ブリッジレポート
(2714) プラマテルズ株式会社

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ブリッジレポート:(2714)プラマテルズ vol.15

(2714:JASDAQ) プラマテルズ 企業HP
井上 正博 社長
井上 正博 社長

【ブリッジレポート vol.15】2014年3月期上期業績レポート
取材概要「上期全体では減益となったものの、第2四半期の3ヶ月間に限ると、海外日系メーカー中心に需要回復と国内の底打ちで第1四半期比5.2%の増収・・・」続きは本文をご覧ください。
2013年12月10日掲載
企業基本情報
企業名
プラマテルズ株式会社
社長
井上 正博
所在地
東京都品川区北品川4-7-35 御殿山トラストタワー
決算期
3月 末日
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2013年3月 55,610 817 783 420
2012年3月 57,790 883 840 531
2011年3月 55,762 899 842 500
2010年3月 47,145 663 621 388
2009年3月 52,550 893 809 489
2008年3月 56,861 1,089 943 704
2007年3月 52,022 1,219 1,115 652
2006年3月 50,673 1,054 1,005 569
2005年3月 46,804 790 746 403
2004年3月 43,720 659 566 309
2003年3月 42,614 685 642 240
株式情報(11/5現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
398円 8,548,367株 3,402百万円 6.4% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
15.00円 3.8% 42.11円 9.5倍 795.07円 0.5倍
※株価は11/5終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
プラマテルズの2014年3月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
合成樹脂の専門商社。原料メーカーから仕入れた樹脂原料やコンパウンド(樹脂原料に添加剤を加え機能を強化した成形材料)をセットメーカーや成形メーカー及び樹脂の二次加工メーカーに販売している。最終用途は、電子・電機・OA機器、玩具、住宅建材、自動車等。連結子会社10社 (国内2社、中国4社、香港1社、シンガポール1社、フィリピン1社、タイ1社)、持分法適用関連会社1社(ベトナム)と共にグループを形成し、子会社で合成樹脂フィルターの製造・販売も手掛ける。総合商社の双日(株)グループにおいて合成樹脂部門を担う双日プラネット(株)が株式の46.5%を保有している。
 
【沿革】
1951年3月、合成樹脂の販売を目的とした日本樹脂(有)として設立され、52年3月に株式会社に改組。2000年1月のプラマテルズ(株)への商号変更を経て、01年10月にJASDAQに株式を上場した(11年10月にJASDAQ上場10周年を、12年3月に設立60周年を、それぞれ迎えた)。社名の「プラマテルズ」は、合成樹脂原料の英語名プラスチックマテリアルズに由来する。
 
グループでの拡大戦略や積極的な海外展開も同社の特徴で、03年1月に香港に現地法人を、同年4月に上海に現地法人を、それぞれ設立。その後、シンガポールに拠点を開設し(04年3月に法人化)、04年10月に天津に現地法人、06年2月には東洋インキ製造(株)との合弁でベトナムにコンパウンド製造・販売会社を設立(出資比率20%)。アジア進出を進める日系企業への供給体制の充実を図るべく、09年1月にシンセン、同年8月に大連、11年7月にフィリピン、12年7月にタイ(バンコク)、13年5月にインド、同年8月に台湾、と子会社を相次いで設立した。
 
また、グループに製造部門を有し、上記の合弁会社の他、98年11月に二次加工等の(株)富士松を100%子会社化し、更に03年9月にはフィルタレン(株)を設立して同年10月よりメディカル向け等の合成樹脂フィルターの製造・販売を開始した。
 
 
【事業の特徴】
石油精製の過程で得られるナフサ(粗製ガソリン)を高温熱分解して得られるエチレンやプロピレン等の出発原料を重合すると(分子同士を結合させて高分子にする事)、プラスチック、合成繊維原料、合成ゴム等、基礎製品の原料となるポリエチレンやポリプロピレン等の高分子が生まれる。同社はポリエチレンやポリプロピレン等を原料メーカーから仕入れて、OA機器、家電、自動車部品メーカー等に販売している。
 
重点仕入先と仕入商品及び用途
旭化成グループ
スチレン系プラスチック:冷蔵庫、エアコン等
東洋インキグループ
プラスチックコンパウンド:OA・事務機器
帝人グループ
エンジニア系プラスチック:カメラ・プリンター外装
この他、双日グループ、チッソグループ、三井化学グループ、出光興産グループ等
 
主な販売先と構成比(13/3期連結ベース)
OA・事務機器(31.5%)、家電・電子(14.7%)、建材(11.2%)、医療機器(8.4%)、自動車(6.2%)、容器・化粧品(2.1%)、玩具・その他(25.9%)
 
品目別売上高と構成比(13/3期個別ベース上位100社)
プラスチック原料(ペレット):46,119百万円(82.9%)
プラスチック製品:8,631百万円(15.5%)
プラスチック関連機械:515百万円(0.9%)
プラスチックシート:342百万円(0.6%)
 
 
同社は、相対的に単価が高く高付加価値商材であるエンジニアリング系樹脂やスチレン系樹脂の取扱が多い。エンジニアリング系樹脂とはポリアミド樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート等で、用途はOA・事務機器、光学機器(カメラ等)、精密部品(ギア等の機構部品)、及び電子部品(コントローラー等)等。また、ポリスチレンやABS樹脂等のスチレン系樹脂は、家庭電器製品(エアコン、冷蔵庫等)、OA・事務機器(パソコン及び周辺機器、FAX等)、及び玩具等で使われている。
 
販売先業界別では、日本メーカーが圧倒的な強みを持つOA・事務機器が31.5%、スチレン系・オレフィン系が中心の家電・電子(売上構成比14.7%)、塩化ビニール系材料が中心の建材(同11.2%)、この他、スチレン系やポリエチレンテレフタレート等の玩具・その他が25.9%。この他、医療機器8.4%、自動車6.2%、容器・化粧品2.1%と取引先は多様だ。
 
 
【コアコンピタンスと競合先】
(1)コアコンピタンス
高付加価値商材の拡販の原動力となっているのが、(1)合成樹脂原料に関する高い専門性、(2)商社としてのネットワークを駆使した、メーカーを巻き込んでの提案力、及び(3)顧客との質の高いコミュニケーションが可能とする少量多品種即納体制、の3点。いずれも合成樹脂専門商社に不可欠な要素であり、最もQCDに厳しい日本の優良企業との継続的取引の中で同社が磨き上げてきたコアコンピタンスである。高い専門性を背景にメーカーと一体となって提案営業を進める事でビジネスを広げ、少量多品種の即納対応及び顧客密着型の営業展開で顧客満足度を高めている。
 
 
(2)競合先
ライバルは、総合商社系列の専門商社や化学系専門商社であり、海外ではブローカー等。総合商社系列の専門商社は基本的に汎用品等の大きなロットでのビジネスを志向しており、同社のように提案営業による需要の掘り起こしや多品種少量の取引に積極的に対応するケースは少ない。海外ではブローカー的な企業が取引に介在する事はあるが、同社のようにきめ細かい営業を行う文化がない。
取扱商品が我々最終消費者の目に触れる事がめったにないため、理解しにくい一面を持つ同社だが、国内外のライバルと比較すると、同社の存在感が際立ってくる。
 
【市場動向と成長戦略】
(1)市場動向
同社が強みを有するエンジニアリング系樹脂市場は、成長著しいアジアにおいて5%以上の成長が続くとみられている。また、国内においても堅調に推移しており、概ね横ばいを維持している。こうした中、販売先の海外展開に対応していく事で海外の成長力を取り込んでいく考え。もっとも、販売先は精密機器、医療機器、家電電子等の勝ち組企業が多く、いずれの販売先も国内外での生産バランスに配慮した経営を行っているため、国内も事業の拡大余地を残している。
 
(2)成長戦略
13/3期実績ベースの仕向け先別売上構成比は、国内69.2%、香港16.9%、中国10.6%、アジアその他3.3%。改めて国内での足場固めを図ると共に、海外では、アジアでの営業ネットワークを構築し顧客企業のアジアでの生産拡大をサポートしていく。
 
国内
12年5月に弘前営業所を、同年8月に長崎出張所を、それぞれ開設した。弘前営業所の営業圏となる青森にはワールドワイドに展開する精密機器メーカー系の精密部品メーカーがあり、秋田には大手医療機器メーカーの生産拠点がある。また、長崎ではワールドワイドに展開する精密機器メーカーの工場がある。13年6月には大分営業所を九州支店へ組織変更した。
 
 
海外
中国沿岸部に加え、広くアジアへ展開する事で変化する顧客ニーズを確実に捉える体制を構築し、更なる成長を目指す考え。この一環として、11年7月にフィリピン、12年7月にタイ(バンコク)、13年は5月にプーネ(インド)、8月には台中(台湾)に現地法人設立した。既に中国沿岸部での拠点開設は一巡しており、14/3期にアジアの拠点整備も完了する。来15/3期よりアジアに展開する各拠点の収益貢献が始まる。
 
 
 
2014年3月期上期決算
 
 
前年同期比1.7%の増収、同8.9%の経常減益
売上高は前年同期比1.7%増の287億53百万円。内訳は、海外売上高が同6.4%増の94億80百万円、国内売上が同0.5%減の192億72百万円。売上が同30%弱増加した上海を中心に中国事業が拡大した他、国内も底打ち感が出てきた(四半期ベースの国内売上高は5四半期ぶりに前期半期比で増収)。
 
営業利益は同11.1%減の3億84百万円。ナフサ価格の上昇を反映した売上原価の増加に加え、5月にインド、8月に台湾と子会社を設立する等、前期から今上期にかけて実施した国内外での拠点拡充に伴い販管費も増加した。為替差損益の改善で経常利益は同8.9%の減少にとどまったものの、総合型厚生年金基金からの脱退に際して発生した脱退時特別掛金2億66百万円を特別損失に計上したため、四半期純利益は38百万円と同83.1%減少した。
 
 
 
 
 
海外日系メーカーの需要回復に加え、国内も底打ち。第1四半期比で31.7%の経常増益
第2四半期(7-9月)の3ヶ月間では、第1四半期との比較で、5.2%の増収、31.7%の経常増益(前年同期比では、4.6%の増収、3.9%の経常増益)。
国内外の連結子会社合計の売上が7億円弱増加した事に加え、個別(プラマテルズ単体)も12百万円の増収。子会社では、香港(3億62百万円増)、上海(1億42百万円増)、フィリピン(77百万円増)、大連(54百万円増)の寄与が大きかった。
 
利益面では、売上総利益率が、前期の第4四半期以降、5.4%を維持しており、厳しい事業環境の中で利益率が安定してきた。一方、販管費は、拠点拡充等で人件費や賃借料等が増加したものの、経費全般にわたるコスト節減努力で第1四半期比1.3%の減少。営業利益は2億15百万円と同28.0%増加した。
 
 
 
上期末の総資産は前期末と同水準の238億67百万円。第2四半期の売上の増加で上期末にかけて運転資金が増加したため、営業CFが14億11百万円のマイナスとなり現預金が一時的に減少した。ただ、急増した資金需要に手持ち資金で対応したため、有利子負債は前期末に比べてわずかに減少。自己資本比率は30.0%と前期末比1.5ポイント改善した。
 
 
 
2014年3月期業績予想
 
 
通期予想に変更はなく、前期比4.3%の増収、同7.2%の経常増益
売上高は前期比4.3%増の580億円。国内売上の底打ちに加え、海外もアジアでの拠点開設効果が徐々に顕在化してくると見ている。営業利益は同6.4%増の8億70百万円。海外拠点の強化に向けた人材の確保と育成で先行投資負担が増加するものの、売上の増加と販管費の効率化で吸収する。 配当は、1株当たり上期末7円、期末8円の年15円を予定している。
 
 
 
今後の注目点
上期全体では減益となったものの、第2四半期の3ヶ月間に限ると、海外日系メーカー中心に需要回復と国内の底打ちで第1四半期比5.2%の増収、同31.7%の経常増益と回復基調が鮮明。通期で8.4億円の経常利益を計上した12/3期の第2四半期とほぼ同水準の経常利益を確保した。通期予想を達成するに当たって、下期のハードルが高いように感じるが、売上・利益共に前期の第4四半期を底にV字回復しており、第2四半期は、その足取りの確かさを示した格好だ。業績モーメンタムは良好であり、また、本格的な寄与は来期になるが、タイ(12年7月設立)、インド(13年5月設立)、台湾(13年8月設立)の3子会社も徐々に業績貢献してくる見込みで、通期業績予想は射程内にあると考える。当面の注目点は、第3四半期も、このトレンドを維持できるか否か。順調であれば、今期の業績予想達成にとどまらず、来期の見通しが明るさを増してこよう。