ブリッジレポート
(9445) 株式会社フォーバルテレコム

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ブリッジレポート:(9445)フォーバルテレコム vol.40

(9445:東証2部) フォーバルテレコム 企業HP
谷井 剛 社長
谷井 剛 社長

【ブリッジレポート vol.40】2015年3月期業績レポート
取材概要「09/3期をピークに減少に転じた売上高は、13/3期を底に増加に転じ、15/3期は2期連続の増収を達成した。近年、ネット系のストック収益及びドキュ・・・」続きは本文をご覧ください。
2015年7月14日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フォーバルテレコム
社長
谷井 剛
所在地
東京都千代田区神田錦町三丁目26番地 一ツ橋SIビル2F
決算期
3月
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2015年3月 12,385 581 567 305
2014年3月 12,145 446 435 272
2013年3月 11,990 436 438 269
2012年3月 13,470 323 302 177
2011年3月 13,560 391 391 155
2010年3月 13,956 347 327 194
2009年3月 15,042 391 388 133
2008年3月 13,466 337 344 192
2007年3月 12,461 845 840 975
2006年3月 11,024 859 868 841
2005年3月 7,740 470 452 726
2004年3月 6,114 214 205 205
2003年3月 7,746 93 40 69
2002年3月 11,879 -1,732 -1,779 -4,939
2001年3月 18,224 284 134 45
株式情報(6/11現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
407円 16,693,200株 6,794百万円 16.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
15.00円 3.7 % 25.76円 15.8倍 110.05円 3.7倍
※株価は6/11終値。ROEは前期末実績。
今回のポイント
 
 
会社概要
 
中小・中堅法人向けにOA・ネットワーク機器の販売やサービスの取次ぎを展開するフォーバル(8275)の連結子会社。フォーバルの連結決算において、フォーバルテレコムビジネスグループとしてセグメントされている(15/3期はフォーバルの連結売上高の25.8%を占めた)。グループは同社の他、連結子会社4社、持分法適用関連会社1社。
 
【事業内容と企業グループ】
同社及び連結子会社(株)FISソリューションズによる法人向けVoIPサービス(高速ブロードバンド回線を利用した電話やインターネット接続サービス)や法人向けFMC(Fixed Mobile Convergence)サービス「2way Smart」の提供と関連機器販売の「IP&Mobileソリューション事業」、連結子会社(株)トライ・エックスを中心に普通印刷・特注文具の製造・販売を手掛ける「ドキュメント・ソリューション事業」、及び(株)保険ステーションによる保険やプライバシーマーク等に関する各種コンサルティング等の「コンサルティング事業」に分かれる。また、持分法適用関連会社(出資比率50%)で、(株)光通信(9435)グループの(株)アイ・イーグループとの合弁会社(株)ホワイトビジネスイニシアティブが「2way Smart」の企画開発及び関連するハードウエア開発を手掛けている。
 
 
 
 
主要なサービスの概要
 
(1)IP&Mobileソリューション
AmaVo
新たに提供を開始したサービスであり、iSmartひかり(同社NTT光コラボ回線)専用の法人向け電話サービス。本サービスは050VoIPサービスをベースとした0AB~J番号の発着が可能なサービス。AmazingVoIP(驚くべきVoIPサービス)の頭文字をとってネーミングされた。 AmaVoは、①NTT回線をアクセス回線として利用しているので、開通までの時間がNTTと一緒で早い、②音声サービスのオプション、チャネル追加の手続きが簡単かつ早くて安い、などのメリットを持つ。Amavoの導入により顧客企業の通信コストは大幅なコストダウンが期待できる。
 
 
i-Smartひかり
NTT東日本・西日本が提供する光コラボレーションモデルを受け、同社がオリジナル料金で提供している光回線サービス。①バックボーンはNTTのフレッツ網を利用しているため品質が安定している、②請求の一本化ができるというメリットを持つ。おまか請求やワンビリングサービスで培われた請求一本化のノウハウが武器となっている。
 
 
 
i-Techmo(アイテクモ)
専用アプリ(2waySmart)をスマートデバイス(iPhone、iPad)にインストールすることで、スマートデバイスを社内では内線電話として、社外では携帯電話として使用することが可能となる。これにより、①スマートフォンから代表電話で発信すること、②スマートデバイスで内線発着信すること、③ビジネスフォンの削減で経費を削減することが可能となる。その他、ビジネスフォンの機能をスマートデバイスで実現すること(同社オリジナル機能特許第5655183号)や簡易CTI機能の搭載により、着信を受けた顧客のWEBサイトや地図の表示が可能となり、顧客の情報を素早くキャッチすることが可能となる。これまで同社は、小規模事業者向けに同様のソリューションを提供していた。「i-Techmo」は、「接続端末数1,000台」「外線同時通話数100通話」などの機能を有する、大規模・中規模事業者向けのソリューションであり、「IP電話回線」と「ISDN回線」のマルチラインに対応している。
 
 
iSmart接続-Fひかり
iSmart接続-Fひかりは、法人向けに提供している高品質なインターネット接続サービスを、個人でも利用しやすいように、サービス価格・内容を最適化したフレッツ光専用プロバイダサービス。
(サービスプラン)
 
 
メールアドレス10個、1GBのホームページ、スパムフィルタ、メール転送などがずっと無料なのが特徴。
 
(2)セキュリティコンサルティング
プライバシーマーク(Pマーク)や各種ISOのコンサルティング
認証取得支援から、運用支援、更新支援、規格改訂支援、各種セミナーなど、Pマークや各種ISOに関わるサポートを実施。
 
 
(3)ペーパレスソリューション
おまか請求
請求書・支払通知書・納品書をWeb化でコスト削減するツールを提供。顧客登録・受注登録・料金計算、請求書発行(WEB公開)・収納代行・督促支援業務などを含んだ請求代行サービス。請求に関する業務を代行し、顧客の請求コストの削減と業務負担の軽減を図る。また、おまか請求ではユーザーがクラウドサービスを安全に利用できるよう各種セキュリティ対策を実施している。
 
 
ワンビリングサービス
複数サービスの請求書をひとつにまとめて請求するサービス。請求書が何通も届くことなく、1請求書にまとめて請求される。請求書を一本化することで、各社からの請求書の煩雑さの解消や事務処理の簡素化が図られるなど、業務効率が向上する。
 
 
 
2015年3月期決算
 
 
前期比2.0%の増収、同30.4%の経常増益
売上高は前期比2.0%増の123億85百万円。売上面は、顧客製造業の好業績の恩恵を受けたドキュメント・ソリューション事業に加え、保険契約数やおまか請求が拡大したコンサルティング事業で増加したものの、音声電話に関連した従来型サービスが減少したIP&Mobileソリューション事業で減少した。
営業利益は同30.3%増の5億81百万円。増収効果によりドキュメント・ソリューション事業とコンサルティング事業の利益が増加したことに加え、ネット系のストック収益の売上が増加したIP&Mobileソリューション事業でも利益が増加した。IP&Mobileソリューション事業において、収益性の高いネット系のストック収益(「iSmart接続」)の売上が増加したことなどにより売上総利益率は、25.6%と前期比4ポイント高まった。一方、新ISPサービスの獲得に伴う営業費用(前払販売奨励金の償却費)の増加などにより、売上高対販管費比率は、20.9%と同3ポイント上昇した。また、営業外費用で持分法による投資損失32百万円(前期は持分法による投資損失7百万円)を計上したものの、営業外収益で違約金収入28百万円前期は8百万円)を計上したことから経常利益は同30.4%増の5億67百万円となった。その他、経営資源の有効活用及び財務体質の向上を図るため保有する土地・建物を譲渡し、固定資産売却損1億56百万円を計上したものの、当期純利益は同11.9%増の3億5百万円となった。
 
 
連結の売上総利益は5億47百万円増加し、売上総利益率も4.0ポイント上昇。個別ベースの売上総利益は、従前の通話系サービスにかかる課金収入が減少したものの、新たなサービスにかかるネット系他のストック収益やハードの販売などの一時収益が増加したことから、全体として2億96百万円増加した。また、子会社の売上総利益は、コンサルティング事業を行う子会社を中心に2億50百万円増加した。
 
 
販管費は、人件費やIP&Mobileソリューション事業における収益性の高いネット系ストック収益(「iSmart接続」)の獲得に伴う前払販売奨励金の償却費の増加などにより4億11百万円増加した。
 
 
IP&Mobileソリューション事業  売上高83億44百万円(前期比2.9%減)、セグメント利益1億80百万円(同45.2%増)
主に法人向けVoIPサービス、おとくライン、法人向けFMCサービス等を提供。音声電話に関連した従来型のメタル回線音声サービスが減少したものの、収益性の高いISPを主体とするネット系ストック収益(「iSmart接続」)が増加したことから減収増益となった。
 
ドキュメント・ソリューション事業  売上高18億16百万円(前期比6.5%増)、セグメント利益1億80百万円(同23.1%増)
主に印刷及び商業印刷物の企画・編集・制作等を行う。顧客製造業の業績が好調に推移したことなどから引き続き安定的に推移。前期に続き高い売上高対セグメント利益率(10.0%)を維持。
 
コンサルティング事業  売上高22億16百万円(前期比21.3%増)、セグメント利益2億38百万円(同27.8%増)
主に経営支援コンサルティング及び保険サービス等を行う。主に(株)保険ステーションの営業拠点拡大にともなう保険契約数の大幅な増加により、売上高及びセグメント利益が増加。請求代行サービス(おまか請求)とセキュリティコンサルティングサービス(セキュリティ本舗)も好調に推移。
 
 
15/3月末の総資産は、14/3期末比6億11百万円増の55億92百万円。資産サイドでは前払費用が、負債サイドでは、短期借入金や未払金が主な増加要因。15/3月末の自己資本比率(自己資本=株主資本+評価・換算差額等)は32.9%と14/3期末の35.8%から若干低下した。これは、「iSmart接続」の獲得に伴う前払販売奨励金を前払費用に計上している影響。
 
 
CFの面では、前払販売奨励金積み増しにより短期と長期の前払費用が増加し営業CFがマイナスへ転じた。有形固定資産の売却により投資CFのプラスが拡大したものの、フリーCFのプラスは縮小した。また、前期に計上した社債の償還がなくなったことから財務CFのマイナスは縮小した。
 
 
2016年3月期業績予想
 
 
前期比9.8%の増収、同14.5%の経常増益
売上高は前期比9.8%増の136億円の計画。売上高は、ISPサービス(「iSmart接続」)を中心とするネット系ストック収益やおまか請求及びコンサルティングなどから生じるストック収益の拡大を図りつつ、新サービスAmaVoの提供を通じて通話系のストック収益の底上げを図る計画。
営業利益は、同8.3%増の6億30百万円の計画。利益面は、増収効果によりIP&Mobileソリューション事業、ドキュメント・ソリューション事業、コンサルティング事業の全て分野で増加する見込み。販管費において人件費やISPコールセンター費用の増加が一服するものの、引き続き積極的な前払販売奨励金の償却が見込まれることから、売上高営業利益率は4.6%と前期比0.1ポイント低下する保守的な計画となっている。一方、前期計上した固定資産売却損が減少することから、当期利益の増益率は高くなる。
配当は15/3期と同額(上期末7円、期末8円)の1株当たり年間15円(株式分割考慮後)の予想。
 
(2)16/3期の戦略
 ① AmaVo&iSmartひかりの拡大を通じて通話系のストック収益の底上げを図る
NTT光コラボレーションモデルを活用した通信サービスにより料金のさらなる低額化・モバイルへの通話料無料や短納期・早期収益化を既存・新規の販売パートナー群と協業して実現する。
 ② iSmart接続-Fひかりの拡大
基幹商材として販売チャネルの更なる拡大を図るなどマス市場で攻勢をかける。
 ③ おまか請求の拡大
顧客登録や受注登録から請求・回収・督促まで請求に係る周辺業務代行とWEB提供により、「選ばれるサービス」を作り続ける。
 ④ コンサルティングの拡大
保険サービスの契約数の増加を図るとともに、マイナンバー制度導入・個人情報保護法改正に対応し認証維持・更新コンサルの拡大を図る。更に、対応ISO規格の拡充を図る。
 
 
今後の注目点
09/3期をピークに減少に転じた売上高は、13/3期を底に増加に転じ、15/3期は2期連続の増収を達成した。近年、ネット系のストック収益及びドキュメント・ソリューション事業とコンサルティング事業を営む子会社の売上高は順調に拡大している。一方、従来型の通話系のストック収益の減少が止まらないという状況が継続している。こうした中、15/3期の決算において、後者の売上高の減少を前者の売上高の増加が上回る傾向が鮮明となってきたことが証明された。同社が今後やらなければならないことは、現在伸びている分野を更に伸す一方で、苦戦を強いられている分野の減少を止めることであるが、その道筋がかなり明るくなってきたものと判断される。残された課題である通話系のストック収益減少の歯止めは、新しくサービスを開始したAmaVoの拡大が鍵を握っている。ユーザーは、既存の電話サービスから同社のAmaVoへ切り替えることにより、通信コストの大幅な低下と請求の一本化という利便性を得ることができる。一方同社は、AmaVoの拡大により新規顧客から通話料やオプション利用料などの収益がもたらされる。
通話系のストック収益の減少が継続しているにもかかわらず増収傾向が鮮明となってきた今、通話系のストック収益の減少に歯止めがかかった場合、同社の売上高の成長が加速することは一目瞭然である。利益率の改善のみの業績拡大には限界があることから株式市場の評価は高まらない傾向にあるが、逆に売上高の成長が加速する局面では株式市場の評価が高まる傾向が強い。今後のAmaVoの拡大により通話系のストック収益の減少に歯止めがかかるのか注目される。