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(8860) フジ住宅株式会社

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ブリッジレポート:(8860)フジ住宅 vol.38

(8860:東証1部) フジ住宅 企業HP
宮脇 宣綱 社長
宮脇 宣綱 社長

【ブリッジレポート vol.38】2015年3月期第1四半期業績レポート
取材概要「消費税増税の反動減を予想し、前四半期対比で大幅な落ち込みを計画していた第1四半期の受注が期初の会社計画を大幅に上回ったことは注目に値する・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年9月2日掲載
企業基本情報
企業名
フジ住宅株式会社
社長
宮脇 宣綱
所在地
大阪府岸和田市土生町1丁目4番23号
決算期
3月
業種
不動産業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年3月 86,363 5,806 5,660 3,261
2013年3月 66,047 3,809 3,761 2,268
2012年3月 71,594 4,928 4,903 2,767
2011年3月 59,796 3,648 3,680 2,027
2010年3月 48,614 2,137 2,118 1,237
2009年3月 45,300 2,584 2,388 1,361
2008年3月 48,793 2,723 2,413 2,097
2007年3月 52,221 4,233 4,090 911
2006年3月 41,333 3,229 3,196 1,312
2005年3月 43,954 3,208 2,799 1,661
2004年3月 34,387 2,034 1,891 684
2003年3月 32,905 1,198 1,028 545
2002年3月 33,419 899 692 297
2001年3月 31,433 2,928 2,681 1,503
2000年3月 34,268 1,596 1,117 -2,237
株式情報(8/11現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
595円 36,087,364株 21,472百万円 14.2% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
26.00円 4.4% 77.59 7.7倍 676.44円 0.9倍
※株価は8/11終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
フジ住宅の2015年3月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
地盤である大阪府下全域の他、兵庫県(一部阪神間)・和歌山県北部地域で、戸建分譲・中古住宅等の住宅・不動産事業を展開。主力の戸建分譲は、分譲ながら間取りや設備仕様等、建築基準法の範囲内で最大限に顧客の要望を取り入れる「自由設計方式」と50~200戸規模で街並みの統一性を重視した開発を行う「街づくり」に特徴がある。また、中古住宅の改装販売、金融機関とタイアップした土地有効活用事業や個人投資家向けの賃貸アパート販売事業、賃貸・管理事業、注文住宅事業も事業の柱である。
販売代理や戸建住宅から派生した各事業が独自のノウハウを持ち、他の事業部門を相互に補完する(相乗効果)、単なる住宅の分譲会社ではなく地域や時代の住宅に関するあらゆるニーズに対応できる機能を備えていることが「住まいのトータルクリエイター」である同社の特長である。地域密着型経営の特長を活かし、顧客に顔を向けた「売りっ放し」、「建てっ放し」のない顧客満足度の高い住宅づくりを目指している。
 
分譲住宅事業(14/3期売上構成比48.0%)
戸建とマンションの分譲を手掛けており、「自由設計方式」と「街づくり」を特徴とする戸建では、用地仕入・許認可の取得から、宅地造成、設計、建築、販売までの一貫体制を構築。マンション分譲は地価上昇とその後の供給過剰・需要低下に伴う事業リスクの高まりを予見し05年春に事業を停止したが、リーマン・ショック後の地価の下落と分譲マンション市場の需給改善を踏まえて12年2月に再開。駅近の利便性の高い立地等、物件を厳選した1次取得者向けの価格訴求力のある分譲マンション販売を特徴とする。
 
 
住宅流通事業(同 31.4%)
「快造くん」のブランド名で展開している中古住宅の再生・販売及び新築建売住宅の販売に係る収益が計上されている。エリア毎に住まい探しの情報拠点となる「おうち館」や、仕入・販売の拠点となる「フジホームバンク」を設けており、中古住宅では地域密着営業により交差点単位での地域情報の収集・分析力をベースとした物件の鑑定力や仕入・販売価格の査定の速度と正確性、更にはリフォーム業者の育成やマニュアル化等、独自のノウハウを強みとする。一方、新築建売住宅では、泉州地区(泉佐野、熊取、貝塚、岸和田中心)で小規模分譲地を開発し手頃な価格の建売住宅を販売。当事業は分譲住宅事業でカバーできない低価格ゾーンをカバーしている。
 
 
土地有効活用事業(同 8.4%)
賃貸住宅等の建築請負と個人投資家向け一棟売賃貸アパートの収益が計上されている。建築請負では、遊休地の有効活用を目的とした賃貸アパート等の建築提案を行なっており、市場調査・企画・設計・建築・竣工引渡後の運営管理までを一貫してサポート。コスト競争力のある木造アパート「フジパレス」シリーズに08年11月サービス付き高齢者向け住宅「フジパレスシニア」が加わり、より独自性が強まった。飛び込みによる営業活動は行っておらず、金融機関や既契約者からの紹介、及びリピートを中心に案件を獲得。また、個人投資家向け一棟売賃貸アパートでは、1棟当たり1億円前後の賃貸アパートが中心。資金運用手段として根強い需要がある。
 
 
賃貸及び管理事業(同 11.2%)
100%子会社フジ・アメニティサービス(株)が手掛けている。安定収益源となるばかりでなく、賃貸住宅の建築請負や個人投資家向け一棟売賃貸アパートの他、分譲マンションの販売等との相乗効果も高い事業。
 
注文住宅事業(同 0.9%)
市況の影響を受けにくい非不動産販売事業育成の一環として、戸建住宅の新築や建替えを請負うといった事業を行っている。会社の第5の柱として展開中。
 
 
 
中期事業計画と進捗状況
 
同社は、地域に根付いた住宅提供事業者として、新築戸建住宅、分譲マンション、改装付中古住宅、土地有効活用の一環としてのアパート建設や個人投資家向け一棟売賃貸アパート販売、更には不動産管理等、住宅・不動産に関する多様な商品及びサービスの提供に取り組んでいる。また、市況変動への対応策として、地価の急激かつ大きな下落にも耐え得る独自の財務指標の下で在庫コントロールを徹底すると共に、市況の影響を受けにくい注文住宅の建築請負等の非不動産販売事業の育成・強化にも取り組んでいる。現在、進行中の中期事業計画では、最終の15/3期に売上高870億円、経常利益55億円の数値目標としている。
 
 
2013年10月以降の受注低下の影響で、15/3月期の販売戸数が減少する他、消費税増税後の影響により、戸建住宅の受注高が減少する見込み。また、マンションの建築資材の高騰及び労務費の増加により、マンション供給を大幅に抑制する計画であるため、売上戸数が減少する見込み。一方、前月期の土地有効活用の好調な受注を反映し、土地有効活用セグメントは売上高の拡大が見込まれる。
 
 
 
2015年3月期第1四半期決算
 
 
前年同期比13.2%の減収、同42.3%の経常減益
売上高は前年同期比13.2%減の169億52百万円。前期末の高水準の受注残が寄与した土地有効活用セグメントが増加したものの、消費税増税前の駆け込み需要の反動減により新規分譲マンションの引渡しが減少した分譲住宅セグメントや分譲建売住宅の引渡戸数が減少した住宅流通セグメントなどが減少した。また、販売状況を示す受注契約高は、中古住宅の受注が増加した住宅流通セグメントで増加したものの、分譲マンションの受注減少が影響した分譲住宅セグメントや消費税増税の影響を受けた賃貸住宅等建築請負の受注が減少した土地有効活用セグメントなどで減少し、同16.8%減少した。また、6月末の受注契約残高も、自由設計住宅などの減少により前年同月末比14.5%減少した。
経常利益は、前年同期比42.3%減の7億6百万円。売上が増加した土地有効活用セグメントにおいて増加したものの、新築分譲マンションが減少した分譲住宅セグメントや利益率の高い新築建売住宅が減少した住宅流通セグメントなどにおいて減少した。売上総利益率は同0.2ポイント低下。売上が減少する中、販管費が前年同期比微増となったことから、営業利益は同42.0%減の7億19百万円となった。
 
 
分譲住宅セグメントの売上高は前年同期比41.4%減の52億99百万円、セグメント利益は同76.9%減の2億11百万円。売上及び利益の減少は、当期に新規分譲マンションの引渡しがなかった(前年同期は分譲マンション引渡戸数116戸)ことが影響。また、受注契約高は消費税増税前の駆け込み需要の反動減の影響を受け、自由設計住宅、分譲マンションともに減少し、78億12百万円と同24.8%減少。受注契約残高も同224億74百万円と同26.6%減少した。

住宅流通セグメント売上高は前年同期比12.5%減の55億円、セグメント利益は同64.3%減の67百万円。売上及び利益の減少は、利益率の高い新築建売住宅の販売が減少したことが影響。中古住宅の仕入れが回復傾向となる中、中古住宅の受注契約戸数が325戸(前年同期は311戸)と増加し、住宅流通セグメントの受注契約高は63億30百万円と同4.5%増加。受注契約残高も中古住宅の増加が寄与し、32億72百万円と同9.2%増加した。

土地有効活用セグメントの売上高は前年同期比103.5%増の34億65百万円、セグメント利益も同101.3%増の4億54百万円。売上及び利益の増加は、前期末の高水準の受注残の案件引渡しが順調に進んだもの。一方、消費税増税後の影響を受けた賃貸住宅等建築請負が減少し、受注契約高は28億63百万円と同25.4%減。受注契約残高は個人投資家向け一棟売賃貸アパートが増加し103億92百万円と同22.4%増加した。

上記の他、賃貸及び管理事業セグメントは、土地有効活用事業にリンクした賃貸物件及び管理物件の取扱い件数が増加したことや中古住宅アセット事業による中古賃貸物件の増加により売上高が25億60百万と前年同期比10.2%増加し、セグメント利益も2億1百万円と同83.2%増加した。また、立ち上げ期にある注文住宅事業は、売上高が1億26百万円と同30.0%減少したものの、前期に実施した集客効果が望めない住宅展示場の閉鎖整理による収益性の改善からセグメント利益は10百万円と同104.6%増加した。
 
 
 
 
2014年6月末の総資産は864億37百万円と前期末比5億85百万円増加した。たな卸資産の増加2億22百万円や有形固定資産の増加1億19百万円が主なもの。たな卸資産の主な内訳と金額は、販売用不動産186.0億円(前期末174.4億円)、仕掛販売用不動産139.9億円(同132.4億円)、開発用不動産337.1億円(同353.8億円)。有利子負債は26億99百万の増加。2014年6月末の自己資本比率は28.3%と前期末並となった。
 
 
2015年3月期業績予想
 
 
前期比7.4%の減収、同24.0%の経常減益予想
15/3期の会社予想は、売上高が前期比7.4%減の800億円、経常利益が同24.0%減の43億円。売上面では、2013年10月以降の消費税増税の駆け込み需要の反動により、戸建住宅の売上戸数が減少する見込み。また、マンション建築にかかる労務費・材料費の高騰により、適正利益の確保が困難となることから、マンション供給を大幅に抑制する計画となっている。一方、前期の受注水準が高かった土地有効活用セグメントは大幅に増加する見込み。
利益面でも、売上高が増加する土地有効活用セグメントが大幅な増益となるものの、売上高が減少する分譲住宅セグメントの減益幅が大きくなる予想。また、仕入単価上昇の影響を考慮し、住宅流通セグメントの利益率が悪化する計画となっている。
配当は、前期と同じ1株当たり年26円(上期末13円、期末13円)の予想。
 
 
 
 
15/3期第1四半期は、通期の会社予想に対し、売上面、利益面ともに、概ね期初予想通りに推移した模様。同社は、引き続き、今後の資材価格、労務費の動向を警戒している。
 
 
15/3期の受注は、第1四半期は消費税増税の駆け込み需要の反動で中古マンション中心に落ち込みが避けられないものの、第2四半期以降は新築分譲一戸建住宅を中心に徐々に回復傾向が強まる会社計画となっている。
第1四半期は、消費税増税の反動減を予想していたものの、分譲マンション・戸建・中古住宅及び個人投資家向け一棟売賃貸アパートの受注増加が寄与し会社計画を上回った模様。
 
 
今後の注目点
消費税増税の反動減を予想し、前四半期対比で大幅な落ち込みを計画していた第1四半期の受注が期初の会社計画を大幅に上回ったことは注目に値する。労務費・材料費の高騰による新築住宅の価格上昇などにより、中古住宅の落ち込みが回避されるなど、住宅需要の底堅さが再確認できたことに加え、分譲マンション、戸建、個人投資家向け一棟売賃貸アパートなどの分野において同社の価格競争力と販売力の強さが改めて確認できたことは非常に収穫が大きいと言えよう。同社が属する不動産業界においては、超低金利の住宅ローン金利の継続と住宅ローン減税の実施により、消費税増税後の落ち込みを乗り越え、早期に販売が回復に転じるものと期待されている。特に、同社は今後新築分譲一戸建住宅の販売拡大を図るべく、前期の後半に優良なたな卸資産の積み増しを実施した。同社の今期受注は、これらの販売が本格化する年後半以降、急回復する計画となっている。持ち前の価格競争力と販売力を武器に、今後受注の回復傾向を強めていけるのか注目される。中でも、今期の受注動向の鍵を握る新築分譲一戸建住宅の販売拡大戦略に最も注目したい。
加えて、年後半に向けて徐々に活発化するであろう消費税率10%への引き上げ議論の中で、住宅市場に対する需要喚起策が徐々に明らかとなってくるものと思われる。今後の消費税率引き上げ議論と、その悪影響を回避するための対策の方向性からも目が離せない。