ブリッジレポート
(4205) 日本ゼオン株式会社

プライム

ブリッジレポート:(4205)日本ゼオン vol.19

(4205:東証1部) 日本ゼオン 企業HP
田中 公章 社長
田中 公章 社長

【ブリッジレポート vol.19】2018年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「価格要因が足を引っ張った前期とは一転し、旺盛な需要に支えられ数量・価格ともプラス寄与し足元の業績は好調で、利益の進捗率は上方修正後・・・」続きは本文をご覧ください。
2018年1月16日掲載
企業基本情報
企業名
日本ゼオン株式会社
社長
田中 公章
所在地
東京都千代田区丸の内1-6-2 新丸の内センタービル
決算期
3月 末日
業種
化学(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2017年3月 287,624 30,767 31,805 23,152
2016年3月 295,647 29,856 32,153 18,079
2015年3月 307,524 28,245 31,098 19,080
2014年3月 296,427 29,901 32,561 19,650
2013年3月 250,763 23,696 25,212 14,750
2012年3月 262,842 32,123 31,487 19,127
2011年3月 270,383 35,295 33,623 18,303
2010年3月 225,878 9,319 9,448 5,020
株式情報(11/10現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,559円 222,021,320株 346,131百万円 11.0% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
17.00円 1.1% 112.62円 13.8倍 1,082.02円 1.4倍
※株価は11/10終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
日本ゼオンの2018年3月期第2四半期決算概要についてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
自動車部品やタイヤに使用される合成ゴムや、医療用手袋等に使用される合成ラテックスを始めとして、世界的な高シェア製品を多数保有する石油化学メーカー。独創的な技術開発力とそれを生み出す研究開発体制、高い収益性などが強み。
自動車部品、タイヤ、ゴム手袋、紙おむつ、携帯電話、液晶テレビ、香水など身の回りにある多種多様な製品に同社が製造する製品(素材)が使用されている。
グループは、同社および子会社58社、関連会社9社で構成されており、世界16か国に生産、販売拠点を有している。
 
 
【社名と経営ビジョン】
「ゼオ」(Geo)はギリシャ語で大地、「エオン」(Eon)は永遠を意味し、その合成語「ゼオン」には「大地から原料を得て永遠に栄える」という意味が込められており、世界に誇り得る独創的技術によって、地球環境と人類の繁栄に貢献することを経営理念として掲げている。
(設立時は資本及び技術提携先であった米国B.F.グッドリッチ社の塩化ビニル樹脂製品の商標「Geon」を取って社名としていたが、1970年の資本関係解消を機に表記を「Zeon」と改めた。)
 
【沿革】
同社は、古河電工、横浜ゴム、日本軽金属の古河系3社の共同出資により、米国B.F.グッドリッチ・ケミカル社との提携による塩化ビニル樹脂製造技術の導入を前提として、1950年4月に設立された。

1951年にB.F.グッドリッチ・ケミカル社が35%の株式を取得し、技術及び資本の全面提携が成立し、翌1952年に日本で初めて塩化ビニル樹脂の量産を開始した。
1959年にはB.F.グッドリッチ・ケミカル社から合成ゴム製造技術を導入し、日本で初めて量産を開始。タイヤを中心とした自動車向け需要の増大に対応してし、生産設備を拡大していく。

1965年にはC4留分からブタジエン(合成ゴムの主原料)を効率よく製造する同社の独自技術であるGPB(ゼオンプロセスオブブタジエン)法による生産を開始した。
B.F.グッドリッチ・ケミカル社が事業の中核を塩化ビニル樹脂事業にシフトするのに伴い、特殊合成ゴム事業を譲り受け、1970年資本提携も解消へ。これに伴い1971年に英文社名をGeonからZeonに変更した。
同じく1971年にはC5留分から高純度のイソプレンや石油樹脂、合成香料の原料などを抽出する独自技術GPI(ゼオンプロセスオブイソプレン)法を開発し生産を開始。

1980年代に入り、合成ゴムに加えて、フォトレジストなどの情報材料、合成香料、メディカル分野など新規事業への展開を積極化させていく。
1984年、現在では世界シェアトップとなった水素化ニトリルゴムZetpol®を高岡工場で生産開始。
1990年、GPI法によって抽出、合成された高機能材料事業の主要製品であるシクロオレフィンポリマーZEONEX® を水島工場で生産開始。
1993年、電子材料事業で中国に進出した。
1999年にはゼオン・ケミカルズ(米国、現 連結子会社)が、グッドイヤーから特殊ゴム事業を買収し、特殊ゴム分野で世界トップメーカーとなる布石を打つ。

2000年、水島工場での塩化ビニル樹脂生産を打ち切り、創業事業の塩化ビニル樹脂事業から撤退した。
2002年にLCD用光学フィルムゼオノアフィルム®を上市。
2010年ゼオン・ケミカルズ・シンガポール、2011年ゼオンコリアを設立し、グローバル生産・販売体制を一段と強化している。
2013年3月、(株)トウペのTOBを終了。同年8月完全子会社化した。
2013年9月、シンガポールでスチレンブタジエンゴム(S-SBR)の工場が完成し、2014年4月より商業運転を開始。
2015年2月、富山県氷見市のLCD用光学フィルム設備を増強。
2015年11月、世界初 スーパーグロース・カーボンナノチューブの量産工場が稼働。
2016年4月、シンガポールでS-SBR生産拠点で第2系列が稼働。
 
【事業内容】
同社の主要製品は、原油を蒸留分離して得られるナフサを熱して抽出される炭素数の異なる様々な抽出物を原材料としている。
ナフサを熱すると、順次、一酸化炭素ガス(C1)、エチレン(C2)、プロピレン(C3)が抽出される。
同社は、プロピレン(C3)を抽出した後のC4留分から独自開発のGPB法によって抽出したブタジエンや、その後のC5留分からGPI法によって抽出したイソプレン・モノマー(IPM)ハイボイル・モノマー(HB)ジシクロペンタジエン(DCPD)ブチン-2等を原材料に加工を行い、合成ゴム、合成ラテックスを始めとした各種素材を生産している。
 
 
生産した素材そのものを顧客に販売する素材型ビジネスが中心の「エラストマー素材事業」、素材を同社において一次加工し顧客に販売する部材型ビジネスが中心の「高機能材料事業」、「その他の事業」がある。
 
 
<エラストマー素材事業>
「エラストマー」とは、「ゴムのように弾性に富む高分子化合物の総称」(三省堂 大辞林より)で、合成ゴムがその代表例である。
沿革にあるように同社は1959年に日本で初めて合成ゴムの量産を開始しており、同事業は会社の基盤を支える事業である。
内訳としては大きく、合成ゴム事業、合成ラテックス事業、化成品事業(石油樹脂、熱可朔性樹脂)に分類される。
 
①合成ゴム事業
<製品例:タイヤ>
 
世界トップクラスの品質を誇るタイヤ用合成ゴムを、世界の主要タイヤメーカーに納入している。製造している合成ゴムの種類には、耐摩耗性・耐老化性・機械的強度特性に優れるスチレンブタジエンゴム(SBR)、弾性・摩耗性・低温特性のバランスに優れるブタジエンゴム(BR)、天然ゴムとほぼ同様の特性をもち品質安定性に優れるイソプレンゴム(IR)等がある。
今後はSBRの特性を更に改良した低燃費タイヤ用のS-SBRの需要が急速に拡大すると見込んでおり、これに対応した供給能力増のため、シンガポール工場の第1系列が2013年9月、第2系列も2016年4月に稼働を開始した。シンガポール工場の供給能力は7万トンとなっている。
 
 
自動車エンジンにおいては、ラジエーターホース、フューエルホース、タイミングベルト、オイルシールなどの各部品において耐油性、耐熱老化性に優れた特殊合成ゴムが用いられている。
世界No.1の特殊合成ゴムメーカーである同社はその品質の高さを評価されており、自動車用特殊合成ゴムの中で高いシェアを有している。中でも、タイミングベルト用の水素化ニトリルゴムZetpol®は耐熱性、耐油性、機械的強度特性に優れており、世界シェア約70%を占めている。

また従来品の性能を大きく向上させたZetpol®の新製品を開発した。
これは従来製品比で+15℃も耐熱性を改善させたもので、従来のシール・ガスケット部品の長寿命化に対応できるだけでなく、次世代バイオ燃料を用いたエンジン向けにも需要が拡大すると見込んでいる。さらに、押出加工性が良好であることからホース用途にも展開が広がってきた。顧客の評価も上々で、高価なゴムの代替材を中心として、国内、アジア、欧米で採用が進んでいる。
このZetpol®の新製品は、2012年11月に川崎工場で商業運転が始まり、2013年度より本格稼働を開始した。
 
②合成ラテックス事業
合成ラテックスとは、合成ゴムを水中に分散させた液状ゴムのことで、ゴム手袋をはじめ、紙加工、繊維処理、接着剤、塗料、化粧パフ等に使用される。
化粧用パフ用アクリロニトリルブタジエン(NBR)ラテックスは90%近いシェアとなっている。
 
③化成品事業
C5留分から製品化を行う同社独自のGPI法により粘着テープ・ホットメルト接着剤用素材、トラフィックペイント用バインダー等、幅広い製品化を行っている。
 
<高機能材料事業>
独創的技術である高分子設計や加工技術によって、高付加価値を有した材料・部材を扱っている。
 
①情報用部材
GPI法によってC5留分から抽出、合成されたシクロオレフィンポリマーは、独自技術で開発した熱可塑性プラスチックで、製品としてZEONEX® とZEONOR®がある。
ZEONEX®は高透明性、低吸水性、低吸着性、耐薬品性を活かして、カメラレンズやプロジェクターレンズなどの光学部品、シリンジやバイアルなどの医療用容器に使用されている。
ZEONOR®は高透明性や転写性、耐熱性等を活かし、透明汎用エンプラとして、導光板や自動車部品、容器、ディスクなどの幅広い分野で使用されている。

シクロオレフィンポリマーから、世界初の溶融押出法で開発された光学フィルムがゼオノアフィルム®で、光学特性、低吸水・低透湿、高耐熱性、低アウトガス、寸法安定性に優れ、液晶テレビやスマートフォン、タブレット端末のディスプレイに使用されているほか、今後はデジタルサイネージなど幅広い用途での利用が期待されている。
 
 
また、同社では世界で初めて「斜め延伸位相差フィルム」を開発し、生産している。
有機ELの光反射防止フィルムとしての採用も進んでおり、今後も中小型用フラットパネルディスプレイ向けの需要拡大が見込まれることから、高岡および氷見の2工場(合計 年間生産 1,500万m2)に加えて、福井県敦賀市に新工場が2013年10月に完成した。

他にも、携帯電話、スマートフォン、液晶テレビ用途に代表される、電子デバイス向け塗布型有機絶縁材料ZEOCOAT®がある。
ZEOCOAT®は、透明性が高く、吸水性が非常に低いほか、膜からガス成分を発生しにくいためディスプレイの画質と信頼性の向上を同時に達成することができる。
今後、液晶に比べ薄く成型できる有機ELディスプレイ向けに拡販を積極的に進めるとともに、新しい半導体を用いた薄膜トランジスタやフレキシブルディスプレイ用の絶縁材料での採用を目指している。
 
②エナジー用部材
リチウムイオン電池用材料として負極及び正極、機能層(耐熱セパレータ―)用バインダー、シール剤を供給している。

現在、リチウムイオン電池は携帯電話、ノートパソコンなどのモバイル機器の電源として広く使用されている。
また、スマートフォンの急速な普及により、その高容量化は強く求められている。
さらに、軽量・小型でありながら、大きなエネルギーを蓄えられることから、ハイブリッドカー、プラグインハイブリッドカー、電気自動車向け、スマートグリッドなどの産業電源向けの採用も始まっているが、一方で、高温下で使用した場合、寿命が低下しやすいといった課題があった。

同社は、リチウムイオン電池バインダーの高機能化を進め、正極用バインダーとして寿命の低下抑制に大きく貢献する水系機能性バインダーの開発に成功し、また、リチウムイオン電池の蓄電容量を従来比5~15%上げられる負極用バインダーの製品化にも成功した。
正極・負極・機能層(耐熱セパレータ―)用バインダー及びシール剤はリチウムイオン電池の「安全性」、「寿命」、「電池容量アップ」に寄与し、ハイブリッドカーの普及に貢献するものと考えている。

リチウムイオン電池の将来性に注目し、早くから取り組んできた同社では、エナジー用部材事業の2020年のありたい姿として、「リチウムイオン電池バインダー市場でのトップシェアを維持」するとともに、急速充電など自動車用途でのニーズに応えた新しい材料機能の普及拡大や次世代の新しい電池の実現に向けた機能性材料の提案ができることを目指している。
 
 
③メディカルデバイス
メディカルデバイス市場は、景気の影響が少なく、また日本における高齢化の進行と新興国の市場拡大で成長が見込まれる一方、医療機器の製造・販売会社に対する法的要件が厳格であるほか、薬事承認申請作業が必要で、医療従事者との関係作りが不可欠であること等から参入障壁が高く、魅力的な市場であると同社では考えている。
同社は、1974年に人工腎臓の開発を開始したのを皮切りにメディカルデバイス事業を積極的に推進し、1989年に子会社ゼオンメディカル株式会社を設立し、同社グループ内で開発・製造・販売・薬事のすべての分野における対応が可能な体制を構築している。
消化器系製品では、胆道結石除去用の差別化製品である「オフセットバルーンカテーテル」、国産初の胆管カバードステント「ゼオステントカバード」、また循環器系製品では、急性心筋梗塞時等に心臓の拍動を補助するデバイスとして、世界最細径の「ゼメックス IABPバルーンプラス」など、豊富な開発実績を有している。
 
 
現在注力しているのが、胆道結石による痛みからの解放につなげる結石除去デバイスである。
同社の開発製品であるゼメックスクラッシャーカテーテル、ゼメックスバスケットカテーテルNT、エクストラクションバルーンカテーテルなど、巨大結石から胆泥・胆砂まであらゆる胆道結石を除去できるデバイスをラインアップしており、結石除去デバイス全体で50%のシェア獲得を目指す。
また、2016年3月には、ガイドワイヤータイプとしては世界初の光センサー型FFRデバイスを上市した。光ファイバー型センサーであることから血圧測定のズレが起こりにくい。ガイドワイヤーとしての操作性も高い評価を得ており、2020年には日本国内シェア30%を目指すとしている。
 
④化学品事業
C5留分より得られる原料を活用して食品・香粧品用の合成香料や、特徴ある溶剤及び植物調整剤などの特殊化学品を扱っている。
グリーン系の合成香料では世界一のシェアを有している他、医農薬中間体の原料やフロン代替用途などの溶剤・洗浄剤・ウレタン発泡剤及び機能性エーテル溶剤など、幅広い産業分野に特徴ある製品を供給している。
 
【高機能新規素材開発例 ~カーボンナノチューブ(CNT)~】
積極的な研究開発によって様々な新素材を世の中に送り出してきた同社だが、今後大きな成長が期待されるのが「単層CNT」だ。
 
①単層CNTとは?
1993年、独立行政法人 産業技術総合研究所(産総研)ナノチューブ応用研究センター長の飯島澄夫博士によって世界で初めて蜂の巣上の炭素原子が網目のように結び付いた、筒状分子構造の物質が発見され、「カーボンナノチューブ(CNT)」と命名された。
その構造により、単層CNTと多層CNTに大きく分類できる。多層CNTは比較的生産が容易であることから国内外において実用化への応用開発が推進されている。
 
 
一方、単層CNTは、
「鋼の20倍の強度」、「銅の10倍の熱伝導性」、「アルミの半分の密度」、「シリコンの10倍の電子移動度」など、「軽量かつ高強度でありながら高い柔軟性を持つ」、「電気や熱伝導性が極めて高い」といった、多層CNTを上回る優れた特性を持つ。
例えば、リチウムイオン電池の導電助剤への展開、高い伸縮性や強度を持つことから、電子ペーパーや超薄型タッチパネル用の透明導電膜のほか、放熱材料への利用なども考えられている。また、広帯域の光を吸収できる特性があるため、電磁波吸収材としての実用化研究も進んでおり、エネルギー分野、エレクトロニクス分野、構造材料分野、高機能材料分野等、幅広い場面での応用が見込まれている。
 
 
しかし、従来の単層CNTは、不純物が多く、且つ生産性が低いために、製造コストが高く1g当たり数万~数十万円もしているのが大きな課題であった。
 
②同社の取組み&位置づけ
このような背景の中、低炭素社会の実現というグローバルな社会的要請に応え、日本で発見された数多くの優れた特性を持つ単層CNTを応用した新製品を世界に先駆けて事業化、工業化するための技術の確立に取り組む事を目的として、2010年5月、産総研と同社、日本電気(株)、東レ(株)、帝人(株)、住友精密工業(株)、の5社1法人によって「技術組合単層カーボンナノチューブ融合新材料開発機構」が設立された。
同社と産総研が、「スーパーグロース法」という2004年に産総研畠賢治博士らによって開発された合成技術をベースにして、産総研のつくばセンター敷地内に2010年12月に開設した実証プラントで量産化に向けた研究開発および供給(2011年4月から、産総研より量産品のサンプル供給を開始)を担当し、複合材料の用途開発を上記の研究組合が進めている。
産総研ナノチューブ応用研究センターが量産化のためのパートナーに同社を選定したのは、同社の荒川公平氏(前取締役常務執行役員)がCNT研究開発者として豊富な実績と成果を有していた事が大きな理由だということだ。
また、同組合の理事長が同社会長の古河直純氏であることからもわかるように、単層CNT実用化プロジェクトにおける同社の重要性は大変大きなものである。
 
③今後の展開
スーパーグロース法を基にした量産化技術を確立した同社は、2015年11月、山口県周南市の徳山工場内に量産プラントを竣工させ、世界初の量産を開始した。
単層CNTの量産化技術を確立しているのは世界でも同社のみであり、上記の研究組合に限らず、国内外約100社から問い合わせが来ており、順次サンプル出荷を行っており、同社自らも他社に対し用途提案も行っている。
一方、単層CNTは、ナノ材の一種でありそのサイズが極めて小さい事、形状が繊維状であることから化学的な特性以外に、サイズや形状によって生体への侵入などによる影響があるのではないかという懸念も指摘されている。
現在、産総研を中心に評価手法の標準化、OECDのエンドポイント測定等の取組みが進められており、国際標準化、法規制化が順次行われると考えられている。
 
<その他の事業>
ジシクロペンタジエンを原料とした反応射出成形法(RIM成形法)による大型成形品やRIM配合液を取り扱っている。
 
【特長・強み】
1.世界トップクラスの独創的な技術開発力
C4留分からブタジエンを製造するGPB法は戦後の日本化学史上トップクラスの技術開発であり、アメリカ、韓国を始め世界19か国49プラントに技術供与している。
また、C5留分から高純度のイソプレンや石油樹脂、合成香料の原料などを製造するGPI法も同社オリジナルで、水島工場が世界で唯一の抽出プラントであり、他社には技術供与していないオンリーワンの技術である。

この2つの技術に代表される独創的な技術開発力が同社の大きな強みであり、世界的に高く評価されており、国内外で数々の賞を受賞している。
技術関係では、GPB法、GPI法はもちろんのこと、1960年から現在までに48の賞を、環境・安全関係では1982年から現在までに26の賞を受賞している。
 
2.世界的な高シェア
Zetpol®、ZEONEX®、ZEONOR®に代表される同社の独創的技術から生み出された様々な製品は、世界的に高いシェアを獲得している。
これ以外にも、化粧品や食品フレーバーに使用されるリーフアルコール、化粧用パフ用NBRラテックスなども「世界No.1」製品となっている。
 
3.独創的な技術を生み出し続ける研究開発体制
「特定の得意分野で独創的技術を開発し、世界一事業を創出して社会に貢献する。」との基本理念に基づき、研究開発に取り組んでいる。
主要研究拠点は神奈川県川崎市にある「総合開発センター」だが、製造現場に近いところで研究開発を行うことが効率的であるとの考えから、高岡工場に精密光学研究所およびメディカル研究所を、米沢工場に化学品研究拠点を、徳山工場にトナー研究所を設立した。また海外では、米国および英国に研究グループを有している。

研究員は現状に満足することなく、適度な危機感を保ちつつ、研究にあたっているということだ。また会社も加点主義に基づく評価を行い、スピードと独創性を重視している。
R&D費について従来は対売上高比を基準としていたが、安定的な研究開発を継続していくため、今後は年間120~130億円程度を目途にしていく考えだ。
 
 
2018年3月期第2四半期決算概要
 
 
数量増効果、価格効果で2桁の増収増益。計画を大きく上回る。
売上高は前年同期比264億円増収の1,666億円。数量増効果が+188億円、価格効果が+62億円。エラストマー素材では輸出向け汎用および特殊ゴムなどが、高機能材料では中小型向け斜め延伸フィルムが好調だった。
営業利益は同66億円増益の199億円。数量効果+52億円、価格効果が+62億円あったが、国産ナフサ、アジア・ブタジエンの値上がりで原価は44億円の減益要因であった。
経常利益は同95億円増の216億円。前年同期にあった為替差損18億円が6億円の為替差益に転じた。
売上、利益ともに期初予想を大きく上回った。
 
 
増収・増益。営業利益率は前年同期の10.2%から11.6%へ1.4ポイント上昇した。
ゴムの販売数量は16%の増加。タイヤ向け汎用ゴムの販売数量は同20%の増加。国内はタイヤメーカー各社の稼働率が低調で同4%の減少だったが、海外は、SSBRが堅調だったことに加え市況も好調で、同38%増加した。
特殊ゴムは同3%の増加。国内は3%増加。海外は第1四半期の1%減少から4%の増加へ転じた。
特殊ゴムの構成比は数量ベースで4%低下の27%、金額ベースは6%低下の51%だった。
ラテックスは輸出向け手袋材料が好調だった。
 
 
増収・増益となった。営業利益率は前期の12.9%から6.1ポイント上昇し19.0%となった。
高機能ケミカル部門の売上高増加の内訳は、電子材料が前年同期比16%の増加、電池材料は車載向けが好調で同37%増と大幅に伸長した。化学品は同2%の減少、トナーは同13%増と回復した。
高機能樹脂部門は同20%増。COP樹脂は同4%増。光学フィルムは中小型向けが好調で26%の増加。販売数量は同10%の増加だった。
中小型向けの売上構成比は前年同期の19%から28%に上昇した。
 
 
増収・増益だった。営業利益率は前年同期の5.8%から6.2%へ0.4ポイント上昇した。
 
 
直前期比でも増収・増益となった。
売上高は、数量要因が27億円のプラス、価格要因が18億円のマイナス、為替要因が2億円のプラスだった。
営業利益は数量要因がゼロ、価格要因が18億円のマイナス。原価要因、為替要因がそれぞれ24億円、2億円のプラス。
 
 
 
現預金の増加により流動資産は前期末に比べ181億円増加。株価上昇による投資有価証券評価額の増加などにより固定資産合計は同52億円増加。資産合計は同234億円増加した。
有利子負債が19億円減少した一方、買入債務が37億円増加するなどして、負債合計は同44億円増加した。
利益剰余金およびその他有価証券評価差額金の増加により、純資産は同189億円の増加。この結果自己資本比率は59.5%と前期末より1.1ポイント上昇した。
 
 
税金等調整前四半期純利益の増加などで営業CFのプラス幅は拡大。有形固定資産の取得による支出の減少で投資CFのマイナス幅は縮小し、フリーCFのプラス幅は大きく拡大した。長期借入金の返済による支出が減少し財務CFのマイナス幅は縮小。キャッシュポジションは大きく上昇。
 
 
2018年3月期業績予想
 
 
 
業績上方修正。増収・減益から増収・増益へ。
好調な業績動向を反映し、通期予想を上方修正した。18年3月期の売上高は前期比374億円、13.0%増加の3,250億円の予想。エラストマー素材、高機能材料共に好調。
営業利益は同42億円、13.8%増加の350億円の予想。電池材料、光学フィルムが堅調な高機能材料は大幅な上方修正。価格低下により減益予想だったエラストマー素材も旺盛な需要を背景に増益となる見込み。経常利益、当期純利益はそれぞれ同62億円、18億円増加の380億円、250億円の予想。配当予想に修正は無く、前期比1円増配の17.00円/株。予想配当性向は15.1%。
 
 
新中期経営計画 SZ-20 PhaseIIIの進捗
 
今期を初年度とする4年間の「新中期経営計画 SZ-20 PhaseIII」の進捗状況は以下の通り。
 
 
 
①エラストマー素材事業
◎SSBR:探索
2017年8月、シンガポールで同社が得意とする油添製品の製造設備が完工。徳山工場との二拠点生産で最適生産を進め事業を拡大する基盤が整った。
徳山工場は新製品開発拠点として差別化製品を生産し、シンガポール工場は量産品を徳山工場から移管して生産する。
SSBR販売数量は2020年には2017年の約1.5倍まで拡大する見込み。
 
◎特殊ゴム:ソリューション
新興市場の顧客に対して配合や加工におけるソリューションを提案するATSL(アジア技術サポートラボラトリー)をシンガポールに開設した。内燃機関搭載車の成長に伴い特殊ゴム需要の拡大が見込まれるASEAN・インドをカバーする。
グローバルで5番目の技術サービス拠点として新興市場における存在感を高める。
 
◎石油樹脂:深化
昨今高まっている臭気低減ニーズへ対応するため、17年9月より独自技術による水添化設備を導入した水島工場で水素を添加した低臭気グレードの生産を開始した。
衛生材料、自動車用絶縁テープなど低臭気・低VOC(揮発性有機化合物)が求められる特殊粘着テープへの用途展開を進める。
水添石油樹脂の販売量は今後2年間で8倍に拡大する見込み。
 
◎SIS:深化
高強度・高伸縮性といった特徴を持つ非対称SISの更なる市場展開によって、エラスティックフィルム、粘着ラベルなどに加え、フレキソ、保護フィルム、粘着テープ、ホットメルト粘着剤など、SISの活躍出来るフィールドを更に拡大させる。
非対称SISの販売量は2020年までに約6倍まで拡大させる。
 
◎PSC(パウダースラッシュコンパウンド):ソリューション
日本、中国、メキシコの3拠点体制によって市場の拡大に対応する計画。
年間生産量1,200トンのメキシコ工場第1期工事が完工し17年6月稼働を開始した。
同じく1,200トンの第2工場は2020年以降の稼働を予定しており、その時点でのグローバル生産体制は6,800トン。
2020年には2017年比約1.8倍の販売をグローバルベースで計画している。
 
②高機能材料事業
◎ZSM社を開所:探索
17年10月、IT産業の集積地シリコンバレーに高機能材料事業の拠点として「ZSM(ゼオン・スペシャリティ・マテリアル)社」を開所した。18年1月に営業を開始する予定。
高機能樹脂(シクロオレフィンポリマー)、高機能部材(光学フィルム)、電池材料(リチウムイオン二次電池バインダー)、電子材料(絶縁材料、レジスト、エッチングガス)などを対象に市場ニーズに対してよりスピーディーに対応する。
 
◎COP:ソリューション
医療・バイオテクノロジー分野へのCOPの展開を図り、マイクロ流路チップなど試作受託サービスを開始する。
基板の成形から流路切削加工、接合まで ワンストップで受託することで、 低コスト・短納期・小ロットでのサンプル製作を実現する。
 
◎光学レンズ用新製品:深化
車載センシングカメラ市場での販売拡大を目指し、高耐熱光学レンズ用製品「ZEONEX®T62R」を新たにリリースした。
同社従来製品と比べ高温環境下でも変形しにくく、色調の変化も小さい。
自動車事故などの可能性を事前に検知し回避するシステム「ADAS(先進運転システム)」の普及に伴いセンシング用車載カメラモジュール市場は大きな成長が見込まれている。
 
◎ゼオノアフィルム:深化
液晶パネル市場は面積ベースで拡大が続いているが、今後はOLED(Organic Light Emitting Diode/有機発光ダイオード)TV市場における大型化の進展が見込まれている。高画素・大画面 TV向け需要の大きいゼオノアフィルムについて、新規位相差フィルムの開発を軸に、タッチセンサー用基材の開発やフォーダブル対応を進め、OLED市場の成長を取り込んでいく。
液晶テレビ用位相差フィルムは第6系列の稼働が開始した。
 
◎エナジー用部材:ソリューション
製品群を更に充実させ、事業を拡大する。
同社の電池材料売上高は、リチウムイオン電池の容量増加に伴い、前中計期間中において計画を上回る実績を残してきた。
世界の主要自動車メーカーは今後EV(電気自動車)の販売拡大に注力する計画。
シール材料からスタートした同社は、安全性、長寿命、高出力を実現する部材(バインダー)の採用を積極的に提案し、今中計においても計画を上回る実績を目指す。
 
◎メディカルデバイス:新事業創出、新製品開発を加速
前期より販売を開始した光センサー型FFRは、高い信頼性を背景に採用が拡大している。2020年の市場シェア30%達成を目指している。
(FFR とは冠血流予備量比のことで、冠動脈内に狭窄病変があるとき、狭窄病変によってどのくらい血流が阻害されているかを推測する指標)
 
◎カーボンナノチューブ:新事業創出、新製品開発を加速
17年2月に同社、国立研究開発法人 産業技術総合研究所、サンアロー株式会社と共同で、「日本ゼオン・サンアロー・産総研CNT複合材料研究拠点」を設立して、CNT複合材料に関する研究を進めてきたが、その成果として以下の2例を発表した。

*高温でも形状を維持できる強靭(きょうじん)で安全性の高いOリング
カーボンナノチューブとフッ素ゴムを複合化したOリング(配管や容器からの内容物の漏れを防止するために用いられるゴム製シール部材)を開発した。
カーボンナノチューブの繊維の補強効果により、フッ素ゴムが熱劣化する高温でも形状を維持できるため、自動車・化学プラントなど、高温・高圧耐性が要求される過酷環境下での用途が期待される。
今後は、CNT複合材料研究拠点においてゴム製シール部材の量産技術を確立。成型金型のラインナップを増やして3年以内に実用化する予定。

*カーボンナノチューブを用いた塗料による電磁波遮蔽
99.9%以上の電磁波遮蔽能を持つ塗布膜を、カーボンナノチューブを用いた水性塗料で実現した。耐熱性が高く、長期安定性に優れるとともに曲げにも強く、複雑形状部や可動部でも使用可能である。
自動車用ワイヤーハーネスやロボットなど、多様な分野での電磁波遮蔽対策への活用が期待される。
 
 
今後の注目点
価格要因が足を引っ張った前期とは一転し、旺盛な需要に支えられ数量・価格ともプラス寄与し足元の業績は好調で、利益の進捗率は上方修正後でも57%と順調だ。
SSBR、パウダースラッシュパウンド、液晶テレビ用位相差フィルムなど、供給能力も着実に拡大している。
今期、売上、利益ともに過去最高を更新することができるか注目したい。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2017年7月5日に提出している。
 
 
 
 
<付属:Fact Sheet>