ブリッジレポート
(6498) 株式会社キッツ

プライム

ブリッジレポート:(6498)キッツ vol.23

(6498:東証1部) キッツ 企業HP
堀田 康之 社長
堀田 康之 社長

【ブリッジレポート vol.23】2016年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「5月以降の銅相場の急落は想定外だったが、主力のバルブ事業が堅調に推移した事で上期決算はほぼ期初予想に沿った着地となった。ただ、国内外で・・・」続きは本文をご覧ください。
2015年12月8日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社キッツ
社長
堀田 康之
所在地
千葉市美浜区中瀬1-10-1
決算期
3月末日
業種
機械(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2015年3月 117,036 6,886 7,581 6,881
2014年3月 117,355 6,470 6,501 3,564
2013年3月 111,275 6,558 6,521 4,039
2012年3月 108,446 4,638 4,388 2,480
2011年3月 106,059 6,341 5,929 3,063
2010年3月 96,592 6,976 6,248 3,079
2009年3月 127,095 7,188 6,475 3,396
2008年3月 149,274 11,615 10,525 6,290
2007年3月 149,512 11,342 10,652 9,973
2006年3月 107,631 9,673 9,132 8,070
2005年3月 95,705 9,627 8,513 5,804
2004年3月 73,802 4,181 2,962 1,598
株式情報(11/17現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
578円 108,216,005株 62,549百万円 9.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
13.00円 2.2% 47.12円 12.3倍 686.47円 0.8倍
※株価は11/17終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
キッツの2016年3月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
バルブを中心とした流体制御機器の総合メーカー。バルブ事業では、国内トップ、世界でもトップ10に入り、ベスト3入りが目標。バルブは、青銅、黄銅、鋳鉄、ダクタイル鋳鉄(強度や延性を改良した鋳鉄)、ステンレス鋼等、用途に応じて様々な素材が使われ、同社は素材からの一貫生産(鋳造から加工、組立、検査、梱包、出荷)を基本とする。国内外の子会社約30社とグループを形成し、子会社を通して、バルブや水栓金具、ガス機器などの材料となる伸銅品の生産・販売(伸銅品でも国内上位のポジションにある)の他、ホテル事業等も手掛けている。
 
【企業理念  -キッツは、創造的かつ質の高い商品・サービスで企業価値の持続的な向上を目指します-】
「企業価値」とは「中長期的な株主価値」であり、「中長期的な株主価値」の向上には、顧客の信頼を得る事によって利益ある成長を持続していく必要がある、と言うのが同社の考え。そして、企業価値を向上させる事により、株主をはじめとして、顧客、社員、ビジネスパートナー、社会に対して様々な形で寄与し、豊かな社会づくりに貢献していきたいと考えている。
同社は、これらの思いを「キッツ宣言」に込め、更なる飛躍を目指している。
 
キッツ宣言
キッツは、
創造的かつ質の高い商品・サービスで企業価値の持続的な向上を目指し、ゆたかな社会づくりに貢献します。
KITZ’ Statement of Corporate Mission
To contribute to the global prosperity,
KITZ is dedicated to continually enriching its corporate value
by offering originality and quality
in all products and services.
 
行動指針(Action Guide)
Do it KITZ Way
・ Do it True(誠実・真実)
・ Do it Now(スピード・タイムリー)
・ Do it New(創造力・チャレンジ)
 
Do it True
人と人との関係で忘れてならないのが誠実に対応する心。また、表面的なものでなく物事の本質を追い求める心も必要。この基本を忘れる事なく企業活動を進めるための合言葉。
Do it Now
情報をいち早くキャッチし、迅速な意思決定と確実に実践していく躍動的な社員像を表現した言葉。
Do it New
変化に対応するために従来の発想から抜け出して秘められた創造力を発揮し、新しい事にチャレンジする社員像を表現した言葉。
 
【事業セグメントの概要】
事業は、バルブ事業、伸銅品事業及びホテル・レストランの経営(ホテル事業)等のその他に分かれ、15/3期の売上構成比は、それぞれ77%、18%、5%(利益ベースでは、95.2%、2.5%、2.3%)。
 
バルブ事業
バルブは、配管内の流体(水・空気・ガスなど)を「流す」、「止める」、「流量を調整する」等の機能を持つ機器で、ビル・住宅設備用、給水設備用、上下水道用、消防設備用、機械・産業機器製造施設、化学・医薬・化成品製造施設、半導体製造施設、石油精製・コンビナート施設など様々な分野で使用されている。
特に、住宅・ビル設備等の建築設備分野に使用される、耐食性に富む青銅製や経済性に優れた黄銅製の汎用バルブ、或いは付加価値の高いボールバルブ等の工業用ステンレス鋼製バルブは、国内で高いシェアを持つ主力商品である。販売先は、建築設備、各種工業設備・プラント、環境、エネルギー、半導体等多岐にわたる。鋳物からの一貫生産を特徴とし(日本で最初に「国際品質保証規格ISO9001」の認証を取得した)、グローバルコストの実現に向けて海外生産拠点の強化にも取り組んでいる。
 
 
 
伸銅品事業
伸銅品とは、銅に亜鉛を加えた「黄銅」、すず及びりんを加えた「りん青銅」、ニッケル及び亜鉛を加えた「洋白」等の銅合金を、溶解、鋳造、圧延、引抜き、鍛造等の熱間または冷間の塑性加工によって、板、条、管、棒、線等の形状に加工した製品の総称。キッツグループの伸銅品事業は(株)キッツメタルワークス及び北東技研工業(株)の事業分野であり、黄銅製の材料を用いた「黄銅棒」(黄銅棒はバルブ部材の他、水栓金具、ガス機器、家電等の部材としても使用されている)及びその加工品を製造・販売している。
 
その他
子会社(株)ホテル紅やが手掛けるリゾートホテルの運営(長野県諏訪市)が事業の中心。同ホテルは、諏訪湖畔の好立地を特徴とし、夕日に輝く展望風呂や大小の宴会場に加え、国際会議も開かれる大コンベンションホールを有する。尚、バルブ事業への更なる特化と経営資源の再配分を目的に、フィットネス事業を手掛けていた100%子会社(株)キッツウェルネスの全株式を、14年10月1日付けでダンロップスポーツ(株)に売却した。
 
【キッツグループ(バルブ事業)】
総合バルブメーカーとして、国内では、主要都市に展開する販売拠点ときめ細かい代理店網によって全国をカバーしており、海外では、インド、U.A.E.、韓国に駐在員事務所を置く他、中国、シンガポール、タイ、アメリカ、ブラジル、ドイツ、スペインに販売拠点を設置し、グローバルな販売ネットワークを構築している。生産では、国内7拠点の他、海外に12拠点(中国、台湾、タイ、インド、ドイツ、スペイン、ブラジル)を展開し、最適地生産を目指した生産ネットワークを構築している。
 
 
国内バルブ事業では、建築設備向けが43%を占め、水関連(上下水道等、14%)、半導体関連(12%)や機械装置(9%)等の比率も高いが、石油精製・石油化学、一般化学、食品・製紙、ガス、電力等、幅広い分野に製品を供給している(15/3期実績)。
 
 
海外バルブ事業のエリア別売上構成比は、アジア54%(アセアン・その他36%、中国13%、中東4%)、北米31%、欧州・その他15%(15/3期実績)。
 
*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。
 
15/3期は(株)キッツウェルネス株式の売却益21億56百万円を特別利益に計上した事もあり、ROEが前期の5.70%から9.83%に上昇した。一時的な利益である株式売却益を排除して試算すると8.3%程度になる(株式売却益にかかる税率を50%と想定)。値上げ効果と原価低減による主力のバルブ事業の利益率改善がROE向上の原動力となった。
 
 
第2期中期経営計画(14/3期~16/3期)は、アベノミクス効果や円安による国内設備投資の増加と復興需要を含めた建築設備市場の拡大を前提としたが、国内設備投資が盛り上がりを欠き、建築設備市場も人手不足による工事遅延で需要の顕在化が遅れた。このため、計画を下回る推移となっているが、増収基調が維持され、利益率も期を追う毎に改善している。
 
 
2016年3月期上期決算
 
 
前年同期比4.4%の増収、同0.5%の営業増益
売上高は前年同期比4.4%増の600億36百万円。(株)キッツウェルネスの連結離脱(2014年10月に売却)が27億円強の減収要因となったものの、主力のバルブ事業の売上が円安効果も追い風となった海外を中心に同10.8%増と伸びた。

営業利益は同0.5%増の36億06百万円。バルブ事業での原価低減や数量増等で売上総利益が同6.7%増加。円安による海外子会社販管費の円換算時の増加や研究開発費の増加、更にはM&A関連費用や役員賞与引当金の計上方法の変更等による販管費の増加を吸収した。
為替差損益の悪化(1億52百万円→△20百万円)で経常利益が34億44百万円と同5.4%減少したものの、有形固定資産売却益(旧京都ブラス跡地売却益75百万円)や事業譲渡益(キッツジーアンドアイの保険代理業務売却益1億70百万円)を特別利益に計上した事で最終利益は同2.8%の減少にとどまった。

尚、同社は、営業損益段階では海外子会社販管費の円換算時に為替変動の影響を受けるものの、輸出入が概ねバランスしているため売上総損益段階ではほとんど為替変動の影響を受けない。
 
 
 
バルブ事業
売上高は前年同期比10.8%増の473億98百万円。このうち国内市場の売上高は同3.0%増の281億58百万円。主力の建築設備市場向けは、一部物件への納入が始まったものの、期待したほどの実需の伸びにはつながらず、同1%の増収。機械装置、一般化学、食品・製紙等、ステンレス鋼製バルブが多く使用される工業用バルブ市場は、定期修理の増加で各市場が同5~10%増加(金額ベースではわずかな増加)。下期に向けての引き合いも増加しているようだ。この他、半導体製造装置向けが同10%増、耐震型の好調が続く水市場向けが同3%増。ただ、半導体製造装置向けは第2四半期に入り、減速感が出てきた。

海外市場の売上高は対ドルでの円安も追い風となり、192億39百万円と同24.6%増加した(約15億円は円安による押し上げ)。地域別では、北米が同20%増、前年同期に苦戦したアセアンの回復でアジアが同40%増。この他、大型プロジェクト物件も増加したが、ヨーロッパ・その他が同15%減少した。一方、半導体製造装置向けの売上は同40%程度の増加となった。

営業利益は同9.4%増の50億83百万円。国内での価格低下や円安による海外子会社販管費の円換算時の増加等があったものの、原価低減効果と第2四半期の数量増効果による上期末にかけての収益性改善等で吸収した。

子会社では、半導体製造装置向けバルブを手掛ける(株)キッツエスシーティーが半期で前年同期を大幅に上回る売上を計上した他、円安効果もあった米国子会社の売上も伸びた。また、苦戦が続いていた独Perrinも黒字を確保した。
 
伸銅品事業
売上高108億82百万円(前年同期比5.9%増)、営業損失29百万円(前年同期は営業利益1億29百万円)。2015年度第2四半期の国内黄銅棒市場は前年同期比6.0%減の14,569トン/月と低調な推移となった。販売数量が同2.2%減少したものの、製品価格の上昇と7月より新たに連結された北東技研工業の寄与で売上が増加した。ただ、5月以降の銅相場の急落による収益性の悪化で利益確保に至らなかった。
 
その他
売上高17億55百万円(前年同期比60.8%減、営業利益1億39百万円(同51.4%減)。2014年10月に(株)キッツウェルネスを売却した影響で大幅な減収・減益となったが、(株)ホテル紅やが手掛けるリゾートホテルの運営事業に限れば、同1.0%の増収、同8.1%の営業減益。
 
 
上期末の総資産は前期末に比べて81億67百万円増の1,239億57百万円。第2回無担保公募社債(60億円)の償還に向け、第3回無担保公募社債100億円を発行した事で現預金と有利子負債が増加した。自己資本比率は61.1%(前期末64.2%)。
 
 
税金費用の増加もあり、運転資金が増加したものの、29億45百万円の営業CFを確保した。バルブ事業を中心に設備投資を行ったが、営業CFの範囲内にとどまった。
 
 
2016年3月期業績予想
 
 
通期業績予想に変更はなく、前期比2.5%の増収、同23.4%の営業増益予想
売上高は前期比2.5%増の1,200億円。(株)キッツウェルネスの連結離脱の影響でその他の売上が32億円と同45.4%減少するものの、バルブ事業の売上が946億円と同4.9%増加して吸収。伸銅品事業は国内黄銅棒市場の回復と材料相場の上昇を前提に同5.6%増の222億円を見込んでいる。バルブ事業は、米州の回復と円安で海外売上が増加する他、国内も、第2四半期以降、主力の建築設備市場が緩やかながら動き出した。伸銅品事業は7月に子会社化した北東技研工業との連携強化による黄銅棒の加工品事業の強化に取り組む。

営業利益は同23.4%増の85億円。建築設備市場の緩やかな回復による数量効果と原価低減(通期で22億円程度)に加え、円安効果もあり、バルブ事業の営業利益が113億円と同18.9%増加する見込み。伸銅品事業は市況の安定を前提に本来の収益性の回復を目指している。

期末配当は1株当たり7円を予定しており、年13円となる見込み。
 
 
(2)セグメント別の下期見通し
バルブ事業
国内市場は、半導体製造装置向けが減速するものの、水市場の好調が続く中、主力の建築設備市場が緩やかながら回復基調にある上、工業用バルブ市場も引き合いが増えてきた。
建築設備市場は第2四半期に始まった物件納入が増加する。当初想定したほどの力強さはないが、代理店の在庫が減少傾向にあり不安は少ない(下期中には正常な在庫水準に戻る見込み)。耐震型をけん引に好調が続く水市場向けは季節要因から上期比で一段の増加が見込まれる。足元の引き合いが増加傾向にある工業用バルブ市場は、石油化学分野の投資や第4四半期のメンテナンス需要の取り込みに力を入れる。一方、業界全体が弱含みの半導体製造装置向けは、第2四半期に出てきた減速感が第3四半期以降は一段と強まるとみている。
海外市場は、米州で原油価格下落の影響による流通在庫調整が一巡し、新規のオーダーが動き始めている。一方、インドネシアは公共投資の遅れに加え、原油価格の下落で工業系・建築設備系共に民需が減速している。このため、小規模案件の確実な取り込みと日系設備工事会社への営業強化で取りこぼしを防ぐ。タイも需要は減少傾向にあるが、3月に新設した販売会社KITZ Valve&Actuation (Thailand) Co., Ltd.の受注活動を強化する。中国は大型プロジェクトの承認が抑制されており、工業投資は地方政府、民間共に減少傾向。このため、建築設備系(ビル、マンション、ホテル)のバルブに軸足を置いた営業活動を推進する。欧州も、低迷が続いており、「KITZ」、「Perrin」、「ISO」の3ブランド展開で需要の掘り起こしに注力する。プロジェクト物件は原油価格下落の長期化懸念から、延期及び中止物件が増えてきた。
 
伸銅品事業
増産に伴う自動車関連の増加が見込める他、需要期を迎えるガス機器向けも前年同期比で増加する見込み。この他、水栓関連も上期水準での堅調な推移が見込まれる。7月に子会社化した北東技研工業との連携にも力を入れる。
 
その他
ホテル事業において、忘年会・新年会需要も含めて国内団体予約の獲得に取り組む。予約獲得に向け、セットプラン等、新たな商品を発売する他、サービスエリア内での地元食材を使った商品の販売にも力を入れる。地方に波及しているインバウンド需要の取り込みにも力を入れる。
 
(3)トピックス
・ブラジルの工業用ボールバルブメーカーの買収
・水素ステーション用バルブのラインナップ拡充
・陸上養殖プラント市場参入に向けたマダイの長期飼育及びシステムの運用試験に成功
 
ブラジルの工業用ボールバルブメーカーの買収  南米の主要市場であるブラジルに、開発、生産、販売拠点を獲得
2015年11月、ブラジルの工業用ボールバルブの専業メーカーMGA社を100%子会社化した。MGA社は素材から完成品までの一貫生産体制を有し、高い技術力と高品質の製品、そしてブラジル全土をカバーする充実した販売ネットワークを強みとする。直近(14/12期)の業績は、1レアル=31円換算で、売上高22.5億円、営業利益4.5億円程度。今後、(株)キッツとMGA社の生産技術を融合して、ブラジル市場及び南米市場に適応した製品の開発・生産を加速させると共にキッツ製品を積極的に投入する事で現地のニーズに応えいく考え。
 
所在地 :ブラジル連邦共和国 (リオグランデ・ド・スル州)
設  立:1991年11月
資本金 :20,000千レアル
 
水素ステーション用バルブのラインナップ拡充
同社グループは、国内の水素供給インフラ設備向けとして、水素ステーション用超高圧ボールバルブに、ニードルバルブやチャッキバルブを加えた「KITZ CLESTEC-Series」をラインナップしているが、国内及び海外それぞれの規格に準じた製品をラインナップに加えた。国内市場向けは、高圧水素ガス用フィルタ(99 MPa)及び中圧水素ガス用フィルタ(50MPa)対応の2製品。海外市場向け(欧米モデル)は、日本仕様で確立した特殊なメタルシート構造を踏襲しつつも、日本モデルに比べてコンパクトな形状かつ最高許容圧力が大きい1製品。国内市場向け2製品は、2016年3月開催の「FC EXPO 2016(国際水素・燃料電池展)」に出展する予定。尚、Pa(パスカル)は圧力単位で、1MPaは100万パスカル。
 
陸上養殖プラント市場参入に向け、マダイの長期飼育及びシステムの運用試験に成功
同社は陸上養殖向けの新たな水浄化技術の実用化に取り組んできたが、今回、独自開発のプラントでマダイの長期飼育に成功した。独自開発のプラントは、電気的に生成させたラジカル反応を用いて水を循環浄化する事で陸上での魚の養殖を可能にするもの。同プラントの自動制御・遠隔監視システムの運用が順調な事から、今後、養殖市場に対して、エンジニアリング、マネジメント及びコンサルティングの3ソリューションを提供していく考え。尚、ラジカル反応とは、有機化学反応の内、反応過程においてラジカル(遊離基)が関与する反応の事で、有害化学物質の分解、抗菌、消臭等に利用できる。
 
キッツスマート養殖  -3つのソリューション-
エンジニアリング :水浄化技術の提供、養殖プラントの最適化設計等
マネジメント   :養殖プラントの自動制御・遠隔監視、飼育ノウハウ等
コンサルティング :事前調査、事業計画の策定等
 
上記3ソリューションにより、高品質な養殖魚の安定的な生産・出荷が可能になる。同社は、新たな水産ビジネスの提案を2016年度に開始する予定で早期に年商20億円規模のビジネスに育成したい考え。
 
 
今後の注目点
5月以降の銅相場の急落は想定外だったが、主力のバルブ事業が堅調に推移した事で上期決算はほぼ期初予想に沿った着地となった。ただ、国内外で足元の受注が弱含みなため、下期は販管費の抑制に努め、利益面で守りを固める考え。

もっとも、MGA社や北東技研工業(株)のM&Aにみられるように、中長期の成長に向けた施策は着実に打てている。南米展開の橋頭堡となるMGA社は、南米のGDP及び人口の約50%を占めるブラジルの工業用ボールバルブメーカーで、同社製品の対象市場においては20%を超える高いブラジル国内シェアを有する。景気低迷下の物価上昇に悩まされるブラジル経済の厳しさは周知の事だが、競合のバルブメーカーが経営難に陥る等で現地の競争条件が緩和されており、MGA社の業績は堅調だ。キッツにとっては、MGA社の目先の業績もさることながら、南米の主要市場であるブラジルに、開発・生産・販売拠点を獲得した事の意義が大きく、今後、ブラジル市場及び南米市場に適応した製品開発・生産を加速させると共にキッツ製品を積極的に投入して現地の需要を幅広く取り込んでいく。
一方、伸銅品事業を手掛ける(株)キッツメタルワークスが子会社化した北東技研工業(株)は黄銅棒の加工(切削加工やロウ付け加工)を中心に、水栓金具や空調機器関連製品の組み立ても手掛けている。素材を手掛ける(株)キッツメタルワークスと加工を手掛ける北東技研工業(株)の連携を強化する事で伸銅品事業の付加価値を高めていく考えだ。水素社会の到来をにらんだ水素ステーション用バルブやキッツスマート養殖のソリューション提供と共に今後の展開に期待したい。