ブリッジレポート
(6050) イー・ガーディアン株式会社

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ブリッジレポート:(6050)イー・ガーディアン vol.11

(6050:東証マザーズ) イー・ガーディアン 企業HP
高谷 康久 社長
高谷 康久 社長

【ブリッジレポート vol.11】2013年9月期業績レポート
取材概要「同業者としては、ピットクルーやガイアックス等を挙げる事ができるが、最大のライバルは企業の内製化である。ソーシャルサポート、ゲームサポート・・・」続きは本文をご覧ください。
2013年12月10日掲載
企業基本情報
企業名
イー・ガーディアン株式会社
社長
高谷 康久
所在地
東京都港区麻布十番1-2-3
決算期
9月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2013年9月 2,487 188 228 129
2012年9月 2,232 83 110 51
2011年9月 1,907 176 161 88
2010年9月 1,340 204 212 119
2009年9月 858 123 123 116
2008年9月 461 0 0 -5
2007年9月 362 15 15 -6
2006年9月 606 -9 -17 0
2005年9月 684 6 3 -133
2005年3月 1,425 79 77 43
株式情報(11/27現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,933円 1,649,053株 3,188百万円 13.3% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
未定 - 78.83円 24.5倍 641.22円 3.0倍
※株価は11/27終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
イー・ガーディアンの2013年9月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
ソーシャルWebサービス(SNSやブログ等のソーシャルメディアや、ソーシャルゲーム、ソーシャルコマース等の双方向のコミュニケーションが介在する全てのインターネットメディア)の健全な運営や活性化に寄与するべく、メディアの監視やカスタマーサービス、更には広告審査業務や広告枠管理等のアド・プロセスサービスを提供している。
 
実際のサービスは、厳格に設定された基準の下、厳選されたオペレーターによる高品質な目視による監視と自動投稿監視システム「E-Trident」等を駆使したシステムによる監視のハイブリッドで提供されており、社会通念上不適切と考えられるコメントや犯罪を誘引するようなコメントに目を光らせている。また、24時間365日の稼働を強みとする監視センターは、同社が運営する東京(2拠点)、大阪、宮崎の3都市4拠点と、2012年6月に子会社化したイーオペ株式会社(宮城県仙台市)が運営する宮城の2拠点。
 
 
【業務区分】
事業は、ソーシャルサポート、ゲームサポート、アド・プロセスの3業務に区分され、いずれも件数に応じた課金体系を採用しており(一部サービスを除く)、高品質なサービスをリーズナブルな価格で提供。投稿監視システム「E-Trident」によるサービスに加え、サイト運用等の提案能力にも優れるイー・ガーディアン(株)とローコストオペレーションを強みとし低単価案件の収益化能力に優れる子会社イーオペ(株)で役割分担がなされている。
 
 
【成長戦略】
(1)監視業務のシステム化と顧客のソーシャルメディア運用支援
監視業務は「目視」と「システム」が一体となって進められるが、同社はシステムを強化する事で業務の効率化と付加価値向上に取組んでおり、現在の監視業務は投稿監視システム「E-Trident」をベースにサービスが提供されている。また、監視業務のシステム化で培ったシステム開発力を活かし、顧客のソーシャルメディア運用を支援するツールである「ソーシャルダッシュボード+」を開発し、13/9期に提供を開始した。「システム」のみの提供等にも柔軟に対応する事で多様なニーズを取り込んでいく考え。
 
投稿監視システム「E-Trident」
投稿監視システム「E-Trident」は、これまでに蓄積してきた技術やノウハウを詰め込んだ投稿監視を効率的に行うためのツール。マンパワーに頼らない効率的な監視が可能で、ベイジアンフィルタ技術を採用しているため、利用し続ける事で監視精度が向上する(対象となるデータを自動的に解析・学習・分類し監視精度を自ら向上させる事ができる)。また、分析やレポーティング機能を有する上、柔軟なワークフロー・エンジンを搭載しているため顧客毎のカスタマイズも可能。これまで顧客毎に個別のシステムを構築していたが、今後は汎用性の高い「E-Trident」に集約し、必要に応じてカスタマイズしていく考え。更に、多言語対応も可能なため、より大きなマーケットの開拓に向け海外展開の準備も進めている。
 
ソーシャルメディアの運用支援ツール「ソーシャルダッシュボード+」
12年11月にGoogleオフィシャルパートナーとして「ソーシャルダッシュボード+」を、「Google+(ページ)」を運営する企業向けにリリースした。「ソーシャルダッシュボード+」は、Googleが提供するソーシャルネットワークサービス(SNS)であるGoogle+(ページ)の運用を総合的に支援するツールとしてリリースされ、現在では「Google+」だけでなく「Facebook」や「Twitter」といったソーシャルメディア全般に対応している。投稿管理、ユーザーのコメント分類・監視、更にはレポーティングといった機能を有し、Google+ページをはじめとしたソーシャルメディアの運用効率と運用効果を高める事が可能だ。
 
 
(2)海外展開
13年3月にマスターピース・グループ(株)と海外でのソーシャルメディア運用代行サービスで提携した。マスターピース・グループ(株)は、国内(6拠点)、中国(5拠点)、タイ・(バンコク)、及びフィリピン(マニラ)にコンタクトセンターを展開し、それぞれの地域で、通信販売の受付や事務手続き、クレーム対応等のカスタマーサポートサービスを提供している。今回の提携を機に、イー・ガーディアン(株)がマスターピース・グループ(株)を通じて、中国や東南アジアに進出した日本系企業に対して「E-Trident」や「ソーシャルダッシュボード+」を提供し、マスターピース・グループ(株)がサポート・サービスを提供していく。特に中国では、中国版Twitterと呼ばれ、中国国内において急成長中のソーシャルメディア「新浪微博(Sina Weibo)」やソーシャルゲームの中国語対応で需要が増加していると言う。
尚、「新浪微博(Sina Weibo)」は、ANA、シャープ、ユニクロ、資生堂、花王等の大手日本企業に加え、地方自治体も公式アカウントを開設している。
 
 
2013年9月期決算
 
 
前期比11.4%の増収、同126.0%の営業増益
売上高は前期比11.4%増の24億87百万円。一部大口顧客向けの売上が減少したものの、ソーシャルサポートが堅調に推移する中、ゲームサポートが大きく伸びた他、アド・プロセスも高い伸びを示した。
営業利益は1億88百万円と同2.2倍に拡大。売上の増加に加え、宮崎センターの稼働が本格化し労務費抑制効果が顕在化してきたため原価率が73.2%と4.8ポイント改善。システム投資や海外展開等による販管費の増加を吸収した。補助金収入の増加(26百万円→37百万円)で営業外損益が、固定資産除却損や事務所閉鎖損等がなくなり特別損益が、それぞれ改善した。
 
 
一部の大口顧客向けを除くと、売上高は堅調に推移しており、収益性の改善も進んでいる。ただ、第4四半期(7-9月)は、一部大口顧客向けの売上減が比較的大きかった事に加え、東京センターの一部業務の宮崎センターへの移管を進めた事で、一時的にコストが増加し売上総利益率が低下した(東京センターでサービス提供を続ける一方、宮崎センターで立ち上げ作業を行ったため両センターで運営コストが発生した)。
 
 
監視体制の再編
第4四半期に東京センターの業務の一部を宮崎センターへ移管したため、13年10月に東京センターの業務を縮小した。引き続き状況を見ながら宮崎センターへの業務移管を進めていく考え。
 
 
 
期末総資産は前期末比2億59百万円増の14億29百万円。好決算とキャッシュ・フロー(CF)の改善によるキャッシュポジションの高まりが総資産増加の要因。財政状態は流動性に富み、有利子負債の残高もなく筋肉質。自己資本比率は73.9%。
 
 
売上の増加で営業CFが増加する一方、M&A関連の支出が無くなった事と開発投資がピークアウトした事等で投資CFのマイナス幅も縮小し、2億85百万円のフリーCFを確保した(前期は35百万円のマイナス)。自己株式の処分で財務CFも黒字となり、現金及び現金同等物(現預金)の期末残高が前期末の5億99百万円から9億11百万円に増加した。
 
 
2014年9月期業績予想
 
 
前期比0.5%の増収、同3.7%の営業増益
売上高は前期比0.5%増の25億円。一部の大口顧客向けの売上が前期の3億60百万円から66百万円に減少する事が響くが、既存顧客の深耕と新規顧客の開拓に加え、システム商材の販売により、一部の大口顧客を除く売上は前期の21億28百万円から24億34百万円へ増加する見込み。
 
利益面では、売上の増加に加え、前期末にかけて東京センターの一部業務を宮崎センターへ移管した効果が顕在化し売上総利益率が30%程度に改善する見込み。業容拡大に伴う販管費の増加を吸収して営業利益が1億96百万円と同3.7%増加する。補充金収入を見込んでいないため営業外収益が減少するものの、現状では特別損失の計上予定もない事から、前期並みの当期純利益を確保できる見込み。
 
 
上期は一部の大口顧客向け売上の減少が響くが、ソーシャルメディアやソーシャルゲームといった個人同士双方向のコミュニケーションが介在するソーシャルWebサービスは拡大が続いており、需要は旺盛。下期は増収に転じ、限界利益の増加で大幅な増益が見込まれる。
 
(2)14/9期の取り組み
業務提携による需要の取り込みとシステム戦略に取り組んでいく考えで、前者については、10月に株式会社リボルバー(東京都港区)と11月にグランドデザイン&カンパニー株式会社(東京都渋谷区)と、それぞれ提携。後者については、同じく11月にシックスアパート株式会社(東京都港区)が提供するパブリッシングプラットフォーム「MovableType」のプラグイン「E-Trident Link for Movable Type」をリリースした。また、(株)リボルバー及びグランドデザイン&カンパニー(株)については資本参加も行なった。
 
業務提携による需要の取り込み
株式会社リボルバーとの業務提携
この提携はイー・ガーディアン(株)の運用オペレーションを(株)リボルバーのサービス利用者に提供するもので、(株)リボルバーが提供するプライベートソーシャルネットワークサービス「Revolver」を活用してコミュニティ運営を行なっている「芸能人」、「政治家等の著名人」、或いは「消費者向けの商品を提供する法人」等のコミュニティ運営をサポートしていく。具体的には、コミュニティ監視とカスタマーサポートをRevolver公式パックとして販売する他、プラットフォームである「Revolver」自体の審査・カスタマーサポートも手掛ける。
尚、「Revolver」は、元AKB48の板野友美、倖田來未、土屋アンナ等の人気アーティストや、ラグジュアリーブランドのエミリオ・プッチ、人気バッグブランドのレスポートサックなどの企業に対して提供され、それぞれの専用のブランドとURLにてコミュニティ運営の基盤として活用されている。
 
グランドデザイン&カンパニー(GDC)株式会社との業務提携
この提携でイー・ガーディアン(株)はWeb投稿監視やCSサポート業務の経験と、24時間365日センターを6拠点保持しているリソースを活かし、O2Oマーケティング・ソリューション 「デジガチャ」の運営事務局やソーシャルメディア運用等の業務を代行する。
「デジガチャ」は、グランドデザイン&カンパニー(株)と(株)タカラトミーエンタメディアが共同開発したO2O(Online to Offline)を中心とするデジタルマーケティングのソリューション。リアルガチャのノウハウをデジタル化する事で、ユーザーとのエンゲージメントを高めながら、認知促進、サンプリング、来店促進、ソーシャルメディアマーケティング、店頭販促、イベント集客等の効力を高める。
 
システム戦略
E-Tridentやソーシャルダッシュボード+をベースとしたシステム商材の多角化の一環として、シックスアパート(株)が提供するパブリッシングプラットフォーム「MovableType」のコメント監視プラグイン「E-Trident Link for Movable Type」をリリースした。「MovableType」とは、ブログだけではなく、ウェブサイト単位でのウェブページや、ファイルの管理、更新履歴の保存などCMS(コンテンツ管理システム)としての基盤を進化させたパブリッシングプラットフォームで、ソフトバンク・テクノロジー(株)等を通じて販売している。
「E-Trident Link for Movable Type」は、「MovableType」と「E-Trident」を接続し、投稿監視の専用システムを利用する事で効率的かつ見落としのない監視運用を実現する。
 
 
今後の注目点
同業者としては、ピットクルーやガイアックス等を挙げる事ができるが、最大のライバルは企業の内製化である。ソーシャルサポート、ゲームサポート、アド・プロセス等のようにセンターを整備して対応する業務は、スケールメリットを追求できるアウトソーシングに適しているが、アウトソーシング市場の本格的な拡大には、その業務がある程度成熟する必要があり、時間を要する(当初は自社で対応していた業務も、アウトソーシング市場が発達し認知度が向上してくるとアウトソーシングにシフトしていく)。このため、自社で大規模なセンターを整備して監視業務等を行なっているヤフーやDeNA等は、同社の有力な潜在顧客と考える事もできる。両社にとって監視業務はコアコンピタンスではないし、アウトソーシングとの親和性が高いだけに、いずれアウトソーシングにシフトしていくと考えるのが普通だ。また、その際に内製化部門を買収してしまえば、一気に業容を拡大させる事ができる。そのためにも今は業界のトップランナーとして地道な実績作りが必要だ。
この他にも、規制緩和が道半ばの感はあるものの、クスリのネット販売解禁もビジネスチャンスであり、目に見える形での収益貢献には時間を要するだろうが海外展開でも布石を打った。いずれも中長期的な成長要因であるが今後に期待したい。