消費税率の引き上げを控えている事もあり、販売(売買契約の締結)が順調に進み契約戸数が371戸と同17.0%増加した(上期末時点で今期竣工予定物件95%の契約が完了)。また、仕入れも順調に進み、来15/2期に引渡(売上計上)を行う物件の仕入れが完了した。
 
戸建て住宅販売
売上高7億89百万円(前年同期比63.3%増)、セグメント利益31百万円(前年同期は4百万円の損失)。戸建住宅販売の管掌部署を戸建事業推進室から戸建事業部へ昇格させた。通期で100戸の引渡しを予定しているが、第4四半期に引渡しが集中するため、上期の引渡しは24戸にとどまった(前年同期の引渡しは15戸)。
 
不動産賃貸収入
売上高10億02百万円(前年同期比6.1%減)、セグメント利益3億45百万円(同21.2%減)。4月に43戸の住居系物件1棟を取得したものの、ポートフォリオ入れ替えの一環として、前期に住居系物件5棟191戸を売却した影響が大きかった。また、住居系の賃貸物件が平均94%以上の高い稼働率を維持したものの、店舗・事務所が課題を残した。
 
 
その他不動産販売
前年同期は宅地の売上を計上したが、この上期は売上の計上がなかった。
当セグメントでは、個人富裕層向けに賃貸物件の1棟売りも手掛けているが、従来からの2~3億円の物件に加え、小型の物件情報を活かして収益機会の拡大を図るべく、今後は1億円前後の小型の賃貸物件の1棟売りも強化していく考え。この一環として、8月に東証2部上場の(株)日住サービス(大阪市、証券コード8854)と業務・資本提携契約を締結した。(株)日住サービスは、京阪神エリアに38 営業部所を展開し、不動産売買・賃貸仲介業務を中心に、不動産の買取り販売業務、不動産賃貸業務、リフォーム・建設業務を手掛けている。今後は、用地情報の提供、入居者の斡旋・管理業務、物件売却に当たっての仲介等で、和田興産(株)の1棟売り賃貸住宅事業を支援していく(和田興産(株)は企画・建築に経営資源を集中)。
 
 
 
上期末の総資産は前期末比31億43百万円増の572億51百万円。大型物件の用地取得など積極的な仕入で仕掛販売用不動産が増加した他、賃貸物件の取得やマンションギャラリー用地の取得で固定資産も増加。資金手当てとして長期借入金を積み増しした。尚、上期の物件取得は14プロジェクト86億32百万円で、このうち分譲マンション販売事業が11プロジェクト85億16百万円。一方、完成在庫については、前期竣工物件の完成在庫を一掃した(上期末の完成在庫は今期竣工の2戸のみ)。積極的な仕入れによる資産の増加で自己資本比率は24.9%と前期末に比べて2.5ポイント低下した(前期末27.4%)。
CFの面では、大型物件の用地取得など積極的な仕入で営業CFのマイナス幅が拡大する中、賃貸物件の取得やマンションギャラリー用地の取得で投資CFのマイナス幅も拡大した。
 
 
 
2014年2月期業績予想
 
(1)13年上期のマンション市場の動向
13年上期の近畿圏のマンション発売戸数は前年比9.5%増の1万1,318戸。特に8月の発売戸数は、消費税率引き上げ前の駆け込み需要もあり、1,994戸と前年同月比56.3%増加した。また、初月契約率も販売の好不調の目安となる70%を18ヶ月連続で上回った(9月は80.6%)。尚、13年の近畿圏でのマンション発売戸数は2.5万戸が予想されている。

また、同社が強みを有する神戸・阪神間の13年上期の発売戸数は、兵庫県下(神戸市を除く)同28.2%増の1,278戸、神戸市同3.0%増の1,194戸。基準地価(住宅地)は神戸市灘区で同1.6%上昇し、阪神南地区(尼崎市、西宮市、芦屋市)は2年連続の上昇。
 
 
通期予想に変更はなく、前期比22.1%の増収、同1.8%の経常増益
売上高は前期比22.1%増の310億円。不動産賃貸収入が減少するものの、780戸(同19.4%増)の引渡しを予定している分譲マンション事業の売上が254億円と同22.7%増加する他、100戸の引渡しを目指す戸建住宅販売事業の売上も同32.7%と伸びる。

利益面では、利益率の高い不動産賃貸収入の減少や大型プロジェクト関連の先行投資による分譲マンション事業の一時的な利益率の低下に加え、戸建住宅販売事業の利益率の想定が保守的な事もあり、営業利益は28億円と同5.6%の増加にとどまる見込み。経常利益も20億円と同1.8%の増加にとどまるものの、特別損失を見込んでいないため当期純利益は10億円と同31.3%増加する。

配当は1株当たり年20円を予定しており、4年連続の増配(2円増配)。
 
 
分譲マンション販売
売上高は前期比22.7%増の254億円を見込んでおり、竣工は23棟・762戸を予定。このうち下期の竣工は、15棟・580戸を予定しているが、556戸については8月末時点で契約済み(契約率95.9%)。
 
 
下期の契約は来15/2期引渡(売上計上)物件が中心となり、仕入は再来期以降の引渡物件が中心。消費増税と建築コスト上昇への対策として、同社初の470戸超プロジェクトの推進などスケールメリットを享受できる大型プロジェクトへの取り組みを強化する他、常設マンションギャラリー戦略の下、地域密着を基本としつつ、大阪府豊中市プロジェクト(ワコーレ豊中ステーションウイング、ワコーレ豊中曽根カーサ)や神戸市北区プロジェクト(ワコーレ神戸岡場ステーションマークス)等、供給エリアを広げていく。また、リードタイムの短縮にも努める。
 
消費増税と建築コストへの対策(100戸を超える大型プロジェクトに着手)
中央区浜辺通プロジェクト(仮):JR神戸線「三ノ宮」駅徒歩12分、総戸数:471戸
垂水区舞子台プロジェクト(仮):JR神戸線「舞子」駅徒歩9分
中央区脇浜町プロジェクト(仮):JR神戸線「灘」駅徒歩8分
 
戸建て住宅販売
100戸の引渡しを予定しており、売上高31億円(前期比32.7%増)、売上総利益4億43百万円(同26.2%増)を見込んでいる。年間100戸の供給体制が整った事から、他社との差別化(デザイン性、環境面配慮住宅等による高付加価値化)への取り組みを強化していく考え。
 
その他不動産販売
売上高は前期比2.3倍の5億円を見込む。資本・業務提携先である(株)日住サービスとの連携を強化して投資意欲が旺盛な個人富裕層に人気のある小規模賃貸住宅 (1億円程度の木造アパート等)の開発に取り組んでいく考え(収益機会の拡大に加え、狭小地等でも事業化可能なため、物件情報の有効活用にもつながる)。
 
不動産賃貸収入
売上高は前期比4.3%減の20億円を見込む。主力の住居系において、稼働率(94%以上)の確保を念頭に優良なポートフォリオ維持に向けた物件の入れ替えを進める。
 
 
今後の注目点
竣工・引渡しが順調な事から今期の業績に不安はない。現在の販売は来期以降の引渡し物件が中心で、来15/2期引渡し予定の75%、再来期引渡物件の25%の契約を今期中に締結したい考え。また、仕入れは再来期以降の引渡し物件の取得に取組んでおり、大型プロジェクト用地の取得等、仕入れも順調。
一方、気になるのは建築費の上昇で、復興需要で5%程度上昇していていた建築費が、オリンピック需要に対する期待感から、更に数%上昇していると言う。このため、同社は、スケールメリットの効く大型物件を強化している他、工事の発注先を地場のゼネコンから、兵庫県全域や大阪のゼネコンに広げる等、コスト競争力のあるゼネコンの選定に力を入れている。また、消費税引き上げを前にした特需の反動も懸念されるが、同社の販売現場では、8、9月に特段の過熱感を感じる事はなく、また、10月も大きな冷え込みがなかったと言う。来15/2期は800戸程度の引渡しを予定しており、売上総利益ベースで5%程度の成長をイメージしているようだ。