ブリッジレポート
(6465) ホシザキ株式会社

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ブリッジレポート:(6465)ホシザキ電機 vol.17

(6465:東証1部,名証1部) ホシザキ電機 企業HP
坂本 精志 会長兼社長
坂本 精志 会長兼社長

【ブリッジレポート vol.17】2015年12月期業績レポート
取材概要「今回のポイントで触れたとおり、同社は新たに2016年から2020年までの5年間の経営ビジョンを発表している。同ビジョンでは、経営方針として「フード・・・」続きは本文をご覧ください。
2016年4月12日掲載
企業基本情報
企業名
ホシザキ電機株式会社
会長兼社長
坂本 精志
所在地
愛知県豊明市栄町南館3-16
決算期
12月末日
業種
機械(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年12月 233,252 26,984 31,235 15,011
2013年12月 205,513 20,052 26,349 15,769
2012年12月 178,863 16,483 19,768 11,276
2011年12月 169,297 13,808 13,750 7,220
2010年12月 169,379 13,842 13,058 8,884
2009年12月 160,291 8,738 9,455 4,896
2008年12月 170,281 9,364 7,144 4,209
2007年12月 178,379 9,770 9,768 3,546
2006年12月 86,793 3,861 4,586 1,939
2006年6月 34,106 2,971 3,521 1,629
2005年11月 51,231 4,463 4,854 3,204
株式情報(4/6現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
9,160円 72,414,555株 663,317百万円 10.1% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
60.00円 0.7% 302.43円 30.3倍 2,400.96円 3.8倍
※株価4/6終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
ホシザキ電機の2015年12月期決算概要、次期経営ビジョン等についてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
外食産業、病院・介護老人保健施設、学校・保育園、スーパー、コンビニエンスストア(以下、コンビニ)、オフィスなどを顧客とし、製氷機、業務用冷蔵庫を始めとしたフードサービス機器の研究開発・製造・販売及び保守サービスを行っている。

製氷機、業務用冷蔵庫、食器洗浄機、生ビールディスペンサ等の主力製品では国内トップシェア。製氷機に関してはグローバル市場でもトップシェアである。独自の製品開発力、高品質、強力な営業力、迅速できめ細かなサービス&サポート体制等が強みであり、同業他社に対する大きな優位性となっている。

海外売上高比率は34.7%(2015年12月期)。ホシザキ電機を含む連結グループ会社は、2015年12月末時点で、国内18社、米州15社、欧州・アジア等24社の合計57社。工場は国内5、米州7、欧州・アジア6とグローバルでの生産体制を構築している。国内営業体制は、北海道から沖縄までの15販売会社及びその438営業所によって日本全国をカバーしている。また海外では米州、ヨーロッパ、アジア・オセアニアに、販売会社を配置し、全世界を幅広くカバーできる体制を整備している。
 
 
【事業内容】
製品別売上は、製氷機17.8%、業務用冷蔵庫25.5%、食器洗浄機6.8%、ディスペンサ12.4%、他社仕入商品11.8%、保守・修理16.5%、その他9.3%となっている。(2015年12月期)
 
 
【特徴・強み】
1.独自の技術に基づく製品開発&高い品質基準
独自技術に基づいた製品企画から製品化までの一貫した研究体制を持つことにより、最終顧客の多様なニーズへ迅速に対応している。また、新製品開発、既存製品の改良や改善、シリーズ展開及び原価低減活動に加え、販売及び保守サービス活動から得られる情報や市場品質情報を製品開発に活用する体制を確立している。また、独自の品質基準を設定し、業務用という厳しい使用環境に耐えられる構造設計を行っており、過酷な条件で繰り返し行われるテストに合格した部品や技術のみが採用されている。
 
2.主要製品でトップシェア
高品質、サービス&サポート体制、省エネ・低環境負荷、耐久性、使いやすさ、デザイン性等といった様々なポイントが顧客に評価され、製氷機、業務用冷蔵庫、食器洗浄機、生ビールディスペンサ等の主力製品では国内トップシェアとなっている。また、製氷機に関しては、グローバル市場においても、ブランド別でトップシェアである。また、業務用冷蔵庫においても、2015年6月に買収した愛雪社の販売台数が加わったことにより、グローバル市場でトップシェアとなった(同社推計)。
 
 
3.きめ細かいサービス&サポート体制
同社では国内を15販売会社及びその438営業所でカバーし、約2,500名のサービススタッフによる地域密着型のきめ細かいサービス&サポート体制をとっており、ユーザーから故障やトラブルの問い合わせがあった際は、短時間で駆けつける「即日対応」を掲げて、スピーディーな対応を行っている(いずれも2015年12月末現在)。
 
4.営業力の強さと強固な顧客基盤
約3,000名の営業スタッフが日本全国をカバーする直販体制による営業力の強さも同社の大きな特徴である。高い直販比率のため顧客との密着度は高く、現在の強固な顧客基盤の構築に繋がっている。また、サービス部門との緊密な連携により、顧客の状況に即応した提案を行う事が出来る機動性の高さも顧客から高く評価されている。
 
 
2015年12月期決算概要
 
 
2ケタの増収増益。売上、営業利益は4期連続で過去最高を更新。
売上高は前期比11.5%増の2,601億円。国内売上高は、同6.6%増の1,700億円。引き続き既存顧客への一層の販売促進と新規顧客への積極的な販路拡大に取り組んだ。主力製品に加え、スチコン等の戦略商品の販売も好調で、厨房一式案件の受注も順調だった。
海外売上高は、同22.1%増の901億円。米国を中心に主力製品である製氷機、業務用冷蔵庫、ディスペンサ、食器洗浄機が好調だった。
営業利益は同17.5%増の317億円。国内及び海外の増収効果に加え、販管費の厳格な管理に努めた。粗利率は0.3ポイント低下したが、コストコントロールが奏功し、営業利益率は前年同期を0.6ポイント上回った。
 
 
(国内)
売上高は前期比6.6%増収の1,700億円。営業利益は同9.6%増の217億円。
一般社団法人の日本フードサービス協会が公表している外食産業市場動向調査によると、大手チェーン店の全店舗数は月ごとでは年末にかけて弱含んだが、通年ではプラスを維持している。また、業態別には、ディナーレストランやファミリーレストランが好調な一方、居酒屋、ファーストフードは停滞しており、二極化状態となっている。
そのような中、同社の業種別売上高構成を見ると、飲食店の構成比は前期比で横這いとなったが、同社が「グルメゾーン」と呼んでいる繁華街等、飲食店が集中している地域への攻略施策が奏功したこと等により、飲食店向けの売上は伸長している。
飲食店以外でも、病院老健は消費増税前の駆け込み需要の反動減の影響で減収となったが、漁協向けの製氷機・貯氷機・運搬機で大型案件を受注した農業・水産業カテゴリー等が堅調だった。
製品群別では、製氷機、業務用冷蔵庫が引き続き好調だったことに加え、スチコン等、調理系の戦略商品の販売も好調に推移した。
 
<海外>
(米州)
売上高は前期比21.4%増収の623億円。営業利益は同22.8%増の103億円。米国市場の環境が引き続き良好で、製氷機、業務用冷蔵庫、ディスペンサ及び食器洗浄機の販売が好調に推移した。
 
(欧州・アジア)
売上高は前期比23.8%増収の277億円。営業利益は同54.0%増の27億円。業務用冷蔵庫、製氷機等主力製品を積極的に販売した。
 
 
前期末と比べ、現預金、売上債権、たな卸資産等が増加し、流動資産は212億円増加。有形固定資産が増加したが、のれん等無形固定資産が減少し固定資産は同40億円の減少。資産合計は同172億円増加し、2,736億円となった。
一方、仕入債務の増加等で負債合計は同52億円増加し、971億円となった。利益剰余金の増加等で純資産は同120億円増加の1,765億円となった。この結果、自己資本比率は前期末と変わらずの63.5%となった。
 
(4)トピックス
◎商号の変更
現在の商号「ホシザキ電機株式会社(英文:HOSHIZAKI ELECTRIC CO., LTD.)」を、「ホシザキ株式会社(英文:HOSHIZAKI CORPORATION)」に変更することとした。2016年3月24日開催の定時株主総会の決議を経て効力発生日は2016年7月1日を予定している。

<変更の理由>
同社は国内市場を中心に、製品領域を従来の主力製品(製氷機、業務用冷蔵庫等)から加熱調理機器(スチコン、電磁調理機器等)へ、さらに、電気製品からガス製品に拡大してきた。また、従来の機器販売に加えて、調理メニューの提案、厨房設計や衛生管理提案等のソフトビジネスにも今後積極的に取り組んでいく予定である。
こうした状況を踏まえ、より多様化する同社の事業領域に即すべく、多くの顧客に愛されているホシザキブランドと商号を統一するため、今回、上記の様に商号を変更することとした。

同社では、商号変更を機に、フードサービス機器の総合メーカーとして、今後更なる成長を目指している。
 
◎監査等委員会設置社への移行
同社は後述する「2020年経営ビジョン」の実現に向けた重点テーマの一つに「グローバルコーポレートガバナンス体制の強化」を掲げているが、その趣旨に則し、これまでの監査役会設置会社から、「監査等委員会設置会社」に移行することとした。
監査等委員である取締役に取締役会における議決権を付与し取締役会の監督機能を一層強化するとともに、コーポレートガバナンスの更なる充実を図る。
2016年3月24日開催の株主総会の決議により同日が効力発生日となる。
 
 
2016年12月期通期業績見通し
 
 
国内外とも堅調で増収増益を見込む。
売上高は前期比4.4%増の2,715億円の予想。
国内売上は同3.9%増の1,766億円。
現時点ではフードサービス産業における設備投資意欲は依然旺盛であるが、景気変動による息切れ、大型物件の減少、インバウンド需要の頭打ち等の不確定要因を見込んでいる。
海外売上は同5.3%増の949億円の予想。2015年6月に買収した中国・愛雪社がフル寄与するものの、主要市場である米国・欧州の景気減速リスクと新興国(中国、ブラジル等)の景気停滞を見込んでいる。海外売上高比率は前期より0.3ポイント上昇し35.0%へ。
 
 
営業利益は同7.8%増の342億円。
国内では材料費の上昇、価格競争の激化を予想している。また、計画人員確保を目的とした役務原価や販管費の支出増、効率化のためのIT投資などの特殊費用も織り込んでいる。
海外では今期も、先行投資によるコスト増、価格競争による利益率低下を織り込んでいる。
経常利益は、同12.8%増の348億円。同社では業績予想の際に為替差損益は見込んでいない。前期は為替差損15.1億円を計上した。
配当は前期同水準の60円/株を予想。予想配当性向は19.8%。
 
 
各セグメントとも増収を見込んでいる。
 
 
今後の取り組み
 
<国内>
2016年度の重点施策と懸念事項として以下の様な点を認識している。
 
◎主なポイント
*新たな需要を創り出すソフト力の強化
管理栄養士、調理師等、15販売会社で合計約100名から構成される「コンサル室」が協業機器メーカー、食材メーカー、各種団体や協会と協働しながら、顧客対するメニュー提案、生産性向上提案、衛生管理/温度管理提案を通じて、食の安心、安全にかかわるトータルサポートを提供している。市場の課題や顧客の課題を先取りし困りごとを解決することで顧客満足度を向上させ、関係を強化している。
セミナーやデモ体験講習を実施するためのテストキッチンを全国に50ヶ所保有するほか、移動式キッチンカーにより現場での出張デモや提案を行っており、有用な提案内容、高い利便性は顧客に高く評価されている。
 
*サプライ事業の成長
顧客の囲い込みを目的としたソフトビジネスの一つとしてサプライビジネスにも積極的に取組んでいる。
洗剤、お茶等を中心としたサプライ売上は毎年着実に拡大しており、2015年12月期は50億円を達成した。
 
*圧倒的な競合優位性を目指してサービス事業を強化
他社にはない圧倒的な競合優位性を有するサービス・保守機能の一段の強化を進めている。
大規模厨房施設を対象とした機器診断によるメンテナンスサポート部隊、他社製品の修理等より高いスキルを必要とする修理に対応するテクニカルサポート部隊や各営業所をベースに全国を網羅する営業・サービス網等により、フードサービス業界の幅広い顧客ニーズに対応している。

全国営業拠点438ヶ所のサービスマン約2,500名へのタブレット端末の装備が前期に完了し、事務処理の効率化により生産性も大きく向上している。また、サービス研修センターを設立しサービス事業の更なる成長を図っている。
サービス事業拡大の一例としては、フロン排出抑制法への対応支援が挙げられる。
フロン排出については、従来は専門業者が機器点検や管理を実施していたが、2015年4月に施行された「フロン排出抑制法」により今後はエンドユーザーの負担が増すことになった。エンドユーザーは3か月ごとに全ての機器を対象とする簡易点検、搭載しているコンプレッサの出力が7.5kw以上の機器を対象とした専門業者による定期点検が義務付けられており、エンドユーザーの負担は増大している。

これに対し同社は大手企業、病院、官公庁、スーパーマーケット等を対象に、高い専門性によって設置機器のリストアップ台帳の作成や点検作業を有償で受注するとともに、その後の機器の修繕、買替提案等に繋げ、ビジネス機会を創出している。
 
*大型物件対応力の強化
営業や設計等の組織力であるプロジェクト管理能力の高さが物件受注に結び付いている。東京台東区の「東京楽天地浅草ビル(通称:まるごとにっぽん)」のケースでは、テナントの多くが地方の隠れた名店ながら、東京では初出店であった。こうした物件を受注するには、店舗ごとに図面を作成し、設備もとりまとめる等、高いプロジェクト管理能力が必要となるが、同社では3DCADを駆使した立体的な図面提案等により顧客の抱える課題を解決し、受注に結び付けることができた。こうしたプロジェクト管理能力の高さも大きな競合優位性となっている。
 
<海外>
2016年度の重点施策と懸念事項として以下の様な点を認識している。
 
◎主なポイント
*製氷機市場のシェアアップ(米州)
同社製氷機の北米におけるシェアはキューブアイスタイプ、フレークアイスタイプ共に着実にアップしている。
 
*事業多角化の進展(ランサー)
ランサーの最大手顧客である大手飲料メーカー向け売上構成比は対北米売上、対総売上ともに年を追って低下している中、売上高自体の伸び率は堅調に拡大しており、最大手顧客への依存度は健全な形で低下している。
 
*世界各国・各地域で業務用冷蔵庫拡販を加速
業務用冷蔵庫世界No.1を目標に掲げている同社だが、その実現は中国・愛雪社のM&A等もあり、達成している(同社推計)。
今後、日本の「ホシザキ電機」はマザーカンパニーとして、海外各国・各地域における業務用冷蔵庫のボリュームゾーンを攻略すべく、海外各社が推進する施策を適宜支援していく考えだ。
 
*マコムにおけるのれん等減損損失の追加計上
ブラジル景気の減速、レアル安による材料費高騰等外部要因に加え、新工場の稼働による固定費増を吸収できずマコムの業績は低調となっている。2016年以降もブラジル経済は厳しい状況が続くとの判断から減損損失17.9億円を追加計上することとした(前期は31.8億円)。
今後は業務用冷蔵庫の単品売りを強化し、未開拓市場である既存レストラン厨房の買い替え需要の取り込みを進める。また、従来の主要販売先であるサンパウロだけでなく、リオデジャネイロ等の地方都市への販売ネットワークを拡充する。
 
 
次期経営ビジョン(2016-2020)の概要
 
同社は2016年から2020年までの5年間の経営ビジョンを発表した。
 
<2015経営ビジョンの総括>
2015年経営ビジョン(2011-2015年)の目標及び実績は以下の通りであった。
 
 
上記の内、①と③は1年前倒しで達成。②についても、2015年12月期でほぼ達成している。
 
<次期経営ビジョンの位置付け>
今後の5年間について同社は、国内景気については2018年以降大きく潮目が変わるリスクがあると見ている。
一方海外についても冷蔵庫の拡大やM&Aの実施で海外売上高比率50%を目指していくが、先行投資負担増、エリア拡大によるガバナンスに関するリスク増も想定している。
こうした環境変化を想定する中、確実な成長及び収益性の改善を図りつつも環境変化に巧みに対応できる経営基盤の強化に積極的に取組み、一段上の成長と収益改善を目指す。
 
 
 
 
 
今後の注目点
今回のポイントで触れたとおり、同社は新たに2016年から2020年までの5年間の経営ビジョンを発表している。同ビジョンでは、経営方針として「フードサービス機器業界 グループ売上高世界No.1」の達成と「グローバルな環境変化に備えた経営基盤づくり」を掲げている。財務目標としては、連結売上高4,000億円(内、新規M&A600億円)、海外売上高比率50%、連結営業利益(新規M&Aのれん償却あり)で500億円、利益率12.5%を掲げている。

前述の経営方針、財務目標達成に向け、フードサービス機器業界におけるグループ売上高世界No.1にとどまらず、各国・各地域でもNo.1となることを目指して、①業務用冷蔵庫の製造・販売体制強化やアジアを中心とした現地販売法人の立ち上げ等、積極的かつ継続的な先行投資、②海外を中心とした新規M&A実施を積極的に進めていくとしている。利益面では新規M&Aに伴う規則的なのれん償却の発生を織り込んでいるものの、特に既存会社においては、国内・海外ともに着実に利益改善を進めていくビジョンとなっている。

その他、グローバルな環境変化に備えた経営基盤づくりを経営方針に掲げる等、景気の先行きにかなり警戒心を持って策定した次期経営ビジョンであるが、収益性の動向に大いに注目したい。