ブリッジレポート
(2714) プラマテルズ株式会社

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ブリッジレポート:(2714)プラマテルズ vol.19

(2714:JASDAQ) プラマテルズ 企業HP
井上 正博 社長
井上 正博 社長

【ブリッジレポート vol.19】2015年3月期上期業績レポート
取材概要「アジア市場で合成樹脂の価格が値下がりしているようだ。製品の消費地である欧州の景気減速の影響を受けて、加工拠点である中国や東南アジアで需要・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年11月25日掲載
企業基本情報
企業名
プラマテルズ株式会社
社長
井上 正博
所在地
東京都品川区北品川4-7-35 御殿山トラストタワー
決算期
3月 末日
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年3月 59,568 833 803 279
2013年3月 55,610 817 783 420
2012年3月 57,790 883 840 531
2011年3月 55,762 899 842 500
2010年3月 47,145 663 621 388
2009年3月 52,550 893 809 489
2008年3月 56,861 1,089 943 704
2007年3月 52,022 1,219 1,115 652
2006年3月 50,673 1,054 1,005 569
2005年3月 46,804 790 746 403
2004年3月 43,720 659 566 309
2003年3月 42,614 685 642 240
株式情報(10/31現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
437円 8,548,367株 3,736百万円 3.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
15.00円 3.4% 56.15円 7.8倍 882.12円 0.5倍
※株価は10/31終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
プラマテルズの2015年3月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
合成樹脂(プラスチック)の専門商社。原料メーカーから仕入れた樹脂原料やコンパウンド(樹脂原料に添加剤を加え機能を強化した成形材料)をセットメーカーや成形メーカー及び樹脂の二次加工メーカーに販売している。最終用途は、電子・電機・OA事務機器、玩具、住宅建材、自動車等。連結子会社11社、持分法適用関連会社1社(コンパウンド工場への出資)等と共にグループを形成し、子会社が合成樹脂製品の製造・販売も手掛ける。また、総合商社の双日(株)グループにおいて合成樹脂部門を担う双日プラネット(株)が株式の46.5%を保有している。
同社は化学品卸業界に属し、プラスチック専門商社として唯一の上場企業である。
 
国内営業拠点
東京本社、大阪支社、名古屋支店、静岡支店、九州支店(大分)、弘前営業所、長崎出張所
国内子会社
 
 
【プラスチックと同社事業の特性】
石油精製の過程で得られるナフサ(粗製ガソリン)を高温熱分解して得られるエチレンやプロピレン等の出発原料を重合すると(分子同士を結合させて高分子にする事)、プラスチック、合成繊維原料、合成ゴム等、基礎製品の原料(樹脂原料)となりポリエチレンやポリプロピレン等の高分子が生まれる。

同社は500社の仕入先と1,300社(国内800社、海外500社)の顧客を有し、樹脂原料(ベース樹脂)やコンパウンド(目的とする性能や機能を得るために樹脂原料に強化材や添加剤を配合したもの)を原料メーカーからペレット(加工しやすいように3~5mm程度の粒子状にしたもの)として仕入れて、OA機器、家電、自動車部品メーカー等の顧客に販売している。
 
 
相対的に単価が高く高付加価値商材であるエンジニアリング系やスチレン系の樹脂原料の取扱が60%超
売上高の83.4%はプラスチック原料で(この他、製品14.6%、関連機器・シート2.0%。14/3期実績ベース)、相対的に単価が高く高付加価値商材であるエンジニアリング系(44.3%)やスチレン系(20.0%)の樹脂原料の取扱が多い。エンジニアリング系樹脂原料とはポリアミド樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート等で、用途はOA・事務機器、光学機器(カメラ等)、精密部品(ギア等の機構部品)等。一方、スチレン系樹脂原料とは、ポリスチレンやABS樹脂等で、エアコン、冷蔵庫等の白物家電、パソコン及び周辺機器、FAX、及び玩具等で使われている(この他、家電・医療機器向け等のオレフィン系樹脂10.1%、建材向け等の塩化ビニール系樹脂6.3%、その他樹脂2.6%)。

販売先業界別の構成比(個別ベース売上高上位100社)は、日本メーカーが圧倒的な強みを持つ事務機器・OA・光学機器向けが49.2%、スチレン系・オレフィン系が中心の家電・電子向けが13.4%、塩化ビニール系材料が中心の建材7.0%、オレフィン系のポリエチレン・ポリスチレン等の医療機器が6.9%。この他、自動車向け4.3%、容器・化粧品2.8%、玩具・その他16.3%、と取引先は多様だ。
 
重点仕入先と仕入商品及び用途
旭化成グループ    スチレン系樹脂原料  : 冷蔵庫、エアコン等
東洋インキグループ  コンパウンド     : OA・事務機器
帝人グループ     エンジニア系樹脂原料 : カメラ・プリンター外装

この他、双日グループ、チッソグループ、三井化学グループ、出光興産グループ等からの仕入も多い。
 
ビジネスチャンス  軽量化を追い風に自動車向けの市場が拡大
デザインの自由度の高さ、優れた加工性、軽度の衝撃エネルギー吸収性、耐腐食性等の長期耐久性、軽量(鉄との比較)、といった特性から、国産車のプラスチック使用量は重量比で10%に上る。また、重量ベースの自動車1台当たりのプラスチック使用量は、2002年には118㎏だったが、2010年には151㎏に増加し、更に2017年には201㎏に拡大すると見られている。
 
 
【成長戦略】
国内は、顧客密着型の営業を徹底する事で顧客と共に成長を図る。一方、海外は、アジア全体に生産拠点を拡大する顧客の動向に合わせて、同社も海外拠点整備の重点エリアを中国からアジアに広げ、顧客ニーズに応えていく(アジアの拠点整備は14/3期で一巡しており、現在は拠点強化に軸足が移っている)。
当面の目標としては、17/3期に経常利益10億円を掲げており、30%の自己資本比率の維持を念頭に財務面にも配慮する。また、株主には安定配当で報いていく考え。
 
海外
中国、インド、東南アジアを中心とした世界的な人口の増加と生活水準の向上による消費の増加を背景に消費財・耐久消費財の素材であるプラスチックの需要増が続いており、市場は拡大傾向にある。同社はアジアを中心に海外の顧客ニーズを取り込む事で更なる事業拡大を図るべく、重点エリアを中国からアジアへと広げ、拠点整備を進めてきた。アジアでの拠点整備は14/3期に一巡しており、15/3期以降、アジアの成長を本格的に取り込んでいく考え。
 
国内
同社は強みである顧客密着型の営業を徹底する事で国内でのシェアアップを図ると共に、海外拠点を有機的に活用する事で海外進出日系企業との取り組み拡大にもつなげていく考え。
尚、同社の顧客は、精密機器、医療機器、家電・電子等の勝ち組企業が多く、いずれの顧客も国内外での生産バランスに配慮した経営を行っている。このため、国内でも取引の拡大余地を残している。
 
 
 
2015年3月期上期決算
 
 
前年同期比2.7%の減収ながら、同1.1%の営業増益
売上高は前年同期比2.7%減の279億68百万円。国内は、消費税引き上げ後の生産・消費回復が鈍く特に新設住宅着工数が減少しているが、189億23百万円と同1.8%の減少にととまった。一方、海外は、アジアでの拠点整備の効果が表れてきたものの、景気減速によるに中国の苦戦が響き、90億44百万円と同4.6%減少した。

商材別では、医療機器向けを中心にオレフィン系樹脂が31億22百万円と同8.3%増加。エンジニアリング系樹脂やスチレン系樹脂もわずかな減少にとどまったが、建材等の住宅関連向けが多い塩化ビニール系材料が落ち込んだ他、その他の樹脂や合成樹脂関連等の製品売上も減少した。

利益面では、付加価値の高い商品の売上構成比の上昇に加え、円安傾向で推移した為替も追い風となり、売上総利益率が5.7%と0.3ポイント改善。経費節減の取り組みが成果をあげ、販管費も小幅な伸びにとどまり、営業利益は3億88百万円と同1.1%増加した。特別損失がほぼなくなったため四半期純利益は同5.6倍の2億12百万円となった(前年同期は厚生年金基金脱退損失2億66百万円を特別損失に計上した)。
 
 
 
 
売上債権・仕入債務の決済が進んだ事や有利子負債の削減を進めた事で上期末の総資産は、235億21百万円と前期末に比べて12億26百万円減少した。自己資本比率は前期末に比べて2.4ポイント改善の32.9%。同社は30%の自己資本比率維持を念頭に財務戦略を進めている。
 
 
2015年3月期業績予想
 
 
通期業績予想に変更はなく、前期比4.9%の増収、同8.0%の営業増益予想
売上高は前期比4.9%増の625億円。国内では、消費税引き上げ後に落ち込んだ生産が徐々に回復してくる見込み。海外は、中国景気に不透明感はあるものの、アジアの各拠点が寄与する上、円安も追い風になる。
利益面では、円安効果に加え、営業費用が変動費を中心にした増加にとどまるため、営業利益が9億円と同8.0%増加する見込み。

配当は1株当たり上期末7円、期末8円の年15円を予定。同社は、将来の事業展望(海外展開及びM&A)と経営基盤・財務基盤の強化のため必要な内部留保を確保しつつ安定的な配当を継続していく事を基本方針としている。
 
 
今後の注目点
アジア市場で合成樹脂の価格が値下がりしているようだ。製品の消費地である欧州の景気減速の影響を受けて、加工拠点である中国や東南アジアで需要が減少している事がその要因。中国の不動産不況で主要な用途である建材向けが振るわず、ABSとポリスチレンの主原料であるスチレンモノマーのスポット価格が2年ぶりの安値圏にある事も一因。スチレン系では、年初から続いていたポリスチレンの価格下落が、8月以降、加速しており、価格が安定していたABS樹脂も、8月以降、値下がりしている。共に8月以降の市況悪化が目立つのは、クリスマス商戦用の需要が盛り上がりに欠けたため。こうした事が影響したのか、同社の業績進捗率も、売上高44.7%(実績ベースの前年同期の進捗率48.7%)、営業利益43.2%(同46.1%)、経常利益42.5%(同46.4%)、と若干遅れ気味。第3四半期以降、更に影響が出てくる可能性もあるが、(株)インベストメントブリッジでは、アジアでの拠点整備の効果が出始めている事や足元で業績予想の前提を10円程度上回る円安が通期業績の支援材料になると考えている。
取引先がグローバル展開しているため、同社も世界的な景気悪化の影響が避けられないが、中期的な成長力の源泉となるアジア展開が着実に歩を進めている事に注目したい。