ブリッジレポート
(6914) オプテックスグループ株式会社

プライム

ブリッジレポート:(6914)オプテックス vol.47

(6914:東証1部) オプテックス 企業HP
小林 徹 会長兼社長
小林 徹 会長兼社長

【ブリッジレポート vol.47】2013年12月期業績レポート
取材概要「14年1月に実施した組織変更で、世界の営業体制を「欧州・中近東・アフリカ」、「北中南米」、「アジア」、「日本」の四極に束ねた組織に改め・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年3月11日掲載
企業基本情報
企業名
オプテックス株式会社
会長兼社長
小林 徹
所在地
滋賀県大津市雄琴 5-8-12
決算期
12月
業種
電気機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2013年12月 23,582 2,108 2,628 1,620
2012年12月 20,699 1,398 1,680 825
2011年12月 18,502 1,677 1,830 1,033
2010年12月 17,395 1,705 1,761 981
2009年12月 15,124 620 735 332
2008年12月 20,916 2,661 2,489 1,004
2007年12月 22,167 3,854 4,075 2,377
2006年12月 20,294 3,728 3,921 2,282
2005年12月 19,012 2,655 2,776 1,584
2004年12月 17,138 2,159 2,321 1,297
2003年12月 15,173 2,203 2,215 1,354
2002年12月 13,047 1,595 1,546 951
2001年12月 11,507 1,173 1,305 544
2000年12月 11,240 1,081 1,213 620
1999年12月 11,201 1,133 957 861
株式情報(3/4現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,584円 16,549,994株 26,125百万円 8.2% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
30.00円 1.9% 105.74円 15.0倍 1,269.42円 1.2倍
※株価は3/4終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
オプテックスの2013年12月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
赤外線を応用した防犯・自動ドア等のセンサ大手。世界シェア40%を誇る屋外用防犯用センサや世界シェア30%・国内シェア60%の自動ドアセンサを中心に、環境関連製品等の製造・販売も手掛ける。子会社22社及び関連会社2社とグループを形成。産業機器用センサ事業を手掛けるオプテックス・エフエー(株)、光ファイバー侵入検知システムを手掛けるファイバーセンシス社(米国)、カメラ補助照明で50%の世界トップシェアを有するレイテック社(英国)等の有力子会社を有する。
ファイバーセンシス社及びレイテック社とは、それぞれの強みを融合した大型重要施設向けソリューション(施設への侵入警戒システム)を展開している。また、国内及びEUに強みを持つオプテックス(株)、北米を中心とした米州や中近東等に強みを持つファイバーセンシス社、更には英国及びEUでの売上が大半を占めるレイテック社と、事業エリアの面でも補完関係にあり、オプテックス(株)による中東への展開やレイテック社による北米、中南米、中東等への展開等、グループ企業の販路を活かした事業展開でも実績を上げつつある。
 
【事業内容】
事業は、センシング事業(防犯関連、自動ドア関連、その他)、FA事業、生産受託事業、その他に分かれ、事業内容と売上構成比は下記の通り。尚、地域別の売上構成比は、日本35%、北米11%、欧州35%、アジア15%、その他5%弱(海外売上高65%)。販売通貨比率は円52%、米ドル18%、英ポンド12%、ユーロ15%、その他3%。一方、生産の55%は中国で、残り45%が国内の協力工場。原価の通貨比率はドル・ポンド54%、円46%(いずれも13/12期実績)。
 
 
【センシングに関する多様な技術・ノウハウと独自のセンシングアルゴリズムが強み】
確実で安定したセンシングの実現には、複数の要素技術とノウハウ、そして物理的変化を制御する「アルゴリズム」が不可欠。同社は用途に適した技術・ノウハウと独自のセンシングアルゴリズムを強みに世界トップクラスのシェアを有している。
 
 
【沿革】
1979年に設立され、その翌年には世界初の遠赤外線利用の自動ドア用センサを開発した。当時の自動ドアはゴムマットの足踏み式が主流であり、遠赤外線利用の自動ドア用センサは極めて画期的な製品。メンテナンスや施工対応力でも他社の追従を許さず、創業3年目には自動ドアセンサでトップシェアを有するに至った(現在、国内シェア約60%)。業容の拡大を背景に91年に店頭登録(JASDAQ上場に相当)。2001年の東証2部上場を経て、03年には東証1部に指定替えとなった。

近年では、画像処理技術をコアとしたソリューションやハイエンド防犯システムの強化に取り組んでおり、08年に画像処理関連のIC・LSIの受託開発等を手掛ける(株)ジーニックを子会社化。10年には欧米各国の重要施設向けハイエンド防犯システム(光ファイバー侵入検知システム)で豊富な実績を持つファイバーセンシス社(米国)を、12年には大型重要施設に設置されるハイエンド防犯システム向けのカメラ用赤外線補助照明を手がけるレイテック社(英国)を、それぞれ子会社化した。
 
 
 
成長戦略と進捗状況
 
“「生産性の倍増」を達成する事による体質強化”及び“利益を最優先にした計画数値達成へのこだわり”を経営方針に掲げ、「事業展開マトリックス」に沿った成長戦略を推進している。「事業展開マトリックス」では、市場展開と製品展開のマトリックスによって、「コア事業の拡大」、「新規アプリケーションの開拓」、「新興国市場の開拓」、及び「新規事業フィールドへの挑戦」、といった今後の取り組みが示されている。

当面の目標は15/12期に売上高300億円以上、経常利益41億円以上。「新規事業フィールドへの挑戦」は中長期的な取り組みだが、「コア事業の拡大」、「新規アプリケーションの開拓」、「新興国市場の開拓」では成果が出始めている。
 
 
(1)コア事業の拡大  新製品投入によるラインアップの強化と付加価値の追求
World Market for Intruder Alarms 2011 Edition (IMS research)によると、世界のセキュリティ市場(侵入警戒)は年率5%の安定成長が続いており、現在の市場規模は2,700~2,800百万USドル(1ドル100円換算で2,700~2,800億円)。このうち、センサの市場は約1,000百万USドルとみられている。

同社は防犯関連及び自動ドア関連において、汎用ゾーンと高付加価値差別化ゾーンの両面から新製品を投入し、幅広いニーズの取り込みを図ると共に付加価値を追求してきた。13/12期は防犯関連を中心に新製品22機種を発売した他、国内で大型重要施設向け屋外センサの受注に成功した。
 
(2)新規アプリケーションの開拓  監視カメラの普及に伴う照明需要の取り込みに注力
World Market for Intruder Alarms 2011 Edition(IMS research)によると、2010年に4,000百万USドルだった監視カメラの市場は、Network(IP)カメラを中心に年率約13%の成長を続け、2015年に7,000百万USドルを超える。ICの小型化・高画素化がIPカメラの市場拡大を支えているが、小型化・高画素化はIC個々の受光量減少という負の一面も併せ持つ。このため、受光量減少を補う補助照明が不可欠となっている。

同社は上記を踏まえ、新規アプリケーション開拓の一環として、セキュリティ照明事業の育成に取り組んでいる。同事業は、照明、センサ、及び画像処理ソフト(鮮明な画像を得るためには高性能な画像処理ソフトが不可欠)といったグループ内の技術を活かす事ができる。同社のグループでは、カメラ補助照明で50%の世界トップシェアを有する英レイテック社が監視カメラの撮像精度の向上に寄与するCCTVカメラ補助照明を手掛けており、重要施設向けで豊富な実績を有する。また、国内では、オプテックス(株)が、センサで侵入を検知し光で威嚇するセンサライト(調光機能付き照明)を手掛けており、施設駐車場や時間貸駐車場等で導入実績を積み上げている。
 
 
(3)新興市場の開拓 「セキュリティ市場の現状」
新興国や資源大国でセキュリティニーズが高まっており、World Market for Intruder Alarms 2011 Edition (IMS research)によると、2010年から2015年にかけてのセキュリティ市場の平均成長率は、ブラジルが16.9%、中国及び香港が13.7%、インドが13.5%。
同社は、現地法人が実績を上げつつあるブラジル、合弁会社が政府案件へのスペックイン活動を開始したインドに加え、東南アジアや中国でも各国の市場環境に応じた製品を展開し、販売活動を加速していく考え。
 
ブラジルでの展開
2012年12月にサンパウロに現地法人を設立し、大型重要施設をターゲットにグループ会社のセキュリティ製品の販売を開始した。13年度はコロンビア及びメキシコでの石油精製施設やメキシコ空港等で、ハイエンドセキュリティ向け案件の受注に成功し売上高が前年度比45%増加した。ブラジルでは、2016年のオリンピック開催に向け、今後、大型案件が増加してくると見られている。
 
インドでの展開
2012年12月にデリー郊外に合弁会社を設立すると共に現地システムインテグレータ(SIer)と契約を行い、政府案件へのスペックイン活動を開始した。現在、ホームセキュリティ製品の販売拡大に向けた訪問販売ルートの開拓と現地特有の文化・風習にあった新製品の開発に取り組んでいる。
 
 
 
2013年12月期決算概要
 
 
売上高が過去最高を更新。円高修正効果と高収益製品の寄与で営業利益が1.5倍に拡大
売上高は235億82百万円と前期比13.9%増加し、過去最高を更新した。大型重要施設向け屋外センサの受注に成功した防犯関連(センシング事業)や設備投資の回復を受けたFA事業を中心に国内売上が同12.4%増加。自動ドア用センサが高い評価を受けている大手自動ドアメーカー向けの増加や円高修正で海外売上高も同14.8%増加した。

利益面では、増収効果(1億25百万円)、円高修正効果(5億67百万円)、及び相対的に収益性の高い防犯用屋外センサの売上構成比の上昇による原価率の改善効果(5億34百万円)等で人件費や変動費の増加を吸収し、営業利益が21億08百万円と同50.8%増加。受取利息・配当金や為替差益の増加に加え、税効果会計の影響もあり、当期純利益は16億20百万円と同96.3%増加した。
尚、設備投資はほぼ例年並みの4億44百万円(12/12期5億14百万円)。減価償却費4億69百万円(同5億38百万円)及び研究開発費17億35百万円(同17億22百万円)を営業費用に計上した。
 
 
地域別の売上構成比は、日本35%、海外65%(米州11%、欧州35%、アジア15%等)。また、通貨別では、円52%、現地通貨48%(米ドル18%、ユーロ15%、英ポンド12%、ウォン等のその他3%)。欧州、北米・南米(現在は主に米国)、アジア・オセアニア等、海外での販売(現地代理店への販売)は円建てから現地通貨建てへ移行中。欧州の販売子会社向けは現地通貨建て。一方、生産の55%は中国工場で、残り45%が国内の協力工場。中国工場からの仕入は米ドル建てで、原価の通貨別構成比は、ドル・ポンド54%、円46%。

13/12期は、円高修正で主要決済通貨に対するレートが、12/12期に比べて21%~26%円安水準にシフトした。この結果、売上総利益の円貨換算額が12億60百万円押し上げられたが、その一方で、円貨換算額の仕入原価や海外子会社の販管費が計6億93百万円増加した。ドル建ての仕入があるため、対ドルでの円安水準へのシフトが利益面でマイナスとなったものの、対英ポンド、対ユーロに対しての円安水準へのシフトが利益の押し上げ要因となり、差引5億67百万円の増益要因となった。
 
 
 
棒グラフが示すように売上が順調に伸びており、業績のモーメンタムは良好。13/12期の第2四半期及び第4四半期は売上の増加に利益が追従していないが、これは売上構成の変化や研究開発費等の増減が要因で一時的なもの。13/12期第4四半期はその影響が特に大きかったが、14/12期以降の利益トレンドを暗示するものではないようだ。
 
 
センシング事業
売上高163億21百万円(前期比16.9%増)、セグメント利益14億22百万円(同47.0%増)。このうち防犯関連は売上高が118億79百万円と同19.8%増加。防犯関連の国内は警備会社向け販売が堅調に推移する中、大型重要施設向け屋外センサの受注に成功し同29%の増収。海外も全地域で売上が増加し、南欧向け輸出の回復等で一般住宅向け屋外センサの販売が順調だった欧州が24%増と大きく伸びた他、北米が14%、アジアが9%、その他が9%、とそれぞれ増収。円高修正が追い風になった事もあるが、海外はおしなべて経済格差の拡大により富裕層の不安心理が高まっていると言う。

自動ドア関連は売上高が39億22百万円と同12.4%増加。国内は人手不足による工事の遅れ等で前期並みの売上にとどまったものの、第3四半期(7-9月)以降、復興需要や消費税率引き上げ前の駆け込み需要等が顕在化してきた。一方、海外は、北米及び欧州の大手自動ドアメーカーから自動ドア用センサの安全性と信頼性を高く評価され売上が増加。エリア別では、北米が39%、欧州が27%、アジアが20%、その他が17%、それぞれ増収。
 
FA事業
売上高46億65百万円(前期比5.9%増)、セグメント利益3億19百万円(同17.8%増)。国内は、物流、工作機械、自動車関連業界の設備投資の持ち直しで売上が同24%増加。汎用機器、アプリケーション機器共に売上が大きく伸びた。一方、海外は、アジア、北米向けアプリケーション機器は好調に推移したものの、欧州向け汎用機器(独SICK社向け)が景気回復の遅れで低迷した。エリア別では、北米が11%、アジアが4%、それぞれ増収となる一方、欧州が5%の減収。
 
 
期末総資産は前期末に比べて38億68百万円増の275億32百万円。潤沢なCFを反映して現預金が増加した他、余資運用の有価証券・投資有価証券も増加。この他、受注・売上の回復で、売上債権、たな卸資産、仕入債務が増加した他、純資産も増加。純資産では、利益剰余金の増加に加え、円高修正により為替換算調整勘定が8億03百万円の評価損から6億23百万円の評価益に転じた事も大きかった。資産内容は流動性に富み、有利子負債は僅少で実質無借金。自己資本比率は76.3%。
 
 
営業CFの増加は利益の増加によるもので、投資CFのマイナスが拡大したのは余資運用(有価証券や投資有価証券の取得)の増加によるもの。9億22百万円のフリーCFを確保したが、実質的には20億円を超えているものと思われる。
 
 
2014年12月期業績予想
 
14/12期の経営方針は “「新しい」を生み出す”。具体的には、新生OPTEXの基盤を構築しつつ、15%以上の増収率を達成できる事業の創出に取り組む。
 
 
前期比13.2%の増収、同23.3%の営業増益
売上高は前期比13.2%増の267億円。センシング事業における防犯関連の欧州・アジア地域向けやFA事業のアジア向け等の伸びを見込んでいる。利益面では、増収効果と収益性向上に向けた継続的な取組みの成果に加え、対ドルレートの落ち着きもあり、営業利益が26億円と同23.3%増加する見込み。経常利益が同2.7%の増加にとどまるのは、為替差益等を見込んでいないため。為替は前期に比べて若干の円安水準を見込むにとどまり、業績への影響は軽微。また、設備投資は例年4~5億円規模だが、14/12期は中国工場をリニューアルするため10億円程度を計画している。

配当は上期末15円、期末15円の年30円を予定(予想配当性向28.4%)。同社は、収益状況に裏付けられた成果の配分を行う事を基本に、将来の事業展開に備えた財務基盤の強化を考慮し、内部留保と安定的かつ継続的な利益配当とのバランスを総合的に勘案して配当金額を決定している。
 
 
(2)「地域戦略策定の現地化」を推進
「地域戦略策定の現地化」を推進するべく組織変更を行い、14/12期に新体制がスタートした。組織変更のポイントは、①「欧州・中近東・アフリカ」、「北中南米」、「アジア」、「日本」の4極に束ねた組織構造への世界の営業体制の変更、②「事業統括本部」の下で、防犯、自動ドアの事業分野毎にマーケティング、企画、開発を一貫して行っていく「事業部」が上記4極を横串でサポートする体制の整備(継続設置)。及び③中長期視点での新たな事業構築、グループ全体の戦略立案を推進する「事業戦略統括本部」の設置。新体制の下で、グローバルな事業拡大と世界各地域の文化やニーズに応じた事業展開を加速していく考え。
 
 
 
今後の注目点
14年1月に実施した組織変更で、世界の営業体制を「欧州・中近東・アフリカ」、「北中南米」、「アジア」、「日本」の四極に束ねた組織に改めたが、これは欧米でのシェアアップと共に、相対的に高い成長が見込まれる新興国市場において、先進国とは異なる市場環境や各地域特有のニーズを把握し拡大する需要を取り込んでいく事を目的としている。一方、事業分野毎に企画・マーケティング・開発を一貫して行う「事業部」が各地域を横断的に支援する事で、事業ロードマップに一貫性を持たせると共に迅速かつ効率的な製品開発の意思決定と実行を可能にする。
これまで事業セグメント毎に地域戦略を進めていたが、今後は「事業」と「地域」のマトリックス組織体制の下でグループシナジーを追求し、他事業セグメントの販路も活用した事業活動やグループ全体の取り扱い製品の中から市場特性に応じた幅広い提案を積極的に行っていく。同社はグループの一体感を高めたグローバル体制で更なる飛躍を目指す考えだ。今後の展開に期待したい。