ブリッジレポート
(6071) 株式会社IBJ

プライム

ブリッジレポート:(6071)IBJ vol.2

(6071:東証1部) IBJ 企業HP
石坂 茂 社長
石坂 茂 社長

【ブリッジレポート vol.2】2018年12月期第2四半期業績レポート
取材概要「前回のレポートでは、「短期的には、やや一服感のある婚活業界で今期売上高100億円突破、2桁の増収増益を達成できるか」が注目点と書いたが・・・」続きは本文をご覧ください。
2018年9月12日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社IBJ
社長
石坂 茂
所在地
東京都新宿区西新宿1-23-7 新宿ファーストウエスト
決算期
12月末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2017年12月 9,461 1,493 1,493 1,036
2016年12月 5,268 1,111 1,106 725
株式情報(9/5現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
636円 41,303,700株 26,269百万円 40.1% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
未定 - 23.15円 27.5倍 83.19円 7.6倍
※株価 9/5終値。発行済株式数、BPSは18年12月期第2四半期決算短信より。ROEは前期実績。
 
株式会社IBJの2018年12月期第2四半期決算概要などをお伝えします。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
少子化問題解決をミッションとする婚活業界最大手。同社が開発・運営する日本最大級のネットワークである日本結婚相談所連盟(IBJお見合いシステム)の登録会員数は約60,000名にのぼる。「システム × ヒト」のビジネスモデルが支える強固なポジション、事業の成功確率を高める圧倒的な会員基盤、加盟相談所への手厚いフォローアップ体制などが特徴・強み。2022年「日本の成婚組数の3%の創出」、「売上高300億円、営業利益50億円達成」を目指し、既存事業の強化に加え、シニアマーケット、国際結婚など新市場創造を進めて行く。 【1-1 沿革】 少子化の進行が明確でありながらもその対策がなされていない状況に危機感を覚えていた石坂茂氏(現 株式会社IBJ代表取締役社長)は、日本では少子化対策のためには単なる出会いの機会ではなく成婚カップルを生み出さなければ意味がないと考え、いち早く婚活サイトの開発・運営を手掛け実績をあげていった。 2003年にはその実績に関心を持ったヤフー株式会社がブライダルネットの株式を取得したが、成婚カップルを生み出すにはネットのみでなく人手を介したリアルな機会の提供も不可欠と考えていた石坂氏は、よりダイナミックに婚活支援事業を展開するため2006年に現経営陣によるMBOを実施し、ヤフー株式会社グループカンパニーから独立して株式会社IBJを設立した。 既にネット集客の基盤やノウハウを持っていた同社は、ネット婚活を拡大させながら、2007年には銀座と新宿に直営ラウンジを新規出店し、カウンセラーがサポートを提供するラウンジ事業を開始した。 石坂社長の構想通り、マッチングに際し人手によるサポートを付加することで他社よりも多くの成婚カップルを生み出すことに成功した同社は、並行して結婚相談所ネットワークの構築に乗り出す。 当時日本全国には3,000社以上の結婚相談所があったが、会員とのやり取りやお見合いの日時連絡などを電話・手紙・FAXで行っており、手間の多さや間違いの発生などが結婚相談所運営の大きな課題と見た石坂社長は、IT化によって結婚相談所の事務処理能力を大きく飛躍させるシステムを構築し、日本各地域における仲人のキーパーソンに同システム採用の提案を行った。 当初は理解が進まず苦労を重ねたが、会員集客媒体としての利用に限って提案していくと、毎月コンスタントな会員獲得が進むことから相談所にとっては無くてはならないものになっていった。その後、改めて同システムの利用を提案すると、業務効率を大幅に改善する同システムの有用性も理解され、全国規模で加盟相談所数は増大していった。 加盟相談所および会員数の増大と並行して婚活サイト「ブライダルネット」が日本最大規模のソーシャル婚活メディアへと成長するに伴い業容は急速に拡大し、2012年には大阪証券取引所JASDAQ(スタンダード)に上場。 その後、2014年の東証2部への市場変更を経て、2015年、東証1部へステップアップした。 【1-2 経営理念】 経営理念においては、「すべてのステークホルダーとの縁、つながりを大切にすること」を、クレドにおいては、「顧客満足度の高いサービスを提供すること」を目標として掲げている。 また、「人と人をつなぐのは、人だと思う。」をブランドステートメントとし、理念としての共有を図っている。 【1-3 市場環境】 <未婚者状況> *上昇続ける未婚率。交際相手のいない未婚者も増加。 総務省の国勢調査によれば、25-34歳の未婚率は男女とも上昇を続けている。 また、「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査) 2015年実施」によれば、18-34歳の未婚者のうち、交際相手のいない未婚者の割合も年を追って上昇している。 *未婚者の結婚の意思 ~「結婚する意思」は引き続き高水準~ 一方で、結婚する意思を持つ未婚者の割合は18~34歳の男性で85.7%、女性で89.3%となっており、「結婚したい」と考えている未婚者の数は依然高水準である。 また、「一生結婚するつもりはない」と答えた未婚者の割合が男女とも上昇してはいるが、その中でも今後「いずれ結婚するつもり」に変わる可能性があると回答した割合は、男性44.1%、女性49.8%となっており、今は結婚するつもりの無い層も半数近くは今後結婚に向けて動き出す可能性がある。 *独身でいる理由 ~25歳を過ぎると適当な相手にめぐり会わない~ 未婚者に独身でいる理由を尋ねたところ、18~24歳の若い年齢層では、「若すぎる」、「必要性を感じない」など積極的な動機が無いことが多く上げられているが、25~34歳では、「適当な相手にまだ巡り会わない」という理由を挙げる割合が増加しており、出会いやその機会に対するニーズが大きいことが窺える。 以上のことから、未婚率および交際相手のいない未婚者の割合は上昇しているが、未婚者の多くは結婚の希望がないわけではなく、出会いやその機会が少ないというのが現状である。 ただ、こうした市場ニーズに対し、実際に結婚というゴールまで導くには単なる機会提供(マッチング)では不十分で、結婚相談所による仲人のサポートが不可欠であるということがユーザーへの調査で明らかになっている。 こうした市場環境の下、同社は日本最大の会員ネットワーク、専任カウンセラーの手厚いサポートなどの強みを活かして、婚活市場のトップランナーとなっている。 【1-4 事業内容】 報告セグメントは、婚活サイトの運営や婚活イベントの企画・開催などを行う「婚活事業」と、婚活事業で構築した会員基盤を活用して事業ドメインの拡大を目指す「ライフデザイン事業」の2つ。 両事業とも複数の事業で構成されている。 (1)婚活事業 以下の各事業を通じて婚活を支援している。 ①コミュニティ事業 実績17年の日本最大級のネット婚活サービスサイト「ブライダルネット」の運営を行っている。 月会費は男女同額の3,000円。一般的な婚活アプリやマッチングサービスと比較して男女とも結婚に真剣な人が集まりやすく、それだけ真剣な出会いも多く生まれている。 月間メッセージ交換成立数は58,000件を突破し、月間カップル成立数は約20,000名にのぼる。 加えて、2018年12月期からは、「婚シェル」という担当スタッフによる婚活サポートをスタートさせた。 婚シェルは、プロフィールの書き方、初デート取り付けのためのやりとりなど、ネット婚活ではありながらも、同社の強みである「ヒト」ならではのきめ細かいサポートを提供している。 収益モデルは、月会費課金者数 × 月会費 約3,000円。 ・1ヶ月プラン 3,980円 ・3ヶ月プラン 8,640円(1ヶ月当たり2,880円) ・6ヶ月プラン 12,960円(1ヶ月当たり2,160円) ・12ヶ月プラン19,800円(1ヶ月当たり1,650円) ②イベント事業 結婚活動を目的に参加するイベントを企画し、WEBサイト「PARTY☆PARTY」を通して集客を図り、直営・FC合わせて全国44か所(2018年6月末現在)の自社ラウンジで開催するとともに、外部開催の企画型イベントの開催も行っている。 毎月約4,000件のパーティーを開催し、約60,000名が参加している。 加えて、東証1部上場企業の同社が運営していることも参加者に安心感を与えている。 収益モデルは、イベント参加費 月平均3,500~3,800円×イベント動員数。 ③ラウンジ事業 同社の全国13か所の結婚相談ラウンジ「婚活ラウンジIBJメンバーズ」で、会員に対する婚活支援を提供している。 会員数は同社が運営する日本最大級のネットワークである日本結婚相談所連盟(IBJお見合いシステム)に加盟している結婚相談所(個人・法人)約1,700か所の登録者も含め約60,000名と業界最大である。 業界最大の会員ベースに加え厳正な入会審査により上質な出会いを提供しているほか、業界最先端の検索システムによるマッチングを提供している。 加えて、婚活プロフェッショナルの専任カウンセラーによる手厚い成婚サポートが大きな特徴である。 カウンセラーは、会員の人柄や性格など、自分自身では気が付いていない魅力を見つけ出し、カウンセラーとしての経験からマッチする相手を紹介するなど、システムだけに頼るのではなく、人の手によって出会いを創造することで成婚の可能性を高めている。 IBJメンバーズの成婚とは「婚約=会員同士がお互いに結婚すると決めること」を指す。 大手結婚相談所の多くは成婚を、結婚を視野に交際した時点としているところが多いが、会員が結婚相談所で活動する目的は結婚のためであることに加え、同社の社会的意義である少子化問題解決に貢献するためにも、婚約を成婚の定義としている。 このため、カウンセラーは例えば両親へのあいさつの段取りなど、成婚までを手厚くフォローしている。 こうした結果、2017年12月期の成婚者数は前期比18.4%増の1,269名、成婚率(2017年7月~12月の半年間での主要コース実績)は51.5%と、ハイレベルな成婚定義でありながらも業界屈指の成婚率を実現している。 またこうした手厚いサポートの過程で会員とカウンセラーの関係性は深まるのが一般的であるため、新婚旅行、保険といった結婚後の様々なシーンに関連するサービスを提供するライフデザイン事業への誘導にもつながっている。 収益モデルは、会費(年換算 約22~24万円) × 会員数。成婚時には別途成婚料20万円が発生する。 ④コーポレート事業 前述の日本最大級のネットワークである日本結婚相談所連盟(IBJお見合いシステム)に加盟している結婚相談所(個人・法人)約1,700か所へのシステム提供のほか、新規開業支援や加盟営業を行っている。 同社では中期経営計画で日本の成婚組数の3%をIBJから創出する事を目標としているが、その達成のためには加盟相談所の新規獲得、既存加盟相談所の育成が不可欠であり、営業人員を増強するほか、相談所ビジネス成功のためのメソッドの提供にも力を入れている。 収益モデルは、加入した相談所の開業加盟金150万円およびシステム利用料約2~3万円×加盟相談所数。 (法人の場合は開業加盟金300万円から) (2)ライフデザイン事業 婚活事業で構築した会員基盤をベースに、婚活から派生する様々なフィールドにおいてサービスを提供している。 ①ウエディング事業 2016年に子会社化した(株)ウインドアンドサンが、創刊25年のウエディング情報誌「WIND AND SUN」を発行するほかWEBSITEも運用し、ウエディング関連の法人に対して広告サービスを提供している。 また、WEBSITE「ウェディング navi」やウェディングサロンの運営を通じた提携結婚式場への送客も行っている。 ②旅行事業 2016年に子会社化した(株)かもめが、新婚旅行に加え、海外パッケージツアーの企画、および大手旅行代理店へのツアー提供やオーダーメイド旅行のアレンジ等を行っている。 この他、2017年にソニー生命保険株式会社と株式会社IBJライフデザインサポートを設立。婚活中から結婚、新生活、子育てなどのライフステージに合わせたライフプランニングをサポートしている。 主な収益モデルは以下の通り。 *式場送客費 披露宴などの飲料費の10%(平均5~10万円) × 送客件数 *ハネムーン旅行代金 平均50~70万円 × 成約件数 *保険成約手数料 3~20万円 × 成約件数 【1-5 特長と強み】 (1)「システム × ヒト」のビジネスモデルが支える強固なポジション 同社が運営する日本結婚相談所連盟(IBJお見合いシステム)は加盟相談所数約1,700社、会員数約60,000名と最大であることに加え、婚活サイト・お見合いパーティー・合コンといった様々なサービスの集客力やサービスレベルは業界トップクラスであり、婚活業界において極めて強力なポジションを構築している。 このポジショニングを可能にしているのが、システムとヒト、それぞれの強みを融合させたビジネスモデルである。 システム面では、高いスキルを持つ自社のWebエンジニアチームが独自のシステムを開発・運用している。 そのため、顧客のニーズに的確に対応して、画面の見やすさ、操作しやすさといったUI(ユーザーインターフェース)の改善や、顧客データベース有効活用によるマッチング精度の向上などUX(ユーザーエクスペリエンス)の向上を迅速に行うことが可能であり、会員及び加盟相談所の満足度向上に繋がっている。 一方、ブランドステートメント「人と人をつなぐのは、人だと思う。」にあるように、成婚主義の追求には「ヒト」の力が欠かせないと考える同社では、ひとりひとりの会員に寄り添い、成婚にまで導くために必要不可欠なカウンセラーを独自のスキル教育プログラムで育成している。 このような「システム × ヒト」のビジネスモデルをベースに構築した婚活業界における圧倒的なポジションは高い参入障壁となっている。 (2)事業の成功確率を高める圧倒的な会員基盤=顧客資産 IBJお見合いシステムの会員約60,000名を始めとして、婚活パーティー参加者数 月間約60,000名、月間お見合い数 月間28,000件など、その会員基盤は常に約100,000名が稼働している。 同社ではこの「活きた会員基盤」を使ってライフデザイン事業を始めとした様々な新事業の展開を目指しているが、常に稼働しているため、成功確率を高めることが出来る点が大きな差別化要因になると同社では考えている。 規模だけではなく、常に稼働している会員基盤はバランスシートには表れることはないが、他社にはない同社の優れた顧客資産である。 (3)加盟相談所へのフォローアップ体制 カウンセラーによる会員に対するきめ細かい婚活支援が同社の大きな特徴となっているが、加盟相談所に対しても結婚相談所ビジネス成功のための手厚い支援を行っている。 同社では2007年以来、直営ラウンジにおいて、集客、対面営業(入会)、入会者へのオリエンテーション、お見合いから成婚実現の各局面において様々な手法を実践してきており、その中で効果の高かったもののみをメソッド(方法・方式)として集約し、加盟相談所に提供している。マニュアルではなく成功メソッドであるため、加盟相談所は結婚相談所ビジネスの成功の道を最短で進むことが出来る。 【1-6 ROE分析】 ROEを目標としては掲げていないが、高利益率を背景に高いROEを実現している。 【1-7 株主還元】 2017年12月期まで5期連続増配で、配当性向は30%を超している。 また下記のような株主優待制度を設け、保有株数に加え、保有期間による優待を実施している。
 
 
2018年12月期第2四半期決算概要
増収も成長のための積極的な投資で減益 売上高は、前年同期比8.6%増の48億円。両事業とも増収。粗利額も増収率を上回り同8.2%増加した。 営業利益は同1.0%減の6億60百万円。人材、出店、広告など成長のための積極的な投資の実施で販管費は同11.1%増加した。 イベントを主体とするマッチング事業が予算未達となったが、結婚相談所事業がカバーし、上期予想をほぼ達成した。 (2)事業別動向 1.コミュニティ事業 競合他社のM&Aにより新たなユーザー層を開拓し顧客基盤の拡大を進めた。また新料金プランを設定したほか、ブライダルネットのアプリをリリースし、ユーザビリティの改善を進めた。 2.イベント事業 企画やマーケティングの見直しでイベント動員数は回復傾向にある。 第1四半期にリリースしたPARTY☆PARTYアプリのダウンロード数は6万件を突破した。 3.ラウンジ事業 成婚者数は前年同期比35.5%増の401名と過去最多を更新した。 また入会者数も1,118名でこちらも過去最高となった。 4.コーポレート事業 加盟相談所数は前年同期比280社増の1,749社と堅調な伸びが続いている。 月間お見合い件数は28,000件を超え大きく増加した。 (3)財政状態とキャッシュ・フロー 現預金の増加等で流動資産は前期末に比べ2億93百万円増加。有形固定資産および投資その他の資産の増加で固定資産は同1億1百万円の増加。資産合計は同3億95百万円増の66億15百万円となった。 一方、長期借入金の増加等で負債合計は同1億96百万円増加し、32億45百万円となった。 新株予約権の行使、利益剰余金の増加で純資産は同1億99百万円増の33億70百万円。 この結果、自己資本比率は前期末より0.4ポイント低下し50.5%となった。 長期借入、新株予約権の行使、新株予約権の発行などで財務CFはプラスに転じた。 キャッシュポジションも上昇した。
 
 
2018年12月期業績予想
通期業績予想を修正。増収減益。 通期業績予想を修正した。売上高は、Diverse社のM&Aにより上方に修正(18年7月~12月の6か月間を取り込む。)した一方、第1四半期(1-3月)においてイベント事業の動員数が伸び悩んだこと、今後の中長期的な成長を見込んだ新店舗のオープンに伴う費用並びに人員増強により減益を見込んでいる。 今期は中期経営計画に掲げた「2022年 売上高300億円、営業利益50億円」実現に向けた種まきの時期と位置付け、大型店舗の出店(3店舗)、人員増強・人材投資、オンライン婚活の強化、アプリ開発・システム投資、ライフデザイン事業の拡大など投資に専念する。 また、今期は日本の結婚組数約60万組の1%にあたる年間6,000組の成婚を創出する見通しである。 (2)トピックス ◎結婚支援事業を提供する株式会社Diverseを子会社化 前回のレポートでも紹介したが、2018年5月22日、株式会社ミクシィ(東証マザーズ、2121)の連結子会社で結婚支援事業を提供する株式会社Diverseの全株式を譲り受ける内容の契約を締結し、2018年7月2日、株式譲渡が完了した。取得価額はアドバイザリー費用等を含めて4億22百万円。 Diverse社は、ライフスタイルの変化に合わせた出会いのインフラと、より多くの人がインターネットをきっかけとして出会える社会を作り、少子高齢化社会において、人とのつながりを建設的に紡ぎ出す事業体として先んじて規範となることを目標に、各種結婚支援事業を展開している。 結婚支援、友人・恋人探し、恋愛メディアの3領域で、比較的ライトなユーザー層(婚活潜在顧客層)をターゲットにマッチングアプリを中心とした事業を展開するDiverse社と、複合的な婚活サービスを展開するIBJが包括的に連携することにより、婚活潜在顧客を掘り起こし、一貫したサポートが提供出来る。 さらに「機能性を重視したインターネットサービス」×「ヒトを重視したリアルサービス」により、相互の得意とする事業ノウハウを共有し、グループシナジーを高めることで、グループ全体のさらなる価値向上(=顧客満足度の向上)を目指して行く考えである。 ◎住宅ローンサービスを開始 住宅ローン専門の金融機関、アルヒ株式会社(7198、東証1部)とフランチャイズ契約を結び、成婚後のカップルをサポートするライフデザイン事業のメニューの一つとして住宅ローンサービスを2018年8月より開始した。 アルヒは、住宅金融支援機構が民間金融機関と連携して提供している全期間固定金利の住宅ローン「フラット35」における業界シェアが8年連続No.1という実績を有する国内最大手の住宅ローン専門金融機関。 業界最低水準の金利や、ニーズに合わせた商品ラインナップなどが、高い評価を受けている。 また、住宅ローン商品を中心に、理想の家探しの手伝いから、住宅購入後の日々の暮らしのコストを下げるサービスまで、ライフステージに合わせた豊かな住生活の実現を支援している。 IBJは、アルヒのノウハウや商品性といった支援を受け、東京都内でIBJが運営するARUHIフランチャイズ店舗をオープンした。 IBJが提供する住宅ローンサポートでは、ライフデザインメソッドに基づき、結婚式・旅行・子育て・資産形成・老後といった将来の様々なライフイベントをシミュレーションしながら、成婚カップルに納得感ある住宅ローンをご案内することが可能。同サービスは婚活会員以外も利用することができる。 IBJが昨年からスタートした保険提案サービスでは、提供開始から1年を経て、月間約40件の成約へとつながっており、今回の住宅ローンサービスも、早晩成果に結びつくと見込んでいる。
 
 
中期経営計画と成長戦略
同社は今期2018年12月期を初年度とする5か年の中期経営計画を発表した。 前中期経営計画を踏まえ、新たな目標に向けて意欲的な取り組みを進めて行く考えだ。 (1)新中期経営計画(2018年から2022年)について ①概要 以下の目標を掲げている。 日本の成婚組数の3%をIBJから創出する。 売上高300億円、営業利益50億円を達成。 上記目標達成のために、既存事業であるライフデザイン事業の拡大とともに新たに以下の3つのマーケットを創造する。 ①AIを活用したマーケット ②シニアマーケット ③国際結婚マーケット 目標達成のための方針としては、 「加速度的な成長に向けて婚活事業や周辺領域へ戦略的にM&Aを実行する。」 「成婚組数3%達成に向け、成婚主義を徹底し、ヒトやシステムへ積極的な投資を行う。」 「全国へ拡大する強固なネットワークを構築する。」 の3つを挙げている。 ②市場環境 【1-3 市場環境】の項で触れたように、未婚率および交際相手のいない未婚者の割合は上昇しているが、未婚者の多くは結婚の希望がないわけではなく、出会いやその機会が少ないというのが現状である。 婚活業界はそうしたニーズを的確に取り込み、婚活サービスで結婚した人の割合は3年間で2.4倍と、利用者は急増している。 また、大手企業の参入が相次いだことにより、20代を中心とした潜在顧客の開拓が進み、婚活サービスの利用は今後も一段と浸透していくことが予想される。 現在の市場規模は660億円程度に過ぎないが、婚活サービスの利用浸透とともに、約1兆円と推定される潜在市場が顕在化してくるとも予想されている。 こうした成長性に加え、社会的な課題である少子化解消の視点から「ESG投資」として位置づけ婚活業界へ投資する機関投資家や金融ファンドも増加しており、婚活業界を取り巻く市場環境は中長期的に良好であると見られている。 ③今後の取り組み そうした環境の下、同社では「成婚」にこだわったサポートを提供し、顧客満足度の更なる向上を図っている。 大手の結婚相談所などは真剣交際に至った時点を「成婚」と定義しているケースが多いが、実際の婚活は真剣交際後の親の了承やプロポーズなどを経て初めて婚約に至るものであり、様々なハードルを乗り越える必要がある。 同社では、「お見合い→交際→プロポーズ→婚約」までの各段階において適切なヒューマンサポートを提供しており、そうしたハードルを全て乗り越えた後に婚約まで至って初めて「成婚」と定義している。 こうした成婚にこだわったサポートを提供しながら、以下のような取り組みに注力し、更なる成長を追求していく。 ≪①強みのブラッシュアップ≫ 前述したように婚活業界における同社のポジションを揺るぎないものとしているのは、「システム」と「ヒト」双方によるサポート体制であるが、それぞれの強みをブラッシュアップし、競争優位性を更に強化する。 (システムの強み) 加盟相談所約1,700社、会員数約60,000名、仲人約3,000名の日本最大のお見合い会員ネットワークは他の追随を許さない。 また、検索、お気に入り登録、お見合い申し込み、担当仲人との連絡ができるシステムは会員、加盟相談所双方にとって極めて有用なシステムである。 今期はPARTY☆PARTYのアプリをリリースし、更に婚活への参加を容易なものとした。また、システムのUI(ユーザーインターフェース)、UX(ユーザーエクスペリエンス)を向上させ、利用者の満足度を更に高めていく。 (ヒトの強み) 婚活支援17年の中で蓄積された成婚メソッドは、同社独自の成功ノウハウであり、加盟相談所の課題解決に大きな力となっている。また前述の仲人ネットワークも同社を支える強力な基盤である。 加盟相談所、仲人との関係をより強固なものとするために、成婚メソッドを直営店から加盟相談所に波及させるIBJメソッドスクールを展開するほか、人数集めではなく成婚を目標としたサポート重視の料金体系の徹底、営業・専任カウンセラー・婚シェルの採用・育成強化を目的とした育成専門部署を設置し、ヒトの強みを一段と強化する。 ≪②領域の拡大≫ これまでのサービス提供領域である婚活・結婚に加え、その後のライフステージにおける様々なシーン(保険、住まい、出産、育児、旅行、セカンドライフなど)に関するサービスを多面的に提供する。 現在ライフデザイン事業においては、結婚カップル年間6,000組、IBJお見合いシステム登録会員数約60,000名という基盤をベースに結婚式場への送客、保険成約、ハネムーン成約などで実績が出始めているが、更に実績を積み上げていく。 ≪③人工知能(AI)を婚活サービスへ導入≫ 同社ではAI(人工知能)に活用に積極的に取り組んでいる。 まず、既に大きな実績を有する同社の人材育成手法「IBJメソッド」にAIを取り入れ、カウンセラー一人当たりの成婚創出数向上を図る。 下のグラフのように、AIの導入により来期は2016年比2倍以上の成婚創出を実現させる考えだ。 AIの導入効果としては、マッチングプロセスの効率化、マッチング精度の向上に加え、婚活パーティーの受付・案内・パーティー説明といった、ルーティーン業務をAIロボットに代替させること等を挙げている。 将来的にはお見合いの立ち合いや契約説明など、AIが幅広い業務を担って行く予定であり、一方で、人的リソースはヒトの手でしかできない会員のケアなどに振り分け、今まで以上の顧客満足度を実現する。 ≪④シニアコミュニティへのサービス提供≫ 少子化の解決を自社の社会的存在意義と認識し活動してきた同社だが、高齢者の孤立化も日本が解決しなければならない重要な課題と考えている。 そこで、シニアの趣味として人気のある旅行などを切り口としたパートナーとの出会いを提供する新サービス「サードプレイスコミュニティサービス」をスタートさせる。 これは40歳以上の男女限定のメンバーシップ制度の下、旅、ワイン、ゴルフといった共通の趣味をベースにした部会を設けてパーティーや旅行などのイベントを企画・開催するとともに、メンバー同士1対1の会食もセッティングするというもの。結婚相談所ではなく、楽しく充実した人生を送るための新たなコミュニティを提供する。 ≪⑤国際結婚の推進≫ 日本の総結婚組数に占める国際結婚の割合は5%台で推移しており、今後も一定のニーズが見込まれる。 国際結婚における日本人女性の国別結婚相手の割合のトップは25.4%で韓国人男性となっており、日本人男性の国別結婚相手の割合でも韓国人女性は第3位となっている。 地理的条件に加え日本におけるK-POPや韓流スター人気がその背景にあると思われるが、同社では人種や国籍を超えた出会いの機会を提供し、日本の結婚組数増加を図ることも意義の大きいことであると考えており、「日本人 × 韓国人」を中心とした国際結婚サービスの提供開始を検討している。
 
 
今後の注目点
前回のレポートでは、「短期的には、やや一服感のある婚活業界で今期売上高100億円突破、2桁の増収増益を達成できるか」が注目点と書いたが、残念ながら減益予想となってしまった。 ただ、これは競合他社に対する優位性を更に強める戦略投資の結果である点を改めて認識しておくべきだろう。 ラウンジ事業およびコーポレート事業は好調で、イベント事業のイベント動員数も回復傾向にある中で、短期的には、コミュニティ事業における月会費課金会員数がどこで反転するかが注目される。 一方、中長期的には引続き「成婚組数3%の創出」、「売上高300億円、営業利益50億円の達成」に向けた、シニアマーケットや国際結婚での新市場創造の進捗を注目したい。
 
 
 
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
◎コーポレートガバナンス報告書 最終更新日:2018年3月26日 <基本的な考え方> 当社は、機動的かつ弾力的な経営を行いつつ、経営監視機能を充実させ、経営の健全性、透明性を確保することによって、利害関係者と長期的かつ安定、継続した良好な関係を築くことが、企業経営において必要不可欠であると認識しております。そのために、組織体制の整備だけでなく、全社一丸となってコンプライアンス意識を向上させ、また、リスク管理を強化した経営にあたることを基本方針としております。