ブリッジレポート
(9445) 株式会社フォーバルテレコム

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ブリッジレポート:(9445)フォーバルテレコム vol.37

(9445:東証2部) フォーバルテレコム 企業HP
谷井 剛 社長
谷井 剛 社長

【ブリッジレポート vol.37】2015年3月期第1四半期業績レポート
取材概要「今第1四半期を振り返ると同社が目指しているネット系ストック収益の拡大を通じたIP&Mobileソリューション事業の業績拡大が達成できており・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年10月14日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フォーバルテレコム
社長
谷井 剛
所在地
東京都千代田区神田錦町三丁目26番地 一ツ橋SIビル2F
決算期
3月
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年3月 12,145 446 435 272
2013年3月 11,990 436 438 269
2012年3月 13,470 323 302 177
2011年3月 13,560 391 391 155
2010年3月 13,956 347 327 194
2009年3月 15,042 391 388 133
2008年3月 13,466 337 344 192
2007年3月 12,461 845 840 975
2006年3月 11,024 859 868 841
2005年3月 7,740 470 452 726
2004年3月 6,114 214 205 205
2003年3月 7,746 93 40 69
2002年3月 11,879 -1,732 -1,779 -4,939
2001年3月 18,224 284 134 45
2000年3月 20,503 53 -50 88
株式情報(8/25現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
359円 16,693,200株 5,992百万円 15.4% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
15.00円 4.2% 19.77円 18.2倍 104.15円 3.4倍
※株価は8/25終値。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
中小・中堅法人向けにOA・ネットワーク機器の販売やサービスの取次ぎを展開するフォーバル(8275)の連結子会社。フォーバルの連結決算において、フォーバルテレコムビジネスグループとしてセグメントされている(14/3期はフォーバルの連結売上高の28.6%を占めた)。グループは同社の他、連結子会社4社、持分法適用関連会社1社、非連結子会社1社。
 
【事業内容と企業グループ】
同社及び連結子会社(株)FISソリューションズによる法人向けVoIPサービス(高速ブロードバンド回線を利用した電話やインターネット接続サービス)や法人向けFMC(Fixed Mobile Convergence)サービス「2way Smart」の提供と関連機器販売の「IP&Mobileソリューション事業」、連結子会社(株)トライ・エックスを中心に普通印刷・特注文具の製造・販売を手掛ける「ドキュメント・ソリューション事業」、及び(株)保険ステーションによる保険やプライバシーマーク等に関する各種コンサルティング等の「コンサルティング事業」に分かれる。また、持分法適用関連会社(出資比率50%)で、(株)光通信(9435)グループの(株)アイ・イーグループとの合弁会社(株)ホワイトビジネスイニシアティブが「2way Smart」の企画開発及び関連するハードウエア開発を手掛けている。
 
 
【沿革】
中堅・中小企業をターゲットとして、「新しい あたりまえ(業務革新につながる新商品や新サービス)」を提供するフォーバルグループ。その回線リセーラー(電気通信事業者から回線を仕入れてエンドユーザーに再販する)「フォーバル・インターナショナル・テレコミュニケーションズ(株)」として95年4月に設立され、「fit(フィット)コール」のブランドで国際電話サービスを開始。96年に市外電話サービス、97年に市内電話サービスと取扱いを広げた。98年8月に現商号へ変更し、99年10月に「fit接続サービス」、2000年2月に「fitホスティングサービス」、同年9月にはインターネットサービスと音声サービスを組み合せた「iパックサービス」を開始する等、インターネット関連ビジネスを拡大。同年11月に東証マザーズに株式を上場した。02年2月にソフトバンクBB(株)と合弁会社を設立し、中小法人向けVoIP(インターネット上で音声データを送受信する技術)及びADSLサービスを開始。03年10月にはブロードバンドの軸足を光ファイバーに移し、光ファイバー対応IP電話「FTフォン」サービスを開始。光ファイバーを利用したブロードバンドの普及を捉え利益を急拡大させた。
 
 
 
主要なサービスの概要
 
(1)IP&Mobileソリューション
スマートフォンを利用したFMCサービス「2waySmart(ツーウェイスマート)」
「2waySmart」では、1台のスマートフォンが、社外では携帯電話として、社内では内線電話として利用できる。このため、社内のビジネスフォン(固定の電話機)が不要になり、また、回線を引き回す必要も無いため、オフィスをスマートにする事ができる。また、携帯電話なのに、固定電話発信ができるため、通話料の削減も可能となる。その他、1台のスマートフォンで、会社の代表電話と内線と携帯電話を使い分けて発信と受信することが可能。加えて、固定電話からスマートフォンへ、スマートフォンからスマートフォンへの電話転送も簡易にできる。更に、Wi-Fi環境でのスマートフォンの速度アップやスマートフォンを活用した様々な業務の効率化に貢献する。また、iPad向けの「2waySmart」を投入。これにより、iPadが社内の電話にも使用できる。電話しながらWEBを閲覧することも、簡易CTIシステムとして使用することも可能となる。
 
 
法人向けIP電話サービス「スマートひかり」
12/3期に販売を開始した「スマートひかり」は光ファイバーによる超高速ブロードバンドサービスを介してクラスA(固定電話同等品質)という最高水準による高品質音声(電話)を実現した法人向けIP電話サービス。全国一律のわかり易い料金プランとスマート(リーズナブル)な通話料金を特長とする。

(社)電気通信事業者協会の「テレコムデータブック2013(TCA編)」によると、固定電話からの発信(国内向け通話)の79%は2分以内。このデータを基に「スマートひかり」の通話料金(税別、以下同じ)は全国一律2分5.5円に設定されている(大手キャリアでは市内3分8.5円、県内市外3分20~40円等)。また、携帯電話向けは全キャリア一律で60秒16円(同20~40円)、国際電話は米本土で60秒2.5円(同60秒60円等)。また、従来であれば個別契約が必要だった、音声通話(基本3通話で追加可能)とプロバイダー一体型の光インターネット接続料(最大で下り100Mbps)が一本化(ワンビリング)されているため事務の負担も軽い。更には、万が一、光回線が障害を起こした場合でも、自動迂回着信機能を備えているため、事前に指定した番号に着信する。
 
 
iSmart接続-Fひかり
iSmart接続-Fひかりは、法人向けに提供している高品質なインターネット接続サービスを、個人でも利用しやすいように、サービス価格・内容を最適化したフレッツ光専用プロバイダサービス。
(サービスプラン)
 
 
メールアドレス10個、1GBのホームページ、スパムフィルタ、メール転送などがずっと無料なのが特徴。
 
(2)セキュリティコンサルティング
プライバシーマーク(Pマーク)や各種ISOのコンサルティング
認証取得支援から、運用支援、更新支援、規格改訂支援、各種セミナーなどをサポート。
 
 
(3)ペーパレスソリューション
おまか請求
請求書・支払通知書・納品書をWeb化でコスト削減するツールを提供。顧客登録・受注登録・料金計算、請求書発行(WEB公開)・収納代行・督促支援業務などを含んだ請求代行サービス。請求に関する業務を代行し、顧客の請求コストの削減と業務負担を軽減図る。
 
 
ワンビリングサービス
複数サービスの請求書をひとつにまとめて請求するサービス。請求書が何通も届くことなく、1請求書にまとめて請求される。
 
 
 
2015年3月期第1四半期決算
 
 
前年同期比3.4%の減収、同13.5%の経常増益
売上高は前年同期比3.4%減の29億49百万円。売上面は、積極的な営業拠点の拡大などにより、保険契約数が増加したコンサルティング事業が増加したものの、音声電話に関連した従来型サービスの減少などによりIP&Mobileソリューション事業が減少した。
営業利益は同14.8%増の1億36百万円。収益性の高いコンサルティング事業の増収効果に加え、音声電話に関連した従来型サービスの減少以上に新ISPサービスを中心とするデータ通信関連などから生じるストック収益が伸びたIP&Mobileソリューション事業で利益が増加した。
IP&Mobileソリューション事業において、収益性の高いネット系のストック収益の売上が増加したことなどにより売上総利益率は、24.4%と前年同期比3.8ポイント高まった。一方、新ISPサービスの獲得に伴う営業費用(自社インセンティブの償却費)の増加などにより、売上高対販管費比率は、19.8%と同3.1ポイント悪化した。また、営業外費用で持分法による投資損失12百万円(前年同期は持分法による投資損失2百万円)を計上したことなどから経常利益は同13.5%の増益と営業利益に比べ若干増益率が下がった。その他、法人税等の負担が増加し(法人税等調整額は、前年同期-18百万円であったが今四半期は17百万円)、四半期純利益は同23.9%の減益となった。
 
 
 
連結の売上総利益は90百万円増加し、売上総利益率も3.8ポイント改善。個別ベースの売上高総利益は、従前の通話系サービスにかかる課金収入が減少したものの、新たなサービスにかかるネット系他のストック収益が増加したことから、全体として73百万円増加した。また、子会社の売上総利益は、コンサルティング事業を行う子会社中心に、17百万円増加した。
 
 
販管費は、人件費やIP&Mobileソリューション事業における新ISPサービスの獲得に伴う自社インセンティブの償却費の増加などにより73百万円の増加。
 
 
IP&Mobileソリューション事業  売上高20億44百万円(前年同期比4.6%減)、セグメント利益24百万円(同351.0%増)
VoIPサービス、モバイルサービス等の情報通信サービス等を提供。音声電話に関連した従来型サービスの減少は影響したものの、新ISPサービスを中心とするデータ通信関連などから生じるストック収益が増加したことから減収増益となった。
 
ドキュメント・ソリューション事業  売上高4億6百万円(前年同期比13.9%減)、セグメント利益40百万円(同40.1%減)
普通印刷、印刷物のプランニング・デザイン等を行う。前年同期に大口受注があった反動により減収減益となった。
 
コンサルティング事業  売上高4億94百万円(前年同期比14.0%増)、セグメント利益74百万円(同58.1%増)
経営支援コンサルティング、保険サービス及びセキュリティサービス等を行う。主に(株)保険ステーションの営業拠点拡大にともなう保険契約数の増加により、売上高及びセグメント利益が増加。請求代行サービス(おまか請求)とセキュリティコンサルティングサービス(セキュリティ本舗)も順調。
 
 
14/6月末の総資産は、14/3期末比2億50百円減の47億29百万円。資産サイドでは、現預金や売上債権の減少が、負債サイドでは、仕入債務や未払法人税等の減少が主なもの。14/6月末の自己資本比率(自己資本=株主資本+評価・換算差額等)は36.8%と14/3期末の35.8%から上昇し財務の健全性が高まった。
 
 
2015年3月期業績予想
 
 
前期比1.3%の増収、同14.9%の経常増益
第1四半期を経過し、会社計画は期初予想から変更なし。
売上高は前期比1.3%増の123億円の計画。売上高は従来型の通話系の課金収益の減少傾向は続くものの、新ISPサービスを中心とするデータ通信関連やおまか請求などから生じるストック収益の伸びで補う計画。
営業利益は、同14.2%増の5億10百万円の計画。利益面は、新ISPサービスを中心とするデータ通信関連やおまか請求など収益性の高いストック収益の拡大により増益率が高まる見通し。
過去3ヶ年有利子負債の圧縮と販管費の削減を積極的に行ってきたものの、今後はデータ通信関連の新サービス拡大のために自社インセンティブを増加させる予定であり、有利子負債と販管費も増加に転じる可能性が高い。
配当も14/3期と同額(上期末7円、期末8円)の1株当たり年間15円(株式分割考慮後)の期初予想を据え置き。
 
(2)15/3期の戦略
 ① iSmart接続-Fひかりの拡大
販売チャネル拡大、オプションメニュー充実、ブランドサイトリリースを行う。
 ② スマートひかりの拡大
国内最大規模の販売パートナー群との協業を通じて、収益機会を創出する。
 ③ おまか請求の拡大
スマートフォンで利用明細の閲覧、第三者機関によるセキュリティ監査、BCPとDR対策、電子署名法対応など、差別化を図り、「選ばれる理由」を作り続ける。
 ④ コンサルティングの拡大
認証維持・更新コンサルの拡大、対応及びISO規格の拡充などを図る。
 ⑤ (株)ホワイトビジネスイニシアティブ(WBI)の拡大
新たに直販チャネルを立ち上げ、(株)光通信(9435)グループの(株)アイ・イーグループの営業リソースを活用。
 
 
今後の注目点
今第1四半期を振り返ると同社が目指しているネット系ストック収益の拡大を通じたIP&Mobileソリューション事業の業績拡大が達成できており非常に評価ができる内容であったと言えよう。自社インセンティブの積み増しによるISPサービスを中心とするネット系ストック収益の拡大策は、売上総利益率を高める効果があるものの、有利子負債の増加や自社インセンティブの償却増による販管費の増加をもたらすリスクをはらんでいる。しかし、今第1四半期の有利子負債が14/3期末比減少していること、また、販管費の伸も売上総利益の伸びを下回り売上対営業利益率が上昇していることが確認された。販管費がコントロールできている成果と評価できよう。第2四半期以降も財務体質の悪化と販管費の増加を抑制しながら、IP&Mobileソリューション事業の業績を拡大して行けるのか、ネット系ストック収益の費用対効果が注目される。
一方で、同社が早期の実現を目指している従来型の通話系ストック収益の回復については、今第1四半期も減収減益が継続しており依然底打ちとは言えず、残念ながら大手販売パートナーとの協業強化の成果が確認できなかった。同社が売上の拡大を伴う本格的な業績拡大路線に回帰するためには、従来型の通話系ストック収益の底打ちが不可欠であることから、引き続き大手販売パートナーとの協業強化の成果についても注目していきたい。