ブリッジレポート
(6044) 株式会社三機サービス

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ブリッジレポート:(6044)三機サービス vol.3

(6044:東証1部) 三機サービス 企業HP
中島 義兼 社長
中島 義兼 社長

【ブリッジレポート vol.3】2017年5月期業績レポート
取材概要「大幅な増収増益となったが期末に課題を残した2017年5月期であった。特に安定収益源である空調機器メンテナンス事業において第4四半期(3-5月)は売・・・」続きは本文をご覧ください。
2017年10月17日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社三機サービス
社長
中島 義兼
所在地
兵庫県姫路市阿保甲576-1
決算期
5月末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2017年5月 8,777 538 533 360
2016年5月 6,617 394 357 251
2015年5月 5,897 366 359 213
2014年5月 5,481 295 289 164
2013年5月 5,419 144 149 166
株式情報(10/10現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,513円 5,589,285株 8,456百万円 23.1% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
23.00円 1.5% 74.61円 20.3倍 303.58円 4.6倍
※株価 10/10終値。発行済株式数は直近期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。
 
株式会社三機サービスの2017年5月期決算概要などをお伝えします。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
メーカーサービス指定店としてパナソニックグループ製大型空調機器のメンテナンスや設備更新、改修工事などを手掛ける「空調機器メンテナンス事業」と、パナソニックグループ製製品に限らず、店舗や各種施設を対象に空調設備、厨房機器、冷凍・冷蔵設備等のメンテナンスを一括して行う「トータルメンテナンス事業」を展開。高い技術力、安定したストックビジネスなどが大きな強み。空調機器メンテナンス事業の安定した成長をベースに、トータルメンテナンスサービス事業の拡大と収益性向上を目指している。
 
【1-1 沿革】
大型空調機販売の全国展開を目指していた三洋空調システムサービス株式会社(現パナソニック産機システムズ株式会社)が、各地域における据付・組立・試運転及び保守管理業務を委託するメーカーサービス指定店を探していた中、1976年10月、株式会社兵庫機工が機械事業部の事業の一環として業務を受託する事となった。
1977年7月には、株式会社三機サービスを設立し、「空調機器メンテナンス事業」を本格的にスタートさせた。
三洋空調システムサービスの大阪センター事務所内に三機サービスの大阪センターを開設するなど、当初から両社の関係は強固なものであったことに加え、事業展開をスピーディーに進めたい三洋空調システムサービスのニーズに的確に対応し、社員の積極採用や技術訓練を含めた教育の充実など体制作りに注力したこと等を高く評価され、大阪地域以外での受託も行う事となり、1977年10月東京センター、1978年4月名古屋センターを相次いで開設し、東名阪での事業展開が加速した。
その後、神戸、札幌にも事業所を開設し、全国展開を進めていく。1998年9月には中国上海市に空調機器の保守・メンテナンス業務を目的とした上海三機大楼設備維修有限公司を設立した。
一方、2000年9月には24時間365日対応のコールセンターを開設。現在のもう一つの事業である「トータルメンテナンス事業」の全国展開を開始した。2012年2月には中国でのトータルメンテナンス事業を加速させるため上海市に24時間365日対応のコールセンターを開設。
2015年4月に東証JASDAQ市場に上場。2016年4月に東証2部へ、2017年4月には上場2年で東証1部へ市場変更となった。
 
【1-2 企業理念など】
 
この他、顧客からの「信頼を築く5つの行動」として、「約束」、「挨拶」、「対話」、「若さ」、「技能」を掲げている。
 
【1-3 市場環境など】
後述するように、空調、冷暖房、厨房などの各種機器を用いる飲食店、小売店においてはデフレ環境下、売上の大幅増が期待しがたい中で、競争を勝ち抜くためにはコスト管理が最重要ポイントとなる。
特にチェーン店化を進めている場合、各機器を全国規模・同一基準で管理することによるトータルコストの削減へのニーズが強い。
同社ではトータルメンテナンス事業の市場規模を約3兆円(※)と推定しており、この巨大市場の開拓を積極的に推進していく考えだ。
※主要顧客3業態(飲食、流通、娯楽関連)の全国チェーン売上高の3%をメンテナンスコストと仮定
 
主な同業他社としては、上場企業では日本空調サービス株式会社(4658、東証1部)、シンプロメンテ株式会社(6086、東証マザーズ)などがあり、非上場企業も数社が競合となっている。トータルメンテナンス事業においては機器メーカーのサービス部門等も競合となる。
これら競合に対し同社は、「24時間365日対応のコールセンターの充実」、「全国緊急対応が可能」、「WEBを含めたシステム化が先行」、「メーカーの機種を問わず対応が可能」といった点が強みであると自己分析を行っている。
 
 
【1-4 事業内容】
1.セグメント
同社の事業は「空調機器メンテナンス事業」、「トータルメンテナンス事業」の2セグメントで構成されている。
 
 
①空調機器メンテナンス事業
パナソニックグループにおいて業務用設備機器およびシステムの販売・施工・サービスを担っているパナソニック産機システムズ株式会社のメーカーサービス指定店として、同グループが製造・販売した納入先において業務用大型空調機器等の定期点検、修理対応を行っている。
近年では大型空調機器に付随した省エネインバータ化工事(※)、大型空調機器以外の電気設備や給排水衛生設備などのメンテナンスも手掛けるほか、大型機器のリニューアルなど事業領域を拡大している。
 
 
※インバータ化工事
空調機器に使われるポンプはモーターの回転で水を循環させている。モーターは電気が流れると常にフル回転しているが、循環する水量が多すぎる場合もある。そこでモーターの回転速度を制御する装置「インバータ」でモーターの回転数を減らして水量を調整すると、モーターの消費電力が下がり節電となる。インバータを空調機器に取り付ける工事をインバータ化工事という。
 
こうした事業の性格上、同事業の顧客は基本的に、パナソニック産機システムズの1社となる。
空調機器管理は、メーカーグループ内の機器管理会社が複数のメンテナンス業者にメンテナンスを委託する形となっており、各メーカー間には技術と機器の壁があるため新規参入がほぼないニッチな業界である。
 
 
同社の全国シェア(パナソニック産機システムズの社内シェア)は約20%でNo.1。東名阪に限れば約4割となっている。沿革でも触れたように早い時期からパナソニックグループ製の空調機器メンテナンスを手掛けたことでパナソニックグループとの関係が強固であることに加え、パナソニック系空調機器メンテナンス会社の中で従業員250名以上の規模は同社のみであり、全国規模でメンテナンスを手掛けることができるのは実質的に同社のみであること等がシェアNo.1の背景である。
メーカーは技術力の高さや効率性などの観点から実績のある大企業に管理を集中する傾向があるため、同社ではメンテナンス技術を更に磨き上げて、断トツのトップシェア確保を目指している。

トップシェアであることは事業の安定性のみでなく、新たなビジネス展開にも繋がっている。
空調機器管理の現場では提案の機会を同社がほぼ独占しているため、例えば前述の省エネインバータ化工事においては、現場の調査、効果の試算と導入提案、工事、アフターケアまでワンストップでサービスを提供することができる。大手リース会社との提携により初期投資負担無く最新のインバータ機器を導入することができるため、エンドユーザーは大きな節電効果を得る事が可能である。また同社も電力節減量に応じた成果報酬という新たな収益を得る事となる。さらに、この省エネ提案をもう一つの事業、「トータルメンテナンス事業」において展開することで、より大きな事業機会を獲得することができると考えている。

メンテナンスに携わるスタッフはほぼ全員が同社社員であり、徹底した社員教育により技術力の更なる高度化およびノウハウの蓄積を進めている。
 
②トータルメンテナンス事業
空調機器メンテナンス事業で培った技術を活かして更に大きな市場での事業展開を目指していくのがトータルメンテナンス事業である。
 
 
主な顧客である飲食業、小売業のチェーン店等を対象に、空調機器・厨房機器・冷凍冷蔵設備・電気設備・給排水衛生設備・消防設備等の保守・管理業務をメーカーや機器品種問わず一括してメンテナンスを請け負っている。

飲食・小売業界では長引くデフレ環境の下、資金力やスケールメリットで優位に立つチェーンストアがそのシェアを拡大している。しかしチェーンストアにおいても売上の急拡大は難しく、競争を勝ち抜くためにはコスト管理が最重要課題となっている。
通常チェーン本部は、各チェーン店舗ごとおよび、各機器ごとに店舗のある地域の業者に修理や点検、トラブル対応を依頼している。

これに対し同社ではチェーン本部と一括契約をすることにより各機器の全国規模での同一基準による管理を提供している。
 
 
これに加え、24時間365日対応のコールセンターによる即応体制、Webサイトを活用した修理報告のほか、機器の使用状況・経年劣化の状況等のデータから導き出したリスク予測フォーマットのリアルタイムでの提供なども行っており、トラブルで営業を止めるわけにはいかない飲食・小売業のニーズに的確に対応している。
単純な修理や故障対応にとどまらず、こうした対策予防メンテナンスまで含めた、アウトソーシングの活用による費用低減のみではない「トータルコストの最適管理」を提供できる点が同社の強みであり、経営資源を重点分野に集中させたい顧客企業から高い評価を得ている。

全国9拠点に在籍する同社メンテナンスエンジニアに加え、メンテナンス業務委託先であるパートナーが顧客店舗へ赴き作業にあたる。売上高に占める内製化比率(自社社員による対応)は約2割。
内製化比率の向上が課題であると会社側は認識している。
 
≪トータルメンテナンス事業における提案例≫
【事例1.大手コンビニエンスストアチェーンに対する空調メンテナンス一括管理提案】
  対象店舗数:約19,000店舗
  対象エリア:全国
  受付体制:24時間365日
 
(ヒアリングを通じた顧客の現状および課題)
従来は専門ではない業者に委託していたが、空調トラブルが減らず逆に増加傾向にあった。
蓄積されるデータが活用されず、改善に活かせていなかった
 
こうした状況に対し、同社では以下の提案を行った。
 
空調の定期洗浄・定期点検を実施することで、突発修理の低減を図ることができる。
空調に強い同社が管理することで、データを活かした改善提案が可能である。
 
【事例2.日本最大級の大手中食(お弁当)チェーンへコールセンター修理受付提案】
  対象店舗数:約3,000店舗
  対象エリア:日本全国
  受付体制:24時間365日
 
(ヒアリングを通じた顧客の現状および課題)
本部の管理負担が大きくなり、間接コスト(人件費)が増加している。
メンテナンス業者が複数あり、一括で管理できていないため修理総額が大きい。(スケールメリットを活かせていない)
店舗数の増減による人件費のコントロールが難しい。
十分な手配体制が無く、休日、夜間の機器修理に対応できておらず、機会損失の不安がある。
店舗や機器ごとに、修理業者が違うため、情報の集約や情報活用ができない。
 
こうした状況に対し、同社では以下の提案を行った。
 
メンテナンス業務を一括で代行することにより、機器の修理履歴を収集できるため、消耗品や他店舗で同機種の機器故障傾向などを予測することができる。
メンテナンス業務を、全て同社にアウトソーシングすることで、店舗数の増減による管理人員の変更が不要となる。
報告書や請求書の管理をWEBシステムにより容易に行うことができる。
24時間365日対応可能なため、緊急トラブルも即対応が可能で、機会損失を防ぐことができる。
 
 
(解決後の状況)
WEBシステムの履歴管理機能により、消耗品交換の計画をたてることができ、予算の把握が可能になった。
各店舗のメンテナンス進捗の状況を専用ページからWEBシステムでいつでも見ることができるため、顧客企業の部署内において各店舗状況を効率良く共有できるようになった。
メンテナンス管理業務の効率が改善され、人材を開発等のコア部門に集中、専念させることが可能になった。
消耗品劣化によるトラブルを未然に防ぐことができ、緊急トラブルが少なくなった。
 
【事例3.店舗数20店舗以上の菓子メーカーへの省エネ提案】
(ヒアリングを通じた顧客の現状および課題)
もともと、コスト意識が高く、削減する箇所と機会をさがしていた。
年間冷房で24時間稼働しているため、その稼働コストの削減が見込めた。
 
そこで同社は、「24時間稼働している空調機器(吸収冷温水機)にインバータ制御システムを組み込むことで電力調整が可能となるため、大幅なコスト削減ができ、3年で設置費用の回収が実現できる。」との提案を行った。
 
 
(解決後の状況)
1年目の計画数値が試算通りの数値となり、3年での投資回収が見込めたため、2台目の取り付けを行った。
※24時間稼働させる場合の回収期間。
 
【事例4.食品スーパー大手に対するFM(ファシリティマネジメント)提案】
  対象店舗数:約60店舗
  対象エリア:関西エリア
  受付体制:24時間365日
 
(ヒアリングを通じた顧客の現状および課題)
本部の管理負担が大きくなり、間接コスト(人件費)が増加している。
メンテナンス業者が複数あり、一括で管理できていないため修理総額が大きい。(スケールメリットを活かせていない)
十分な手配体制が無く、休日、夜間の機器修理に対応できておらず、機会損失の不安がある。
店舗や機器ごとに、修理業者が違うため、情報の集約や情報活用ができていない。
設備担当部門社員の高齢化が進み、今後の体制に不安がある。
 
こうした状況に対し、同社では以下の提案を行った。
メンテナンス業務を一括で代行することにより、機器の修理履歴を収集できるため、消耗品や他店舗で同機種の機器故障傾向などを予測することができる。
警備・メンテナンスを含めた店舗管理業務を、全て同社にアウトソーシングすることで、本部負担の軽減となる。
 
【1-5 特長と強み】
◎安定したストックビジネス
空調機器メンテナンス事業は、顧客が基本的にはパナソニック産機システムズ1社のみであるため急速な成長を望むことはできないが、定期点検や修理等、安定した売上の拡大を見込むことができる。また新規参入による価格競争が起こる可能性も低く、安定した利益率を維持している。
 
◎高い技術力
前述の様に空調機器メンテナンス事業においてはメンテナンスに対応するスタッフはほぼ100%が同社社員であるため、実地研修やOJTによる社員教育を徹底して実施することができる。
これにより技術力のブラッシュアップ、ノウハウの蓄積が進んでおり、空調メンテナンス事業のみならず、今後の更なる拡大を目指しているトータルメンテナンス事業においても同業他社に対する大きな競争優位性となっている。
 
 
利益が着実に積み上がっているためレバレッジは低下しているが、売上高当期純利益率の上昇を主要因に、ROEは再び20%台に乗せた。
今期の予想売上高当期純利益率は4.17%であり、引き続き高いROEを維持しよう。
 
 
2017年5月期決算概要
 
 
増収増益。期初計画も超過し過去最高を更新。
売上高は前期比32.6%増の87億77百万円。売上の約6割を占めるトータルメンテナンス事業が、大手スーパー向けFM(ファシリティマネジメント)事業のフル寄与に加え、大手コンビニ向け全国空調一括メンテナンスを受託したことで大きく伸びた。
増収により粗利額も増加したものの、空調機器メンテナンス事業で利益率の高い案件が減少したため粗利率は約2ポイント低下した。
営業利益は同36.7%増の5億38百万円と大きく増加。大型案件の受注に伴い人件費など販管費も増加したが粗利増で吸収した。期初計画を売上、利益とも上回り、過去最高を更新した。
業績好調なため、配当は前期比5円増、従来予想比4円増の20円/株とした。
 
 
◎空調機器メンテナンス事業
微増収・増益
大型空調機器を中心としたメンテナンスを行う一方、パナソニック産機システムズ株式会社から年間保守契約に基づき受託する定期点検、修理対応を主軸とし各種トラブルを未然に防止する保全メンテナンスにも注力した。
メンテナンスを行うサービスエンジニアを専属営業として空調機器本体だけでなく大型空調機器に附随する設備メンテナンスや既存空調機器更新工事、ポンプのインバータ化による省エネ提案を行った。
メーカー内シェアは若干の上昇となった。
ただ、第4四半期に限ると、気候要因などにより顧客からの依頼がやや低調で売上が想定に達しなかったため営業利益は前期実績および期初計画を下回った。
 
◎トータルメンテナンス事業
大幅な増収・増益
24時間365日稼働のコールセンターを核としたサービスを、多店舗・多棟に展開している飲食業、小売業、イベント施設、医療・介護・福祉施設等の幅広い業界をターゲットとして日本全国で展開した。
上場による認知度向上や全国エリア対応、メンテナンス範囲の拡大を強みとして管理コストの見直しを進めている企業の需要を掘り起こすことに注力した結果、大型食品スーパー(2016年4月取引開始)、大手コンビニエンスストア(同年10月取引開始)など大口案件が増加している。
また、業務範囲を警備業などのファシリティマネジメント分野に拡大したことも増収に寄与。加えて定期メンテナンスの売上構成比上昇により利益率も上昇した。
一方、大手コンビニ向けメンテナンス対応のための体制づくりに注力した結果、第4四半期の空調メンテナンス受注量は減少し、営業利益は計画を下回った。

両事業における上記のような要因により、第4四半期は営業減益となり、営業利益率も16年5月期第4四半期を下回った。
この課題に対し、同社では後述のように今期より組織体制を営業本部とメンテナンス本部から構成される「機能別組織」に変更し、生産性の向上を図る考えだ。
 
 
 
現預金、売掛金の増加で流動資産は前期末に比べ3億71百万円の増加。固定資産はほぼ変わらず、資産合計は同3億75百万円増加の34億72百万円となった。
工事未払金の増加などで負債合計は同1億円増加の17億74百万円となった。
利益剰余金の増加などで純資産は同2億75百万円増加の16億97百万円となり、自己資本比率は前期末より3.0%上昇し48.9%となった。
 
 
税金等調整前当期純利益の増加などで営業CFのプラス幅は拡大した。
有形固定資産の取得額の減少等で投資CFのマイナス幅は縮小。フリーCFはプラスに転じた。
配当金支払額増加などで財務CFのマイナス幅は拡大した。
キャッシュポジションは上昇した。
 
(4)トピックス
◎東証1部に指定
2015年4月東証JASADAQ上場、2016年4月東証2部へ市場変更を経て、2017年4月、同社株式が東京証券取引所市場第一部に指定された。
 
◎組織体制を大幅に変更
今期より事業部単位で営業、メンテナンス機能を保有する「事業部制組織」から、営業本部とメンテナンス本部から構成される「機能別組織」に変更することとした。

流動的にサービスマンを活用し多能工化の推進力を高めることに加え、営業担当者間での情報共有を活性化し対応力を高めることを通じて生産性の向上を目指す。
 
 
◎研修体制の充実
今期の新入社員12名に対する研修から、従来は約2年間かかっていた技術取得期間を1年間に短縮するプログラムを実施。
3か月の研修で一人当たり年間75万円の生産性向上を見込むことができる。

従来のOJT中心の研修制度の場合は、業務内で顧客所有の機器を使用するため、何時でも研修・教育を行うわけにはいかず、空調機器であれば2シーズン(2年間)を経て一通りの研修が終了するという段取りであったが、2016年に完成した本社研修施設では短期間に集中的に研修を実施することが可能であり、他には類を見ない同社の研修設備は社員の戦力化につき大きな力を発揮することとなる。

次のステップでは、点検以外の修理・工事など多能工化のための研修プログラムを作成し、更なる生産性の向上を目指す考えだ。
 
 
◎同社ならではの商品企画を推進
トータルメンテナンスにおいて優れたノウハウを有する同社ならではの付加価値提供の事例が見られた。

FM事業において、ある顧客が海外メーカーの厨房設備を使用していた。
顧客はこの海外メーカー製機器の持つ機能を評価し使用してきたが、メンテナンスを十分に受けることができず、トラブルが発生した際に支障をきたしていた。
そこで同社では国内メーカーにこの顧客仕様の試作品の製作を依頼し、現在テスト導入が検討されている。
この事例は多くの顧客設備のメンテナンスを行っている同社ならではの商品企画であり、今後も幅広い技術とノウハウを活用して顧客の資産管理に貢献していく考えである。
 
 
2018年5月期業績予想
 
 
引き続き2桁の増収増益を見込む
売上高は前期比13.9%増の100億円の予想。引き続き堅調なトータルメンテナンス、省エネ工事需要を取り込む。
営業利益は同16.9%増の6億30百万円を見込む。生産性の向上および販管費のコントロールを進め、営業利益率は0.2%上昇する。配当は前期より3円/株増配の23.00円/株を予定。予想配当性向は30.8%
 
 
組織体制変更の影響により、上期は減益を見込んでいる。
 
 
今後の取り組み
 
(1)事業の方向性
安定してキャッシュを生み出すメーカーメンテナンスにおいてはメーカー内シェアの拡大を目指し事業基盤を更に強固なものにする。

「コンビニ向け空調一括メンテナンス」、「中規模店舗向けファシリティマネジメント」を成長分野と位置づけ、研修体制など投資を強化しシェアアップを目指す。
コンビニ向け空調一括メンテナンスのために全国で約60社のパートナーを獲得することができた。技術レベル、対応力などの点で問題はなく、今後他のコンビニチェーンへの横展開を進めるための基盤を構築することができた。

同社は収益性向上のために自社スタッフでメンテナンスを行う「内製率」の向上を目指してきたが、当面はトップラインのさらなる成長を優先することとした。
ただ、顧客数及びボリュームが拡大すれば、例えば作業現場への移動距離が短くなるなど効率性の向上も見込まれるため、内製化率の低下が収益性の低下に必ずしも結び付く訳ではない。
加えて、前述のように研修制度を充実させて、新入社員の早期戦力化やメンテナンス要員の多能工化を推進し、引き続き生産性の向上を目指す考えだ。

ESCO事業(※)を含めた省エネ分野は引き続き成長が見込まれる有望市場であり、省エネ効果の検証結果をしっかりと示すことにより顧客の信頼を獲得し、収益拡大を目指す。
 
(※)ESCO事業:省エネルギーに関する包括的なサービスを提供し、省エネルギー効果の保証等により顧客の省エネルギー効果の一部を報酬として受取るもの。
 
 
(2)重点項目
① 顧客に対し機会損失を避けるために突発修理対応ではなく定期メンテナンス実施へとコスト構造の転換を促す。そのために、定期点検後の修理発生分析や効果分析ツールを拡充させる。
② 顧客の予算に合わせ、インバータ、補助金、ESCO等を活用した省エネビジネスを拡大させる。
③ エンジニアの短期育成・多能工化を推進する。高利益率・多能工のエンジニアを育成するための研修センターを活用し、新人のみでなく2年目以降も研修を実施する。また、研修プログラムのデジタルコンテンツ化を進め、将来的には海外でも活用する。
④ 女性が活躍する会社を目指し、女性採用の活性化を進める。女性メンテナンス部隊の構築に取り組み、エステ業界など、女性ならではの活躍の場を創出する。
⑤ ITシステムを強化する。ファシリティマネジメント、海外展開を見据えた、次世代トータルメンテナンスシステムの開発を進める。分析力や提案力の向上、多言語化対応により競争優位性をより強固なものとする。
 
(3)中期・長期成長イメージ
安定的な成長と高い収益性を有する「メーカーメンテナンス」をベースに、成長性の高い「トータルメンテナンス」、「海外ビジネス」を積極的に展開し、成長を加速させる。国内トータルメンテナンス事業を中心に早期の売上高200億円達成を目指し、その後、500億円の実現を目指していく。

中国ではトータルメンテナンスが着実に拡大している。顧客層は従来の日系企業に加え、現地企業や外資系企業へと広がりを見せている。
ASEANに関しては、シンガポール、台湾、タイ、ベトナム、マレーシアの5か国を対象に市場調査を行っている。
営業、メンテナンス両面に関してのパートナーの選別を進めており、2018~2019年の進出を目指している。
 
 
 
今後の注目点
大幅な増収増益となったが期末に課題を残した2017年5月期であった。
特に安定収益源である空調機器メンテナンス事業において第4四半期(3-5月)は売上、利益ともに前期実績及び計画に達しなかった点はやや気になるところではある。課題克服のための組織体制の大幅変更がスムーズに機能を発揮するのかを注目したい。
一方、トータルメンテナンスは想定通り成長を加速し始めているようで、今後の更なる案件受注が期待される。
当面は内製化率の向上よりもトップライン拡大を優先する経営方針へ舵を切ったが、内製化率の低下がイコール収益性の低下を意味するものではない点には留意しておきたい。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書(最終更新日:2016年9月13日)