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(2708) 株式会社久世

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ブリッジレポート:(2708)久世 vol.12

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(2708:JASDAQ) 久世 企業HP
久世 健吉 社長
久世 健吉 社長

【ブリッジレポート vol.12】2015年3月期第1四半期業績レポート
取材概要「事業の特性上、同社の第1四半期は利益計上に至らない事が多い。このため、第1四半期決算で損失を計上した事は大きな問題ではないが、今期の最大・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年9月9日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社久世
社長
久世 健吉
所在地
東京都豊島区東池袋2-29-7
決算期
3月 末日
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年3月 62,268 41 238 100
2013年3月 56,060 544 697 367
2012年3月 51,053 380 408 173
2011年3月 46,774 230 342 80
2010年3月 42,666 271 394 123
2009年3月 42,181 225 334 171
2008年3月 42,540 283 443 240
2007年3月 42,847 402 507 262
2006年3月 41,491 336 390 246
2005年3月 39,087 255 297 126
株式情報(8/20現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
685円 3,878,979株 2,657百万円 2.1% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
12.00円 1.8% 54.13円 12.7倍 1,235.43円 0.6倍
※株価は8/20終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
久世の2015年3月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
外食産業や中食産業向けの食材卸を中心に、グループでソース、ブイヨン、スープ及び調理食品など食材の製造・販売も手掛けている。取扱品目は約30,000アイテムに上り、冷凍・常温品はもちろん生鮮品から消耗品等のノンフードまで幅広い。
グループは、同社の他、ソース・スープ類の製造・販売を手掛けるキスコフーズ(株)、生鮮野菜など農産品の仕入・販売を行う(株)久世フレッシュ・ワン、ニュージーランドでソース類の製造を手掛けるキスコフーズインターナショナルリミテッド及び海外戦略の立案と情報収集の役割を担う久世(香港)有限公司の連結子会社4社、及び中国での業務用食材卸売事業を目的に12年5月に設立した久華世(成都)商貿有限公司の非連結子会社1社(この他、14年4月に水産物仲卸会社 旭水産(株)を100%子会社化)。
 
【事業内容】
事業は、食材卸売事業、食材製造事業、及びグループ会社向けが大半を占める不動産賃貸事業に分かれ、14/3期の売上構成比(連結調整前)は、それぞれ、92.4%、7.4%、0.2%。また、販売チャンネル別(個別ベース)では、居酒屋・パブ29.2%、ディナーレストラン・ホテル・会館20.7%、惣菜・デリカ・娯楽施設・ケータリング14.8%、ファーストフード・ファミリーレストラン・カフェ35.3%。
 
食材卸売事業
取扱が難しい生鮮品を含めた業務用食材全般に加え、割りばし、ナプキン、洗剤といった消耗品等のノンフードまでを幅広くカバーし、取扱品目は約30,000アイテムを数える。近年、プライベートブランド(PB)商品や生鮮三品の取扱いにも力を入れている。
 
食材製造事業
連結子会社キスコフーズ(株)が食品製造工場を有し、ソース、ブイヨン、スープ及び調理食品等の自社ブランド製品及びOEM製品の製造・販売を行っており、その子会社(久世の孫会社)キスコフーズ インターナショナル リミテッド(KISCO FOODS INTERNATIONAL LIMITED)が、ニュージーランド・クライストチャーチ市において、オリジナルのフォンドヴォー(仔牛骨、牛肉、野菜等を原料としたソース)やベシャメルソース(バターと小麦粉を原料としたホワイトソース)の製造を行っている。
 
 
【市場規模】
同社の推計では、国内の業務用食材市場は約4兆円で、同社のシェアは未だ1.3%に過ぎない(首都圏に限っても、約3.2%のシェアにとどまる)。成熟した国内業務用食材市場ではあるが、同社にとって広大な市場であり、「三大都市圏NO.1」と「お客様満足度NO.1」を目指す事で業容拡大を図っていく考え。また、キスコフーズ インターナショナル リミテッド(ニュージーランド)製品の、東南アジア、中国、中近東等への展開(日本を経由せず直接輸出)や中国での業務用食材卸事業の育成により、海外事業の基盤づくりにも取り組んでいく。
同社は、創業85周年を迎える20/3期に売上高1,000億円の達成を目指しており、目標達成に向けた基本戦略として、国内外での攻めの営業体制の確立、商品開発を軸とした戦略推進、及び1,000億企業への体制構築の4項目を挙げている。
 
【15/3期の施策】
15/3期は14/3期の反省を踏まえて、採算重視を徹底すると共に、顧客増に対応した物流システムの改革を進めつつ営業を強化していく考え。重点施策として、(1)採算性を重視した攻めの営業、(2)物流の効率化と精度向上、(3)すべての業務の品質向上、(4)海外事業展開の促進、及び(5) グループ力の強化、の5項目を挙げている。

(1)採算性を重視した攻めの営業では、既存顧客の底上げ(インストアシェアアップ)、物流を意識した新規開拓、個別採算管理の徹底、及び新商材の提案及び価格転嫁による粗利改善(仕入価格高騰への対応)がポイント。また、PB商品の拡販にも力を入れ、新商品及びリニューアル商品40アイテム(上期20・下期20)投入する予定。併せて、顧客毎、車両毎の採算管理を徹底する事で、個別ベースの売上総利益率を14/3期の16.6%から16.9%に引き上げる。

(2)物流の採算改善と精度向上では、委託先会社との連携を強化してより効率的な配送コースの実現に取組むと共に、イレギュラー配送の抑制で委託配送費の削減に努める(委託配送費を約2億円削減する)。14/3期は広範囲に店舗展開しているチェーンの地方店舗への配送やイレギュラー配送(臨時便)への対応増等、定期配送以外の臨時配送の増加で運賃が大幅に増加した。また、顧客からの信頼性向上にもつながるため、誤配の撲滅や定時出発の徹底(時限管理)による物流精度の向上にも努める。この一環として、ボイスピッキング(ピッキング精度向上、時間短縮)、新発注システム(発注業務の時間短縮と精度向上、在庫の圧縮)導入とGPSと連動した配送運行管理システム(配送の効率化)を特徴とする約1億円の物流効率化投資(システム投資)を実施した。テスト導入した物流センターでは、ピッキングの作業時間が15~20%、発注業務の時間が30~50%短縮できたと言う。この6月より新システムを順次導入していく。

(3)すべての業務の品質向上では、ISO22000の水準維持と更なる向上を図る。具体的には、品質管理部と営業部門との連携を強化して、顧客への調理上・保管上の品質留意点や食品表示等の情報提供を行うと共に品質検査体制を強化する。
尚、同社グループは、2010年に「久世グループ品質方針」及びISO22000に基づいた久世グループの品質保証の仕組みである「久世クオス(久世QUALITY SYSTEM)」を策定し、新しい品質への取組みをスタートさせている。「お客様満足度No.1」の達成に向け、商品の品質だけでなく、営業、物流、受発注などサポート部門を含め、全ての業務で品質向上を推進している。

(4)海外事業展開の促進では、ニュージーランドでの製造事業及び中国での食材卸売事業の基盤固めを図る。ニュージーランドでの製造事業では、キスコフーズインターナショナルが、東南アジアへの販路拡大と中国への直接販売でフォンドヴォーとベシャメルソースを拡大させ収益基盤の確立を図る。また、新製品の開発と市場への投入や必要に応じた新規設備導入による安定的・効率的な生産体制の構築にも努める。一方、中国での食材卸売事業では、久華世(成都)は、日本より進出している外食店を主なターゲット店として活動してきたが、商品の品揃え強化で西洋食市場の開拓も進める。また、ベーカリー市場へ新規参入する他、今期中に業務用のキャッシュアンドキャリーを開設してデリバリーとの両建てで事業基盤の構築に取り組む。

(5)グループ力の強化では、2014年4月1日に久世グループの新戦力として、水産物仲卸会社 旭水産を100%子会社化した。水産物仲卸事業をグループに取り込む事で、ワンストップサービスと品揃えによる利便性を図る考え。一方、旭水産は、久世との相互顧客紹介により取引先間口の拡大を図ると共に青果事業とのコラボレーションを進める他(情報共有と共同配送)、海外事業(輸出)の拡大にも取り組む(既に、シンガポール、米国への輸出実績がある)。
既存の国内グループ会社では、キスコフーズがスープ&ソースのソリューションカンパニーとして、顧客ニーズに応じた新商品の開発による商品力の強化と既存顧客との関係強化に努めると共に、子会社キスコフーズインターナショナルとのグループシナジーを追求する。久世フレッシュ・ワンは特長ある鮮度の良い商品を扱う元気な「八百屋」を目指して、引き続き、重点エリアでの新規開拓及び既存顧客との取引拡大に取り組む。大口ユーザー獲得、生産農家との連携と商品開拓力強化による特長ある商品の品揃え、鮮魚事業(旭水産)との得意先情報共有と共同配送によるシナジーの追及がポイントである。
 
 
2015年3月期第1四半期決算
 
 
売上高163億73百万円(前年同期比9.5%増)、経常損失1億40百万円(前年同期は1百万円の損失)
売上高は前年同期比9.5%増の163億73百万円。消費者の節約志向が続く中、消費税率の引き上げもあり厳しい事業環境ではあったものの、新規顧客の開拓と既存顧客の深耕が進み、主力の食材卸売事業の売上が同9.9%増加。食材製造事業も売上が同4.0%増加した。

ただ、利益面では、物流改革が途上にある食材卸売事業が損失計上を余儀なくされる中、食材製造事業も原材料高や前期の設備更新に伴う減価償却費の増加等で利益が減少。前年同期は48百万円だった営業損失が1億79百万円に拡大した。尚、食材卸売事業において、14年4月に水産物仲卸の旭水産(株)を100%子会社化しており、これに伴い発生した「のれん」の償却費7百万円を販管費に計上している。
 
 
 
業容拡大に伴う運転資金の増加に対応するべく長期借入金を中心に有利子負債を積み増した事で、第1四半期末の総資産は195億38百万円と前期末に比べて5億35百万円増加した。自己資本比率は前期末に比べて1.3ポイント低下の23.9%。
 
 
*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。
 
この数年、同社は売上の高い伸びを背景にした利益率と資産効率の改善で同業他社を上回るROEを実現してきたが、14/3期は利益率の悪化でROEが落ち込んだ。新規顧客の開拓や既存顧客との取引が拡大したものの、顧客ニーズへの対応に追われ、物流面での採算管理が甘くなった事が利益率悪化の原因である。現在、成長軌道への回帰に向け、物流改革を進めると共に、意識改革にも取り組んでいる。
 
 
 
2015年3月期業績予想
 
 
業績予想に変更はなく、通期で前期比9.2%の増収、同67.6%の経常増益
売上高は前期比9.2%増の680億円。引き続き新規開拓と既存顧客との取引拡大に取り組む考え。2,300店を目標とする新規開拓で23億円、取引拡大に取り組む既存顧客で35億円の売上増を目指している。

利益面では、採算を重視すると共に物流の採算改善と精度向上にも取り組む事で利益率の改善を図る。具体的には、前期は47億円だったPB商品の売上を53億円に引き上げると共に遅れていた価格転嫁を進める事で個別ベースの売上総利益率の改善を図る(16.6%→16.9%)。また、顧客毎・車両毎の採算管理の強化にも取り組み、採算性を考えた配送コースの実現やイレギュラー配送の抑制等で委託配送費を2億円削減。併せて、誤配の撲滅や定時出発の徹底(時限管理)による物流精度の向上にも取り組む。

配当は前期と同額の1株当たり12円の期末配当を予定している。
 
 
 
今後の注目点
事業の特性上、同社の第1四半期は利益計上に至らない事が多い。このため、第1四半期決算で損失を計上した事は大きな問題ではないが、今期の最大の取り組み課題である物流改革が若干遅れている事が気がかりだ。今期の業績予想は消費税率引き上げに伴う消費の落ち込みも織り込んでいるため、上期は44百万円の営業損失を見込んでいるが(協賛金収入の計上等で経常損益段階では利益を見込む)、損失が予想を上回る可能性がある事も頭に入れておきたい。もっとも、今後の業績を考えた場合、今期の売上・利益よりも、早期に物流改革を完了させる事の方が重要だ。消費者の節約志向や消費税率の引き上げで厳しい事業環境が続く中でも売上が順調に伸びているため、物流改革が完了すれば、利益の回復は早いと思われる。加えて、物流改革は1,000億円企業を目指すにあたって、その基盤にもなるだろう。目先の売上・利益よりも、来期以降の成長につながる取り組みの進捗に注目していきたい。