ブリッジレポート
(6498) 株式会社キッツ

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ブリッジレポート:(6498)キッツ vol.31

(6498:東証1部) キッツ 企業HP
堀田 康之 社長
堀田 康之 社長

【ブリッジレポート vol.31】2018年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「バルブ事業では、北米で若干明るさが出てきたようだが、厳しい状況に変わりはなく、欧州は米国以上に厳しいようだ。利益面では、銅相場の高・・・」続きは本文をご覧ください。
2017年12月05日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社キッツ
社長
堀田 康之
所在地
千葉市美浜区中瀬1-10-1
決算期
3月末日
業種
機械(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2017年3月 114,101 8,929 8,799 5,400
2016年3月 117,278 7,245 7,300 4,915
2015年3月 117,036 6,886 7,581 6,881
2014年3月 117,355 6,470 6,501 3,564
2013年3月 111,275 6,558 6,521 4,039
2012年3月 108,446 4,638 4,388 2,480
2011年3月 106,059 6,341 5,929 3,063
2010年3月 96,592 6,976 6,248 3,079
2009年3月 127,095 7,188 6,475 3,396
2008年3月 149,274 11,615 10,525 6,290
2007年3月 149,512 11,342 10,652 9,973
2006年3月 107,631 9,673 9,132 8,070
2005年3月 95,705 9,627 8,513 5,804
2004年3月 73,802 4,181 2,962 1,598
株式情報(11/10現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
900円 100,027,251株 90,025百万円 7.3% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
16.00円 1.8% 62.94円 14.3倍 749.77円 1.2倍
※株価は11/10終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
キッツの2018年3月期上期決算と通期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
バルブを中心とした流体制御機器の総合メーカー。バルブ事業では、国内トップ、世界でもトップ10に入る。バルブは、青銅、黄銅、鋳鉄、ダクタイル鋳鉄(強度や延性を改良した鋳鉄)、ステンレス鋼等、用途に応じて様々な素材が使われ、同社は素材からの一貫生産(鋳造から加工、組立、検査、梱包、出荷)を基本とする。国内外の子会社32社とグループを形成し、子会社を通して、バルブや水栓金具、ガス機器などの材料となる伸銅品の生産・販売(伸銅品でも国内上位のポジションにある)の他、ホテル事業等も手掛けている。
 
【企業理念  -キッツは、創造的かつ質の高い商品・サービスで企業価値の持続的な向上を目指します-】
「企業価値」とは「中長期的な株主価値」であり、「中長期的な株主価値」の向上には、顧客の信頼を得る事によって利益ある成長を持続していく必要がある、と言うのが同社の考え。そして、企業価値を向上させる事により、株主をはじめとして、顧客、社員、ビジネスパートナー、社会に対して様々な形で寄与し、豊かな社会づくりに貢献していきたいと考えている。
同社は、これらの思いを「キッツ宣言」に込め、更なる飛躍を目指している。
 
キッツ宣言
キッツは、
創造的かつ質の高い商品・サービスで企業価値の持続的な向上を目指し、ゆたかな社会づくりに貢献します。
KITZ’ Statement of Corporate Mission
To contribute to the global prosperity,
KITZ is dedicated to continually enriching its corporate value
by offering originality and quality
in all products and services.
 
行動指針(Action Guide)
Do it KITZ Way
・ Do it True(誠実・真実)
・ Do it Now(スピード・タイムリー)
・ Do it New(創造力・チャレンジ)
 
Do it True
人と人との関係で忘れてならないのが誠実に対応する心。また、表面的なものでなく物事の本質を追い求める心も必要。この基本を忘れる事なく企業活動を進めるための合言葉。
Do it Now
情報をいち早くキャッチし、迅速な意思決定と確実に実践していく躍動的な社員像を表現した言葉。
Do it New
変化に対応するために従来の発想から抜出して秘められた創造力を発揮し、新しい事にチャレンジする社員像を表現した言葉。
 
【事業セグメントの概要】
事業は、バルブ事業、伸銅品事業及びホテル・レストランの経営(ホテル事業)等のその他に分かれ、17/3期の売上構成比は、それぞれ80%、17%、3%。
 
バルブ事業
バルブは、配管内の流体(水・空気・ガスなど)を「流す」、「止める」、「流量を調整する」等の機能を持つ機器で、ビル・住宅設備用、給水設備用、上下水道用、消防設備用、機械・産業機器製造施設、化学・医薬・化成品製造施設、半導体製造施設、石油精製・コンビナート施設など様々な分野で使用されている。同社は、鋳物からの一貫生産を特徴とし(日本で最初に「国際品質保証規格ISO9001」の認証を取得した)、住宅・ビル設備等の建築設備分野に使用され、耐食性に富む青銅製や経済性に優れた黄銅製の汎用バルブ、或いは付加価値の高いボールバルブ等の工業用ステンレス鋼製バルブと言った主力商品で高い国内シェアを有する。

販売面では、国内は主要都市に展開する販売拠点ときめ細かい代理店網によって全国をカバーしており、海外は、インド、U.A.E、フィリピン、に駐在員事務所を置く他、中国、韓国、シンガポール、タイ、アメリカ、ブラジル、ドイツ、スペインに販売拠点を設置し、グローバルな販売ネットワークを構築している。生産では、国内9拠点の他、海外に12拠点(中国、台湾、タイ、インド、ドイツ、スペイン、ブラジル)を展開し、グローバルコスト及び最適地生産の実現に向けた生産ネットワークを構築している。
 
 
伸銅品事業
伸銅品とは、銅に亜鉛を加えた「黄銅」、すず及びりんを加えた「りん青銅」、ニッケル及び亜鉛を加えた「洋白」等の銅合金を、溶解、鋳造、圧延、引抜き、鍛造等の熱間または冷間の塑性加工によって、板、条、管、棒、線等の形状に加工した製品の総称。
キッツグループの伸銅品事業は(株)キッツメタルワークス及び北東技研工業(株)の事業分野であり、黄銅製の材料を用いた「黄銅棒」(黄銅棒はバルブ部材の他、水栓金具、ガス機器、家電等の部材としても使用されている)及びその加工品を製造・販売している。
 
その他
子会社(株)ホテル紅やが手掛けるリゾートホテルの運営(長野県諏訪市)が事業の中心。同ホテルは、諏訪湖畔の好立地を特徴とし、夕日に輝く展望風呂や大小の宴会場に加え、国際会議も開かれる大コンベンションホールを有する。
 
 
 
2018年3月期上期決算
 
 
銅相場上昇によるコスト増を吸収して同0.5%の営業増益
売上高は前年同期比8.5%増の595億92百万円。内訳は、バルブ事業が同5.8%増の469億51百万円(計画比+7.4%)、伸銅品事業が同24.9%増の110億46百万円(同+10.5%)。
営業利益は同0.5%増の43億14百万円。銅相場の上昇がバルブ事業には逆風となり、営業利益率が悪化した。ただ、売上の上振れとバルブ事業で価格改定効果が想定よりも早く表れた事で期初予想を7.9%上回る着地。経常利益が減少したのは、前期に株式の持ち合い解消を進めた影響で受取配当金が減少したため。
 
 
 
 
バルブ事業
国内売上高が前年同期比9.6%増の306億98百万円と伸びる一方、海外売上高は、円安による押し上げ効果があったものの、同0.9%減の162億52百万円にとどまった。

国内では、5月に実施した価格改定に伴う仮需の納入もあり、建築設備向けが増加。新価格も市場に着実に浸透している。半導体製造装置メーカーの活発な設備投資を受けて半導体製造装置用バルブが大幅に増加した他、工業用バルブも、機械装置向けの他、化学メーカーの大型プロジェクトがあった石油精製・石油化学が増加。水市場向けも、自治体の予算消化遅れをフィルターの好調でカバーした。

海外は、半導体関連の好調でアジアが伸びたものの、原油価格の低迷で厳しい状況が続いている北米の売上が減少し、Oil&Gas向けの苦戦で欧州・その他が大きく落ち込んだ。尚、円の対ドル相場が前年同期よりも円安で推移したため、売上高が2億69百万円押し上げられた。

営業利益は同0.2%増の56億06百万円。引き続き原価低減効果が大きかった事に加え、国内建築設備向けや半導体製造装置向けの好調による数量の増加効果、更には価格改定効果もあったが、銅相場の上昇や人件費・研究開発費の増加が負担になった。
 
伸銅品事業
売上高110億46百万円(前年同期比24.9%増)、営業利益3億42百万円(同20.6%増)。第2四半期に急騰した銅相場に連動して製品価格が上昇する中、販売数量が同3.0%増加した。利益面では、銅相場の上昇で利幅を確保しやすかった事に加え、コスト低減効果もあった。
 
その他
売上高15億94百万円(前年同期比6.5%減)、営業利益56百万円(同49.5%減)。前年同期は、ホテル事業において7年に1度の「御柱祭」による集客効果があり、サービスエリアも、大河ドラマ「真田丸」効果で賑わった。
 
 
上期末の純資産は前期末に比べて19億89百万円増の1211億37百万円。自己資本比率61.9%(前期末61.9%)。
 
 
上期末が金融機関の休日だったため売上債権の決済が進まなかった事と下期に向けたたな卸資産の積み増しで営業CFが減少した。
 
 
2018年3月期業績予想
 
 
前期比7.8%の増収、同12.0%の営業増益予想
売上予想を上方修正したものの、銅相場の高値圏での推移を踏まえて利益予想を据え置いた。売上高は前期比7.8%増の1,230億円。バルブ事業は建築設備向けと半導体関連の好調で海外の苦戦をカバーして売上が同6.6%増加する見込みで、伸銅品事業は銅相場の上昇を追い風に同16.4%の増収が見込まれる。両事業共に下期の売上予想を上方修正した。

営業利益は同12.0%増の100億円。原価低減、数量の増加、価格改定効果等による収益性改善でバルブ事業の利益が同11.0%増加するものの、伸銅品事業は利益面でも同相場の上昇が追い風になるが、人件費の増加や減価償却費の増加で同21.6%の営業減益が見込まれる。期初予想との比較では、銅相場を踏まえてバルブ事業の利益を下方修正する一方、伸銅品事業の利益を上方修正した。
 
 
 
国内は、主力の建築設備向けで首都圏大型案件への納入が本格化し、半導体製造装置向けも装置メーカーの需要が強く、好調が続く。半導体製造装置向けを手掛ける子会社キッツSCTは通期で売上・営業利益の過去最高更新が見込まれる。2017年6月にシステム製品工場を新設したが、半導体製造装置メーカーの需要に応えるべく、更なる設備投資を検討中。水市場は公共工事の予算消化が遅れているが、工業用フィルターが好調。工業用バルブ市場は大型案件の計画がなく、維持・更新需要が中心になる。この他、グループ一体となって東京オリンピック関連需要(建築設備向け)の取り込みを図る他、重点弁種であるバタフライバルブの拡販に注力する。
海外は、原油価格低迷の影響で厳しい状況が続いていた北米市場に底打ち感があるようだ。パイプライン会社への拡販に注力する考え。一方、欧州市場は、Oil&Gasの設備投資低迷で苦戦が続く見込み。アセアンは、インドネシアの回復が遅れているが、タイが若干上昇傾向。拠点整備を進め、フィリピン、マレーシア等周辺国での拡販に注力する。現地仕様の汎用バルブの開発にも着手した。中国は、データセンター等、建築設備向けの汎用バルブが引き続き好調。分公司を活用して更なる拡販を目指す。この他、2018年3月、中東(イラン)向け大型プロジェクトにバルブを納入予定。
 
 
 
 
TOPICS
 
(1)KITZ Corporation of Asia Pacific Pte. Ltd.によるフィリピン駐在員事務所の開設
同社は、重要地域の一つであるアセアンンにおいて、順次、拠点を拡充している。この一環として、2016年6月にベトナムに拠点を開設したが、2017年8月には、今後、大きな伸びが期待できるフィリピン(マニラ)に同地域の統括会社KITZ Corporation of Asia Pacific Pte. Ltd.(以下、KAP)の駐在員事務所を開設した。KAPフィリピンは各種バルブのマーティングを手掛け、2017年度のフィリピン向けの売上高は約4.8MillionUSD(約5.3億円)を見込んでいる。今後も世界各地の顧客の要望に応えるべく、マーケティング体制の整備を進めていく考え。
 
(2)小型パツケ一ジユニツ トを用いた水素ステーシヨンの建設
同社は長坂工場(山梨県北杜市)に、小型パッケージユニットを用いた水素ステーションを自家用設備として建設する。2018年3月の竣工を予定している。

経済産業省は、2020年に160ヵ所、2025年に320ヵ所、2030年には900ヵ所の水素ステーションの整備を計画しているが、従来と同規模(1時間に燃料電池自動車6台を満タンにする事が可能な規模)の水素ステーションでは、現在の車両普及台数に対し、建設コスト・運営コスト共に高額となる。このため、本格普及期に向けては、市場に適した規模の水素ステーションの建設が必要と言う。

同社は、従来よりも小規模な、小型パッケージユニット(圧縮機・蓄圧器ユニット)を用いて、1時間に燃料電池自動車2台を満タンにする事が可能な規模の水素ステーションを長坂工場に建設すると共に、燃料電池自動車及び燃料電池フォークリフトを社用車として実際に活用し、運用の実証を行う。今後のバルブ開発のための技術蓄積はもちろん、将来的には、コンパクトで高機能、安価な小型パッケージユニットを市場へ提案する事も視野に入れ、実証を進めていく考え。
尚、同社は、2012年7月から水素ステーション用バルブ市場を販売している。2017年6月現在、日本国内の商用水素ステーション99ヵ所(2017年度計画分含む)の多くで採用されているが、今回建設する小型パッケージユニットを用いた水素ステーションには、100MPa(100万パスカル)クラスの高圧水素ガスを封止させる事が可能な世界で最高水準の自社製ボールバルブが採用されている。

建設場所   キッツ長坂工場(山梨県北杜市)
供給方式   圧縮機・畜圧器パッケージユニットを用いたオフサイト供給方式
供給能力   55Nm3/h(1時間にFCV2台の充填が可能)
竣工予定   2018年3月
 
 
今後の注目点
バルブ事業では、北米で若干明るさが出てきたようだが、厳しい状況に変わりはなく、欧州は米国以上に厳しいようだ。利益面では、銅相場の高止まりが懸念材料。期初の電気銅建値の想定は68万円/トンであったが、足元、83万円/トン程度との事で、期初想定よりも20%以上高い水準にある。
一方、国内は好調だ。下期は、首都圏を中心に再開発関連の納入が本格化し、価格改定効果も本格的に現れる。19/3期から20/3期にかけては東京五輪需要が見込め、引き続き原価低減効果も期待できる。このため、銅相場が現在の水準から極端に上昇しない限り、バルブ事業は、来期以降も、海外の苦戦をカバーして売上・利益共に堅調な推移が見込まれる。非建築設備向け分野では、工業用バルブを強化するべく、バタフライバルブの販売拡大に期待したい。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書        更新日:2017年06月28日
当社は、創造的かつ質の高い商品・サービスの提供により持続的に企業価値の向上を図ることを企業理念に掲げ、社会的に責任ある企業として、株主をはじめ、すべてのステークホルダーに配慮した経営の実現に取り組んでいます。
また、経営の効率性とコンプライアンスの強化を図るため、ステークホルダーからの要請や社会動向などを踏まえ、迅速かつ効率が良く、健全で透明性の高い経営が実現できるよう、様々な施策を講じて、コーポレート・.ガバナンスの充実を図っています。
 
<実施しない原則とその理由>
当社は、コーポレート・ガバナンス・コードの各原則をすべて実施しております。
 
<開示している主な原則>
9.株主との建設的な対話に関する方針(原則5-1)
当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のためには、経営の受託者としての説明責任を自覚し、株主・投資家等のステークホルダーに対し、適時・適切な情報開示を行い、経営の公正と透明性を維持することが重要であると認識しています。また、必要とされる情報を継続的に提供するとともに、外部者の視点による意見や要望を経営改善に活用するためのIR活動が重要であると考えています。そのため、当社は、経営戦略や経営計画に対する株主の理解を得られるよう、株主との建設的な対話を推進するため、代表取締役やIR担当執行役員を中心とするIR体制を整備し、以下の施策を実施しています。