ブリッジレポート
(3223) 株式会社エスエルディー

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ブリッジレポート:(3223)エスエルディー vol.1

(3223:JASDAQ) エスエルディー 企業HP
青野 玄 社長
青野 玄 社長

【ブリッジレポート vol.1】2017年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「同社は飲食サービス事業を強化しつつ、豊富なコンテンツ資産を活用して新規事業を育成していく考えだ。この一環としてサービスを開始した料理動画・・・」続きは本文をご覧ください。
2016年12月20日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社エスエルディー
社長
青野 玄
所在地
東京都渋谷区神南1-20-2 第一清水ビル
決算期
3月末日
業種
小売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2016年3月 5,272 105 130 12
2015年3月 4,527 203 204 116
2014年3月 3,895 131 148 94
株式情報(12/7現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,368円 1,307,235株 1,788百万円 1.4% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
20.00円 1.5% 54.21円 25.2倍 675.07円 2.0倍
※株価は12/07終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
エスエルディーの会社概要について、2017年3月期上期決算及び通期見通しと共に、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
店舗の運営等を通したカルチャーコンテンツ提供事業を手掛けている。企業理念は、“To Entertainment People~より多くの人々を楽しませるために~“。「音楽」、「アート」、「食」等をはじめとする様々なカルチャーコンテンツを企画・融合させ、 「楽しみに溢れた豊かなライフスタイルをより多くの人々に提案する」というミッションの下、様々な事業を展開している。
事業セグメントは、飲食サービス事業とコンテンツ企画サービスに分かれ、和風創作料理の「Kawara CAFE&DINING」等を直営展開する飲食サービス事業が売上高の95%超を占めており、言わば、事業の種(seeds)の集合体を含有するプラットフォームとなっている。コンテンツ企画サービス事業は、直営店舗におけるメニュー開発や空間設計等のノウハウを生かして生まれた事業であり、イベント・プロモーション企画(自社主催、他社主催)、メニュープロデュース、商業空間プロデュース、更には教育コンテンツの提供等を手掛けている。
 
【沿革】
現在、代表取締役を務める青野 玄(あおの たかし)氏が、横浜国立大学卒業後、音楽プロダクションを経て、2004年1月に大学時代の友人4人と(株)エスエルディーを設立。同年2月、船上でのライブ等のイベント企画事業「SLD CRUISE」を開始した。クルージングパーティにライブコンサートを取り入れた事で新しいニーズの掘り起こしに成功した事に加え、本来なら稼働していない時間帯にライブ会場として使用する事で船舶の稼働率向上にもつながったため船舶会社からも評価された。
その後、コンサートのプランニング、飲食店のメニューブックのリニューアル、不振飲食店の再生事業等を手掛け、2005年9月、初の直営飲食店舗「kawara CAFE&DINING 神南本店」(東京都渋谷区)をオープン。カフェではあったが、周囲のカフェと差別化を図るべく、青野社長の御両親の実家がある山口県下関市の郷土料理「瓦そば」(熱した瓦の上で具とソバを炒めた料理)を看板メニューに組み込み、瓦のイメージを軸にロゴや皿にも使った和風の「kawaraブランド」を構築した。2007年7月には、都市近郊型野外音楽フェスティバル「夏びらきMUSIC FESTIVAL」を自社主催で開催(以降10年連続開催)。その後、商業施設店舗、地方都市店舗等、業態開発力を活かし、地域や立地に応じた直営店舗を多店舗展開した。2015年3月、東京証券取引所JASDAQに株式を上場。カルチャーコンテンツ提供会社としての更なる発展を目指す新たなフェイズ(Phase3)を迎えた。
 
2004年 1月 東京都港区に音楽イベントの企画等を事業目的として設立
2004年 2月 東京湾にて、船上でのライブ等のイベント企画事業「SLD CRUISE」を開始
2005年 9月 飲食店舗1号店「kawara CAFE&DINING神南本店」オープン
2007年 7月 都市近郊型野外音楽フェスティバル「夏びらきMUSIC FESTIVAL」開催
2011年11月 商業施設店舗1号店「atari CAFE&DINING池袋PARCO店」オープン
2012年 7月 地方都市店舗1号店「kawara CAFE&DINING仙台店」オープン
2014年 5月 九州エリア進出「#602 CAFE&DINER福岡空リアプラザ店」オープン
2015年 3月 東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)に株式を上場
 
 
飲食サービス事業
物件の立地及び空間特性に合わせた様々なブランド(業態)を開発し、直営店舗を展開している。場所を活かすべく立地特性に応じた店舗開発を進めているため多様なブランドを有するが、特に喫茶や食事に加え、夜は飲酒も楽しむ事ができるカフェ&ダイニング業態を得意とし、首都圏を始めとする全国の主要都市に集中出店。ドミナント戦略による経営資源の集中投下で店舗管理コストを削減する一方、立地特性に応じた和風、イタリアンテイスト、ニューヨークスタイル等、多様なブランドを展開する事でカニバリゼーションを回避している。
 
 
 
現場主義を実現する育成制度
店舗運営では、現場主義(現場参加型の事業運営)が徹底されている。現場主義は、各店舗の近隣環境や顧客ニーズの迅速な把握と部分最適を可能にすると共に、従業員のモチベーションの高揚にもつながっていると言う。例えば、新メニューの開発では、店舗従業員の提案を、料理長が、味、見た目、量、コストの面から確認した後、本部のメニュー承認会に上程し、公式メニュー群への追加が判断される(審査を受ける)。公式メニュー群へ追加された料理は、その後、各店舗で随時採用されていくが、こうした現場参加型の取り組みは料理に限った事ではない。
また、サービス・料理・飲み物の技術、或いはメニューに載せるイラスト等のカルチャーの社内教育機関「SLD ACADEMY」による教育・研修や、SLDサービスコンテスト(年1回開催)・ベストオブメニューコンテスト(上半期・下半期の年2回開催)といった発表の場を設けて人材育成にも力を入れている。
 
コンテンツを生み出すプラットフォーム
同社は、音楽イベントの企画等からスタートし、その後、コンサートのプランニング、飲食店のメニューブックのリニューアル、不振飲食店の再生事業等を手掛けながら、飲食店の直営展開に転じ、飲食サービス事業を収益の柱として確立した。この中で培ったノウハウを活かして、イベント企画、メニュープロデュース、商業空間プロデュース等のコンテンツ企画サービス事業を開始。飲食サービス事業がコンテンツを生み出すプラットフォームとなって事業間シナジーを発揮している。
飲食サービスを提供するためには、メニュー、インテリアデザイン・音楽(心地よい空間づくり、使い勝手のいい空間づくり)、グラフィック(メニューをわかりやすく、魅力的に)等が必要となるからだ。新規参入者が多く、経済環境によっては厳しい価格競争にさらされる飲食業界において、同社は、メニューはもちろんの事、音楽(BGM)、アート(内装、家具)等のカルチャーコンテンツの充実を図る事で差別化を図っており、店舗で生み出されたコンテンツが、他の店舗やコンテンツ企画サービス事業で活かされている。
 
 
コンテンツ企画サービス事業
当事業では、プラットフォームである飲食サービス事業で生み出されたコンテンツを事業化しており、言わば、事業の種(seeds)の集合体であり、収益性の高い事業である。具体的には、イベント・プロモーション企画(自社主催及び他社主催)、直営店のメニュー開発や店舗設計・内装を内製化している強みを活かした商業空間プロデュースやメニュープロデュース、及び教育コンテンツの提供等の事業を手掛けている。

音楽・イベントの企画では毎年夏に首都圏(埼玉県所沢航空記念公園)と近畿圏(大阪府服部緑地)で開催される「夏びらきミュージックフェスティバル」は、飲食や音楽に加え、ヨガ教室や子供向けワークショップ等が内包されており、首都圏では既に10年の歴史を有する。また、横浜赤レンガ倉庫における夏期イベント「Red Brick Resort」での飲食ブースの出店も、今夏で5年目を迎えた。

空間プロデュースでは、福岡パルコ新館 6階フロア「タマリバ6」等の実績があり、メニュープロデュースでは店舗運営も含めて、(株)カプコンの直営キャラクターカフェ「カプコンカフェ」、(株)ユーグレナのビアガーデン「euglena BEER GARDEN」、JA全農京都の直営店「みのりカフェ」等で実績を有する。

教育コンテンツの提供では、子供向けの料理教室「SLD OPEN ACADEMY FOR KIDS」の開催や製菓・カフェ等の専門学校での受託事業を手掛けている。
 
 
 
 
*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。
 
 
2017年3月期上期決算
 
 
前年同期比11.3%の増収ながら、37百万円の営業損失(前年同期は48百万円の利益)
売上高は前年同期比11.3%増の28億39百万円。内訳は、飲食サービス事業が26億88百万円(同11.6%増)、コンテンツ企画サービス事業が1億50百万円(同5.5%増)。ただ、営業損益は37百万円の損失。飲食サービス事業が既存店の売上の伸び悩みで材料費及び店舗運営人件費の増加を吸収できなかった。
 
 
飲食サービス事業
既存エリアにおけるドミナント戦略強化を目的に、「HangOut HangOver西武新宿 Brick St.店」(東京都渋谷区、4月)、「kawara CAFE&DINING新宿靖国通り店」(東京都渋谷区、4月)、「kawara CAFE&DININGKITTE博多店」(福岡県博多市、4月)、「HangOut HangOver大名店」(福岡県博多市、9月)の合計4店舗(前年同期は8店舗)の新規出店を実施した他、1店舗を業態転換(前年同期は業態変更なし)。一方、4店舗の退店(うち3店舗は出店商業施設の建替えに伴う退店、1店舗は戦略的退店)を実施した結果、上期末の店舗数は68店舗となり、前年同期に比べて5店舗の純増となった。
既存店(集計対象期の前々期末までに出店した店舗)売上高は前年同期比96.2%(客数94.7%、客単価101.5%)。

尚、ニューヨークスタイルの肉料理をメインに提供する「HangOut HangOver 大名店」は九州エリアでは初の業態。この業態は、音楽プロモーションやライブを実施する等、高いカルチャーコンテンツ発信力を有する。業態転換では、「もつ鍋」をメイン料理としたカジュアルダイニング「かわらや」を、8月にハーブの一種である「パクチー」をメイン食材とし、同社初のタイ屋台風食堂をコンセプトとした「Pak-chee Village 新宿店」に業態転換した。9、10月の2か月間の前年同期との比較で売上高が160%と大きく伸びている。
 
 
 
 
コンテンツ企画サービス事業
2日間開催日を増やしての野外音楽イベント「夏びらきMUSIC FESTIVAL’16」の開催(埼玉県開催10周年、大阪府開催3年目)、横浜赤レンガ倉庫での夏期イベント「RED BRICK RESORT 2016」へのフードブースの出店(5年連続)、夏期恒例のビアガーデン運営に加え、(株)カプコン直営「カプコンカフェ」のフード・ドリンクメニューのプロデュース、(株)ユーグレナ直営「Euglena BEER GARDEN」やJA全農福岡直営「みのりカフェ」の企画・運営を手掛けた(両店舗は継続して運営)。
 
夏びらき MUSIC FESTIVAL 2016
「夏びらき MUSIC FESTIVAL所沢」については、所沢航空記念公園(埼玉県所沢市)にて、2016年7月16日(土)、17日(日)、18日(月)の3日間にわたり、「夏びらき MUSIC FESTIVAL大阪」については、服部緑地野外音楽堂(大阪府豊中市)にて、2016年7月30日(土)、31日(日)の2日間にわたり開催した。5日間合計の来場者数は約5,000人(5日間延べ人数)。所沢では2007年より10年連続、大阪では2014年より3年連続の開催であり、所沢では、10周年記念企画として、親子で参加可能なヨガ教室を実施した。
 
Viva la FARM!! RED BRICK Paradise 2016
横浜赤レンガ倉庫 イベント会場(神奈川県横浜市)にて、2016年7月30日(土) ~ 2016年8月28日(日)までの30日間にわたり開催。来場者数は会期中延べ人数で78万人(2015年は69万人)。「RED BRICK RESORT」は横浜にいながら海外のリゾートを体感できる空間として、2011年から実施されている。同社は、飲食販売部門を2012年より5年連続で受託している。
 
 
 
2017年3月期業績予想
 
 
前期比10.1%の増収、同43.0%の営業増益予想
通期業績予想に変更はなかった。売上高は前期比10.1%増の58億06百万円。内訳は、飲食サービス事業が56億26百万円(同12.1%増)、コンテンツ企画サービス事業が1億80百万円(同28.5%減)。新規出店は6店舗を計画しており、上期に4店舗を出店済み。下期は2017年2月に1店舗のランチオープン(同年4月にグランドオープン)が決定している(もう一店舗は未定)。一方、退店は商業施設リニューアルによる退店4店舗、戦略的退店1店舗の計5店舗。期末店舗数は70店舗となる見込み。
グランドメニュー改定による既存店のテコ入れと年末・年度末需要の取り込みで通期業績予想の達成を目指している。
 
(2)下期の取り組み
飲食サービス事業
グランドメニュー改正によるコンテンツのブラッシュアップに取り組むと共に、店舗運営に係るチーム編成の見直しと各業態が所属するカテゴリーの変更を実施する。また、本部組織体制も見直す。

グランドメニュー改定によるコンテンツのブラッシュアップでは、2016年3月よりブランド別にグランドメニュー改定に順次着手しており、各業態のコンセプトを深堀した新メニューの開発や、既存人気メニューの拡充・ブラッシュアップに取り組んでいる。また、店舗運営に係るチーム編成の見直しと各業態が所属するカテゴリーの変更を行い、「Japanese Div.」、「International Div.」、「Bar・Bistro・Dining Div.」の新たな業態所属カテゴリーの下、集客に向けた意識改革の推進と人材の育成、及び店舗運営に係るポリシーの策定と各種アクションプランの実施による集客力の強化に取り組んでいる。更に、組織活性化及び人材の育成と新規事業の強化・創出を目的に本部組織体制の見直しも進める。
 
コンテンツ企画サービス事業
2016年11月14日に料理動画メディア「CookMe」を開始した。「CookMe」は、料理動画コンテンツ(いわゆる「1分クッキング」)をFacebook等のソーシャル・メディア・プラットフォームに掲載・配信する事で広告収入や商品販売等のビジネスチャンスを追求するもの。同社が有する「食」に関するカルチャーコンテンツは、直営飲食店や他社へのプロデュースメニューを合わせると相当数にのぼる。この豊富なコンテンツ資産を有効活用して収益化を図る考え。
 
「CookMe」の特徴は、既存の飲食及びコンテンツ企画サービス事業で蓄積されたリアル資産を活用する事。また、プロのレシピ・調理を高クオリティの動画で配信するサービスであり、リアル店舗との連携も可能だ。

タイアップ広告の制作・配信に取り組む他、農業や水産業等の第一次産業との連携による第六次産業への展開も模索していく。
 
(3)株主還元策
同社は株主への利益配分については、重要な経営課題の一つと位置づけ、各期の経営成績、企業体質の強化と将来の事業展開に向けた内部留保の充実等を総合的に勘案しつつ、配当を実施していく事を基本方針としている。
17/3期の配当については、1株当たり20円の期末配当を予定している。

また、株主優待も実施している。3月末を基準日とし(年1回の実施)、同社株式100株(1単元)以上保有の株主を対象に保有株式数に応じて、下記の通りの「お食事券」を贈呈している(同社の直営飲食店舗においてのみ利用可。運営受託店舗及びライブハウスを除く)。

保有株式数発行枚数
100株以上300株未満   2,000円分(2,000円 × 1枚)
300株以上500株未満  10,000円分(2,000円 × 5枚)
500株以上       20,000円分(2,000円 × 10枚)
 
 
成長戦略  - 青野社長に聞く -
 
上場に向け飲食サービス事業に専念してきたが、上場を果たした事で、カルチャーコンテンツ提供企業として、飲食サービス事業に次ぐ、2本目、3本目の事業の柱の育成に取り組んでいくと言う。11月初旬、青野社長にお時間を頂き、同社の特徴と成長戦略についてお話を伺った。
 
【事業の特徴】
当社の事業は飲食サービス事業とコンテンツ企画サービス事業に分かれる。飲食サービス事業は、同じものを作って、それを横展開していくものではなく、地域や時代に適合するものをゼロから考えて創っていく。飲食サービス事業だけをとれば、若干、効率的ではないかもしれない。メニューであれば、通常、1業態で100メニューあれば、季節の変化にも対応できるだろうが、当社の場合、全店でメニュー開発を行っているため、毎年3,000メニューが開発されており、コンテンツとして資産化されている。また、空間設計も各店舗が地域やロケーションに合わせて独自に設計を行っているため、コンテンツとして資産化され、空間設計のノウハウとして蓄積されている。大変ではあるが、その都度、新しいコンテンツが生まれている。このコンテンツを、どのようにして事業化していくかが今後のポイントである。

このため、出店や規模の拡大を成長戦略の軸に置いていない。5年後に100店舗、10年後に200店舗、30年後に1,000店舗と言った考えはなく、もちろん、店舗数が増えればいいのだが、当社の場合、店舗数が増えなくても問題ない。プラットフォームとして飲食サービスが成立していれば、そこから生まれてくるものが自動的に拡散していくので、それを事業化できるかどうかである。それが顕在化してくれば、カルチャーコンテンツ提供企業として説明もしやすくなり、理解してもらえるのだろうが、取り組んでいる事業は、いずれも未だ規模が小さいため、コンテンツ企画サービス事業としてまとめている。このため、理解され難くなっていると思う。
 
【飲食サービス事業のてこ入れ】
飲食サービス事業は、当社に限らず、他社を見ても、必ずしも高い利益率ではなく、外部環境の影響も受けやすい事業であり、業界である。3月からグランドメニュー改定に取り組んでおり、店舗運営の支援強化を目的に、本部組織体制の見直しに加え、店舗運営に係るチーム編成の見直しや各業態が所属するカテゴリーの変更も行った。

グランドメニュー改定はカテゴリー毎に進めており、売上の落ち込みの大きい店舗から始めたが、夏頃から徐々に成果が表れてきた(6月の既存店売上高:6月95.5%、7月99.8%、8月は悪天候で94.3%、9月99.5%)。リニューアル特需もあるのだろうが、一定の成果が出つつあると手応えを感じている。過去もそうだったが、こうした取り組みの繰り返しで少しずつよくなっていった。来期(18/3期)の半ばには全店舗でグランドメニュー改定が終わる予定だ。

デフレになったから価格を下げるという事ではなく、お客様満足度の向上や接客等、基本的な部分でも当社は完ぺきではないので改善の余地があると思われ、そのあたりの取り組みにも力を入れていきたい。それができれば、外部環境にかかわらず安定した業績をあげていく事ができるのではないかと思う。
 
【第2、第3の事業の柱の育成】
コンテンツ企画サービス事業で提供しているサービスに加え、未だ事業の形になっていないが、飲食サービスというプラットフォームから生まれたコンテンツ(料理等)や音楽関係のコンテンツやで新たな取り組みを始めており、来期にその形が見えてくればいい、と考えている。

これまでも様々なコンテンツ開発を手掛けてきたが、ニーズを頂いて、それに応えた結果、コンテンツ企画サービス事業の売上につながってきた。上場前後は飲食サービス企業として上場した事もあり、飲食サービス企業としてIRも行い、コンテンツ企画サービスはプラスアルファ的な説明だったが、ようやく、飲食サービス事業で収益をあげ、そこで生まれたコンテンツをどのように事業化していくか、本格的に検討し始めたところ。トライしていく事が大切だ。

当社は、料理、音楽、ファッション等、様々なコンテンツ資産を有するが、先ずは最もコンテンツ数が豊富な料理の分野で、11月にサービスを開始した「CookMe」はこの一環。料理コンテンツをメディア化して広告収入を得て、そして多くのユーザーにリーチできるようになったら別の価値を創出していきたい。音楽については、著作権の整理が必要だが、当社は夏びらきや店舗でのライブを合わせて、年間1000~1500のアーティストが出演している。その音源と映像が残っているのでコンテンツは豊富。それを、IT、リアルを問わず事業化できればと考えている。当社の事業では、音楽(イベント、コンサートに限らず、ネットを使ったコンテンツ提供)が飲食サービスよりも古い。
 
【人材の採用と育成】
人材確保では、業界の中で優位性を持っているのではないか。応募は募集の100倍前後で、新卒も3000~4000人が応募する。当社の企業カラーや業態、ブランドイメージによるものだと考えている。人手不足が深刻化しているが、当社については、盤石と言う訳ではないが、大きな危機感はない。良い人材をしっかり確保していきたい。

クリエイティブな人材が必要だが、新卒採用であれば、好奇心があり、何か趣味や打ち込んでいる事があれば採用のテーブルに乗る。入社後に掘り下げたり、店舗で実戦してトライ&エラーを繰り返したりで、センスを磨いてくれれば、と考えている。新卒の応募者は、それほどビジョンが固まっている訳ではないが、「楽しみの中では飲食が一番」と言う人もいれば、「音楽や空間プロデュースが一番」という人もおり、当社の応募者は飲食サービスを提供する他社の応募者(飲食サービスを念頭に応募してくる)とは違いがあると思う。応募時点で当社だけしか採用試験を受けていないと言う人は多い。ミスマッチには気を付けなくてはいけないが、他社ではリーチできない層にリーチできているのではないか。そこから優秀な人材を採れる可能性は高いと考えている。当社の理念である“エンターテイメントの提供”、“楽しみの提供”からはずれていなければ、飲食が一番でなくても構わない。

採用した人材を教育・育成する事も大切だ。教育システムはブラッシュアップを重ねてきたが確固たるものがあると言うまでには至っていなかった。このため、今期から外部の専門リソースを加えて見直しを始めており、ある程度見通しも立ってきた。今後、採用・教育・配置でレベルアップができると考えている。これから入ってくるメンバーはもちろん、今いるメンバーの成長も促進できるのではないか。
 
【ベンチマーク企業】
飲食サービス事業では、多くの会社がベンチマークであり、部分部分で参考にしている。外食企業全般がベンチマークとも言える。コンテンツ企画サービス事業では目指しているところが同じ会社はないが、サザビーさん等はゴールイメージとしては近い(注)。同じ事を目指すという意味ではなく、領域を横断して事業を展開しているという点でイメージとしては意識する事がある。飲食もやれば、アパレルもやり、ライフスタイル全般の中で事業化されている。
(注)株式会社サザビーリーグ。「SAZABY」や「Afternoon tea」等のブランドで、バッグ・アクセサリー・生活雑貨・衣料品等の企画・販売、飲食店の運営等をグループで展開している。
 
【投資家の皆さんへ】
これからも事業の柱は飲食サービス事業であり、既存店の強化と新規出店に取り組んでいきますが、それだけでは成長が限られると思います。この思いは以前から持っていましたが、これまではJASDAQ上場の直前直後という事もあり、具体的な取り組みは控えてきました。今、最優先すべき事は飲食サービス事業の強化であり、新しい事業については説明できる事が少ないのですが、適宜、取り組みの経過について情報開示を行ながら、早期に業績に反映できるように努力していく考えです。現在は飲食サービス企業ですが、どこかで変わってくる可能性が高く、いくつかの取り組みが既に始まっています。期待して頂ければと思います。宜しくお願い致します。
 
 
今後の注目点
同社は飲食サービス事業を強化しつつ、豊富なコンテンツ資産を活用して新規事業を育成していく考えだ。この一環としてサービスを開始した料理動画メディア「CookMe」は既に同様のサービスがあるものの、同社においては豊富な資産を有効活用できる事が強み。豊富なコンテンツの有効活用では音楽分野にも期待がかかる。個人消費に陰りがみられるが、クレディセゾン営業企画部アドバイザリースタッフの立沢芳男氏は「お金を使う場所が変わっただけだ」と言う。「クレジットカード決済では既に“モノ消費”を“コト消費”が逆転しており、業界全体で2013年に初めてサービスが物販を上回り、クレディセゾンではその前年に逆転現象が起きていた」と。“コト消費”の一つであるライブ市場は年率10%程度の成長が続いていると言われているが、リアルだけでなく、IT化による音楽コンテンツの活用も広がっている。既存店が回復傾向にある飲食サービス事業の今後の展開と共に新規事業に期待したい。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書            2016年6月30日

基本的な考え方
当社は、継続的な企業価値の向上にはコーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であると考え、コーポレート・ガバナンスの強化及び充実に努めております。株主やその他ステークホルダーと良好な関係を築き、社会のニーズに合った事業活動を行うことで長期的な成長を遂げていくことが出来ると考えております。そのために、当社では、企業活動の健全性、透明性及び客観性を確保するために適時適切な情報開示を実施し、また、経営監督機能を強化する体制作りに積極的に取り組んでおります。
コーポレート・ガバナンスについての重点課題と致しましては、
 
1.株主の権利が実質的に確保されるよう適切な対応を行い、株主がその権利を適切に行使することができる環境を整備すること
2.会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出の為、様々なステークホルダーとの適切な協働に努めること
3.財務情報、経営戦略・経営課題、その他非財務情報について、法令に基づく開示を適切に行い、かつ法令に基づく開示以外の情報提供にも取り組むこと
4.取締役会は、1)企業戦略等の大きな方向性を示し、2)経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行い、3) 独立した客観的な立場から、経営陣・取締役に対する実効性の高い監督を行い、その責務・役割を適切に果たすこと
5.持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するため、株主総会の場以外においても、株主との間で建設的な対話を行うこと
 
を第一義と捉え、常にこれら重点課題を念頭においた体制の整備を行っております。

なお、当社では、今後の事業拡大に伴って組織規模拡充が想定されるため、コーポレート・ガバナンス体制については随時見直しを実施し、また、積極的に取り組んでまいります。
 
<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則を実施しております。