ブリッジレポート
(3667) 株式会社enish

スタンダード

ブリッジレポート:(3667)enish vol.4

(3667:東証マザーズ) enish 企業HP
杉山 全功 社長
杉山 全功 社長

【ブリッジレポート vol.4】2013年12月期第3四半期業績レポート
取材概要「第3四半期累計の利益が既に通期予想を上回っているにもかかわらず、業績予想の修正を行わなかったため、第4四半期は営業損益以下の各・・・」続きは本文をご覧ください。
2013年11月19日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社enish
社長
杉山 全功
所在地
東京都渋谷区広尾1-13-1
決算期
12月末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2012年12月 4,430 666 654 373
2011年12月 2,590 526 523 298
2010年12月 415 64 71 55
2010年1月 22 -40 -41 -41
株式情報(11/5現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
2,813円 5,329,760株 14,993百万円 48.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
17.00円 0.6% 85.31円 33.0倍 398.24円 9.3倍
※株価は11/5終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
enishの2013年12月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
レストラン経営シミュレーションゲーム「ぼくのレストランⅡ」やアパレルショップの経営シミュレーションゲーム「ガルショ☆」、カードバトルゲーム「ドラゴンタクティクス」等の人気作品を有するソーシャルゲームの開発会社。「GREE」、「Mobage」、「mixi」等のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通してゲームを提供している。
社長を務める杉山全功氏は占いコンテンツ大手ザッパラス(3770)の会長兼社長として、ザッパラスを東証1部上場へ導いた実績を有する。
 
【事業内容】
事業はソーシャルアプリ事業の単一セグメント。自社で開発したゲームを、「GREE」、「Mobage」、「mixi」、「hangame(ハンゲーム)」、「Ameba(アメーバ)」、「entag! !(エンタグ)」といったプラットフォーム(SNSやソーシャルゲームサイト)を通して提供しており、ユーザーはフィーチャーフォン(従来型携帯電話)やスマートフォンでゲームを楽しむ事ができる。ゲームは無料だが、ゲームを展開する上で有効なアイテム等(「ぼくのレストランⅡ」の場合、店を繁盛させるために必要なレシピや店舗を飾るアイテム等)を購入した場合、課金が発生する。ユーザーへの課金及び料金回収はSNSを運営するプラットフォーム事業者に委託し、同社はその対価としてシステム利用料等を支払っている。

ユーザーはF1層と呼ばれ、購買力が高いとされる20~30代の女性が中心で、「ぼくのレストランⅡ」はユーザーの70~80%、「ガルショ☆」は90%が女性。13/12期上期は、「ぼくのレストランⅡ」の売上が非連結売上高の34%を占め、以下、「ガルショ☆」22%、「ドラゴンタクティクス」(バトルゲーム)27%、「ポケットダンジョン2」(同)9%、「男塾」2%、その他6%。
 
【強み】
ソーシャルゲームビジネスは、基本は無料で利用でき、ゲーム内で使用するアイテムの販売等で収益をあげていくビジネスである。このため、ゲームでいかにして「お金を払ってもいいから、もっと楽しみたい」と言う気にさせるかがポイントとなり、ゲームとしての完成度の高さに加え、リリース後もユーザーの嗜好の移り変わりに合わせたゲームシステムの改良やイベント等の導入といった運営力が必要となる。

同社はデータマイニングの強みを活かし、ゲームのリリース後にもユーザーの行動履歴の分析を行う事で、ゲームの利用率、継続率、課金率等の指標が改善するよう継続的にゲームに改良を加えている。こうした改良は同社に限った事ではないが、数週間で配信が終了するゲームもある中、同社においてはロングセラーとして長く収益に貢献しているゲームが多い事が同社のデータ分析の精度の高さと分析に基づく施策の妥当性・適時性を物語っている。また、この成功体験を新規タイトルの企画・開発に活かして、戦略的・継続的に作品を投入している。

ゲーム作品を複数のプラットフォームに迅速に提供可能なフレームワークの整備が進んでいる事も同社の強みである。このため、ゲームの特性と各プラットフォームのユーザーの特徴や傾向を考慮して配信するプラットフォームやその組み合わせを決める事や、短期間での新規アプリの企画・開発と相まって成長速度の速いソーシャルゲーム市場に機動的に対応していく事が可能である(フレームワークとはアプリケーションソフトを開発する際に必要となるアプリケーションの土台として機能するソフトウエアの事)。
 
 
提供先プラットフォーム:GREE、mixi、Mobage、hangame、Ameba、entag!、dgame、mobcast、ヤマダゲーム、コロプラ
 
 
2013年12月期第3四半期決算
 
 
売上高が過去最高を更新。先行投資負担を吸収して同43.0%の営業増益
売上高は前年同期比51.4%増の17億02百万円。第3四半期にリリースする予定だったAmeba専用ブラウザアプリ「ドラゴンタクティクス レガリア」(10月9日リリース)とネイティブアプリ「ドラゴンンタクティクス インフィニティ」(10月30日リリース)のリリースが10月にずれ込んだものの、前期の第3四半期にリリースした「ドラゴンタクティクス」のブラウザアプリが四半期ベースで過去最高の売上を計上した他(「ぼくのレストランⅡ」と同水準の売上規模に成長)、13年5月に投入した同社初の大型版権採用タイトル「魁!男塾」も順調にユーザー数を伸ばした。また、プラットフォームの増加やキャンペーン・広告効果等で「ガルショ☆」も堅調に推移した。

タイトル別の売上構成比は、ぼくのレストランⅡ 29.9%、ガルショ☆ 21.3%、ポケットダンジョン2 6.1%、ドラゴンタクティクス 29.7%、魁!男塾 7.8%、その他 5.3%。カテゴリ別では、バトルゲームの売上が前年同期の3.75倍に拡大し、売上構成比が18%から44%に上昇(経営シミュレーションゲームは同6%増)。プラットフォーム別では、GREEの構成比が69%から45%に低下する一方、mixi(12%→18%)、mobage(11%→16%)の比率が上昇。新たなプラットフォーム(ヤマダゲーム、コロプラ)への提供等もあり、その他の構成比も6%から11%に上昇した。また、スマートフォン経由の売上が全体の50%に達した(前年同期は33%)。

利益面では、スマートフォンの普及に対応した既存タイトルのネイティブアプリ化や新作タイトルの開発に加え、開発要員の増員もあり、先行投資負担が増加したものの、増収効果で吸収。営業利益が3億26百万円と同43.0%増加した。来期の開発体制の整備も念頭に開発要員の採用を積極的に進めたため、第3四半期末の全従業員数は165名(うち派遣社員など35名)と前期末に比べて44名増加した。従業員の職種別構成比は、エンジニア37.6%、デザイナ31.5%、ディレクタ17.6%、管理等10.4%。

尚、ネイティブアプリ(ゲームはアプリのカテゴリの一つ)とは、端末のCPUが直接処理・実行できる形式でコードが記述されているアプリの総称。主にスマートフォン向けに提供され、端末にダウンロードして楽しむ。これに対するブラウザアプリは、ダウンロードせず、GREE、mixi、Mobage等のプラットフォームにアクセスしてブラウザ上で楽しむ。
 
 
「魁!男塾」等、新作の制作外注コストや売上に連動する支払手数料を中心に売上原価が10億93百万円と前年同期比52.9%増加したものの、売上原価率は64.2%と前年同期に比べて0.6ポイントの上昇にとどまった。また、「魁!男塾」を中心にした広告宣伝費の増加や採用が順調に進んだ事による人件費の増加等で販管費も2億82百万円と同56.1%増加したが、販管費率16.6%と0.5ポイントの増加にとどまった。尚、売上の伸びを、支払手数料の伸びが下回ったのは、マルチプラットフォーム戦略の効果による。
 
 
第2四半期(4-6月)との比較では、第3四半期は「魁!男塾」や「ドラゴンタクティクス」をけん引役に売上高が10.1%増加。制作外注費や広告宣伝費を中心に営業費用が増加したものの、増収効果で吸収して営業利益が5.6%増加した。
 
 
「魁!男塾」の寄与に加え、第2四半期に前四半期比で減収となった「ドラゴンタクティクス」が早めのテコ入れで反転増収。「ガルショ☆」も堅調に推移した。一方、「ぼくのレストランⅡ」は前期の第4四半期(10-12月)をピークに減収が続いている。減収はアクティブユーザー単価の低下によるもので、イベントがユーザーの支持を得られていなかった(月間ユニークユーザー数は同水準を維持)。このため、イベントをリニューアルしたが、外注対応の業務も含まれているため修正に2~3ヵ月の期間を要するため、同社では第4四半期中に売上が底打ちするとみている。
 
 
上場効果による採用効率の向上と採用環境の改善で採用が順調に進んでいる。期末の計画従業員数165名を既に確保しているが、来期以降の開発体制の整備に向け、採用の上積みを検討している。
 
 
第3四半期末の総資産は、業績拡大を背景にした現預金と純資産の増加で22億16百万円と前期末比6億17百万円増加した。現預金が総資産の53.1%を占め、自己資本比率は72.7%(前期末65.8%)。
 
 
2013年12月期業績予想
 
(1)下期の取り組みと進捗状況
下期の取り組みは、ネイティブアプリを中心にした新作タイトルの投入、開発体制の充実、O2Oの推進、知育アプリの提供開始、海外展開、及びマルチプラットフォーム展開。各取り組みの進捗状況は次の通り。
 
4タイトルのリリースが第4四半期に集中
下期リリースのタイトル数を当初計画の3タイトルから4タイトル(ブラウザアプリ1タイトル、ネイティブアプリ3タイトル)に増やしており、リリースが第4四半期に集中する。リリースに合わせて、広告宣伝費を集中投下していく考え。尚、10月にブラウザアプリ1タイトル、ネイティブアプリ2タイトルをリリース済み。
 
開発体制の拡充
来期を見据えて開発要員を中心に人材採用を前倒しで進めており、期末全従業員数の計画を当初の157名から165名に引き上げ、第3四半期末には計画の165名を確保した。しかし、株式上場で同社の採用力が高まっている事と採用環境が好転している事を踏まえて、来期以降をにらんだ開発体制の整備を更に進める考え。第4四半期中に若干名の採用を検討している。
人員増で手狭になるため事務所も移転する予定(13年12月を予定)。人件費の増加や移転に関連して発生する費用・損失については予想できる範囲で業績予想に織り込んだ。
 
O2Oの推進
ゲーム周辺事業として力を入れている「O2O(Online To Offline)」については、国内最大級(全国約50万店舗)を誇る飲食店情報検索サイト「ぐるなび」との提携案件を10月29日に開始した他、(株)コロプラとの業務提携による位置ゲーを活用した案件を第4四半期中に開始する予定。「ぐるなび」との提携案件では、「ぐるなびタッチ」の加盟店舗に設置された端末に携帯をかざすと、ゲーム内で様々なアイテムを無料取得できる。「ぐるなびタッチ」とは、携帯電話を店舗に設置された専用端末にかざすだけで様々な特典を受ける事ができる「ぐるなび」独自のサービス。
 
知育アプリの提供開始
開発を進めてきた知育アプリを第4四半期中にリリースする予定。ただ、13/12期業績には、売上は織り込まず(このため、下期リリース予定の4タイトルに含めていない)、運営コストのみを織り込んだ。
 
海外展開
市場のボリュームが大きく、成長力にも富んだ海外市場への参入準備を進めてきたが、第4四半期中に韓国で第1弾がスタートする。既存市場での優位性を活かし、ローカライズ・カルチャライズでの展開を計画しており、海外戦略の専門人員も確保済み。ノウハウの蓄積が進めば、自社でプロモーションリスクをとる考えだが、当面は、現地のパブリッシャーと提携の下での展開となり、開発コードを開示し、ローカライズやパブリッシングを任せる。13/12期は運営及び広告宣伝コストのみを織り込み、売上は織り込んでいない。
 
マルチプラットフォーム展開
フレームワークを活かして既存タイトルを未進出プラットフォームへ展開させるマルチプラットフォーム展開を進めており、第3四半期はヤマダゲームとコロプラにアプリの提供を開始した。現在、10プラットフォームにアプリを提供している。マルチプラットフォーム展開は、開発コストをかけずに新たな収益機会を得る事ができる。一方、進出済みのプラットフォームにおいては、コストパフォーマンスを重視し広告宣伝費の効果的な投入によって利益の極大化を図っていく。
 
 
 
通期業績予想に変更はなく、前期比51.2%の増収、同23.1%の営業増益
通期予想に対する進捗率は売上高が72%にとどまるものの、営業利益は128%と既に通期予想を上回っている。ただ、第4四半期は新作4本をリリースする予定で、広告宣伝費を集中的に投下していく。この他、本社移転費用や決算賞与等が発生する他、開発要員を中心に人材採用の前倒しも検討中。上期上振れ分の利益は業容拡大に向けた追加投資へ優先的に充当していく考え。

配当予想は正式に公表されていないが、当期純利益が予想通りであれば、今期の配当は1株当たり17円となる見込み。10月1日付けで、1:2の株式分割を実施しており、これを考慮すると、実質6円増配の期末34円。同社は総配分性向20%を目途に配当を実施していく考え。
 
 
今後の注目点
第3四半期累計の利益が既に通期予想を上回っているにもかかわらず、業績予想の修正を行わなかったため、第4四半期は営業損益以下の各損益段階で損失計上となる計算だ。しかし、会社側が損失計上を見込んでいる訳ではなく、「経験値のないネイティブアプリ3本のリリースが集中するため(2本は10月にリリース済み)、合理的に業績を予想する事が難しい。このため、業績予想を据え置いた」と言う事ではないだろうか。バトルゲームを中心に既存タイトルが堅調な事から、当面の業績に不安は少ないと考える。
第4四半期はネイティブアプリ以外にも、海外展開、知育アプリと材料が多い。いずれも来期以降の業績を考える上でのポイントとなるだけに、その立ち上がりが注目される。