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(9445) 株式会社フォーバルテレコム

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ブリッジレポート:(9445)フォーバルテレコム vol.48

(9445:東証2部) フォーバルテレコム 企業HP
谷井 剛 社長
谷井 剛 社長

【ブリッジレポート vol.48】2017年3月期業績レポート
取材概要「同社の17/3期決算は、IP&Mobileソリューション事業の増収・増益を、ドキュメント・ソリューション事業とコンサルティング事業の減収・減益が一部・・・」続きは本文をご覧ください。
2017年7月11日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フォーバルテレコム
社長
谷井 剛
所在地
東京都千代田区神田錦町三丁目26番地 一ツ橋SIビル2F
決算期
3月
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2017年3月 15,049 695 700 462
2016年3月 13,842 644 672 441
2015年3月 12,385 581 567 305
2014年3月 12,145 446 435 272
2013年3月 11,990 436 438 269
2012年3月 13,470 323 302 177
2011年3月 13,560 391 391 155
2010年3月 13,956 347 327 194
2009年3月 15,042 391 388 133
2008年3月 13,466 337 344 192
2007年3月 12,461 845 840 975
2006年3月 11,024 859 868 841
2005年3月 7,740 470 452 726
2004年3月 6,114 214 205 205
2003年3月 7,746 93 40 69
株式情報(6/21現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
406円 16,693,200株 6,777百万円 21.7% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
15.00円 3.7% 28.45円 14.3倍 134.16円 3.0倍
※株価は6/21終値。ROEとBPSは2017年3月期実績、EPSは2018年3月期予想。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
中小・中堅法人向けにOA・ネットワーク機器の販売やサービスの取次ぎを展開するフォーバル(8275)の連結子会社。フォーバルの連結決算において、フォーバルテレコムビジネスグループとしてセグメントされている(17/3期はフォーバルの連結売上高の28.7%を占めた)。グループは同社の他、連結子会社4社、持分法適用関連会社1社。
 
【事業内容と企業グループ】
同社及び連結子会社(株)FISソリューションズによる法人向けVoIPサービス(高速ブロードバンド回線を利用した電話やインターネット接続サービス)や法人向けFMC(Fixed Mobile Convergence)サービス「2way Smart」の提供と関連機器販売の「IP&Mobileソリューション事業」、連結子会社(株)トライ・エックスを中心にオン・デマンド印刷・印刷物のプランニング・デザイン等を手掛ける「ドキュメント・ソリューション事業」及び(株)保険ステーションによる保険やプライバシーマーク等に関する各種コンサルティング等の「コンサルティング事業」に分かれる。また、持分法適用関連会社(出資比率25%)で、(株)光通信(9435)グループの(株)アイ・イーグループとの合弁会社(株)ホワイトビジネスイニシアティブが「2way Smart」の企画開発及び関連するハードウエア開発を手掛けている。
 
 
 
 
主要なサービスの概要
 
(1)IP&Mobileソリューション
AmaVo
新たに提供を開始したサービスであり、iSmartひかり(同社NTT光コラボ回線)専用の法人向け電話サービス。同社が新たに開始したIP電話の「新しいあたりまえ」。AmazingVoIP(驚くべきVoIPサービス)の頭文字をとってネーミングされた。
 
 
 
iSmartひかり
NTT東日本・西日本が提供する光コラボレーションモデルを受け、同社がオリジナル料金で提供している光回線サービス。①バックボーンはNTTのフレッツ網を利用しているため品質が安定している、②請求の一本化ができるというメリットを持つ。おまか請求やワンビリングサービスで培われた請求一本化のノウハウが武器となっている。
 
 
iSmart接続-Fひかり
iSmart接続-Fひかりは、法人向けに提供している高品質なインターネット接続サービスを、個人でも利用しやすいように、サービス価格・内容を最適化したフレッツ光専用プロバイダサービス。
(サービスプラン)
 
メールアドレス10個、1GBのホームページ、スパムフィルタ、メール転送などがずっと無料なのが特徴。
 
(2)セキュリティコンサルティング
プライバシーマーク(Pマーク)や各種ISOのコンサルティング
認証取得支援から、運用支援、更新支援、規格改訂支援、各種セミナーなど、Pマークや各種ISOに関わるサポートを実施。
 
 
(3)ペーパレスソリューション
おまか請求
請求書・支払通知書・納品書をWeb化でコスト削減するツールを提供。顧客登録・受注登録・料金計算、請求書発行(WEB公開)・収納代行・督促支援業務などを含んだ請求代行サービス。請求に関する業務を代行し、顧客の請求コストの削減と業務負担の軽減を図る。また、おまか請求ではユーザーがクラウドサービスを安全に利用できるよう各種セキュリティ対策を実施している。
 
 
ワンビリングサービス
複数サービスの請求書をひとつにまとめて請求するサービス。請求書が何通も届くことなく、1請求書にまとめて請求される。請求書を一本化することで、各社からの請求書の煩雑さの解消や事務処理の簡素化が図られるなど、業務効率が向上する。
 
 
 
2017年3月期決算
 
 
前期比8.7%の増収、同4.1%の経常増益
売上高は前期比8.7%増の150億49百万円と4期連続の増収となった。売上面は、新サービス(光コラボ・AmaVo)の拡大によりIP&Mobileソリューション事業で増加した。一方、前期の大型案件が終了した影響によりドキュメント・ソリューション事業で、更に、保険募集人の減少と保険業法の改正の影響を受けたコンサルティング事業で減少した。
営業利益は同7.9%増の6億95百万円と5期連続の増益となった。収益性の高いストック収益が増加したIP&Mobileソリューション事業で増加したものの、大型案件が終了した影響によりドキュメント・ソリューション事業と保険業法改正に対応するコストが増加したコンサルティング事業で減少した。売上総利益率は、30.5%と前年比0.6ポイント上昇した。また、ISPサービスの獲得に伴う営業費用(販売コミッションの償却費)の増加や正社員化に伴う人件費の増加などにより、売上高対販管費比率は、25.9%と同0.6ポイント上昇した。また、営業外費用で貸倒引当金繰入額79百万円(前期は50百万円)を計上したことなどにより経常利益は同4.1%増の7億円と営業利益の増益率を下回った。その他、特別損益の大きな計上はなく、親会社株主に帰属する当期純利益は6期連続の増益となった。
 
 
 
連結の売上総利益は4億47百万円増加。売上総利益率は0.6ポイントの上昇となった。個別ベースの売上総利益は、ネット系他のストック収益の拡大に加え、新サービスの契約獲得により通話系サービスにかかる課金収入も大幅に増加したことが寄与し、全体として4億90百万円増加した。一方、前期の大型案件が終了した影響によるドキュメント・ソリューション事業に加えて、保険業法改正に伴う営業人数の減少などによりコンサルティング事業においても減少したことから子会社の売上総利益は、43百万円の減少となった。
 
 
販管費は、IP&Mobileソリューション事業における収益性の高いネット系ストック収益(「iSmart接続」)の獲得に伴う支払販売コミッションの償却費の増加やiSmartひかりの運営コストなどの委託業務費の増加、雇用の契約形態の変更に伴う人件費の増加などにより前期比3億96百万円増加した。
 
 
IP&Mobileソリューション事業  売上高108億24百万円(前期比13.6%増)、セグメント利益3億40百万円(同68.5%増)
主にVoIPサービス、モバイルサービス等の情報通信サービス全般を提供。通話系ストックビジネスは新サービス(光コラボとAmaVo)や収益性の高いISPを主体とするネット系ストック収益(iSmart接続)が増加したことから増収、増益となった。
 
ドキュメント・ソリューション事業  売上高18億48百万円(前期比3.0%減)、セグメント利益1億98百万円(同22.3%減)
主に普通印刷、印刷物のプランニング・デザイン等を行う。コストダウンに努めたものの、受注単価の減少傾向に加え、前期の大型案件の終了が影響し減収、減益となった。一方、終了した大型案件を除けば堅調に推移。特に主要顧客の受注は増加基調となった。
 
コンサルティング事業  売上高23億76百万円(前期比1.5%減)、セグメント利益1億76百万円(同14.6%減)
主に経営支援コンサルティング、保険サービス及びセキュリティサービス等を行う。(株)保険ステーションにおいて、保険業法の改正に対応し管理コストが増加した事に加え、販売人員の減少で減収、減益となった。一方、Web請求や回収業務の受託が順調に増加した他、情報セキュリティを中心とするコンサルティングサービスは引き続き堅調に推移した。
 
 
17/3月末の総資産は、16/3期末比4億16百円増の72億19百万円。資産サイドでは売上債権と前払費用等が、負債・純資産サイドでは、短期借入金と利益剰余金等が主な増加要因。17/3月末の自己資本比率は31.0%と16/3期末の29.8%から1.2ポイント上昇した。
 
 
CFの面では、前期末と比べ未収入金の増加額が減ったことなどにより営業CFがプラスへ転じた。また、有形固定資産の取得による支出の増加などにより、投資CFのマイナスが拡大したものの、フリーCFもプラスへ転じた。一方、短期借入金の増加額が減ったことなどにより財務CFはマイナスへ転じた。
 
 
2018年3月期業績予想
 
 
前期比3.1%の増収、同2.8%の経常増益
18/3期の会社計画は、売上高が前期比3.1%増の155億20百万円、経常利益が同2.8%増の7億20百万円。売上高は、ISPサービス(「iSmart接続」)を中心とするネット関連やおまか請求などから生じるストック収益の拡大を図りつつ、iSmartひかり(光コラボレーションモデル)・AmaVoの提供を通じて通話系のストック収益の拡大を図る計画。ドキュメント・ソリューション事業とコンサルティング事業の回復は想定していない。
営業利益は、同3.5%増の7億20百万円の計画。利益面も、増収効果によりIP&Mobileソリューション事業で増加を予想。ドキュメント・ソリューション事業とコンサルティング事業においては、売上同様概ね横ばいを予想している。収益性の高い各種ストック収益の拡大が見込まれるものの、支払販売コミッションの増加などを織り込み、売上高営業利益率は4.6%と前期並みの計画となっている。
配当は、17/3期と同額(上期末7円、期末8円)の1株当たり年間15円の予定。
 
 
 
同社は、顧客ニーズに合わせ、一次事業者として、或いは一次事業者の業務委託先として、光コラボ事業を営む。業務受託の範囲としては、受注受付、案件ステータス管理、料金計算、請求など多岐にわたる。
 
 
iSmartでんきは、同社が小売電力事業者と媒介契約(電力の代理販売契約)を締結する。顧客への販売は親会社であるフォーバルやFISソリューションズなどの代理店が担当し、同社は電気料金の請求・回収をメインに行う事業スキーム。使用量の多い少ないに関わらず毎月一定率で基本料金と使用料金を確実に割引する点で差別化している。当面はプロモーションコストがかからない法人に限定したサービスであるものの、フォーバルやFISソリューションズの豊富な顧客基盤が武器となろう。同社は好評につき、今後順次提供エリアを拡大していく他、同社が小売電力事業者となり本格的に事業を拡大することも検討している。
 
 
 
今後の注目点
同社の17/3期決算は、IP&Mobileソリューション事業の増収・増益を、ドキュメント・ソリューション事業とコンサルティング事業の減収・減益が一部打ち消す残念な結果となったものの、IP&Mobileソリューション事業の成長性の加速が確認された。単体の通話系ストック収益は、新サービスiSmartひかり及びAmaVoの契約獲得が寄与し、売上高が前期比13.3%増加し、売上高総利益も同21.1%増加した。加えて、単体のネット系ストック収益も、新規契約獲得のための積極的な販売奨励金の支払いが奏功し、売上高が前期比21.4%増加し、売上高総利益も同24.0%増加した。こうした一方で、単体の販管費が同16.2%の増加にとどまったことから、単体の営業利益は同63.7%の大幅な増益となった。この数年販売奨励金の増加は、売上総利益を増加させる一方で、販管費の増加(前払費用の償却費増加)をもたらし、営業利益の伸びを抑制してきた。同社では、iSmart接続における新規契約獲得のための販売奨励金を前払費用に計上し、3年間で償却を行う会計処理をとっている。17/3期は現行の会計処理を実施してから、4年目となるため、前払費用の償却負担の増加が鈍化してくることが予想されていた。こうしたシナリオが現実的になってきたことが確認された決算と言えよう。18/3期においても、ストック収益の拡大と前払費用の償却負担の増加のピークアウトが重なり、売上高営業利益率と営業利益の増益率が高まるのか注目される。
また、17/3期に減収減益となったドキュメント・ソリューション事業とコンサルティング事業においても、17/3期第4四半期(1-3月)の営業利益は前期及び前年同期との比較においても急速に利益水準を回復させた。これは、ドキュメント・ソリューション事業において子会社のトライエックスの受注が好調に推移したことや、コンサルティング事業においてWeb請求や回収業務の受託と情報セキュリティを中心とするコンサルティングサービスが拡大したことなどが寄与した。こうした前四半期の流れを引き継ぎ、回復傾向を鮮明にできるのか、18/3期第1四半期のドキュメント・ソリューション事業とコンサルティング事業の収益状況が注目される。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書
コーポレート・ガバナンス・コード適用以降直近のコーポレート・ガバナンス報告書提出日、2017年6月21日。

<基本的な考え方>
当社では、取締役会を唯一の経営意思決定機関として位置付けております。
定例取締役会を毎月開催するほか、重要案件が生じる都度臨時取締役会を機動的に開催し、迅速かつ的確な経営判断を行っております。
また、企業経営情報の積極的な開示を目的として、適時に当社のホームページにおいて財務情報に限定されないディスクロージャーを行っております。
当社は、監査等委員設置会社形態を採用しており、同形態により十分にガバナンスが機能していると認識しております。

<コーポレート・ガバナンス・コード各原則の実施について>
実施をしないコード:7項目、そのおもな原則と理由
 
<開示している主な原則>
 
<その他>
同社は、社是(*1)を基本とし、中期経営計画の策定(未公表)や取締役の選定を行っている。
株主総会は集中日を避けて6月21日に開催。
議決権の電子行使や英文による情報開示、信託銀行名義の実質株主の総会参加は今後の検討項目としている。
今年からは補充原則4-11-3 取締役会実効性の分析評価がエクスプレインからコンプライに変更されており、コーポレート・ガバナンス・コードの各原則について実施する・しないを会社の状況に応じて適宜検討・更新をしている。

*1 社是 補充原則4-1-2 中期計画達成状況の株主説明を実施しない理由を参照。