ブリッジレポート
(3457) 株式会社ハウスドゥ

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ブリッジレポート:(3457)ハウスドゥ vol.1

(3457:東証マザーズ) ハウスドゥ 企業HP
安藤 正弘 社長
安藤 正弘 社長

【ブリッジレポート vol.1】2016年6月期業績レポート
取材概要「中期経営計画では16年6月期から最終年度19年6月期への伸び率は、売上高は6.1%の減収であるが、営業利益は49.5%増と大きく増加する・・・」続きは本文をご覧ください。
2016年9月27日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社ハウスドゥ
社長CEO
安藤 正弘
所在地
京都市中京区烏丸通錦小路上ル手洗水町670
決算期
6月末日
業種
不動産業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2015年6月 14,573 617 513 353
2014年6月 13,309 276 204 155
2013年6月 8,251 180 112 80
株式情報(9/9現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,314円 8,474,000株 11,134百万円 41.1% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
17.00円 1.3% 84.45円 15.6倍 255.83円 5.1倍
※株価は9/9終値。発行済株式数は直近期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。
 
株式会社ハウスドゥの会社概要、中期経営計画、安藤社長へのインタビューなどをお伝えします。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
徹底した顧客目線で不動産業界において「住まいの新しい流通システム構築」を目指す。2016年8月末現在のFC店舗数は389店舗で、不動産売買仲介専門FCでは全国No.1。フランチャイズ事業、ハウス・リースバック事業、不動産金融事業の「ストック型収益事業」による成長路線を追求。フランチャイジーに対する集客力向上のための指導力で高い評価を受ける。高ROE、株価評価も特徴。
 
【1-1 沿革】
バブル崩壊後の1991年4月に1人で不動産仲介業を起ち上げた安藤社長は、それまで隆盛を誇っていた多くの不動産会社が倒産していく一方、価格低下と金利安を好機と見て住宅を購入する顧客が多数いることに驚きつつも、「お客様の方を見ておけば会社を危うくさせることは無い。」との確証を得た。
情報をオープンにしないなど、本来顧客本位であるサービスが業界本位となっている現状に強い問題意識を持ちつつ、自らは顧客のニーズに的確に対応し、多くの物件情報をスピーディーに提供する事で顧客の信頼を得て順調に業績を拡大させていった。
後に米国の不動産業界を視察した際、顧客を大事にしながら大手に対抗して地域密着で展開する不動産仲介FCのあり方に強い感銘を受ける。これを日本でも展開する事は日本の不動産業界の変革につながると大きな意義、価値を感じて日本での不動産売買仲介FCチェーン作りに取り組んだ。
2006年2月にフランチャイズ事業を開始。当初は同業者に声を掛けたところスムーズには立ち上がらなかったが、不動産に関心の深い建築、リフォームといった異業種に不動産実務を丁寧に指導していったところ、当時不動産実務を教えてくれる会社は無かったこともあり高く評価され、FCチェーンは順調に伸長した。2009年1月に現・株式会社ハウスドゥ設立。
業容の拡大とともにブランド力も着実に強化され、2015年3月、東証マザーズに株式を上場した。
 
【1-2 経営理念など】
ブランド理念、企業理念、経営理念として以下を挙げている。
いずれも沿革で触れたように、安藤社長の現在の日本の不動産業界に対する問題意識、想いを基礎としたものである。
 
 
【1-3 事業内容】
上記の理念の下、「フランチャイズ事業」、「不動産事業(不動産売買事業とハウス・リースバック事業の2つで構成)」、「不動産流通事業(仲介)」、「住宅・リフォーム事業」の各事業を展開。さらに2016年6月期より「不動産金融事業」をスタートさせた。
(2016年6月期の報告セグメントは、「フランチャイズ事業」、「不動産事業」、「不動産流通事業(仲介)」、「住宅・リフォーム事業」の4つで、不動産金融事業はその他に含まれている。)
 
 
①フランチャイズ事業
(概要)
ブランド、ネットワークを必要とする中小不動産事業者や新規に不動産流通事業への参入を検討している企業に対し、売買仲介事業、不動産売買におけるノウハウ(集客戦略、IT戦略、教育研修、モチベーションアップ戦略等)を提供している。

市場全体へのブランドイメージの浸透を目的として、2013年7月より元プロ野球選手・監督、現野球解説者の古田敦也氏を起用したブランド戦略を展開。テレビ・ラジオCMをはじめ、看板、ちらし、マスメディアやWEBなどによる積極的なコミュニケーションを通じてハウスドゥ!を訴求し、一貫したブランド戦略を発信。 古田氏の人柄や仕事に対する姿勢・誠実さをハウスドゥ!のイメージに重ねることにより、お客様からの安心・信頼感を獲得している。

全国チェーンを構築することで、同社が理念とする、情報のオープン化、顧客にとって安心・便利な窓口を全国に創ることを目指している。
同社のフランチャイズシステムは、本部・直営店の実績に基づいた売上に繋がる多様な集客ノウハウや、同社が実際に行う人材教育をそのまま提供しているため、不動産仲介未経験の企業でも安心して参入することができ、高く評価されている。フランチャイズ事業開始以降2016年6月末現在、異業種からの新規参入加盟企業が7割と多いことからも明らかだ。
 
 
Webサイト、物件・顧客等を管理するシステム「DO NETWORK!」、教育研修、全国大会、店長の会、e-ラーニングシステム等、各種サービスの提供を行なっている他、各加盟店専任のSV(スーパーバイザー)が全国の加盟店舗を直接訪問しサポートしている。
こうした取組みにより、本部、直営店、加盟店との密接なネットワークを構築している。

加盟店舗数は直近5年で約2倍と急増している。当面1,000店舗までの拡大を目指している。
同社が加盟店から受け取るロイヤルティは月額固定制で売上に対する変動部分は無い。
 
 
 
(主なサービス)
Webシステムの提供
Webサイトでの検索をはじめとする情報提供、営業、業務支援、マッチングシステム等、同社が事業開始より現場で培ってきた実際に使えるシステムを提供している。
集客を増やし、効率的な追客・業務の最大効率化を追求した「DO NETWORK!」では、独自のチラシ作成、物件管理、顧客管理、営業マン管理等日常業務を軽減するさまざまな機能が備わっている。
 
加盟店向け研修
教育面では、不動産未経験者でも基礎から学べ、売れる営業マンに育成するためのセールス研修、ITを活用した営業活動、資金計画や物件査定から実務に至るまで、実践に即した研修を実施し、加盟店の業務能力アップをサポートしている。
研修においては、集合型研修だけでなく、「DO CHANNEL!」というWEB学習機能・e-ラーニングシステムを活用。1,000を超えるコンテンツを保有し、いつでも好きな時に、必要な研修をインターネット上で学習が可能のシステムとなっている。
開業後は、スーパーバイザーによる的確な指導、定期的なエリア勉強会等を実施。マーケティングから集客、営業行動数値・売上管理、店舗のマネージメントフォロー等、戦略的な指導を実施している。

この他、全国の加盟店が一同に会する「ハウスドゥ!全国FC大会」では、グループの次年度の目標や目的、不動産の最新情報を共有する他、成績優秀店舗の表彰が行なわれ、経営者はじめ社員のモチベーションアップに繋げている。また、ハウスドゥ!成功事例共有会では、加盟店の成功事例を共有し、互いに切磋琢磨しあう環境を提供している。
 
②不動産売買事業
(概要)
中古住宅買取再生販売、新築戸建住宅建売、住宅用地の開発、一棟収益不動産の再生販売等、同社自ら不動産を取得し、付加価値を付け、一般顧客・投資家へ販売している。
グループ直営店及びFC加盟店からの情報、不動産業者との共同事業である「プロジェクトパートナーシステム」からの情報などが物件仕入の主たる情報ルート。
同社では、不動産仲介業と不動産販売業を一体で運営しているため、売り手と買い手双方のニーズを把握しており、また、全国に窓口を有しているため、地域性、需要を見極めた仕入れや販売が可能となっている。
 
(主なサービス)
法人向けサービス
「良質な不動産情報を活かしきる。」という考え方のもと、全国の加盟店や不動産会社とパートナーシステムや事業モデルを展開している。
「JVパートナーシステム」(不動産共同購入)は、直営店・FC加盟店・全国の不動産会社から寄せられた情報と同社の資金力、販売力を組合わせて不動産の購入・販売を行う新たなビジネスモデルである。
 
個人・法人向けサービス
直営店、加盟店との全国ネットワークを活かした直接買取を行っている。
同社は顧客より依頼を受けた際、その日中に即日訪問することも可能であり、訪問時にその場で価格を提示する「即価格提示」は同社が評価される理由の一つとなっている。
査定価格については、仲介で「3ヶ月程度で売却できる金額」、「1ヶ月程度で売却できる金額」、「すぐに買取できる金額」の3段階で提案を行う。
また、情報をオープンにするというブランド理念に基づき、不動産取引物件情報開示システム「DO TOUCH! MAP」の活用により近隣事例を公開するなど、一般の顧客にも安心・信頼して取引ができるようにサービスを提供している。
 
サービス店舗展開
「家・不動産買取専門店」として店舗を展開している。
また、不動産流通事業のサテライト店の併設店舗としても展開しており、仲介での売却と共に買取価格の提案も行っている。
 
③ハウス・リースバック事業
同社が今後の主力事業の一つとして注力しているのがハウス・リースバック事業である。
安藤社長が「今住んでいる家を売却してもそのまま住み続けられる。」というコンセプトを発案し、ラジオで放送したところ想定以上の大きな反響があったため事業化を進めたもので、発案から数カ月というスピードで事業化させた。
 
(ハウス・リースバックとは?)
「ハウス・リースバック」とは、不動産オーナーが所有物件を同社に売却後も、買取った同社とリース契約を結ぶことによって今迄と同様に居住できるセールアンドリースバックシステムのこと。
「不動産を売却する」という選択肢しかなかった従来の買取システムにとどまらず、「不動産を活用する」という発想でサービスを提供している。
 
 
(ハウス・リースバック成長の背景、市場環境)
ハウス・リースバックには以下のようなニーズがある。
*高齢者・相続ニーズ
人生を謳歌する一方、長く住まい続けた家を終の棲家としたい。
子や孫に不動産で相続させるのではなく、現金で生前贈与したい。
 
*資金需要ニーズ
子供の学校の学区域を変える引越はしたくない。
長期ローンの返済が苦しい。
家を買い換えたいが手付金がない。
 
また、個人事業主や中小企業の代表者であれば、この仕組みを利用して所有する土地や店舗、住宅、ビル、工場などの事業用不動産を同社に売却し、売却資金を事業資金に充てることもできる。
リース契約を結んでリース料を支払いながら事業資産を利用して事業を継続することができるのは大きなメリットである。この事業用カテゴリーは「アセット・リースバック」と名付け、2015年8月よりサービスを開始した。

「2013年 住宅・土地統計調査」(総務省)によれば、全国における世帯数と、うち持ち家が占める構成比は以下のようになっている。
 
 
持ち家比率は全国平均では61.7%だが、60歳以上では80.0%となっている。
少子化、核家族化が進む中、相続人がいない又は少数世帯の場合、自宅を保有し続ける必要性は小さくなり、それよりもゆとりある暮らしを送るために、キャッシュを保有したいと考える高齢者が増加するものと推察され、高齢者の住まい方には今後ますます大きな変化が生じることが予想される。
自宅を担保に金融機関から借り入れを行い、死亡時には金融機関が抵当権を行使して担保物件を競売にかけて返済に充当する「リバースモーゲージ」に、近年3メガバンクが揃って参入したこともそうした変化が大きな流れとなっていることを裏付けるものであり、ハウス・リースバックも同様に大きな成長が見込まれる。
 
(同社のハウス・リースバック事業)
2013年からハウス・リースバック事業をスタートさせた同社は、長年培ってきた査定能力に基づく正当な市場評価、販売力、店舗ネットワークによる全国対応などを強みとしている。

また、同事業は同社にとって
物件を割安で入手できる。
不景気時には需要が更に高まる。
売り物件の囲い込みにつながる。(実際に在庫100件のうち毎月約1件が売却されている。)
仕入から販売まで、「買取時手数料」、「毎月の家賃収入」、「売却時のキャピタルゲイン」と、3段階で収益を見込める。
といった点が大きな魅力である。

同事業の利用概況は以下の通りである。
保有総額は2016年6月末44億円で、1年前の約4倍。保有件数は274件で同じく約4倍。
地域別では、首都圏が45%、東京・名古屋・大阪の3大都市圏で67.5%。
物件は一戸建てが75%。
活用理由は、資金調達が57%、融資負担軽減が18%。
年齢別では、60歳以上が63%、50歳以上が86%。
 
後述するように、中期経営計画では最終年度2019年6月期には売上構成比では同事業が19.8%となる計画で、営業利益構成比も23.5%でフランチャイズ事業に次ぐ収益の柱に育成する考えだ。
 
④「不動産流通事業(仲介)」
(概要)
同社が展開する不動産仲介業は、「建売住宅仲介」、「中古住宅仲介」、「土地仲介」の単一的な提案にとどまらず、顧客のニーズを確実にくみ取ることにより、「土地仲介と新築建築」、「中古住宅仲介とリフォーム」、「売却計画と住み替え」等、複合的な提案を行っている。
さらに、資金計画や保険についても、初期段階から提案し、安心してマイホームを購入できるように総合的な支援を行っている。

同社ではこれまでの日本の不動産業界のあり方を根本から変え、顧客のライフステージに即した理想の住宅に積極的に住み替えることができるような、住まいの新しい流通システムを築くことを目指しており、その主導権を不動産業界ではなく、住まう顧客側に引き寄せたいと考えている。

そのために、物件情報をオープンにし、問い合わせに対し24時間以内に情報を届けることによって、安心・納得して売買できる透明性と流動性の高い流通システムの構築を目指している。
具体的には、インターネット、ホームページ等のWEB媒体、新聞折り込み広告、住宅関連情報誌、店舗エリアを網羅し各戸配布を実現するポスティングシステム等、多様な方法で顧客にいち早く、鮮度の高い物件情報を提供している。
 
(主なサービス)
不動産物件検索サイト
全国の加盟店とハウスドゥ!直営店の不動産物件を、一括検索することができる「Housedo.com」と、各店舗専用の不動産物件検索サイト「DO-search!」を備えている。
「Housedo.com」は、エリア・沿線・駅・おすすめの住まい特集・全国の店舗等の検索軸から物件検索が行なえ、ハウスドゥ!FC本部が運営を行うポータルサイト。全国の顧客へ広く物件を紹介することを目的としている。
「DO-search!」は、各店舗物件を検索でき、店舗が主体となって運営を行っている。チラシやポスティング広告等と組み合わせた地域密着型の展開により地元の顧客へ、いち早く情報を提供することを目的としている。
 
サービス店舗展開
ロードサイド型大型店舗「住宅情報モール」、売買仲介業を中心とした「サテライト店」の直営店で不動産仲介を行っている。物件紹介のみにとどまらず、リフォームの提案や、資金計画や保険についても、初期段階から提案し、ワンストップサービスの提供を行っている。
 
⑤住宅・リフォーム事業
新築戸建て住宅の建築請負を行う「住宅事業」と、リフォームを手掛ける「リフォーム事業」から構成される。
 
(住宅事業概要)
「住宅事業」では、「家には、それぞれの物語がある。今までにないものを創るのではなく、今ある家族のために家を創る。家族のために、新しい家のカタチを選択しよう。」をコンセプトに、(1)建築家とつくるこだわりの家創り「アーキテクトプロデュースジャパン」、(2)午後をリビングで過ごしたくなる家「アフターヌーンホーム」、(3)20代からの家創り「Do!Select」の3つをベースとしている。
 
(サービス概要)
新築ブランドサイト
(1)建築家と創るフルオーダーの注文住宅、(2)リビングにスポットをあてた注文住宅、(3)100通りのプランから好きなプランを組み合わせてアレンジできる注文住宅まで、顧客の嗜好と予算に併せて自由なプランを選ぶことができる。
 
サービス店舗展開
京都中央ショールーム、京都北ショールーム、直営店である住宅情報モールで新築住宅の建築請負を行っている。
 
(リフォーム事業概要)
21世紀は「リサイクル」と「エコロジー」の融合である「リコロジー」という概念を提唱し、「住まいの再生」100年リフォームを目指している。
中古住宅の原状回復のためのリフレッシュリフォーム、機能性やデザイン性等付加価値を付けた大規模リフォームやリノベーション、引き渡し後のメンテナンスや課題に対応する小工事リフォームまで、幅広い客層や価格帯に対応したサービスメニューを揃えている。
標準仕様でホームインスペクション(住宅検査)と耐震診断を実施、充実した保証制度(全ての工事に保証書発行、最高10年保証、最高1億円の請負賠償責任契約加入、住宅設備の十年延長保証サービス等)等、顧客目線で安心感を与えている点が大きな特徴となっている。
 
(サービス概要)
サイト運営
リフォーム全般に関してのポータルサイトのほか、水回り専門、屋根と外壁の専門のリフォームサイトを運営している。
 
サービス店舗展開
京都中央ショールーム、京都北ショールーム、直営店である住宅情報モールのショールームでサービスを行っている。
 
⑥不動産金融事業
不動産を活用した資金調達として個人・法人向けに不動産担保ローンを提供している。
ハウス・リースバックサービスに関する問い合わせの顧客の中には、不動産担保余力があるケース、必要な資金が不動産を処分するほどではない案件も多い。
また、売買価格が不透明になりやすく、銀行融資が受けにくい親族・親子間売買、セカンドハウスや収益不動産の購入、事業主の運転資金や設備投資資金など多様な資金ニーズに対し、ハウスドゥ!チェーンを活かした全国の不動産情報により、正当でスピーディな評価を基に不動産担保融資で対応する。
ハウス・リースバック事業の補完的事業として今後の成長を見込んでいる。
 
【1-4 特長と強み】
①FC加盟店に対する指導力
主力事業であるフランチャイズ事業におけるFC加盟店にとって最も重要なのは「いかにして多くの顧客を集客するか?」ということであるが、この集客力向上に向けた指導力は同社最大の強みであると安藤社長も強調している。

集客力向上は、「お客様に多くの情報をいち早く提供することこそがお客様の要望に応えるということである。」という同社創業時からの理念の実践であり、WEBシステム「DO NETWORK!」や加盟店研修を通じたノウハウの提供は加盟店から高く評価されており、FCチェーン成長の大きな原動力となっている。
 
 
2016年6月期のROEは41.1%と極めて高い水準であった。後述する中期計画の数値をあてはめると、19年6月期にかけてレバレッジは0.2ポイント上昇、ストック型収益事業の拡大で売上高当期純利益率も2.5%上昇するが、総資産回転率が1ポイント程度低下するためROEは約28%まで低下する計算になる。
ただそれでも高ROEであることに変わりは無く、これが不動産業界の中では相対的に高い株価評価(PER、PBR)に繋がっているといえよう。
 
 
2016年6月期決算概要
 
 
主力のフランチャイズ事業が好調で増収・増益、過去最高を更新
売上高は前期比18.5%増の172億75百万円。主力のフランチャイズ事業、不動産売買事業が牽引した。
営業利益は同107.0%増の12億77百万円。利益率の高いフランチャイズ事業の増収等で売上総利益が同23.2%増加した。人件費、広告宣伝費など販管費も増加したが増収効果で吸収した。
保険解約返戻金16百万円の受取があったこと、前期にあった株式公開費用11百万円が無くなったことから経常利益は同130.4%増の11億82百万円となった。
 
 
①フランチャイズ事業
増収増益。
ストック型収益事業の主力であるフランチャイズ事業は、不動産業者への加盟促進とテレビ・ラジオCM等による広告宣伝効果に加え、上場による信用力やコーポレートブランドの価値向上により、新規加盟契約数は119件、累計加盟契約数は377件となった。また、加盟店数増加により、スーパーバイザー要員も直営店から増員し、実務経験者による加盟店フォロー体制の強化や、業界大手との提携による各種サービスコンテンツ拡充の効果もあり、新規開店店舗数は100店舗、累計開店店舗数は317店舗となった。
 
②不動産売買事業
増収増益。
住宅ローンの超低金利継続の効果もあり、実需層の動きは引き続き堅調に推移した。前期、前々期に取得した販売用不動産在庫の販売も順調に進み、「家・不動産買取専門店」に加え、前々期に直営店エリアの仕入れ担当を増員し、仕入れ・販売を強化した効果が現れている。
また、直営店の仲介ニーズに合った物件を仕入れる方針を徹底することで、在庫の販売は順調であり、販売までの期間短縮につながっている。取引件数は前期比63.5%増の322件だった。
 
③ハウス・リースバック事業
減収減益。
テレビ・ラジオCM等の広告宣伝効果と上場による信用力の向上効果で問い合わせ及び取扱件数が増加した。
契約件数は前期比183.8%増の227件、物件取得数は同296.4%増の222件。11件を売却し売却売上は4億9百万円。保有する不動産は累計274件、総額44億27百万円と順調にストックは積み上がっており、賃貸用不動産として運用した。
 
④不動産流通事業(仲介)
減収増益。
仲介件数は前期比3.9%増の2,699件。ホームページ等のWeb広告宣伝戦略、新聞折り込み広告、テレビ・ラジオCM等のメディアを利用した広告宣伝戦略、地域密着型のポスティング戦略を通じて直営店への集客に注力した。
現在、不動産事業(売買およびリースバック)に人材をシフトしているが、売上規模は前年並みで利益率は改善した。
 
⑤住宅・リフォーム事業
減収増益。
リフォーム事業では、不動産売買仲介事業との連携や「住宅祭」と称したリフォーム・建築イベントを積極的に開催することで集客に繋げている。受注件数、完工件数はそれぞれ前期比で7.5%減、2.6%減と減少したが、単価の向上により売上高は同18.4%増となった。
住宅(新築戸建)事業では、仲介とリフォーム・建築、買取と建築といったグループ内の事業シナジーを効かせる施策に注力した。新築の受注件数は同62.3%減、完工件数は同43.9%減となり、売上高も同54.1%減となった。
 
⑥その他の事業
減収・営業損失
貸金業免許の取得及び本格的な提供までの準備期間として主にハウス・リースバック事業との連携による不動産担保ローンの提供を行った。
 
 
売上代金回収に伴う現預金の増加、たな卸資産(販売用不動産)の増加などで流動資産は前期末に比べ18億3百万円増加。ハウス・リースバックの案件増により有形固定資産が増加し、固定資産は同28億89百万円増加し、資産合計は同46億93百万円増加の128億95百万円となった。
販売用不動産およびハウス・リースバック案件拡大のため長短有利子負債を増加させたため負債合計は同39億63百万円増加の107億25百万円となった。
利益剰余金の増加により純資産は同7億29百万円増加した。
この結果自己資本比率は前期末の17.6%から0.8%低下し16.8%となった。
 
 
税金等調整前当期純利益の増加などで営業CFのプラス幅は拡大。
有形固定資産取得による支出が拡大し、投資CFのマイナス幅は拡大し、フリーCFのマイナス幅も拡大した。
長短借入金の増加により財務CFのプラス幅は拡大。キャッシュポジションは上昇した。
 
 
2017年6月期業績見通し
 
 
投資に注力、減収・減益を見込む
売上高は前期比5.5%減収の163億22百万円の予想。フランチャイズ事業は引き続き拡大、ハウス・リースバック事業も増収となるが、売上構成の大きい不動産売買事業、住宅・リフォーム事業が減収となる。
減収とはなるが利益率の高いフランチャイズ事業の伸びで粗利益は同8.6%の増益。
人件費、広告宣伝費など一段の業容拡大に向けた投資を行うため、販管費も増加することから営業利益は同2.3%減の12億47百万円の予想。
キャピタルゲイン獲得のための不動産売買事業のポジションを抑え、フランチャイズ事業とハウス・リースバック事業等のストック収益事業へ比重をおく転換投資の1年とする。
配当は前期比1円/株増配の17.00円/株を予定。予想配当性向は20.1%。
 
 
①フランチャイズ事業
増収増益。
引き続き契約件数及び店舗数の拡大に注力する。
不動産仲介事業、不動産買取事業とのシナジーで、「サテライト店」と「家・不動産買取専門店」の併設を推進する。
加盟契約数は前期比95件増の472件を、新規開店店舗数は同71店舗増の388店舗を計画している。
 
②不動産売買事業
減収減益。
不動産価格の上昇や金融市場の混乱等により影響を受ける都市部を中心とする投資用不動産や高価格帯の商品においては、リスクを重視してポジションを抑え、直営店のエリアでの仲介部門とのコラボレーションに注力する。
取引件数は前期と変わらずの322件を計画している。
たな卸資産も同水準の50億円の計画。
 
③ハウス・リースバック事業
増収増益。
人材および広告宣伝を更に強化し、成長角度を加速させる。
契約件数は前期比26.9%増の288件、物件取得件数は同29.7%増の288件を計画している。累計の保有件数は約倍増の522件で総額は同77.6%増の78億61百万円となる。
 
④不動産流通事業(仲介)
増収減益。
仲介件数は前期比8.4%増の2,925件を計画。
引き続きハウス・リースバック事業への人材シフトを進めると同時に、買取、リフォーム、火災保険、住宅ローンなど関連ビジネスに繋げシナジー効果を追求する。
 
⑤住宅・リフォーム事業
減収減益。
リフォーム、新築共に契約件数、引渡件数は前期を下回る。
中古取引の機会を取り込み、リフォーム受注に繋げる。
 
⑥その他の事業
増収・黒字転換。
ハウス・リースバック事業との連携による不動産担保ローンが本格的に立ち上がる。
 
 
中期経営計画
 
同社では今期をスタートとする3年間の中期経営計画が進行中である。
以下、その概要を紹介する。
 
◎成長戦略
不動産流通事業、不動産売買事業、住宅・リフォーム事業による「労働集約型収益」から、フランチャイズ事業、ハウス・リースバック事業、不動産担保ローン事業による「ストック型収益」への転換を図る。
中期経営計画初年度の今期2017年6月期はまさに転換の年であり、注力3事業への投資を進める。
 
 
今期はストック型収益事業への投資を更に加速させるため経常減益となるが、来期以降は2桁増益で、売上高経常利益率も2桁に上昇する。

ハウス・リースバック事業の拡大に伴い固定資産を16年6月期の52億7百万円から19年6月期には179億67百万円へと大幅に積み上げるが、長期借入と自己資本の充実により対応。流動負債の削減も進め、自己資本比率は直近と同水準の16%台で推移する。
配当性向は17年6月期 20%以上、18年6月期25%以上、19年6月期30%以上を計画している。
 
◎セグメント別動向
ストック型収益事業構成比は下表の様に売上高、セグメント利益共に大幅に上昇する。
 
 
 
『ストック型収益事業①:フランチャイズ事業』
FC1,000店舗を目指し引き続き積極的な広告宣伝活動などを展開する。
 
 
 
 
『ストック型収益事業②:ハウス・リースバック事業』
前述のような市場環境の下、高成長を見込んでいる。
 
 
 
『ストック型収益事業③:不動産金融事業』
ハウス・リースバック事業の補完的事業で、ハウス・リースバック事業の拡大とともに大きな成長を見込んでいる。
 
 
 
『不動産売買事業』
売上50億~80億円の範囲で物件を厳選する。仲介部門と連携し、直営エリアで堅実に仕入れを継続する。
 
 
『住宅・リフォーム事業』
中古住宅販売とリフォームでリノベーション提案を進める。自然素材を使用したリフォームに注力する。
ホームインスペクション(住宅構造検査)や耐震補強工事の取り扱いを強化する。売買仲介およびハウス・リースバックとの連携にも取組む。
 
 
『不動産流通事業』
「中古住宅の取引活性化」政策を追い風に、不動産流通とリフォームの連携を進める。
また、契約機会をリフォーム・住宅ローン・火災保険等の関連ビジネスへ繋げる。
 
 
 
安藤社長に聞く
 
安藤 正弘社長に、今後の取り組み、投資家へのメッセージなどを伺った。
 
Q:「今期、さらなる成長に向けて注力するストック型収益事業についてお聞かせください。まず、主力のフランチャイズ事業についてはどんな事をお考えでしょうか?」」
A:「早期の1,000店舗実現に邁進する。実現すれば不動産業界の変革とともに当社の構造も大きく変化する。」
早期のFC1,000店舗の実現に邁進する。これが実現すれば様々な面で大きな変化が生まれるだろう。
まず、お客様本位で経営している当社のFC1,000店舗にお客様が集まれば、日本の不動産業界は本来のお客様本位の業界への変革が本格的に進むだろう。これは当社の社会的ミッションであり、上場を志した大きな理由だ。可能な限り速やかに1,000店舗を実現させたい。
また、FC1,000店舗が実現すれば、当社の収益構造にも大きな変化が生じる。まず火災保険を始めとした様々な商材をそのルートを通じて提供できれば確実に大きな売上、利益を見込むことができる。
次に加盟店からの広告分担金も10数億円に上るので、強力な広告宣伝活動を展開することができる。当社のブランド力向上と同事業の成長加速に大きく寄与することとなるだろう。
これ以外にも様々な取り組みが可能になる。単なる不動産会社ではなく、「不動産サービスメーカー」としてお客様に喜ばれるサービスを提供できるよう、準備を進めているところだ。
このように、フランチャイズ事業の成長はそれ自身が大きな利益を生み出すことにとどまらず、業界そして当社にも大きな変化をもたらすことになる重要なポイントだ。
 
Q:「ハウス・リースバック事業についてはいかがでしょうか?」
A:「非常に楽しみな分野だ。是非期待していただきたい。」
ハウス・リースバック事業は大きな成長が見込まれる大変楽しみな分野。今期からは売上、利益への貢献が始まる。
事業者向けのアセット・リースバックとともに是非期待していただきたい。
 
Q:「不動産金融事業はいかがですか?」
A:「こちらも大きな成長余地がある。将来的には不動産銀行の設立なども検討している。」
2016年7月よりスタートさせた不動産担保ローン事業も有望だ。
社会問題を契機に、個人への資金供給という意味でそれまで圧倒的な存在感を示していた貸金業者の数はピークだった1986年の47,000社から2013年には2,217社へとこの30年で20分の1、10年前からは10分の1へと激減してしまった。
銀行も依然として個人に対する融資には積極的でなく、個人は常に資金不足の状況にある。
こうした供給不足の状況の下、お客様のニーズに対応するのが不動産金融事業だ。
当社には長年培ってきた高い査定能力があるが、これを基にAI(人工知能)で査定を行い、フィンテック活用によってスマートフォン経由で銀行融資を代理する不動産担保融資の代理業を行う「ハウスドゥ!BANK」の準備を進めている。将来的には代理業に留まらない「不動産銀行」構想も検討していく。
 
Q:「では最後に投資家へのメッセージを頂けますか。」
A:「着実かつ安定的に成長してまいります。その点をご理解下さり、是非長い目で応援して頂きたいと思います。」
当社は不動産業界の中で、お客様のニーズを最も理解している会社です。残念ながらお客様の不動産業界に対する信用は極めて低いのが現状です。そうした中、お客様本位で活動している当社は全国にFC網を構築する事で多くのお客様の信頼をしっかりと獲得し、不動産業界をお客様本位の本来の姿に変革させて参ります。またそうした理念と実際のビジネスが結びついている企業です。
今後ストック型収益事業への注力を進めていくため、短期的に大きな売上、利益の変化は生まれませんが、着実かつ安定的に成長して行こうと思っていますので、その点をご理解いただき是非長い目で応援していただきたいと思います。
 
 
今後の注目点
中期経営計画では16年6月期から最終年度19年6月期への伸び率は、売上高は6.1%の減収であるが、営業利益は49.5%増と大きく増加する。
下のグラフに見られるように、フランチャイズ事業は着実な成長が十分予想できるので、ハウス・リースバック事業の拡大が大きなポイントとなろう。「ストック型収益事業へのウェイト転換」が想定通り進行するかを注目したい。
また、不動産金融事業もその収益性の高さから、中期的な進捗に期待したい。
 
 
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書
同社は最新のコーポレートガバナンス報告書を2016年4月7日に提出している。
また、マザーズ上場企業としてコーポレートガバナンス・コードの基本原則5項目を全て実施している。