ブリッジレポート
(4829) 日本エンタープライズ株式会社

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ブリッジレポート:(4829)日本エンタープライズ vol.27

(4829:東証2部) 日本エンタープライズ 企業HP
植田 勝典社長
植田 勝典社長

【ブリッジレポート vol.27】2014年5月期第2四半期業績レポート
取材概要「“自社開発へのこだわり”が同社経営の神髄であり、配信するコンテンツやアプリは原則として自社製品。固定費負担が重くなるものの、開発費は・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年1月28日掲載
企業基本情報
企業名
日本エンタープライズ株式会社
社長
植田 勝典
所在地
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-17-8
決算期
5月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2013年5月 4,134 372 391 354
2012年5月 2,790 304 318 170
2011年5月 2,370 266 283 168
2010年5月 2,147 150 173 77
2009年5月 2,475 292 317 175
2008年5月 3,123 572 578 272
2007年5月 3,677 774 783 447
2006年5月 3,416 694 688 418
2005年5月 3,018 587 570 348
2004年5月 1,958 205 168 226
2003年5月 1,752 134 131 58
2002年5月 1,704 51 53 23
2001年5月 1,417 301 262 126
株式情報(1/15現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
327円 37,700,000株 12,328百万円 10.3% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
2.00円 0.6% 15.09円 21.7倍 98.62円 3.3倍
※株価は1/15終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROEは前期末実績。BPSは、上半期実績。
 
日本エンタープライズの2014年5月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
モバイルソリューションカンパニーを標榜。生活実用系や交通情報等のコンテンツを制作しスマートフォン等に配信するコンテンツサービス事業と、企業のコンテンツ制作・運営、システム構築、アフィリエイト広告、リバースオークションやIP-PBXソリューションといった業務(コスト削減)ソリューション等のソリューション事業が2本柱。また、日本のコンテンツを世界へ広げるべく海外展開にも力を入れており、中国とインドでは国内コンテンツプロバイダの先頭を走る。
 
自社制作へのこだわり
配信するコンテンツを自社開発する事で「提供するコンテンツの権利を自社で保有(高い収益性を実現できる)」する同社独自のビジネスモデルをベースとし、携帯電話販売会社との協業による成功報酬型コンテンツ販売(独自に開発したリアルアフィリエイト)システムと連動させる事でコンテンツの拡販に成功している。
 
企業グループ  連結子会社7社、非連結子会社3社
グループは、広告事業を手掛ける(株)ダイブ、音楽事業等を手掛けるアットザラウンジ(株)、交通情報を中心にした情報提供の交通情報サービス(株)、Web・Mobileサイト開発・保守及びコンテンツ開発等の(株)フォー・クオリア、中国事業の統括に加え、携帯電話販売店を手掛ける因特瑞思(北京)信息科技有限公司、モバイルコンテンツの企画・開発・配信の北京業主行網絡科技有限公司、IT系の教育事業を手掛ける瑞思創智(北京)信息科技有限公司の連結子会社7社、及び音声通信関連のソリューションを手掛ける(株)and One、モバイル向けコンテンツ配信やキャラクタライセンス事業の瑞思放送(北京)数字信息科技有限公司、インド現地法人NE Mobile Services(India)Private Limitedの非連結子会社3社。
 
【成長戦略】
フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行に伴うモバイル環境の変化に対応した施策を国内外で進めている。国内においては、携帯電話販売会社とのアライアンス、移動体通信事業者(以下、キャリア)の定額・使い放題サービスへの自社開発コンテンツ配信(auスマートパス、Yahoo!プレミアム、スゴ得コンテンツ)、業務ソリューションとしてのリバースオークション(日本オープンマーケット)の開設やIP-PBXソリューションの展開等、コンテンツサービス事業とソリューション事業の両事業でスマートデバイス時代に対応するべく事業領域の拡大に取組んでいる。

一方、海外においては、膨大な人口を抱え今後の成長が期待される中国とインドで事業基盤の構築に取組んでおり、中国では、電子コミックの配信事業と携帯電話販売事業(チャイナテレコムの携帯電話販売店を2店舗オープン済み)が軌道化しつつある。また、インドでは電子書籍配信を展開しており、スマートフォンやタブレットの普及が追い風になっている(11年12月に提携先であるインドのライフスタイルマガジン大手MAGNA社が出版している雑誌の電子(iPadアプリケーション)配信を開始した)。
 
 
2014年5月期上期決算
 
 
第2四半期(9-11月)は、広告、携帯電話販売の一時的な落ち込みを吸収して前年同期比3.0%の増収、同3.6%の経常増益
売上高は前年同期比3.0%増の10億35百万円。内訳は、コンテンツサービス事業が同18.7%増の6億13百万円、ソリューション事業が同13.5%減の4億21百万円。
コンテンツサービス事業は、注力しているキャリア(携帯電話事業者)定額サービスやアライアンスによるコンテンツ販売(月額課金)の拡大で、交通情報、ライフスタイル、電子書籍、ゲームの売上が増加。一方、ソリューション事業は、現地キャリアの一時的な販売奨励金の減少(予算枠の消化で一時休止)で中国での携帯電話販売が減少した他、NTTドコモのiPhone 5s/c販売開始の影響で広告売上(店頭アフィリエイト:携帯電話販売会社との協業による成功報酬型コンテンツ販売)も減少した。

利益面では、利益率の高いコンテンツサービスの売上構成比の上昇で原価率が0.4ポイント改善し売上総利益が5億17百万円と同10.9%増加。広告宣伝費や海外事業及び開発要員の増員等による経費増を吸収して営業利益が1億円と同3.1%増加した。
 
 
 
 
 
戦略分野が順調に拡大。利益を圧迫した販管費の増加は想定の範囲内
売上高は前年同期比14.0%増の21億74百万円。内訳は、コンテンツサービス事業が同19.7%増の11億93百万円、ソリューション事業が同7.8%増の9億81百万円。

コンテンツサービス事業は、注力しているキャリア定額サービスやアライアンスによるコンテンツ販売の拡大によるユーザーの増加で、交通情報(同35.4%増の4億10百万円)、女性の心と体のサポートアプリ「女性のキレイ・リズム」を中心とするライフスタイル(同23.0%増の2億14百万円)、電子書籍(同89.2%増の1億18百万円)、及びゲーム(同192.1%増の43百万円)の売上が増加した。

ソリューション事業では、一時的な要因で広告(店頭アフィリエイト)の売上が減少した他、引き合い好調ながら検収の端境期となったソリューション(受託開発)の売上も減少したものの、前期の第4四半期に開始した中国での中国電信(チャイナテレコム)系携帯電話ショップ運営の寄与(海外:売上高1億60百万円を計上)で吸収した。

営業利益は同15.6%減の1億60百万円。売上構成の良化で原価率が52.2%と0.3ポイント改善し、売上の増加と相まって売上総利益が同14.6%増加したものの、コンテンツサービス事業におけるキャリア定額サービス等への戦略的な広告宣伝費の投下(広告宣伝費全体で同54.8%増の2億09百万円)やソリューション事業における携帯ショップのオペレーションコスト及びソリューションの開発要員の増員で販管費が8億78百万円と同22.6%増加した。
四半期純利益が1億32百万円と同9.0%増加したのは、投資有価証券売却益1億07百万円を特別利益に計上したため。
 
 
 
(3)14/5期の取り組みと進捗状況
①国内事業
コンテンツサービス事業では、フィーチャーフォン(従来型携帯電話)からスマートフォンへシフトするユーザーの取り込みが順調に進んでおり、上期末現在、月額課金会員(キャリアの月額課金サイトベース)の55%をスマートフォン会員が占めている。また、キャンペーン効果等で年末年始の新規会員獲得が進み、足元の月額課金会員数が50万人を超える等、母数も順調に増加している。
 
 
14/5期上期はスマートフォンユーザーの更なる取り込みを図るべく、キャリアの定額制サービス向けコンテンツを拡大(auスマートパス向け2本、スゴ得コンテンツ向け1本を追加投入)した他、NTTドコモのスマートフォン向けポータルサイト「dメニュー」を通じて提供しているコンテンツのiPhone対応も完了した。
 
キャリアの定額制サービスへ、積極的にコンテンツを展開
 
また、スマートフォンアプリの強化・拡充にも取り組んだ。今期末200万ダウンロードを目指して、認知度の向上を背景にダウンロードが伸びている“女性の心と体のサポートアプリ「女性のリズム手帳」”のグローバル(多言語)化対応を進めた他、マネタイズ(課金)化に向けた環境整備にも取り組んだ。新規のスマートフォンアプリでは、スマートフォン向けメッセンジャーアプリ「Fivetalk」やコミュニティソーシャルアプリ「コミュカラ」といった新アプリのサービス提供を開始した。
 
スマートフォンアプリの強化・拡充
 
一方、ソリューション事業では、iPhone 5s/cの販売開始の影響で一時的に広告(店頭アフィリエイト)の売上が減少したものの、新たな提携先である東京都書店商業組合とのテストマーケティングなど店頭アフィリエイトのチャネル拡大に向けた取り組みが進捗した他、企業向け(スマートフォン開発等)案件の引き合いも増加した。
 
 
売上が減少した広告(店頭アフィリエイト)については、既に既存協業先との連携強化や販路拡大に向けた対策が講じられている。具体的には、携帯電話販売会社(既存協業企業)のサポート強化や新たな協業先である書店(東京都書店商業組合)とのテストマーケティングの実施に加え、他業種(新規協業企業)や携帯電話販売会社(新規協業企業)の開拓が進められている。
 
広告事業の増収対策  ~連携強化&販路拡大
 
この他、共同事業(協業コンテンツ)、リバースオークション(コスト削減サービス)、IP電話サービスといった新規事業育成に向けた取り組みも進めた。共同事業(協業コンテンツ)では、サンリオウェーブとの協業の下、カードゲームからの脱却と女性向けゲーム市場の流れをつかむべく、「dゲーム」(NTTドコモが大手ゲーム会社と提携し、厳選したゲームを提供するサービス)にゲームアプリ「るんるんはろーきてぃ」の提供を開始(無料、一部課金あり)。同アプリは15年1月には新たなプラットフォームへ提供も予定されている。
一方、リバースオークションでは、認知度の向上を背景に13年2月のスタート時に11社だった契約バイヤーが53社に増加。期末契約バイヤー数80社を目指している。
また、子会社(株)and Oneの音声通信ソフトウェア開発の技術力を活かしたIP電話サービスでは、音声を軸とした新規法人向けサービスの育成に取り組んでいる。

尚、リバースオークションでは、13年6月にリバースオークション専用ポータルサイト「日本オープンマーケット」(http://www.open-markets.jp)をオープンした。同サイトは業界唯一のリバースオークション専用ポータルサイトであり、物品の調達案件を一般公募する事で厳選された国内の優良な販売業者(サプライヤー)との取引が可能になる。同社の収益は、バイヤー向けのリバースオークション(Profair)の利用料と、サプライヤー向けの日本オープンマーケット月額会費(月額課金3,000円)。
また、IP電話サービスでは、(株)and OneのIP-PBXソフトウェア「Primus」を核に内線電話と外線電話にスマートフォン1台で対応できるシステムを提供。企業毎のクローズドされた環境で構築するセキュアなメッセンジャーアプリを活用する事で通信コストの削減と業務効率の改善を図る事ができる。
 
 
②海外(中国)事業
中国電信(チャイナテレコム)系の携帯ショップ運営による携帯電話販売が一時的に減少したものの、電子コミック「九鼎記」の配信先が拡大した他、中国移動(チャイナモバイル)の「漫賞表情」にWeChatや微博(共に後述)で使えるスタンプ「うたがめ」及び「オワタパンダ」の提供を開始した。

コンテンツサービス事業では、電子コミック「九鼎記」の配信先が、これまでの中国移動(チャイナモバイル、中国携帯電話1位)の「手機動漫」から、中国電信(チャイナテレコム、中国携帯電話3位、中国固定電話1位)の「愛動漫」や中国聯通(チャイナユニコム、中国携帯電話2位)の「沃動漫」へ拡大した他、非キャリア系の一般プラットフォーム向けとして、中国IT企業大手の騰訊(テンセント)公司が運営する「騰訊動漫」への配信を開始した。大手雑誌との連携による新規2タイトルの投入準備も進んでいる(大手雑誌への掲載が配信に先行する。配信準備自体は既に完了している)。
 
「九鼎記」の配信先の拡大/新規タイトルの制作
 
また、中国移動(チャイナモバイル)「漫賞表情」に、WeChatや微博で使えるスタンプ「うたがめ」及び「オワタパンダ」を有料で提供を開始した。ダウンロード状況を見ながら提供するコンテンツを増やしていく考えで、中期的には店頭アフィリエイトにより携帯ショップ運営とのシナジーを追及していく考え。

尚、「WeChat」は騰訊公司(前出)が提供するスマートフォン向けのコミュニケーションアプリ。無料通話やチャットを楽しむ事ができ、総アカウント数は6億超。また、「微博」は中国のソーシャルメディアの総称で、ミニブログや中国版Twitterとも言われる。代表的な「微博」は、中国ポータルサイト最大手「新浪」を運営する新浪公司の「新浪微博」と、騰訊公司の「騰訊微博」等。「微博」の総アカウント数は13億超(同社資料より)。
 
 
一方、ソリューション事業では、中国電信(チャイナテレコム)系の携帯ショップ運営による携帯電話販売が、キャリアからの販売奨励金が休止となった影響で一時的に減少した。販売奨励金が休止となったのは、チャイナテレコムが販売奨励金の予算を使い切ったためだが、iPhone5s/cの発売を機に中国携帯電話市場が更に拡大し、11月下旬からチャイナテレコムの新たな販売奨励金がスタートした。このため、第2四半期(7-9月)は販売台数が減少したものの、第3四半期(10-12月)には販売が回復基調に転じた。第4四半期(1-3月)は中国携帯電話トップの中国移動(チャイナモバイル)がiPhoneの販売を開始した事でキャリア間の販売競争が激化し、チャイナテレコムの販売施策が強化される見込みだ。

尚、同社は現地法人を通してチャイナテレコム東方路店(12年12月オープン)とチャイナテレコム黄金城道店(13年4月オープン)の携帯電話販売ショップ2店舗を運営している。また、現地法人は12月末が決算日のため、連結財務諸表の作成にあたっては、3月末日現在で実施した仮決算に基づく財務諸表を使用しており、連結決算日との間に生じた重要な取引については連結上必要な調整が行われている。
 
 
上期末の総資産は前期末に比べて4億08百万円減の46億60百万円。投資有価証券の一部を売却する一方、配当や法人税等の支払いを行った事で総資産が減少した。財務のスリム化が進み、自己資本比率は79.8%と前期末に比べて4.5ポイント改善した。
 
 
 
2014年5月期業績予想
 
 
前期比20.9%の増収、同27.7%の経常増益予想。
売上高及び営業・経常利益について変更は無かったが、投資有価証券の売却益計上を踏まえて当期純利益の予想を上方修正した。

コンテンツサービス事業において、キャリア定額サービスやアライアンスによるコンテンツ販売が拡大する他、契約の累積効果による押し上げも期待できる。一方、ソリューション事業では、足元、携帯電話販売が回復基調にある上、広告も連携強化と販路拡大の成果が徐々に顕在化してくる見込み。利益面では、売上構成の良化による売上総利益率の改善に加え、広告宣伝の効率化も進んでおり、下期は一段の収益性の改善が見込まれる。

配当は1株当たり2円の期末配当を予定している。尚、13年12月1日を効力発生日として、1株を100株に分割すると共に100株を1単元とする単元株制度へ移行した。このため、実質的な配当は20円増配の200円となり2期連続の増配。ただ、当期純利益が上方修正されたため、更なる上積みの可能性がある。
 
 
今後の注目点
“自社開発へのこだわり”が同社経営の神髄であり、配信するコンテンツやアプリは原則として自社製品。固定費負担が重くなるものの、開発費は毎期費用計上されるため売上の増加は利益に直結し、他社が利益を出し難い案件でも確実に利益を確保できる。このためコンテンツの有効活用につながるキャリア定額サービスが与えるインパクトは同業他社の比ではないし、道路交通情報、ライフスタイル、電子書籍、ゲーム等、ラインアップがバラエティなため、ユーザーにとっても魅力的だ。同社が独自に開発したアライアンスによるコンテンツ販売(月額課金)も同様で、コスト構造が異なる他社は真似ができない。好業績は一過性のものではなく、金鉱脈を掘り当てた事によるもの。廉価な価格で多様なコンテンツやアプリを提供するスマートフォン。このスマートフォン向けのビジネスは同社にとってまさに金鉱脈だったという事ではないだろうか。