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(4847) 株式会社インテリジェント ウェイブ

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ブリッジレポート:(4847)インテリジェント ウェイブ vol.35

(4847:JASDAQ) インテリジェント ウェイブ 企業HP
井関 司 社長
井関 司 社長

【ブリッジレポート vol.35】2018年6月期第3四半期業績レポート
取材概要「18/6期は金融システムソリューション事業を中心に上振れが期待できるものの、プロダクトソリューション事業での苦戦もあり、減益決算が避け・・・」続きは本文をご覧ください。
2018年5月30日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社インテリジェント ウェイブ
代表取締役社長
井関 司
所在地
東京都中央区新川1-21-2 茅場町タワー
決算期
6月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2017年6月 8,469 702 766 547
2016年6月 7,206 714 730 478
2015年6月 6,160 484 490 471
2014年6月 6,558 145 183 86
2013年6月 5,870 -677 -587 -349
2012年6月 5,241 131 154 270
2011年6月 4,762 321 341 129
2010年6月 4,956 358 387 211
2009年6月 5,527 228 235 187
2008年6月 6,695 417 403 -5
2007年6月 6,367 389 407 -295
2006年6月 7,137 1,482 1,452 947
2005年6月 5,174 678 688 264
2004年6月 5,257 371 365 156
2003年6月 5,891 1,177 1,161 539
株式情報(5/14現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
649円 26,316,700株 17,079百万円 10.3% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
7.00円 1.1% 12.92円 50.2倍 214.51円 3.0倍
※株価は5/14終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
インテリジェント ウェイブの2018年6月期第3四半期決算の概要と通期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
クレジットカードの決済システムで国内シェアNo.1のソフトウェア開発会社。“リアルタイム処理が可能な高度なネットワーク技術”、“システムを止めないためのノンストップ技術”、及び“高度なセキュリティ技術”を技術基盤とし、カード不正利用検知システムや証券関連の情報集配信システムでも豊富な実績を有する。営業面では、筆頭株主として議決権の50.61%を保有する大日本印刷(株)及びそのグループ企業との連携が強みとなっている。
 
【事業の目的と経営方針】
事業の目的   安全、安心なITインフラを顧客に提供すること
強みである取引・決済を支える技術とシステム、及び顧客の情報資産を守るサイバーセキュリティ対策に磨きをかけていく。
 
経営方針
・安定的かつ継続的な経営体であること ・流動性の低い高度で優秀な技術者集団であること ・変化の激しいお客さまのニーズに迅速かつ的確に対応できる組織体であること ・常に先進技術を取り込む外部チャネルを確保・維持すること
 
 
【事業セグメント】
事業は、クレジットカードや証券等の金融業界やシステム開発会社を主な顧客として、ソフトウェア開発、自社製・他社製パッケージ及びハードウェアの販売、更には保守等を手掛ける「金融システムソリューション事業」と、業種・業界にとらわれず幅広く自社製・他社製パッケージを中心にしたソリューションを提供している「プロダクトソリューション事業」に分かれる。17/6期の売上構成比は、それぞれ87.9%、12.1%(営業利益の構成比は、92.7%、7.3%)。
 
金融システムソリューション事業
カード系(金融系)と証券系(非カード系)のビジネスに分かれる。金融系は、クレジットカード会社や銀行、大手システム開発会社等を主な顧客とし、自社開発のパッケージソフト「NET+1」や「ACEPlus」を用いたシステム開発を行っている。「NET+1」を用いたシステムは、店舗の端末や銀行の店外CD/ATM・海外ATM等をクレジットカード会社や銀行等のネットワークに接続して取引データの受渡しを行うためのもの(ネットワーク接続機能、決済の前提となるカード認証機能、加盟店の業務を管理する機能等を有する)。専用ハードと共に提供される。この分野で圧倒的なNo.1ブランドであり、大手クレジットカード会社のネットワークへの接続で7割のシェアを有する。 「ACEPlus」は、偽造カード・盗難カード利用などクレジットカードや銀行口座の不正利用の検知を目的とした不正検知システムであり、こちらも豊富な実績を有する(シェア6~7割)。この他、「NET+1」のオンライン接続機能を切り出したアプライアンス製品として「OnCore」を提供している。「OnCore Switch」は低コストかつ短時間で導入できる強みから、カード決済の清算業務(クリアリング)用途やスマートフォン決済時のATM接続・ネットワーク接続用途での導入が増えている。 一方、証券会社を顧客とする証券系では、金融系で培った“リアルタイム処理が可能な高度なネットワーク技術”、“ノンストップ技術”、及び“セキュリティ技術”を活かして、高速情報基盤システム(証券取引所等から提供される市況データや気配値等を素早く社内の各端末に配信するシステム)等の開発を行っている。 上記の他、アクワイアリング業務、「ACEPlus」、「OnCore Switch」のクラウドサービスも提供しており、ユーザー企業の獲得が順調。大日本印刷(株)及びそのグループ企業の顧客資産とネットワークやセキュリティ分野での強みを活かしてサービス(開発)領域の拡大にも取り組んでいる。
 
 
プロダクトソリューション事業
当事業は、カードや証券等の業界に捉われず、全ての業界・企業を顧客対象とし、顧客の業務に使用されるPC 端末(エンドポイント)のセキュリティ対策製品を主な事業領域としている。具体的には、「NET+1」や「ACE Plus」等で培ったネットワーク技術やセキュリティ技術をベースとした情報漏洩対策システム「CWAT(シーワット)」(パソコン等の端末から、コピー、印刷、ネットワーク経由等による情報の内部からの持ち出しを監視)を中心に、内部情報漏洩対策、脆弱性対策、及び外部攻撃対策について、監視・検出・診断・認証と防止・阻止の切り口からソリューションを提供している。 当事業は売上や利益の数字に表れないメリットも大きい。優れたセキュリティ関連製品を扱う事で得られる最新の情報や蓄積される技術・ノウハウ、海外の有力ベンダーとの提携により広がるワールドワイドのネットワーク、更には全ての業界・企業を顧客対象とする事による顧客層の広がりとビジネスチャンスの拡大等、目に見えない部分での貢献も大きい事業である。
 
 
2018年6月期第3四半期決算
 
 
前年同期比29.3%の増収、同9.8%の営業減益
売上高は前年同期比29.3%増の78億28百万円。カードブランド統合、スマートフォン決済、決済プラットフォーム等の大型開発案件の寄与で金融システムソリューション事業の売上が同31.2%増加した他、ハードウェアを中心にプロダクトソリューション事業の売上も同15.1%増加した。 営業利益は同29.8%減の3億66百万円。金融システムソリューション事業の開発案件で第2四半期に不採算が発生した影響やプロダクトソリューション事業での売上構成の変化で売上総利益率が5.6ポイント低下する中、人件費を中心に販管費が増加した(人件費94百万円増、採用費14百万円増、広告宣伝費9百万円増)。 尚、第3四半期末の従業員数は397名(17/6期末339名)。新卒38名、中途26名が既に入社しており、更に期末までに3名の中途入社が予定されている(自然減を織り込んで期末従業員数は400名を予定している)。
 
 
 
増収のけん引役はソフトウェア開発とクラウド。ソフトウェア開発の主な案件は、クレジットカード会社のカードブランド統合案件20億37百万円(12億81百万円増)、キャッシュレス決済関連(スマートフォン決済、決済プラットフォーム、不正検知システム等)の大日本印刷(株)向け15億96百万円(3億89百万円増)、カード会社のフロントシステム(ネットワーク接続)案件5億98百万円(3億93百万円増)等。このうち、カード会社の基幹システム更新に伴うフロントシステム(ネットワーク接続)案件の一部工程で不採算が発生した(製品保証引当金48百万円を含めて1億72百万円の原価増要因)した他、人員増で販管費が1億25百万円増加した。不採算案件への対応は今期で一巡する。
 
 
前年同期に大型案件があった反動で利益率が高い自社製パッケージ「CWAT」の売上が減少する一方、大日本印刷(株)関連のスポット案件で利益率の低いハードウェアが増加したため、増収ながら損益が悪化した。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えている事もあり、セキュリティへの関心は高まっているが、競争が激化している「Traps」を中心に他社製パッケージの売上も減少した。
 
 
 
好調な企業業績を背景にした活発なIT投資とキャッシュレス決済のためのインフラ整備で良好な受注環境が続いている事に加え、ユーザー企業の増加でクラウドサービスの受注残も順調に積み上がっている。
 
 
第3四半期末の総資産は前期末と比べて5億07百万円増の90億15百万円。自己資本比率63.5%(前期末66.4%)。
 
 
検収が増加し売上債権の回収が進んだ事で前年同期は4億37百万円だった営業CFの黒字が11億41百万円に増加した。一方、投資CFはクラウドサービス関連の開発がピークアウトした事でキャッシュアウトは減少した。
 
 
2018年6月期業績予想
 
 
通期予想に変更はなく、前期比14.5%の増収、同31.6%の営業減益
通期予想に対する進捗率は、売上高80.7%、営業利益76.3%、経常利益74.6%、純利益70.0%。プロダクトソリューション事業の利益の進捗が遅れ気味だが、企業の活発なIT投資を背景に金融システムソリューションの売上・利益が予想に対して強含みで推移しており、クラウドサービスも順調に契約を積み上げている。 最終減益が見込まれるものの、配当は予定通り1株当たり7円の期末配当を実施する考え(予想配当性向54.2%)。
 
 
(2)“進化3way“を推進
インテリジェント ウェイブを進化させるべく、「Road to 10B」、「次世代育成、確立」、及び「風土改革」の“進化3way“を推進していく。19/6期に売上高100億円の達成を目指しており(「Road to 10B」)、最終の20/6期の目標として営業利益10億円を掲げている。「次世代育成、確立」では次世代を担う人材の育成と業務の標準化・効率化による生産性向上に取り組み、「風土改革」では働きがいと充実した人生を送るための時間の創出、及びコミュニケーションの活性化に取り組む。
 
 
金融システムソリューション事業では、企業の活発なIT投資とキャッシュレス決済のインフラ整備で、当面、ソフトウェア開発の好調が続く見込み。安定した利益基盤を構築するべくクラウドサービスやAI・Fintech関連のビジネスも育成していく。 プロダクトソリューション事業では、内部犯行に対する「CWAT」の機能強化に加え、多様な脅威に対応するべく商品ラインナップを拡充して複数商品を組み合わせた面展開により(セキュリティソリューションマッピング)、外部からのサイバー攻撃に対するソリューションの提案力を強化する。 また、計画達成には量と質の両面から人財も必要であり、積極的な採用委活動を継続すると共に(新卒採用と中途採用で期末には400名体制を確立できる見込み)、教育研修制度と就業環境の整備も進める。
 
金融システムソリューション事業
クラウドサービス事業
アクワイアリング「IOASIS」については、全国の地方金融機関をターゲットに販促活動に力を入れており、初期構築費のユーザー負担分を明確にしてコスト面での対応も進めた。不正検知「IFINDS」では、Visa不正検知のユーザーに対して乗換えの提案営業を行っており、ASP事業者へのOEM供給も検討している。フロントシステム(OnCore Switch)のクラウドサービスである「IGATES」では、システム導入に際しての敷居の低さを強みに、多様なキャッシュレス決済サービスの取り込みに力を入れている。更に、QRコードを活用した決済サービスや AIを活用したサービス等、新たなクラウドサービスの開発も進めている。 現在のユーザー数は、アクワイアリング「IOASIS」が4社(18/6期中に5社目の契約が完了する見込み)、不正検知「IFINDS」が2社(うち1社は開発中。3社目の商談が最終段階)、OnCore Switch「IGATES」については2社と契約済みで現在初期開発が進められている。18/6期は個社別開発費83百万円を含む4億60百万円の売上が見込まれる。19/6期は個別開発費を含めて6億40百万円の売上が見込まれ、黒字転換する見込み。20/6期は8億円の売上を目指している。
 
AI関連
自然言語を適切に処理し、検索や情報処理の制度を向上させるための同社独自のAI技術に基づくソフトウェア「OpAI」を活用したデジタルサイネージの開発を大日本印刷(株)と進めている。不正検知システム「ACEPlus」はAIを活用したシステムであり、AIを使って過去のデータと照らし合わせて不正の疑いがある取引をカード会社に知らせる。「OpAI」は、この技術の応用であり、既に、あいおニッセイ同和損害保険(株)の損害認定業務の効率化システムに導入されている。
 
プロダクトソリューション事業
競争激化で「Traps」の新規案件獲得が減速しており、18/6期は「Traps」のソフトウェア利用料が前期の2億69百万円(16/6期1億10百万円)から2億90百万円に増加するものの、初期導入費が60百万円から15百万円に減少する見込み。「Traps」は外部攻撃対策に優れるが、「Traps」だけでは多様なリスクに対応できない事が苦戦の一因。日々新たな脅威が生まれているため、ニーズも日々多様化している。このため、製品ラインアップを拡充して面展開すると共に、コンサルティングや監視サービスも拡充していく考えだ。
 
 
「次世代育成、確立」
採用が順調に進んでおり、採用した人材は教育研修で磨きをかける。経営層、部長クラス、課長クラス、リーダークラス、入社2~3年目、新人、と階層別研修制度を整備し、技術職(専門分野の必要スキル)、イノベーション力、人間力を3本柱に次世代育成する。
 
 
風土改革
自社株式の保有促進と価値共有による中期事業計画への積極的な参画及び生産性の向上を目的に、譲渡制限付株式報酬制度(RS)を導入した。2017年10月27日に取締役7人に自己株式3,500株を、同年12月8日に従業員349人に同174,500株を、それぞれRSとして処分した。中期事業計画の対象期間である3年間の譲渡制限が付されている。
 
 
今後の注目点
18/6期は金融システムソリューション事業を中心に上振れが期待できるものの、プロダクトソリューション事業での苦戦もあり、減益決算が避けられない。しかし、来19/6期は不採算案件の影響がなくなる事に加え、クラウドサービスの利益貢献が本格化するため、金融システムソリューション事業はV字回復が見込まれる。一方、プロダクトソリューション事業では、商品ラインナップの拡充による提案力強化に取り組んでおり、施策の進捗がポイントになる。「Traps」はランサムウェア等の標的型攻撃への対応力に優れるが、万が一セキュリティを破られた場合の対応やインシデント対応・外部連携等に対するユーザーの関心も高まっている。このため、複数商品の組み合わせによる面展開を推進するべく、新たな商品の投入準備を進めている。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書更新日:2017年9月28日
基本的な考え方
当社は、「経営の革新と新技術の開発に努め、優れた安全な品質の製品を廉価でかつ迅速に社会に提供し、良好なインフラストラクチャーを構築して、多くの人々が幸福感に浸れるようなハッピー・チェインをつくる」ことを経営理念として揚げており、社会的責任(CSR)を果たし、株主や顧客、生活者、社員などさまざまなステークホルダーから信頼されることが、企業価値の向上に不可欠であると考えています。そのためには、内部統制システムを含めたコーポレート・ガバナンスの充実は、経営上の重要課題であり、すべてのステークホルダーに対して透明性の高い公正で効率的な経営を実現することが、コーポレート・ガバナンスの重要な目的と認識しています。的確な経営の意思決定、それに基づく適正且つ迅速な業務執行、並びにそれらの監督、監査を可能とする体制を構築、運用するとともに、社員一人ひとりのコンプライアンス意思を高めるために研修、教育を撤底し、総合的にコーポレート・ガバナンスの充実が図れるように努めています。
 
<開示している主な原則>
原則3-1 情報開示の充実】 (1)会社の目指すところ(経営理念等)や経営戦略、経営計画  当社は、「企業の存在意義は、社会にどれだけ役に立っているか、どれだけの価値を提供できているかで決まる。」という理念のもとで、当社に関わるすべての人の幸せを同時に実現する、ハッピー チェイン(Happy Chain)の好循環を作ることが、当社の企業活動の原点であり、この実現こそが本質的に会社の存在意義を高めるものであると考えています。 (2)コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方と方針  本報告書の「1.基本的な考え方」をご参照ください。 【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】 (方針)  当社は、株主、投資家のみなさまをはじめ、すべてのステークホルダーに対して、当社の経営方針、事業戦略や財務情報に関する情報を、(1)正確であること(2)公平であること(3)タイムリーであること(4)わかり易いことを原則として、情報発信に努めています。 (体制) (1)当社は、IR業務を兼務する担当者を設置しています。IR活動を行うに当たっては、代表取締役社長も積極的に対話に臨み、建設的な対話を促進しています。 (具体例) ・個人投資家向けの定期的に説明会を開催  東京、大阪ほか地方都市で開催される個人投資家向け会社説明会への参加 ・機関投資家向けの定期的な説明会を開催  四半期決算及び期末決算発表後の説明会開催 ・機関投資家との個別面談を随時に実施 ・情報開示の充実  事業報告書の発行、コーポレートサイドを通じた情報開示 (2)株主等との対話の内容については、必要に応じ、IR担当者から代表取締役社長に報告することとしています。 (3)当社は、IRポリシーのもとで適切な情報開示に努めるとともに、インサイダー取引防止規程に従い、インサイダー情報の管理、徹底を図り、漏洩防止に努めています。