ブリッジレポート
(4205) 日本ゼオン株式会社

プライム

ブリッジレポート:(4205)日本ゼオン vol.18

(4205:東証1部) 日本ゼオン 企業HP
田中 公章 社長
田中 公章 社長

【ブリッジレポート vol.18】2018年3月期第1四半期業績レポート
取材概要「両事業とも2桁の増収増益で進捗率も売上、利益とも3割近辺と好調なスタートとなった。現時点で為替は想定よりも円安傾向であり、市況・・・」続きは本文をご覧ください。
2017年8月22日掲載
企業基本情報
企業名
日本ゼオン株式会社
社長
田中 公章
所在地
東京都千代田区丸の内1-6-2 新丸の内センタービル
決算期
3月 末日
業種
化学(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2017年3月 287,624 30,767 31,805 23,152
2016年3月 295,647 29,856 32,153 18,079
2015年3月 307,524 28,245 31,098 19,080
2014年3月 296,427 29,901 32,561 19,650
2013年3月 250,763 23,696 25,212 14,750
2012年3月 262,842 32,123 31,487 19,127
2011年3月 270,383 35,295 33,623 18,303
2010年3月 225,878 9,319 9,448 5,020
株式情報(8/4現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,437円 221,982,355株 318,988百万円 11.0% 1,000株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
17.00円 1.2% 90.10円 16.0倍 1,082.02円 1.3倍
※株価は8/4終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
日本ゼオンの2018年3月期第1四半期決算概要についてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
自動車部品やタイヤに使用される合成ゴムや、医療用手袋等に使用される合成ラテックスを始めとして、世界的な高シェア製品を多数保有する石油化学メーカー。独創的な技術開発力とそれを生み出す研究開発体制、高い収益性などが強み。
自動車部品、タイヤ、ゴム手袋、紙おむつ、携帯電話、液晶テレビ、香水など身の回りにある多種多様な製品に同社が製造する製品(素材)が使用されている。
グループは、同社および子会社58社、関連会社9社で構成されており、世界16か国に生産、販売拠点を有している。
 
 
【社名と経営ビジョン】
「ゼオ」(Geo)はギリシャ語で大地、「エオン」(Eon)は永遠を意味し、その合成語「ゼオン」には「大地から原料を得て永遠に栄える」という意味が込められており、世界に誇り得る独創的技術によって、地球環境と人類の繁栄に貢献することを経営理念として掲げている。
(設立時は資本及び技術提携先であった米国B.F.グッドリッチ社の塩化ビニル樹脂製品の商標「Geon」を取って社名としていたが、1970年の資本関係解消を機に表記を「Zeon」と改めた。)
 
【沿革】
同社は、古河電工、横浜ゴム、日本軽金属の古河系3社の共同出資により、米国B.F.グッドリッチ・ケミカル社との提携による塩化ビニル樹脂製造技術の導入を前提として、1950年4月に設立された。

1951年にB.F.グッドリッチ・ケミカル社が35%の株式を取得し、技術及び資本の全面提携が成立し、翌1952年に日本で初めて塩化ビニル樹脂の量産を開始した。
1959年にはB.F.グッドリッチ・ケミカル社から合成ゴム製造技術を導入し、日本で初めて量産を開始。タイヤを中心とした自動車向け需要の増大に対応してし、生産設備を拡大していく。

1965年にはC4留分からブタジエン(合成ゴムの主原料)を効率よく製造する同社の独自技術であるGPB(ゼオンプロセスオブブタジエン)法による生産を開始した。
B.F.グッドリッチ・ケミカル社が事業の中核を塩化ビニル樹脂事業にシフトするのに伴い、特殊合成ゴム事業を譲り受け、1970年資本提携も解消へ。これに伴い1971年に英文社名をGeonからZeonに変更した。
同じく1971年にはC5留分から高純度のイソプレンや石油樹脂、合成香料の原料などを抽出する独自技術GPI(ゼオンプロセスオブイソプレン)法を開発し生産を開始。

1980年代に入り、合成ゴムに加えて、フォトレジストなどの情報材料、合成香料、メディカル分野など新規事業への展開を積極化させていく。
1984年、現在では世界シェアトップとなった水素化ニトリルゴムZetpol®を高岡工場で生産開始。
1990年、GPI法によって抽出、合成された高機能材料事業の主要製品であるシクロオレフィンポリマーZEONEX® を水島工場で生産開始。
1993年、電子材料事業で中国に進出した。
1999年にはゼオン・ケミカルズ(米国、現 連結子会社)が、グッドイヤーから特殊ゴム事業を買収し、特殊ゴム分野で世界トップメーカーとなる布石を打つ。

2000年、水島工場での塩化ビニル樹脂生産を打ち切り、創業事業の塩化ビニル樹脂事業から撤退した。
2002年にLCD用光学フィルムゼオノアフィルム®を上市。
2010年ゼオン・ケミカルズ・シンガポール、2011年ゼオンコリアを設立し、グローバル生産・販売体制を一段と強化している。
2013年3月、(株)トウペのTOBを終了。同年8月完全子会社化した。
2013年9月、シンガポールでスチレンブタジエンゴム(S-SBR)の工場が完成し、2014年4月より商業運転を開始。
2015年2月、富山県氷見市のLCD用光学フィルム設備を増強。
2015年11月、世界初 スーパーグロース・カーボンナノチューブの量産工場が稼働。
2016年4月、シンガポールでS-SBR生産拠点で第2系列が稼働。
 
【事業内容】
同社の主要製品は、原油を蒸留分離して得られるナフサを熱して抽出される炭素数の異なる様々な抽出物を原材料としている。
ナフサを熱すると、順次、一酸化炭素ガス(C1)、エチレン(C2)、プロピレン(C3)が抽出される。
同社は、プロピレン(C3)を抽出した後のC4留分から独自開発のGPB法によって抽出したブタジエンや、その後のC5留分からGPI法によって抽出したイソプレン・モノマー(IPM)ハイボイル・モノマー(HB)ジシクロペンタジエン(DCPD)ブチン-2等を原材料に加工を行い、合成ゴム、合成ラテックスを始めとした各種素材を生産している。
 
 
生産した素材そのものを顧客に販売する素材型ビジネスが中心の「エラストマー素材事業」、素材を同社において一次加工し顧客に販売する部材型ビジネスが中心の「高機能材料事業」、「その他の事業」がある。
 
 
<エラストマー素材事業>
「エラストマー」とは、「ゴムのように弾性に富む高分子化合物の総称」(三省堂 大辞林より)で、合成ゴムがその代表例である。
沿革にあるように同社は1959年に日本で初めて合成ゴムの量産を開始しており、同事業は会社の基盤を支える事業である。
内訳としては大きく、合成ゴム事業、合成ラテックス事業、化成品事業(石油樹脂、熱可朔性樹脂)に分類される。
 
①合成ゴム事業
<製品例:タイヤ>
 
世界トップクラスの品質を誇るタイヤ用合成ゴムを、世界の主要タイヤメーカーに納入している。製造している合成ゴムの種類には、耐摩耗性・耐老化性・機械的強度特性に優れるスチレンブタジエンゴム(SBR)、弾性・摩耗性・低温特性のバランスに優れるブタジエンゴム(BR)、天然ゴムとほぼ同様の特性をもち品質安定性に優れるイソプレンゴム(IR)等がある。
今後はSBRの特性を更に改良した低燃費タイヤ用のS-SBRの需要が急速に拡大すると見込んでおり、これに対応した供給能力増のため、シンガポール工場の第1系列が2013年9月、第2系列も2016年4月に稼働を開始した。シンガポール工場の供給能力は7万トンとなっている。
 
 
自動車エンジンにおいては、ラジエーターホース、フューエルホース、タイミングベルト、オイルシールなどの各部品において耐油性、耐熱老化性に優れた特殊合成ゴムが用いられている。
世界No.1の特殊合成ゴムメーカーである同社はその品質の高さを評価されており、自動車用特殊合成ゴムの中で高いシェアを有している。中でも、タイミングベルト用の水素化ニトリルゴムZetpol®は耐熱性、耐油性、機械的強度特性に優れており、世界シェア約70%を占めている。

また従来品の性能を大きく向上させたZetpol®の新製品を開発した。
これは従来製品比で+15℃も耐熱性を改善させたもので、従来のシール・ガスケット部品の長寿命化に対応できるだけでなく、次世代バイオ燃料を用いたエンジン向けにも需要が拡大すると見込んでいる。さらに、押出加工性が良好であることからホース用途にも展開が広がってきた。顧客の評価も上々で、高価なゴムの代替材を中心として、国内、アジア、欧米で採用が進んでいる。
このZetpol®の新製品は、2012年11月に川崎工場で商業運転が始まり、2013年度より本格稼働を開始した。
 
②合成ラテックス事業
合成ラテックスとは、合成ゴムを水中に分散させた液状ゴムのことで、ゴム手袋をはじめ、紙加工、繊維処理、接着剤、塗料、化粧パフ等に使用される。
化粧用パフ用アクリロニトリルブタジエン(NBR)ラテックスは90%近いシェアとなっている。
 
③化成品事業
C5留分から製品化を行う同社独自のGPI法により粘着テープ・ホットメルト接着剤用素材、トラフィックペイント用バインダー等、幅広い製品化を行っている。
 
<高機能材料事業>
独創的技術である高分子設計や加工技術によって、高付加価値を有した材料・部材を扱っている。
 
①情報用部材
GPI法によってC5留分から抽出、合成されたシクロオレフィンポリマーは、独自技術で開発した熱可塑性プラスチックで、製品としてZEONEX® とZEONOR®がある。
ZEONEX®は高透明性、低吸水性、低吸着性、耐薬品性を活かして、カメラレンズやプロジェクターレンズなどの光学部品、シリンジやバイアルなどの医療用容器に使用されている。
ZEONOR®は高透明性や転写性、耐熱性等を活かし、透明汎用エンプラとして、導光板や自動車部品、容器、ディスクなどの幅広い分野で使用されている。

シクロオレフィンポリマーから、世界初の溶融押出法で開発された光学フィルムがゼオノアフィルム®で、光学特性、低吸水・低透湿、高耐熱性、低アウトガス、寸法安定性に優れ、液晶テレビやスマートフォン、タブレット端末のディスプレイに使用されているほか、今後はデジタルサイネージなど幅広い用途での利用が期待されている。
 
 
また、同社では世界で初めて「斜め延伸位相差フィルム」を開発し、生産している。
有機ELの光反射防止フィルムとしての採用も進んでおり、今後も中小型用フラットパネルディスプレイ向けの需要拡大が見込まれることから、高岡および氷見の2工場(合計 年間生産 1,500万m2)に加えて、福井県敦賀市に新工場が2013年10月に完成した。

他にも、携帯電話、スマートフォン、液晶テレビ用途に代表される、電子デバイス向け塗布型有機絶縁材料ZEOCOAT®がある。
ZEOCOAT®は、透明性が高く、吸水性が非常に低いほか、膜からガス成分を発生しにくいためディスプレイの画質と信頼性の向上を同時に達成することができる。
今後、液晶に比べ薄く成型できる有機ELディスプレイ向けに拡販を積極的に進めるとともに、新しい半導体を用いた薄膜トランジスタやフレキシブルディスプレイ用の絶縁材料での採用を目指している。
 
②エナジー用部材
リチウムイオン電池用材料として負極及び正極、機能層(耐熱セパレータ―)用バインダー、シール剤を供給している。

現在、リチウムイオン電池は携帯電話、ノートパソコンなどのモバイル機器の電源として広く使用されている。
また、スマートフォンの急速な普及により、その高容量化は強く求められている。
さらに、軽量・小型でありながら、大きなエネルギーを蓄えられることから、ハイブリッドカー、プラグインハイブリッドカー、電気自動車向け、スマートグリッドなどの産業電源向けの採用も始まっているが、一方で、高温下で使用した場合、寿命が低下しやすいといった課題があった。

同社は、リチウムイオン電池バインダーの高機能化を進め、正極用バインダーとして寿命の低下抑制に大きく貢献する水系機能性バインダーの開発に成功し、また、リチウムイオン電池の蓄電容量を従来比5~15%上げられる負極用バインダーの製品化にも成功した。
正極・負極・機能層(耐熱セパレータ―)用バインダー及びシール剤はリチウムイオン電池の「安全性」、「寿命」、「電池容量アップ」に寄与し、ハイブリッドカーの普及に貢献するものと考えている。

リチウムイオン電池の将来性に注目し、早くから取り組んできた同社では、エナジー用部材事業の2020年のありたい姿として、「リチウムイオン電池バインダー市場でのトップシェアを維持」するとともに、急速充電など自動車用途でのニーズに応えた新しい材料機能の普及拡大や次世代の新しい電池の実現に向けた機能性材料の提案ができることを目指している。
 
 
③メディカルデバイス
メディカルデバイス市場は、景気の影響が少なく、また日本における高齢化の進行と新興国の市場拡大で成長が見込まれる一方、医療機器の製造・販売会社に対する法的要件が厳格であるほか、薬事承認申請作業が必要で、医療従事者との関係作りが不可欠であること等から参入障壁が高く、魅力的な市場であると同社では考えている。
同社は、1974年に人工腎臓の開発を開始したのを皮切りにメディカルデバイス事業を積極的に推進し、1989年に子会社ゼオンメディカル株式会社を設立し、同社グループ内で開発・製造・販売・薬事のすべての分野における対応が可能な体制を構築している。
消化器系製品では、胆道結石除去用の差別化製品である「オフセットバルーンカテーテル」、国産初の胆管カバードステント「ゼオステントカバード」、また循環器系製品では、急性心筋梗塞時等に心臓の拍動を補助するデバイスとして、世界最細径の「ゼメックス IABPバルーンプラス」など、豊富な開発実績を有している。
 
 
現在注力しているのが、胆道結石による痛みからの解放につなげる結石除去デバイスである。
同社の開発製品であるゼメックスクラッシャーカテーテル、ゼメックスバスケットカテーテルNT、エクストラクションバルーンカテーテルなど、巨大結石から胆泥・胆砂まであらゆる胆道結石を除去できるデバイスをラインアップしており、結石除去デバイス全体で50%のシェア獲得を目指す。
また、2016年3月には、ガイドワイヤータイプとしては世界初の光センサー型FFRデバイスを上市した。光ファイバー型センサーであることから血圧測定のズレが起こりにくい。ガイドワイヤーとしての操作性も高い評価を得ており、2020年には日本国内シェア30%を目指すとしている。
 
④化学品事業
C5留分より得られる原料を活用して食品・香粧品用の合成香料や、特徴ある溶剤及び植物調整剤などの特殊化学品を扱っている。
グリーン系の合成香料では世界一のシェアを有している他、医農薬中間体の原料やフロン代替用途などの溶剤・洗浄剤・ウレタン発泡剤及び機能性エーテル溶剤など、幅広い産業分野に特徴ある製品を供給している。
 
【高機能新規素材開発例 ~カーボンナノチューブ(CNT)~】
積極的な研究開発によって様々な新素材を世の中に送り出してきた同社だが、今後大きな成長が期待されるのが「単層CNT」だ。
 
①単層CNTとは?
1993年、独立行政法人 産業技術総合研究所(産総研)ナノチューブ応用研究センター長の飯島澄夫博士によって世界で初めて蜂の巣上の炭素原子が網目のように結び付いた、筒状分子構造の物質が発見され、「カーボンナノチューブ(CNT)」と命名された。
その構造により、単層CNTと多層CNTに大きく分類できる。多層CNTは比較的生産が容易であることから国内外において実用化への応用開発が推進されている。
 
 
一方、単層CNTは、
「鋼の20倍の強度」、「銅の10倍の熱伝導性」、「アルミの半分の密度」、「シリコンの10倍の電子移動度」など、「軽量かつ高強度でありながら高い柔軟性を持つ」、「電気や熱伝導性が極めて高い」といった、多層CNTを上回る優れた特性を持つ。
例えば、リチウムイオン電池の導電助剤への展開、高い伸縮性や強度を持つことから、電子ペーパーや超薄型タッチパネル用の透明導電膜のほか、放熱材料への利用なども考えられている。また、広帯域の光を吸収できる特性があるため、電磁波吸収材としての実用化研究も進んでおり、エネルギー分野、エレクトロニクス分野、構造材料分野、高機能材料分野等、幅広い場面での応用が見込まれている。
 
 
しかし、従来の単層CNTは、不純物が多く、且つ生産性が低いために、製造コストが高く1g当たり数万~数十万円もしているのが大きな課題であった。
 
②同社の取組み&位置づけ
このような背景の中、低炭素社会の実現というグローバルな社会的要請に応え、日本で発見された数多くの優れた特性を持つ単層CNTを応用した新製品を世界に先駆けて事業化、工業化するための技術の確立に取り組む事を目的として、2010年5月、産総研と同社、日本電気(株)、東レ(株)、帝人(株)、住友精密工業(株)、の5社1法人によって「技術組合単層カーボンナノチューブ融合新材料開発機構」が設立された。
同社と産総研が、「スーパーグロース法」という2004年に産総研畠賢治博士らによって開発された合成技術をベースにして、産総研のつくばセンター敷地内に2010年12月に開設した実証プラントで量産化に向けた研究開発および供給(2011年4月から、産総研より量産品のサンプル供給を開始)を担当し、複合材料の用途開発を上記の研究組合が進めている。
産総研ナノチューブ応用研究センターが量産化のためのパートナーに同社を選定したのは、同社の荒川公平氏(前取締役常務執行役員)がCNT研究開発者として豊富な実績と成果を有していた事が大きな理由だということだ。
また、同組合の理事長が同社会長の古河直純氏であることからもわかるように、単層CNT実用化プロジェクトにおける同社の重要性は大変大きなものである。
 
③今後の展開
スーパーグロース法を基にした量産化技術を確立した同社は、2015年11月、山口県周南市の徳山工場内に量産プラントを竣工させ、世界初の量産を開始した。
単層CNTの量産化技術を確立しているのは世界でも同社のみであり、上記の研究組合に限らず、国内外約100社から問い合わせが来ており、順次サンプル出荷を行っており、同社自らも他社に対し用途提案も行っている。
一方、単層CNTは、ナノ材の一種でありそのサイズが極めて小さい事、形状が繊維状であることから化学的な特性以外に、サイズや形状によって生体への侵入などによる影響があるのではないかという懸念も指摘されている。
現在、産総研を中心に評価手法の標準化、OECDのエンドポイント測定等の取組みが進められており、国際標準化、法規制化が順次行われると考えられている。
 
<その他の事業>
ジシクロペンタジエンを原料とした反応射出成形法(RIM成形法)による大型成形品やRIM配合液を取り扱っている。
 
【特長・強み】
1.世界トップクラスの独創的な技術開発力
C4留分からブタジエンを製造するGPB法は戦後の日本化学史上トップクラスの技術開発であり、アメリカ、韓国を始め世界19か国49プラントに技術供与している。
また、C5留分から高純度のイソプレンや石油樹脂、合成香料の原料などを製造するGPI法も同社オリジナルで、水島工場が世界で唯一の抽出プラントであり、他社には技術供与していないオンリーワンの技術である。

この2つの技術に代表される独創的な技術開発力が同社の大きな強みであり、世界的に高く評価されており、国内外で数々の賞を受賞している。
技術関係では、GPB法、GPI法はもちろんのこと、1960年から現在までに48の賞を、環境・安全関係では1982年から現在までに26の賞を受賞している。
 
2.世界的な高シェア
Zetpol®、ZEONEX®、ZEONOR®に代表される同社の独創的技術から生み出された様々な製品は、世界的に高いシェアを獲得している。
これ以外にも、化粧品や食品フレーバーに使用されるリーフアルコール、化粧用パフ用NBRラテックスなども「世界No.1」製品となっている。
 
3.独創的な技術を生み出し続ける研究開発体制
「特定の得意分野で独創的技術を開発し、世界一事業を創出して社会に貢献する。」との基本理念に基づき、研究開発に取り組んでいる。
主要研究拠点は神奈川県川崎市にある「総合開発センター」だが、製造現場に近いところで研究開発を行うことが効率的であるとの考えから、高岡工場に精密光学研究所およびメディカル研究所を、米沢工場に化学品研究拠点を、徳山工場にトナー研究所を設立した。また海外では、米国および英国に研究グループを有している。

研究員は現状に満足することなく、適度な危機感を保ちつつ、研究にあたっているということだ。また会社も加点主義に基づく評価を行い、スピードと独創性を重視している。
R&D費について従来は対売上高比を基準としていたが、安定的な研究開発を継続していくため、今後は年間120~130億円程度を目途にしていく考えだ。
 
 
2018年3月期第1四半期決算概要
 
 
数量増効果、価格効果で2桁の増収増益
売上高は前期比128億円増収の827億円。数量増効果が+92億円(エラストマー素材 +35億円、高機能材料 +42億円)、価格効果が+38億円(エラストマー素材+42億円、高機能材料 -4億円)。エラストマー素材では輸出向け汎用ゴム、化成品、熱可塑性エラストマーなどが、高機能材料では中小型向けおよび大型向けフィルムが好調だった。
営業利益は同27億円増益の97億円。数量効果+26億円、価格効果が+38億円あったが、国産ナフサ、アジア・ブタジエンの値上がりで原価は28億円の減益要因となった。
経常利益は同87.3%増の108億円。前年同期にあった為替差損15億円が5億円の為替差益に転じた。
 
 
増収・増益。営業利益率は前年同期の10.9%から11.0%へ0.1ポイント上昇した。
ゴムの販売数量は4%の増加。タイヤ向け汎用ゴムの販売数量は同6%の増加。国内はタイヤメーカー各社の稼働率が低調で同6%の減少だったが、海外は、S-SBRが堅調だったことに加え市況も好調で、同14%増加した。
特殊ゴムは同2%の減少。国内は2%増加。海外は3%の減少となった。
特殊ゴムの構成比は数量ベースで2%低下の28%、金額ベースは6%低下の51%だった。
ラテックスは輸出向け手袋材料が好調だった。
化成品も熱可塑性エラストマーが好調だった。
 
 
増収・増益となった。営業利益率は前期の14.1%から5.4ポイント上昇し19.5%となった。
高機能ケミカル部門の売上高増加の内訳は、電子材料が前年同期比14%の増加、電池材料は車載向けが好調で同26%増と大幅に伸長した。化学品は同1%増、トナーも同18%増と回復した。
高機能樹脂部門は同27%増。COP樹脂は同15%増。中国。台湾向けが順調だった。光学フィルムは中小型、大型ともに好調で32%の増加。販売数量はテレビ向け中心に同17%の増加だった。 中小型向けの売上構成比は前年同期の19%から27%に上昇した。
 
 
増収・増益だった。営業利益率は前年同期の5.2%から6.9%へ1.6ポイント上昇した。
 
 
直前期比でも増収・増益となった。
売上高は、数量要因が78億円のプラス、価格要因、為替要因がそれぞれ15億円、5億円のマイナスだった。
営業利益は数量要因、原価要因がそれぞれ18億円、8億円のプラス。価格要因、為替要因がそれぞれ15億円、5億円のマイナス。エラストマー素材の減益は、原料高が要因。
 
 
 
棚卸資産の減少により流動資産は前期末に比べ60億円減少。株価上昇による投資有価証券評価額の増加などにより固定資産合計は同16億円増加。資産合計は同43億円減少した。
買入債務および長短有利子負債がそれぞれ同99億円、9憶円減少するなどして、負債合計は同118億円減少した。
利益剰余金およびその他有価証券評価差額金の増加により、純資産は同75億円の増加。この結果自己資本比率は60.8%と前期末より2.4ポイント上昇した。
 
 
2018年3月期業績予想
 
 
 
業績予想に変更無し。増収・減益
業績予想に変更は無い。18年3月期の売上高は前期比24億円、0.8%増加の2,900億円の予想。エラストマー素材、高機能材料共に堅調、
営業利益は同18億円、5.7%減少の290億円の予想。電池材料、光学フィルムが堅調な高機能材料は増益だが、価格低下などによりエラストマー素材は減益となる。経常利益、当期純利益はそれぞれ同18億円、32億円減少の300億円、200億円の予想。配当は前期比1円増配の17.00円/株。予想配当性向は18.9%。
 
 
今後の注目点
両事業とも2桁の増収増益で進捗率も売上、利益とも3割近辺と好調なスタートとなった。
現時点で為替は想定よりも円安傾向であり、市況も国産ナフサは想定を上回っている。値上げの浸透など、今後の製品価格動向が注目される。
 
 
 
<参考:新中期経営計画 SZ-20 PhaseIII>
 
(1)概要
今期を初年度とする4年間の「新中期経営計画 SZ-20 PhaseIII」を策定した。

「2020年のありたい姿 ~化学の力で未来を今日にするZEON~」実現のための最終ステージと位置付け、下記の様なビジョンを掲げている。
 
ZEONは地球環境に配慮した製品とサービスの組み合わせによるソリューションの提供を通じて、お客様の夢と快適な社会の実現に貢献し続けます。

わたしたちはその使命を果たすために、信頼のできる仲間、仲間に信頼される自分、という『仲間との相互信頼』に基づく明るく風通しの良いゼオンらしさを大切にしつつ、『スピード』『対話』『社会貢献』の3つを重要な価値観として行動します。

わたしたちはこの価値観に基づいた行動の実践によって、ZEONブランドが一味違う優れたものとして、世界中のお客様や社会に広く認知され、賞賛を受けていることに感謝と感動をしながら、胸を張って誇りに思える会社にしていきます
 
今回から「ソリューション」というキーワードが挿入された。

2020年度連結売上高は5,000億円以上を目標としており、前回中計時と変更はない。
 
<環境予測>
成長の主戦場は海外であり、環境問題、人口増、自動車の変化、IoT進展などがキーワードとなる。
中でも、2040年ごろまで内燃機関搭載車が拡大する一方、温室効果ガス削減要請の高まりの中で、EV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド車)の構成比も上昇してくると予想され、特殊ゴム、エナジー材料共に事業機会が拡大すると考えている。
 
 
企業風土は極めて重要な要素と認識している。
 
 
 
①エラストマー素材事業
◎S-SBR:探索
技術・生産のシナジー効果で世界のリーディングポジションを目指す.
住友化学と日本ゼオンは2017年4月にS-SBR生産販売のための合弁会社「ZSエラストマー」を設立した。
両社のポリマー変性技術および生産技術を組み合わせ、自動車の軽量化とともに待望されているタイヤの「ウェットグリップ性」「低燃費性」「耐摩耗性」の向上を実現する。
2017年の生産能力は約17万3千トンとなる。
 
◎特殊ゴム:ソリューション
技術サービスの強化を目的にATSL(Asia Technical Support Laboratory :アジア技術サポートラボラトリー)をシンガポールに開設し、7月より営業を開始する。
ATSLは内燃機関搭載車の成長が見込まれるASEAN、インドエリアをカバーする拠点であり、これにより日本、欧州、中国に加え成長市場をカバーする体制を構築する。
 
◎ラテックス事業:新事業創出、新製品開発を加速
成長する作業用手袋市場において新製品で販売の拡大を目指す。世界の作業用手袋市場は年率5~7%で成長しており、同社は耐摩耗性を高めた作業手袋用ラテックスの販売を、今後2020年までに年率24%で伸ばす計画だ。
 
◎SIS/石油樹脂:深化
製品の差別化を達成しながら事業規模拡大を目指す。
石油樹脂については、同社独自技術による水添化設備導入し、2017年7月の稼働を予定している。
SISについては、非対称SISの更なる市場展開によって、エラスティックフィルム、粘着ラベルなど、SISの活躍出来るフィールドを拡大させる。
 
◎PSC(パウダースラッシュコンパウンド):ソリューション
日本、中国、メキシコの3拠点体制で拡大する市場に対応する。
生産能力は日本 2,000トン、中国 2,400トン。メキシコ工場の生産能力は2017年6月本格稼働予定の第1期で1,200トン、2020年稼働予定の第2期で1,200トンとなる。同社では2020年には2017年比約1.8倍のグローバルベースでの販売を計画している。

パウダースラッシュコンパウンド(PSC)はPVCを原料とするスラッシュ成型用コンパウンドで、意匠性、成形加工性、低温特性に優れており、自動車の内装パネルなどに用いられている。
 
②高機能材料事業
◎COP:ソリューション
医療・バイオテクノロジー分野へのCOPの展開を図り、マイクロ流路チップなど試作受託サービスを開始する。
基板の成形から流路切削加工、接合まで ワンストップで受託することで、 低コスト・短納期・小ロットでのサンプル製作を実現する。
 
◎ゼオノアフィルム:深化
液晶パネル市場は面積ベースで拡大が続いているが、今後はOLED(Organic Light Emitting Diode/有機発光ダイオード)TV市場における大型化の進展が見込まれている。高画素・大画面 TV向け需要の大きいゼオノアフィルムについて、新規位相差フィルムの開発を軸に、タッチセンサー用基材の開発やフォーダブル対応を進め、OLED市場の成長を取り込んでいく。
 
◎エナジー用部材:ソリューション
製品群を更に充実させ、事業を拡大する。
同社の電池材料売上高は、リチウムイオン電池の容量増加に伴い前中計期間中計画を上回る実績を残してきた。
世界の主要自動車メーカーは今後EV(電気自動車)およびPHV(プラグインハイブリッド車)の販売台数を拡大させる計画で、販売台数合計は2016年の72万台が2020年には400万台にまで急成長すると同社ではみている。
安全性、長寿命、高出力を実現する部材の採用を積極的に推進する。
 
◎メディカルデバイス:新事業創出、新製品開発を加速
FFRデバイス、胆石除去・消化管ステント事業を拡大させる。2020年のメディカルデバイス売上は2016年比 2倍強まで伸ばす計画だ。

循環器系では、前期より販売を開始した光センサー型FFRで、精度を高い信頼性を武器に2020年市場シェア30%を目指している。
(FFR とは冠血流予備量比のことで、冠動脈内に狭窄病変があるとき、狭窄病変によって どのくらい血流が阻害されているかを推測する指標)

消化器系では、低侵襲デバイスの提供に注力する。
胆石除去(ERCP)は、:2017年度に新製品を上市する予定。消化管ステント:は2017、2018、2019年度に新製品を上市予定だ。
 
◎カーボンナノチューブ:新事業創出、新製品開発を加速
量産化が始まったCNT(カーボンナノチューブ)は、高機能化が進むサーバーやパワーデバイスなどの熱問題の解決に貢献すると考え「ZEONANO SG101」とゴムを複合した高性能なシート系熱界面材料の開発に取り組んでいる。
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2017年7月5日に提出している。
 
 
 
 
<付属:Fact Sheet>