ブリッジレポート
(3175) 株式会社エー・ピーカンパニー

スタンダード

ブリッジレポート:(3175)エー・ピーカンパニー vol.2

(3175:東証1部) エー・ピーカンパニー 企業HP
米山 久 社長
米山 久 社長

【ブリッジレポート vol.2】2016年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「本文中にあるように、同社の売上および営業利益は下期偏重で、特に年末を迎える第3四半期のウェイトが高く、利益面で特に顕著である・・・」続きは本文をご覧ください。
2016年1月26日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社エー・ピーカンパニー
社長
米山 久
所在地
東京都港区芝大門2-10-12 KDX芝大門ビル
決算期
3月末日
業種
小売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2015年3月 19,235 1,268 1,493 906
2014年3月 15,793 1,025 1,243 675
2013年3月 11,387 705 784 430
株式情報(12/8現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,625円 7,352,665株 11,948百万円 30.5% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
0.00円 - 145.12円 11.2倍 460.90円 3.5倍
※株価は12/8終値。発行済株式数は直近期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。
 
エー・ピーカンパニーの2016年3月期第2四半期決算概要などをお伝えします。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
「日本の食のあるべき姿を追求する」という理念の下、地鶏や鮮魚などの食材の生産・流通から、外食店舗による販売までを一貫して手掛ける「生販直結モデル」を展開。
生産流通事業では、養鶏場、加工センター等を自社運営するほか、自社漁船・定置網も保有する。
販売事業では、地鶏をメインメニューとした「塚田農場」、鮮魚を提供する「四十八漁場」などの店舗を直営中心に展開。顧客感動満足を実現しリピート(再来店)につなげる独自の販促手法も大きな特徴で、新規事業の育成に注力している。2015年9月末の店舗数は218店舗。(うち、ライセンス方式54店舗)
 
【沿革】
2001年10月、飲食業のプロデュースなどを手掛ける有限会社エー・ピーカンパニーを設立した米山社長は、短期間に売上を急速に拡大させた。

しかし、食材の流通構造、生産者の現状、居酒屋の存在意義など様々な問題を感じる中で、単に居酒屋の経営にとどまることに満足することが出来なかった米山社長は、食材を問屋から仕入れて販売するのではなく、生産まで遡って自社で手掛け、生産者にも消費者にもメリットを提供する「生販直結モデル」によって日本の食産業に変革を生み出すこと決意。このミッションがエー・ピーカンパニーの存在意義であり、「生販直結モデル」は同社の大きな差別化要因となっている。

まず美味しい地鶏を手掛けようと、苦戦しながらも養鶏業者との信頼関係を構築する中で、2006年2月、宮崎県日南市に子会社(有)APファームを設立し、同市内に自社養鶏場を建設。みやざき地頭鶏の生産を開始した。
仕入価格を大幅に引き下げることに成功するとともに、事業環境改善による後継者問題の解決や新規雇用の創出にも繋がることを確認した米山社長は、「生産者と消費者を直接つなぐことで、日本の食を変えていく。そのためには消費者に一番近い自分たちが、生産者の想いや生産の現場をきちんと知ったうえで、両者の橋渡しをしなくてはならない。」との想いを強め、「生販直結モデル」の更なる強化に邁進する。

2007年8月には地鶏モデルの主力店舗『宮崎県日南市 塚田農場』ブランドの出店を開始。また、地鶏に加えて、鮮魚においても「生販直結モデル」を構築し、2011年7月には鮮魚モデルの主力ブランド「四十八漁場」の出店を開始した。
生産から手掛ける事で美味しい食材をリーズナブルな価格で提供することに加え、日本各地の隠れたブランド食材のメニュー化、リピート率を高めるための独自の販促手法などが消費者に評価され、出店数、売上ともに急速に拡大し、2012年9月、東証マザーズ市場に上場。翌2013年9月には東証1部に市場変更した。
 
【企業理念】
 
 
 
こうした理念を同社オリジナルの研修システム(後述)によって正社員、アルバイトに浸透させる取り組みに力を入れている。
 
【事業内容】
◎食産業に対する問題意識
同社は日本の食産業について以下のような問題意識を持っている。
約100兆円の市場規模がある食産業において、農協や漁協が中心となった従来の管理形態、多層的な卸売市場、有形無形の規制が絡む複雑な流通構造により、農業・漁業などの第一次産業事業者と、小売・外食等の第三次産業事業者は分断されてきた。
そのため卸売市場、商社、問屋等、流通を手掛ける第二次産業が肥大化する一方で、生産者の販売価格は低く抑えられ、逆に消費者は高価格での入手を余儀なくされている。
また、生産者の販売価格が低く抑えられていること等から農水産業は就業者の高齢化と後継者問題が深刻化し、耕作放棄地も拡大している。
加えて、日本全国には特色ある農水産物が多数存在するが、資本力、生産量、流通構造の問題などから他県まで出荷されていないものも多く、これらを日本全国に提供できるようになれば、生産者・消費者双方にとって大きなプラスとなる。
 
 
◎ビジネスモデル
こうした問題を解決し「食のあるべき姿を追求する」というミッションのもと、「第一次産業(農業、漁業等)の活性化」、「高品質で低価格な商品とサービスの提供」を目的として展開しているのが、食品の生産(第一次産業)から流通(第二次産業)、販売(第三次産業)に至るまでの全てを一貫して手がける独自の『生販直結』という六次産業化(※)ビジネスモデルだ。
 
(※)六次産業化
「一般的には、一次産業としての農林漁業と、二次産業としての製造業、三次産業としての小売業等の事業との総合的かつ一体的な推進を図り、地域資源を活用した新たな付加価値を生み出すことを言うが、同社の場合は二次産業として流通業を指す。一、二、三を足す又は掛けると六になることから名づけられた。」
 
特長1:生産地との直接提携関係と自社生産体制の構築
日本各地の潜在的な競争力をもつ農漁業生産者や地域と直接提携関係を構築すると共に、現地に設立する子会社等において地鶏や鮮魚の自社生産等(養鶏・加工業、定置網漁業)を行っている。

多くの卸業者等が介在する流通構造においては、食材の生産者と販売者が直接顔を合わせる事は、極めて稀であるが、同社では、生産者と販売者が直接交流し、アルバイトも含めた全従業員が生産の現場を知る機会を設けている。
この機会を通じて同社スタッフは、生産者の生産現場における苦労や食材にかける想いを深く理解することができ、消費者との接客時に、食材の価値や産地情報をリアルに自信を持って伝えることが可能となる。
また生産者に対しては、「自分が生産した食材がどこでどのように消費されているのか?」といった、これまで触れる機会がなかった消費者の情報を提供しており、これがモチベーションや商品価値の向上に繋がっている。
 
特長2:流通ソリューション
生産地の課題に対して、物流コスト低減や納期短縮による鮮度向上、未利用魚(※)の加工商品化等の流通ソリューションを立案し提供している。
 
(※)未利用魚
サイズが小さかったり、消費者にあまり知られていなかったりといった理由から商品価値が低く市場に出回らない魚
 
特長3:ブランド創出&伝達
地域の食文化、生産物の特性、生産方法および生産者の想いを理解することを基本として、生産地や生産物の情報をメニューブックや店内装飾、接客等で伝達することにより付加価値を高めている。
自らも生産に携わることがリアルで深みのあるブランドの創出に繋がっている。
 
特長4:第一次産業および地域の活性化
生産・流通・販売までを一貫して手掛け、適正価格・継続的販売を前提とした、安定かつ十分な収入が得られる事業環境の提供により、雇用促進など第一次産業および地域産業の活性化に貢献している。
 
◎事業セグメント
生産流通事業と販売事業の2セグメントによって構成されている。
 
 
<生産流通事業>
「生販直結モデル」の一部として、地鶏、鮮魚、青果物などの生産及び加工販売を手掛けている。
自社店舗やライセンス供与先に供給するほか、グループ外の外食・小売店舗にも販売している。
 
①地鶏の生産流通
2006年に宮崎県日南市に子会社を設立し、自社農場での「みやざき地頭鶏」の生産を開始し、翌2007年には加工場を建設した。2010年には雛センターと食鳥処理場を統合し、一貫生産体制を確立している。
また、そのノウハウを活用し、2011年からは「新得地鶏」(北海道)を、2012年からは「黒さつま鶏」(鹿児島)を自社農場で生産・販売している。
 
②鮮魚の生産流通
当日朝に水揚げされた水産物を、夕方には店舗に届ける「今朝獲れ便」を活用しながら、日本各地の漁師・漁協との卸売市場等を経由しない直接取引を順次拡大している。また、2011年には宮崎県延岡市に子会社(株)プロジェクト48を設立し、漁協組合員との共同経営による定置網漁業も開始している。

加えて、東京都中央卸売市場の大田市場青果部の売買参加権を取得して青果物の直接買入と販売を行っているほか、全国各地の青果物生産者との直接取引、販売も行っている。
 
 
<販売事業>
自社農場等で生産された地鶏料理をメインとする「塚田農場」、日本各地の漁師から直送される鮮魚をメインとする「四十八漁場」の2つを主要ブランドとして、中価格帯である平均客単価4,000円前後の居酒屋を、首都圏中心に店舗展開している。2015年9月末の直営店舗数は164店。
その他、54店舗に対して店舗ブランドをライセンス供与(※) しているほか、販売チャネル多角化のため中食店舗の運営も行っている。(2015年9月末時点)
 
 
(※)ライセンス供与
ライセンス契約を締結し、同社が保有する商標及びノウハウ等の利用を許諾すること
 
【特長と強み】
1.独自の販促手法
塚田農場を始めとした店舗における独自の販促手法は大きな特徴となっている。
「期待を超えるサービスの積み重ねこそが顧客に満足と感動を与え、これが再来店(リピート率の向上)につながる。」という消費者心理の分析に基づき、接客担当者が一定の予算内で自由にサービス(販促)を企画実行し、再来店の動機を創出している。
リピート率は「来店総組数に対する再来店顧客を含む組数の割合」を指す。(同社店舗のファンとなってくれた消費者が知り合いや仲間を連れてきてくれる頻度を計測するため、同社では組数の割合をより重視している。)

同社事業にかける米山社長の想いを綴った著書「ありきたりじゃない 新・外食」は、この独自の販促手法について触れており、その一部をここで紹介する。
 
*「付加価値提供トーク」
「生産者の想い」という重要な価値を全社の代表として来店客に伝えること。
第一次産業と関わっているからこそ知ることが出来る生産者の想いや苦労を消費者にも是非知って貰いたいという一種の使命感が「付加価値提供トーク」のベースとなっている。
他店にはない圧倒的に差別化された特長を言葉にして来店客に伝えることで客に「同社店舗に行く理由」を植え付け、「選ばれる店」になるための重要な役割も担っていると考えている。
 
 
例)「こちら宮崎県日南市塚田農場の田上農場長が大事に育てた新鮮な地鶏です。とってもおいしいので、残さず食べてくださいね。」

「こちら獲れたてのエビを船の上で、しかも生きたまま醤油の中に入れるんですよ。生きているまま醤油に入れられたらエビは驚きますよね。それで醤油の中でバタバタ暴れて呼吸をするので、いい感じに醤油がしみてるんですよ!」
 
*「鉄板ジャブ」
来店客に期待を超えた「感動」を経験してもらいリピートに繋げるためには、客が経験したことの無いサービスをいくつも提供する必要がある。この販促手法を同社では「鉄板ジャブ」と呼んでいる。
(同書では「ジャブの連打こそが客をKOする」と書かれている。)

例)同社の代表的なメニューである「じとっこ炭火焼」を提供する際は、まず緑のゆずこしょうを付けて食べてもらう。
スタッフは客が少し食べたところで、今度は、塩分を一切使わず完熟ゆずと唐辛子だけで作った赤いゆずこしょうを持って行く。
じとっこ炭火焼を残している客には、冷めたままでは本来の味を楽しめないし、残すという事は食のあるべき姿を目指す同社スタッフには許されない事なので、宮崎の日向夏ポン酢とネギを出し、スタッフがその場で和えて別の味を楽しんでもらう。
また、完食した際は食べ終わった鉄板をいったん下げ、鉄板に残った鶏の油を熱して溶かしライスとスパイスで混ぜ合わせてハート形の「じとっこライス」として再び提供する。

赤いゆずこしょうを提供するというアイデアは、「緑だけではなく違ったゆずこしょうも提供してみたい。」というバイトスタッフの提案を受けて、商品開発担当者が全国の食材の中から素材を選んで開発したという事だ。
 
 
こうした「生産者が丹精込めて作った食材を最後までおいしく食べてもらいたい」と考えるバイトスタッフのアイデアから生まれた多数の付加価値提供トークや鉄板ジャブは各店舗で共有されている。
各店長はバイトスタッフが積極的にこうしたアイデアを生み出す環境作りに注力しており、これが同社店舗の独自性、他社店舗との大きな差別化に繋がっている。
 
2.研修制度
◎理念浸透のための仕組み
「付加価値提供トーク」、「鉄板ジャブ」はともに、「日本の食のあるべき姿を追求する」という同社の基本理念がバイトも含めた全社スタッフに浸透・理解されて初めてリアルでかつ意味のあるものとなる。
その浸透のための仕組みである研修制度も同社を特徴づける大きなポイントだ。

当初は内部に研修が行える人材がいなかったため外部講師を使っていたが、外部講師は教え方は上手でも中身が伴わないという問題があった。
そこで米山社長は、外部コンサルの人材を社員として採用し、研修のノウハウを社内に積み上げて行った。現在では33名の社員が研修講師を行うことが出来る体制となっている。

社長一人では理念、ミッション、存在意義を伝達・浸透させるのは限界があり、店長クラスが現場10数人ではなく100~200名に伝達できるスキルを持たせることを主眼に置いており、研修講師になれる事は社内の一つの目標にもなっているという。

同社の研修制度が充実している大きな理由としては、研修材料が豊富かつリアリティのあるものであるという事が挙げられる。
生販直結モデルにより、第一次・二次・三次産業それぞれに直接接していることから、「第1次産業や地域経済の活性化」、「第2次産業の課題」等に加え、「命の尊さ」など、接客時のお辞儀の仕方や言葉遣いなど、ありがちなマニュアルに留まらない、より実際的で共感できるテーマ・材料を豊富に揃えている。

例えば、新卒社員は3年目に宮崎の地鶏生産現場で2~3週間の実地研修を行う。
地鶏は孵化から4~5か月で出荷準備が整い、食肉処理場では地鶏は3分程度で解体され食肉となる。その光景を目の当たりにした社員の多くは泣き出し、数日間は放心状態になってしまうという。
その後社員たちは、「自分の役割は何か?」を考え、命を頂く有難さを改めて感じた上で、「最終消費者によりおいしい状態で残さず食べてもらう事だ。」と気付く。
また、この研修風景は映像に記録し、新入社員やアルバイトに見せ、見終わった後本人が店舗における自分達の役割を伝える。
このようにして若い社員が自らの体験を伝えることにより、理念やビジョン、ミッションが浸透し、生産者の想いや姿を、リアリティをもって消費者に伝えることが可能となっている。
 
◎M&Aにおけるアドバンテージ
この研修制度は、同社が今後積極的に行うM&A戦略においても大きな武器となるものと考えられる。

M&Aを成功させるには、「優良な案件の発掘」、「適切な価格での実行」が重要であることは論を待たないが、場合によってはより重要なのが「M&A後」であり、想定した通りのシナジー効果を生み出すためのプロセスである「PMI(Post Merger Integration)」の重要性が注目されている。
M&Aによる統合効果を確実にするためには、M&A初期段階より統合阻害要因等に対し事前検証を行い、統合後にそれを反映させた組織統合マネジメントを推進することが不可欠だが、中でも、企業文化の違いをどのようにマネジメントするかはPMIの重要なテーマであると言われている。

通常、M&Aにおいては被買収企業社員のモチベーション低下などが課題となるが、「企業理念の理解促進・浸透」のために大きな効果をもたらしている同社の研修制度は、マインドセットを通じてグループ一体化において大いに力を発揮する事が期待できよう。
 
3.バイトスタッフの採用
外食産業におけるアルバイトの人手不足が顕著となっているが、同社においては人材確保にはさして苦労はしていないという事だ。
その背景として、同社では従業員満足度を顧客満足度と同じレベルで捉えた施策を行っているという点が挙げられる。

採用時には同社の理念やミッションへの共感を持つことが出来るかがポイントとなるが、採用後バイトスタッフは同社がバイトスタッフのために開催している「就職支援セミナー」に無料で参加できる。
このセミナーでは、就職活動とは何か、その心構えの説明から始まり、最終的には卒業後の就職先を斡旋までも行っている。
「塚田農場で働いている」点を評価する企業も多く、学生、企業双方に評価が高いという事だ。
また、店舗における販促手法に関しては、優れたアイデアに対する表彰制度もあるなど、モチベーションを与えつつ、自己成長できる様々なプログラムを提供している点も学生には好評だ。

こうした点から、バイトスタッフを確保するために時給を大きく引き上げる必要が無い一方で、平均在籍年数は1.9年と比較的長く、安定して人手を確保できる仕組みとなっている。
 
 
同社のROE(前期実績)は30.5%と高く、同業他社に比べても一段高い水準にある。
レバレッジがやや高いものの、本業での収益性の高さが注目される。
 
 
2016年3月期第2四半期決算概要
 
 
増収減益。売上、利益共に期初予想を下回る。
売上高は前年同期比9.4%増収の99億94百万円。既存店売上は7.5%の減収だったが、全店売上は9.1%の増収。新規出店12店に対し、退店は1店で2015年9月末の全店舗数(直営)は164店舗となった。
国内外における出店の前倒し、宅配事業を含めた新規事業に関する立上げコストなど投資が先行し販管費が同13.5%増加したため営業利益は同31.2%減少の4億13百万円となった。
売上、利益共に期初予想を下回った。
 
 
 
◎生産流通事業
「塚田農場」ブランド店舗の店舗数増加により、地鶏の生産量、取扱い青果物が増加しており増収となった。
子会社カゴシマバンズにおける処理加工場の立上げコスト等により減益となった。
 
◎販売事業
第2四半期累計の既存店売上高の前年同期比は7.5%のマイナス。全店では同9.1%のプラスだった。
塚田農場など地鶏モデル11店舗、鮮魚モデル 四十八漁場1店舗の計12店舗を新規出店し、退店は1店舗で、2015年9月末の直営店舗数は164店となった。
同社が重視しているリピート率は、第2四半期累計で既存店 54.9%と目標の55%近辺で推移している。

既存店売上高が100%を下回って推移している現状について同社では、接客時の対応がテクニカルに頼りすぎ画一化していたため、本来の強みである商品や食材への理解が十分ではなく、来店客に価値を十分提供できていなかった点を課題と認識している。
そこで今後は改めて商品知識や生産者の想いを学ぶことで来店客への価値を提供するとともに、既存の手段に頼り過ぎず顧客満足度向上を第一に接客を行う事を徹底する考えだ。
 
 
 
現預金の減少等で流動資産は前期末に比べ2億31百万円減少した。建物及び構築物、敷金及び保証金の増加で固定資産は同7億55百万円増加し、資産合計は同5億23百万円増加の120億45百万円となった。
流動負債は同23百万円減少した一方、固定負債は長期借入金の増加で同3億94百万円増加し、負債合計は同3億71百万円増加の84億40百万円となった。
利益剰余金の増加等で純資産は同1億52百万円増加の36億4百万円となりこの結果、自己資本比率は前期末とほぼ変わらずの29.8%となった。
長短有利子負債残高は同5億66百万円増加の58億23百万円となった。
 
 
未払消費税等の減少等で営業CFのプラス幅は縮小し、敷金・保証金の差入額増加等で投資CFのマイナス幅は拡大した結果、フリーCFのマイナス幅も拡大した。
長期借入金の増加で財務CFのプラス幅は拡大。
キャッシュポジションは上昇した。
 
 
2016年3月期業績予想
 
 
業績予想に変更無し。2ケタの増収増益を計画。
業績予想に変更は無い。同社では売上、利益ともに年末となる第3四半期(10-12月)の構成比が高いことに加え、第3四半期に19店、第4四半期に9店の新規出店を計画している。
出店拡大と新規事業の立ち上がりによりコストも増加するが、増収効果で吸収し2桁の増収増益、過去最高の売上、利益の更新を見込んでいる。
 
 
新規事業の動向
 
同社は既存事業をより強固なものとすると同時に、新規事業の育成を進め、今後の更なる成長を目指している。
 
①宅配弁当事業
2014年7月より開始した宅配弁当事業は順調に拡大しているため、販路拡大、人員の増強、工場の製造ラインの整備等を実施して事業をより拡大させるため、2015年9月1日に事業を会社分割し、100%出資の連結子会社株式会社塚田農場プラスに承継させた。

「塚田農場」ブランドを築き上げた商品力と人材力を活かすことで他社との差別化が明確になっている。
また、外部の弁当販売サイトを使わず直接販売を行っているため、媒体利用料を商品力と人材力のブラッシュアップに投入する事が可能になっている。
 
 
2015年7月からはこれまでの池袋工場に加え新木場工場が稼働し、低価格帯も含めた増産体制が整備された。
これにより、これまでの製薬会社向け宅配、四十八漁場での店頭販売に加え、企業向け宅配、屋台、オフィス内販売、貸会議室との提携など、販売チャネルが大幅に拡大した。
認知度向上のためにリアル店舗を出店するほか、Webサイトや雑誌などへの掲載も進めていく。

2018年3月期売上高33億円を目標に掲げ、M&Aも含め生産体制及び販売体制を強化していく。
 
②海外事業
<シンガポールは着実に成長>
2012年7月に子会社 AP company International Singaporeを設立し、同年10月に「美人鍋レストラン塚田農場」の第1号店を出店したシンガポール事業は順調に推移している。
「塚田農場」で経験を積んだ日本人マネージャーによる日本食、おもてなしの提案が現地で評価され、海外進出のノウハウを着実に獲得しているという。
アジア各国の食材をシンガポールで販売することは、各地の農業従事者の所得向上や雇用促進を通じて、アジアの第1次産業の活性化に繋がると考えている。
 
 
2015年10月には、既存業態「美人鍋レストラン塚田農場」1店舗、新規業態2店舗の合計3店舗がオープンした。
新業態の1つ「Ushidoki Wagyu Kaiseki」は、初のショッピングモール外への路面店として出店したもので、宮崎県の尾崎牛を使用した高級和牛懐石料理店。すき焼きをはじめとする日本食を提供している。
もう一つの新業態「The Wagon」は、宮崎県の尾崎牛や北海道の星空の黒牛など和牛を使用したカジュアルダイニングで、タパスをワゴンで売り歩く販売スタイルが特徴である。

また、現地の「EN Group」から、同グループが運営する4店舗を含む事業を譲受する事とした。
「EN Group」はシンガポールで日本食のダイニングレストランや居酒屋を運営し、独自の物流ラインで獲れたての旬の味覚や四季折々の幸を楽しめる和食の食材を提供している。
EN Group はブランド及び店舗の整理が必要であったのに対し、AP company International Singaporeは、既存業態以外での店舗数を拡大する方針であることから、今回の事業譲受が成立した。
また、AP company International Singaporeにとっては、適切な物件を取得するのが容易ではない中で、シンガポールにおける路面店での出店を強化できることは大きなプラスとなる。
譲受価格は2,300千シンガポールドル(2015年12月9日のレートで約2億円)で、事業譲受日は2016年1月1日の予定。

今後はシンガポール事業で培った、現地に応じた商品開発力とおもてなしを行える人材力を武器にフィリピン、インドネシアなどASEANへの出店も進めていく考えだ。
 
<アメリカ、中国への出店を開始>
「食」の評価が高いアメリカマーケットへ参入し、本格的な和食文化の発信を行うことを目指している。
2015年10月、サンフランシスコに「nojo San Fransisco」を譲受したのに続き、2016年1月、同じくサンフランシスコに現地向けラーメン業態をオープンする予定だ。
また、ハワイでは2016年11月に「Tsukada Farm」、「MARU SUSHI」をオープンする。

加えて、中国での事業展開も開始した。
2015年12月、北京三里屯エリアに「FROM FARM」を出店予定。
中国における食に対しての問題意識を持った現地法人と合弁会社を設立し、北京において生産者の顔が見える安心安全な食材と料理を提供する。
 
③新業態営業の開始
ターゲット層拡大のため、以下のような新業態の営業を開始した。
 
④外販およびEC事業
<外販事業>
「塚田農場」の店頭で提供しているお通し用の壺味噌を商品化した。2015年8月より、イトーヨーカドー、イオン、いなげやなどの大手スーパー、小売店、オンラインストアなどで発売している。
外食だけではなく、内食でも塚田農場の商品力を訴求していく。
 
<EC事業>
EC事業「agrii(アグリー)」を2015年9月からスタートさせた。

「agrii」は、「日本中の旅先からおいしいが届く」を掲げるオンラインマーケット。
日本の多くの生産者が、明確な販路を持っていないために独自性のある商品を持っていながらも、既存市場に流通させることができない中で、生産者が直接販売できるプラットフォームを提供して、販売機会の創出・拡大を目指しており、生産者の六次産業化を支援するものである。

毎月異なる地域の六次産業化にまつわるこだわりのグローサリーやその土地の食文化や生産者の情報、旅の風景を写したムック本「agrii note」を「agrii box」として配送している。
今後は、「PB商品の開発と販売」(生産者とともにグローサリーのプライベートブランドを開発し、「agrii」内で販売)、「マーケットプレイス」(生産者自身が生産、加工した商品を直接販売できるプラットフォームの提供)なども開始する予定だ。
 
 
今後の注目点
 
本文中にあるように、同社の売上および営業利益は下期偏重で、特に年末を迎える第3四半期のウェイトが高く、利益面で特に顕著である。
短期的には、会社が見込んでいる今下期の回復がどの程度の勢いのものとなるのかを見守りたい。
中期的には、宅配弁当事業が新木場工場の稼働と販売チャネル拡大でいつ頃から本格寄与するのかを注目したい。