ブリッジレポート
(2435) 株式会社シダー

スタンダード

ブリッジレポート:(2435)シダー vol.29

(2435:JASDAQ) シダー 企業HP
山崎 嘉忠 社長
山崎 嘉忠 社長

【ブリッジレポート vol.29】2015年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「入居率が想定を下回ったことが主因で下方修正となった。同社としては今後の課題として①特定施設において公募で選定されないと事業できないため・・・」続きは本文をご覧ください。
2015年4月7日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社シダー
社長
山崎 嘉忠
所在地
北九州市小倉北区大畠 1-7-19
決算期
3月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年3月 10,415 325 132 77
2013年3月 10,097 198 1 -13
2012年3月 9,614 421 430 224
2011年3月 8,746 225 295 158
2010年3月 8,332 408 419 237
2009年3月 7,075 149 100 46
2008年3月 5,921 56 42 16
2007年3月 4,519 -403 -406 -247
2006年3月 4,251 309 297 166
2005年3月 3,649 352 288 164
2004年3月 3,125 122 97 41
2003年3月 2,352 111 104 30
2002年3月 1,594 17 21 11
2001年3月 281 -20 -21 -14
株式情報(3/16現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
204円 11,475,914株 2,341百万円 5.7% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
2.0円 0.9% -5.58円 -倍 114.59円 1.8倍
※株価は3/16終値。発行済株式数は、直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除し株式分割を反映。ROEは前期末実績。
 
シダーの2015年3月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
デイサービス及び有料老人ホーム「ラ・ナシカ」を中心とした介護サービスを、本社のある福岡県を中心に全国展開。リハビリテーションに重点を置き、より人間らしく生きるための生活支援を行う事を経営方針としており、総勢120名を数えるリハビリ職員の規模は介護サービス事業者の中では出色。
 
 
同社の介護事業の考え方
週1回のデイサービストレーニング(リハビリ)のみの活動だけでは、体を維持する又は改善するには足りないと考えている。日常生活の中で活動量を上げる為、仲間作りや趣味作り、自身で運動習慣を身につけてもらうためのサービスを提供する。
 
【事業セグメント】
事業は、同社の施設の来場者にサービスを提供するデイサービス事業、有料老人ホーム等の施設の入居者を対象にサービスを提供する施設サービス事業、及び利用者の自宅を訪問して日常生活訓練や機能訓練等を行うリハビリサービスや日常生活の手伝いを行うホームヘルパーサービス等の介護サービスを提供する在宅サービス事業に分かれる。14/3期の売上構成比は、それぞれ31.6%、61.3%、7.1%。2014年11月30日現在の拠点数は次の通り。
 
 
 
 
【沿革】
前身は医療機器の販売会社だった(株)福岡メディカル販売。2000年10月に社会医療法人池友会系列の医療機関でリハビリ業務に従事していた山崎嘉忠氏(現社長)等が中心となり(株)シダーに商号を変更し介護事業へ参入。01年1月にデイサービス施設4施設を開設した。デイサービス事業が順調に拡大し、05年3月にジャスダック証券取引所に上場、同年9月には有料老人ホーム事業(現在の、施設サービス事業)に参入した。
06/3期、07/3期と有料老人ホーム事業の先行投資(新施設の立ち上げ費用)が利益を圧迫したものの、08/3期以降は施設の累積効果(ストック効果による事業規模の拡大)で、新規開設負担を吸収して利益を増やせる体制が整った。11/3期は新卒40名の入社による人員の増加や新規開設施設の増加(3事業合計で10/3期:3施設→11/3期:5施設)、更には既存施設のリニューアルもあり利益が減少したものの、12/3期は既存施設の新規利用者獲得が順調に進んだ事に加え、施設オペレーションの効率化で増益に転じた。しかし、13/3期は12年に行われた介護保険法改定の影響を受けた。同社の場合は、デイサービス事業における介護報酬改定の影響が大きく減益となった。14/3期は、その影響を解消する1年であった。
 
【事業戦略 -地域のリハビリセンターを目指して-】
同社はデイサービスセンターや有料老人ホームにおいて近隣の一般・健康な高齢者向け健康教室等を開催し、地域の病院、ケアマネージャー、老人会等とネットワークを構築すると共に地域に溶け込む事で、施設の稼働率や入居率の向上を図っていく考え。また、このネットワークを活用して訪問介護ステーションやリハビリステーション(在宅サービス事業)とのシナジーも高めていく。
その成功例ともいえるのが山梨県甲府市での取組み。09年5月にラ・ナシカ甲府を開設、10年には甲府デイサービスを開設した。好評を得て、13年には甲府南デイサービスを開設することとなった。
尚、06年度の介護保険の改定の際に、「訪問看護計画において、理学療法士等の訪問が保健士又は看護師による訪問の回数を上回るような設定がなされることは適切ではない」との規制が盛り込まれたため、在宅リハビリには大きな逆風が吹いた。この影響で同社も在宅サービス事業の積極的な活動を控えたが、09年度の改定でこの規制が緩和されたため積極的に在宅リハビリのニーズに応える事が可能となった。
また、施設を集積させる事は3事業のシナジーを高めるだけでなく、理学士等の職員が地元で安定して働く事のできる環境作りにもつながる。
 
デイサービス施設では80人規模施設の大型デイサービス中心に展開している。トレーニングルーム・カラオケ・シアター・大浴場・マッサージ・喫煙ルームなど各個人にあった活動を楽しめるゆとりある空間造りが可能となる。
デイサービスの施設基準は利用者1人当たり3平方メートル以上となっておりリハビリテーションに軸足を置いた施設運営が同社の特色。午前、午後にそれぞれ上級・中級・初心者にコース分けされた80分の個別リハビリテーションを行う。
 
 
施設サービスでは、1階フロアではスタッフがデイサービスと同等のサービスやリハビリテーションを提供、居室では自宅に居るのと同様に訪問リハビリ、訪問看護・ヘルパーのサービスを提供する。9月30日現在の総居室数は1,880室、入居者数は1,604人。
 
 
【業界を取り巻く今後の動向】
通所介護の介護報酬(改正)見通しについて
① 認知症(自立度III)以上を一定割合(認知症指導者・リーダー・実践者研修修了者を専従で1名以上配置)、重度者を一定割合(看護職員を専従で1名以上)の場合は報酬の加算…地域連携の拠点としての機能
② 機能訓練加算I・IIの実効性を担保する…加算算定の見直しを行い、地域で在宅生活が継続出来るように生活機能維持・向上に資する効果的な支援
 
 
③ 通所介護事業所における介護予防・日常生活支援総合事業における同一事業所でのサービス提供は現行の介護予防通所介護に準ずる
 
 
介護報酬見直しに対する同社の対応…サテライト型デイサービスの開設
 
通特定施設入居者生活介護の介護改正見通しについて
① 介護老人福祉施設の利用者が重点化されることを踏まえ、特定施設入居者生活介護の役割が拡大することから、手厚い介護体制の確保を推進…介護老人福祉施設と同様にサービス供給体制強化加算の創設
 
 
② 認知症高齢者への対応によって増加する負担に対する評価や、積極的な受け入れを促進する観点からも、認知症専門ケア加算を創設
 
 
③ 看取り加算の充実…新たな要件を増やすことにより、手厚い看取り介護を行う
・入居者の日々の変化を記録し、多職種で共有・連携を図り、看取り期早期より入居者及び、その家族等の意見を尊重し看取り介護を行う。
・当該記録等により、入居者及びその家族等への説明を適切に行うことを追加し、死亡日以前4日以上30日以下における手厚い介護を実施。
・特定施設における看取り介護の体制構築強化をPDCAサイクルにより推進する。
 
通在宅サービスの介護改正見通しについて
訪問リハ
・訪問看護の理学療法士等の訪問と訪問リハビリテーションの基本的な報酬評価を合わせる
・訪問看護の理学療法士等の訪問に対しても、訪問リハビリテーションと同様なリハビリテーションマネジメントの充実を推進するための加算を新設する。
 
 
ケアプラン
特定事業所加算の要件が厳しくなり、減算が予想される(全事業対象)。
要件:居宅介護事業所は公平中立な立場で、利用者に必要なケアプランを組み込むことが本来の目的。正当な理由がないのに、居宅介護支援事業所が選ぶサービスの比率が一定(現状は90%)以上が特定のサービス事業者に集中すれば減算の対象に。
 
これらの法や制度改正は同社の業績に大きな影響を与えることはなさそうだが、引き続き市町村等と情報を共有していく。
来年4月に改定となる見通し。
 
【損保ジャパンとの資本・業務提携】
12年9月に高齢社会戦略1号投資事業有限責任組合(出資者99.25%株式会社損害保険ジャパン)により公開買付けが行われた。同組合(実質損保ジャパン)はシダーの34%を保有する筆頭株主となる。損保ジャパンと業務提携を結び、損保ジャパンの数多くある支店や代理店を活用し、入居者や利用者を紹介するというメリットが生じることとなる。
 
 
2015年3月期上期決算
 
 
前年同期比1.2%の増収、58百万円の経常損失
売上高は前年同期比1.2%増の53億11百万円。主に昨年度、新規に開設した施設において、新規利用者の獲得と充実したサービスを提供すること等、施設稼働率の向上に努めた、いずれのセグメントも増収となった。利益面では、景気の回復傾向に伴い求人費用及び人件費が上昇した。また、消費増税に係る控除対象外消費税の負担増などにより売上原価が大きく増加、売上総利益率が12.2%から7.6%に低下した。販管費率も若干上昇、営業利益は前年同期比84.5%減の47百万円となった。支払利息は1億25百万円と前年同期比7百万円増、経常損失は58百万円、純損失は70百万円となった。期初予想に対して売上高が21百万円、営業利益は1億91百万円、経常利益は2億2百万円、純利益は1億49百万円それぞれ下回った。同業他社の参入等により有料老人ホームの入居率が、当初の計画より低調に推移したことが主因。
 
(2)セグメント別動向
 
デイサービス事業
売上高は前年同期比0.4%増の16億79百万円、セグメント利益は同24.4%減の1億87百万円。8月には栃木県宇都宮市にデイサービスを新規開設。営業強化のための様々な施策に取り組んでいるが、一部の事業所において前年実績を下回った。
 
施設サービス事業
売上高は前年同期比1.6%増の32億47百万円、セグメント利益は同48.7%減の1億85百万円。有料老人ホームの入居者獲得に注力し、新規施設を含む全ての居室数に対しての入居率は85.3%。昨年度新規開設した施設は、堅調に入居者を獲得した。しかし、一部の既存施設において前年度の入居率を下回った。
 
在宅サービス事業
売上高は前年同期比2.0%増の3億84百万円、セグメント損失は4百万円(前年同期は0百万円の損失)。利益率の改善のため人員配置や業務手順の見直し等、効率的な運営に取り組むことに注力した。
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
 
上期末の総資産は前期末比4億91百万円増の144億55百万円となった。負債については同5億73百万円増の131億40百万円となった。また株主資本は同81百万円減の13億14百万円となった。
自己資本比率は前期末比0.9ポイント低下し9.1%となった。
 
 
上期末の現金及び現金同等物の残高は前期末比3億59百万円減少し、7億22百万円となった。
営業CFは前年同期比2億87百万円(57.5%)減の1億27百万円の収入となった。その主な内訳は、収入要因として、減価償却費2億29百万円、支出要因として売上債権の増加額1億円があった。
投資CFは前年同期比1億54百万円(30.4%)支出が増加し6億64万円の支出となった。その主な内訳は、支出要因として有形固定資産の取得による支出5億91百万円、敷金及び保証金の差入による支出66百万円、預り保証金の返還に伴う支出35百万円、預り保証金の返還による支出35百万円があり、収入要因としては預り保証金の預りに伴う収入37百万円があった。
これらによりフリーCFは前年同期比3億27百万円支出が増加し、5億37百万円の支出となった。
財務CFは前年同期比1億49百万円(50.4%)減の1億77百万円の収入となった。その主な内訳は、収入要因として短期借入金による収入9億80百万円、長期借入金による収入5億円、支出要因として短期借入金の返済による支出9億10百万円、長期借入金の返済による支出3億4百万円あった。
 
 
2015年3月期業績予想
 
 
前期比5.2%の増収、37百万円の経常損失予想
通期予想は売上高が前期比5.2%増の109億52百万円、経常損失37百万円(前期は1億32百万円の利益)を計画する。期初予想売上高113億44百万円、経常利益3億39百万円からの下方修正となった。売上については、有料老人ホームの入居率向上のため引き続き営業強化を実施し、収益の改善を図る。しかし、上期の業績を踏まえ、期初予想より下回ることが見込まれるため、利益面では新規施設の開設や求人に係る費用、入居募集に係る費用等、経費の増加要因が予想されるため修正となった。尚、長野県松本市、静岡市に有料老人ホームを新規開設した。下期にデイサービス1施設、有料老人ホーム3施設の出店を予定する。配当は2円の期末配当を計画する。期初予想4円から修正した。
 
 
今後の注目点
入居率が想定を下回ったことが主因で下方修正となった。同社としては今後の課題として①特定施設において公募で選定されないと事業できないため計画的な事業展開が難しい、②人材について好景気と人口減少を受けて介護人材の確保がこれまで以上に困難な状況にある、③今後の介護報酬改定による制度リスク…といったことを挙げている。しかし、同社の競争力をもってすれば入居率の改善は自ずと進み、こういった課題も克服できるのではないだろうか。