ブリッジレポート
(3960) 株式会社バリューデザイン

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ブリッジレポート:(3960)バリューデザイン vol.7

(3960:東証マザーズ) バリューデザイン 企業HP
尾上 徹 社長
尾上 徹 社長

【ブリッジレポート vol.7】2018年6月期業績レポート
取材概要「第4四半期の初期売上およびシステム利用料売上は第3四半期終了時点の見込みを大きく上回り、システム利用料売上は過去最高を記録した。顧客企業数・・・」続きは本文をご覧ください。
2018年10月24日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社バリューデザイン
社長
尾上 徹
所在地
東京都中央区日本橋茅場町2-7-1
決算期
6月末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2018年6月 2,053 79 64 33
2017年6月 1,738 -12 -44 -87
2016年6月 1,631 188 163 150
2015年6月 1,243 -176 -187 -550
2014年6月 1,031 20 10 20
株式情報(10/5現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
2,330円 1,465,600株 3,414百万円 4.1% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
0.00円 - -118.08円 - 581.79円 4.0倍
※株価は10/5終値。発行済株式数は直近期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。
 
株式会社バリューデザインの2018年6月期決算概要、今後の取り組みなどをお伝えします。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
交通系電子マネー(Suica等)や流通系電子マネー(WAON、nanaco等)に代表されるプリペイド型電子マネーを自社ブランドで発行可能にする「バリューカードASPサービス」の提供により、企業のブランディングやプロモーションを支援。Suica等と異なり、導入企業の自社店舗でのみ利用可能とする代わりにインセンティブ等で顧客を囲い込む販促ツールである「ハウスプリペイドカード」と、利便性を提供する決済ツールとして導入企業がクレジットカード会社等と連携して発行する「ブランドプリペイドカード」の2種類を展開。2018年6月末時点でのハウスプリペイドの導入企業数、店舗数はそれぞれ620社、56,800店舗と国内最多。No.1の導入実績に基づく成功のノウハウ、強固な営業ネットワーク、「600社を超す導入企業」という顧客資産から生み出される安定したストック型収益が売上の半分強を占めており強み。開拓余地の大きい国内市場で更に高い成長を追求するとともに、海外市場でも国内同様に顧客ストックを一気に積み上げて大きな飛躍を目指す。 【1-1 沿革】 クレジットカード会社で新たな決済手段の開発に取り組んでいた尾上社長は、アメリカでサーバー管理型電子マネーである「ハウスプリペイド」、「ブランドプリペイド」が普及・拡大していることを知り、数年後にはその波が日本にも必ず到来することを予想。いち早く導入に動くが、当該クレジットカード会社では既に非接触IC型電子マネーへの取り組みが中心となっていたため、新たにサーバー管理型電子マネーを手掛けるための人員も予算も不足しており、導入を進めることは難しいのが現実であった。 そうした中、尾上社長は、成長が見込まれる「ハウスプリペイドカード」、「ブランドプリペイドカード」を日本で是非とも事業化したいと考えクレジットカード会社を退社し、2006年7月に同社を設立した。 「ハウスプリペイドカード」という文化が無い日本で当初営業活動は苦戦したが、低価格の専用端末を武器に店舗数10店舗程度の小規模事業者を中心に顧客数は着実に増加し、一定のシェアを獲得する。ハウスプリペイドカードマーケットの拡大に伴いシェアは一段と上昇し、顧客規模も中堅、大手へと拡大していった。 【1-2 経営理念など】 「アジアNo.1のプロセッシングカンパニーを創る」を経営ビジョンに掲げ、『「バリューカード」を通じ、サービス提供企業と消費者のコミュニケーションの架け橋となることで、双方のメリットを極大化し、社会に貢献します。』と謳っている。 (同社におけるプロセッシングとは、自社開発の「バリューカードASPサービス」を使用しての残高管理業務やカード発行ノウハウは無い事業会社に対するカード発行支援業務を指す。) 【1-3 市場環境】 ◎市場動向・概要 高い安全性、効率性の向上といった発行者、利用者双方のニーズから、「現金決済比率の低下、電子決済のウェート拡大」が続いている。 中でもプリペイドカードは今後も更なる伸長が見込まれている。 国内プリペイドカード市場は2021年度に13兆円に拡大すると予想されている。 中でもハウスプリペイドカードは2015年度から2021年度までの年平均成長率は10.5%で市場規模は1.9兆円に拡大。ブランドプリペイドカードは同じく年率35.2%成長で1.7兆円へと、市場平均を大きく上回る高成長が見込まれている。(いずれも矢野経済研究所調べ。) ◎プリペイド決済の種類 プリペイドによる決済には以下のような種類がある。 同社の「バリューカードASPサービス」はサーバー管理型プリペイドカードシステムにあたる。 サーバー管理型電子マネーは非接触IC 型電子マネーに比べ1枚当たりのカード単価など導入コストが安価であることに加え、その特性を活かして、例えば「今日から1週間は付与ポイント倍増!」といったようなインセンティブプログラムを顧客企業のニーズや状況に合わせてサーバー側で柔軟に設定、実施できる点が大きな特長である。 一般社団法人日本資金決済業協会の調査によれば、前払式支払手段(プリペイド)の媒体別年間発行額合計は、平成27年度 21.5兆円で、過去5年間の成長率は年率4.2%。媒体別には発行額が最多だったのはIC型だが、磁気型や紙型が減少傾向にあるのに対し、最も伸長したのはサーバー型だった。 上記のようなサーバー管理型電子マネーのメリットを発行者が評価した結果と言えるだろう。 企業が費用対効果を追求する姿勢をますます強める中、顧客囲い込みのための有力な手段としてサーバー管理型電子マネーを用いたプリペイドカード需要は今後も引き続き増大していくものと思われる。 ◎同業他社 ハウスプリペイドカード事業では国内シェア40%超を有しており業界首位である。 豊富な導入事例とノウハウで他社に対して大きなアドバンテージを持っている。(詳細は、「1-5 特長と強み」を参照) 【1-4 事業内容】 自社の独自ブランドで発行が可能な「ハウスプリペイドカード」と、VISA、MasterCardを始めとする国際ブランドと提携し、従来のハウスプリペイドカードの機能にVISA、MasterCard等の国際ブランド加盟店での決済機能を搭載した「ブランドプリペイドカード」を展開しており、この2つを事業セグメントとしている。 (概要) 自社ブランドによるプリペイドカード発行を希望する企業に対して同社が自社開発したサーバー管理型プリペイドカードシステム「バリューカードASPサービス」を提供している。 「バリューカードASPサービス」導入企業は、専用端末を設置するのみで、ハウスプリペイドカードシステムの導入が可能である。 ハウスプリペイドカードの概要、導入企業および消費者のメリットは以下の通り。 同社はプリペイドカードを単なる決済手段にとどまらせず、企業と消費者(ユーザー)をつなぐマーケティングツールとして位置付け、プロモーション、マーケティング、ブランディングの観点から企業の販売促進活動を支援している。 即ち、バリューカードASPサービスにより提供するプリペイドサービスを効果的に活用し、導入企業の客数・来店頻度・客単価などの指標の上昇、売上向上への貢献を目指す点が同社の大きな特徴である。 もちろん多様化する決済手段を最適化するとともに、店舗、消費者双方の決済に係る利便性向上にも貢献している。 ~販促支援活動~ バリューカードASPサービス導入店舗から収集される、プリペイドカードの利用状況等のデータを一元的にサーバー管理しており、導入効果を可視化するデータ分析ツールをベースに以下のような支援を行っている。 カード発行枚数、アクティブカード枚数、入金・利用単価と頻度、店舗別利用状況等の分析レポートを提示し、サービス導入店舗のプリペイドサービス導入の効果検証・効果分析を定期的に実施。 入金キャンペーン等、プリペイドカードを活用した販促施策を企画段階から支援。企画→実行→分析→改善のPDCAサイクルを回し、ブラッシュアップを提案。 バリューカードASPサービスを導入している他社の販促事例やその効果等の情報を提供し、より効果的なプロモーション施策を提案。 (導入事例:いきなりステーキ 「肉マイレージカード」) 以下、株式会社ペッパーフードサービス担当者へのインタビューを、バリューデザイン社HPから抜粋、引用。 導入の目的・理由 いきなり!ステーキは、お肉をお客様の前でお好みの量にカットして召し上がっていただくというスタイルです。いきなり!ステーキ第1号店が2013年12月5日に銀座でOPENして以来、リピーターのお客様からご自身が食べてきた記録を残したいという声が多くあがり、かねてから一瀬社長が構想していた飛行機のマイレージのようなものができないか?という案が具体化されました。 導入にあたっては、食べた量を目でみることができるリライト式や通常のポイント仕組み等、複数社が候補にあがりましたが、せっかく持って頂くなら高級感のあるカードが良いということと、将来的にチャージができるということに魅力を感じ、バリューデザインに決めました。 導入された結果、どのような変化がありましたか? 肉マネーチャージを定着させるため、肉マネーボーナスの3倍キャンペーンを行いました。この効果は絶大で、社内でもチャージ額の多さに驚きの声があがっていました。キャンペーン後はチャージすることが、お客様の意識で定着してきたようで、キャンペーンを行ってない日でも平均のチャージ額が当初と比べて約2倍にベースアップしました。 また、原価の高騰を受け、ステーキの値上げをせざるを得なくなった時も、肉マネーチャージボーナスキャンペーンに助けられました。2016年3月1日に値上げを実施しましたが、値上げの発表を早めに行い、値上げ前日の2月29日は、「4年に一度の29の日5倍デー」を実施し、駆け込み需要を狙いました。また、3月1日から4月15日まで、3倍キャンペーンを実施しました。この結果、値上げに対する逆風はなく、むしろ値上げ後は、売り上げが10%アップしました。メディアの外的要因も功を奏していますが、マイレージチャージの存在が値上げに対する販売促進施策として、非常に有効でした。 成功のポイント いきなり!ステーキの業態と肉マイレージという制度、ネーミングが本当にぴったりだったことだと思います。 100円払って手に入れた最初の白いカードには何の特典もないのに、これだけ成功したのは、量り売りでステーキを食べたい量だけお召し上がり頂く「いきなり!ステーキ」のコンセプトとランクアップによる特典とカード自体の価値観、ランキング制度により、公開で競い合う心理をうまく刺激できたことだと思います。 (中略) 言うまでもなく、ポイントをあからさまな利用金額ではなく、食べた肉のグラムを付与するという点もここまで浸透した成功要因の一つだと思っています。 バリューデザインへの評価・期待 今や、「いきなり!ステーキ」と「肉マイレージカード」は一心同体の状態です。新しい取り組みのため、色々と一緒に苦労をしてきましたが、これからも今まで以上に一緒に頑張ってもらえればと思います。安定的な稼働と肉マイレージを今以上に発展できる体制を構築いただき、一緒に肉マイレージを盛り上げていっていただきたいです。 専用端末を設置するのみでプリペイドカードシステムの導入が可能という利便性、データをベースにした販促支援が企業に評価されていることに加え、消費者にとってもお得感が強いことから、導入社数、導入店舗数、取扱高(カード入金額)ともに急成長を遂げている。 取扱高は18年6月期通期では2,000億円を視野に入れていたが、実績は2,188億円と想定を上回った。 国内では飲食店、スーパーマーケットを中心に全国をカバー。直近ではホームセンターなど新たな業態の顧客化に加え、顧客規模の大型化も進んでいる。 海外は韓国、中国、フィリピン、タイ、シンガポール、マレーシアに加え、インドでM&Aを実施し、巨大市場の開拓も始まった。 累計取扱高(プリペイドチャージ額)は今期で1兆円近くに到達する見込みであり、クオカードと同程度の市場を創造している。 (収益構造) 同事業の売上高区分は以下の2つ。 導入費用は、店舗数が数十店舗、カード枚数が数千~1万枚の場合で50万円程度、年商数千億円、カード枚数数十万枚の大企業で、1,000万円程度など、店舗数など企業規模により大きく異なる。 カード枚数、専用端末数、入金額、利用額が同社売上の主要な変数となる。近年は大規模企業の顧客化に注力している。 (2)ブランドプリペイドカード事業 2016年6月期から開始した事業。 ブランドプリペイドカードとは、VISA、MasterCardを始めとする国際ブランドと提携し、従来のハウスプリペイドカードの機能にVISA、MasterCard等の国際ブランド加盟店での決済機能を搭載したカードのこと。 通常のクレジットカードとは異なり、前払でカードに入金した金額に制限されるために使い過ぎる心配がなく、入会審査は不要なため、誰でもクレジットカード加盟店であればどこでも利用できる簡便性を兼ね備えている。 また、ハウスプリペイドカードは導入店舗及び系列店舗に利用が限定されるが、ブランドプリペイドカードは、VISAブランド、MasterCardブランド等に加盟している世界中の店舗で利用することができる点も大きな違いである。 開始してまだ日の浅い同事業だが、取扱高は順調に拡大している。 18年6月期は600億円程度まで伸長すると会社側は予想している。 (収益構造) 同事業の売上高区分は以下の2つ。 バリューデザインは、クレジット業界における国際セキュリティ安全基準(※PCIDSS)の認証取得による高い信頼性を確保したシステムインフラを構築しており、ブランドプリペイドカードで決済されるデータを一元的にサーバー管理している。 (※)PCIDSS:Payment Card Industry Data Security Standard:JCB、American Express、Discover、MasterCard、VISAの国際ペイメントブランド5社が共同で策定したクレジット業界における国際セキュリティ安全基準。 【1-5 特長と強み】 ①No.1の導入実績に基づく成功のノウハウ プリペイドカードサービス成功の鍵はシステムではなく利用を促進するノウハウであると同社では考えている。 この点で、10年以上をかけて蓄積した豊富な導入事例は大きなアドバンテージとなっている。 様々な業種からなる600社を超す導入実績から具体的な事例を用いて個社ごとの最適な手法を提案することができる点は他社にはない強力な差別化要因であり、現在までのさらに将来に向けての同社成長の源泉でもある。 ②専門のコンサル部門による導入・運用支援 同社では蓄積したノウハウの活用を通じて顧客満足度を最大化させるために専門のコンサル部門を擁している。 同部隊はプリペイドカードによる販促施策成功に向け、同業種・他業種を含めた様々な成功・失敗事例から最適な施策を提案・実行支援し、導入企業を手厚くサポートしている。 営業系スタッフに占める営業部門とコンサルティング部門の人員比率は、おおよそ4:6とコンサルティング部門が上回っていることからも、同部門の重要性がわかる。 ③有力企業との提携による拡販体制 同社ではプリペイドカード事業は先行者利益の大きいビジネスと捉えており、早急なシェア(=導入企業数)獲得が重要と考えている。そのため、同社ではターゲット先の業態や企業に対して業務上深い関連性を持つ企業(POSベンダーやトップセールスが可能な有力企業等)と販売代理店契約を締結し、全国各地を網羅した営業ネットワークを構築している。 現在約80社の代理店を有しているが、超大型顧客および前期から本格的な顧客化が始まったホームセンターの開拓に向けネットワークを更に強化する考えだ。 ④将来動向にも柔軟に対応可能な技術基盤 拡大が続く電子決済市場においては今後も様々なシステムやデバイスが登場することが予想されるが、同社のシステムは現在の磁気カード・専用端末以外のデバイス・媒体でもシステム改修なく対応が可能である。 さらに、Fintech系サービスとの連携も視野に入れたシステムアーキテクチャを採用しており、将来動向も見据えた柔軟な技術基盤を構築している。 これら①から④に加えて、同社の強さを支える「600社を超す導入企業」という顧客資産も大きな特長・強みである。 豊富な導入事例を生み出すのみでなく、高成長が見込まれるブランドプリペイドカード事業においても重要な役割を果たすことに加え、安定したストック型収益の源泉である点も理解しておくべきだろう。
 
 
2018年6月期決算概要
初期売上、システム利用料売上ともに増加し増収、黒字転換 売上高は前期比18.2%増の20億53百万円。引続きスーパー、ドラッグストア、飲食チェーンの利用が好調でシステム利用料売上が好調な伸び。システム利用増で粗利率は1.3%改善し、売上総利益は同22.1%増加。 販管費も同8.9%増加したが概ね計画通りにコントロールできたため増収効果で吸収し、営業利益は黒字転換した。 期初計画に対しても、売上・利益ともに上回った。 ①ハウスプリペイドカード事業 増収増益。 プリペイド利用率の高いスーパーマーケット・ドラッグストア業態での利用が堅調だったのに加え、スマートフォンアプリとプリペイドの連携や、上場企業における、株主優待券のプリペイドカード化等の要因により飲食チェーンでも利用が大きく伸長し、取扱高(プリペイド入金額)は前期比45.5%増の2,188億円と大幅に伸張。システム利用料売上高も同26.2%増加した。 スーパーマーケット業態での成功を受けホームセンターや大手飲食チェーン業態等での新規受注が進んでいる。 ホームセンターは、同業間での横の連携が密であること、地域的な棲み分けが出来ていることなどから今後の柱の一つとして期待している。 導入社数は前期比約9%増の620社。1社当たりの入金・利用意向の高い業態をターゲットにしていることもあり、導入社数増加ペースは前々期の15%、前期の14%と比べやや低下した。 海外では、タイ最大規模の書店(400店舗規模)や、マレーシアの大手コンビニエンスストア(400店舗規模)などの大型の案件を新たに受注した。販管費も代理店手数料の増加等により同9.6%増加したが、大幅な増益となった。 ②ブランドプリペイドカード事業 増収減益。 既存イシュア(カード発行会社)の提携先における取引高及びそれに伴うシステム利用料売上が堅調に増加。取扱高(プリペイド入金額)は前期比17.7%増の646億円、システム利用料売上は同24.7%増加した。 初期売上はカスタマイズ開発案件が減少し前期比12.2%の減収。 増収ではあったが新規顧客向けサービス稼働に伴う運営体制強化などにより、外注費など売上原価が同31.9%増加したため損失に転じた。 現預金増などで資産合計は前期末に比べ32百万円増加。長短借入金の減少などで負債合計は同34百万円減少。 新株予約権の行使による資本金および資本剰余金の増加、利益剰余金のマイナス縮小などで純資産は同67百万円増加。自己資本比率は前期末から3.1%上昇し63.1%となった。 税金等調整前当期純利益がプラスに転じ営業CFのプラス幅は拡大。 無形固定資産の取得による支出が減少し、投資CFのマイナス幅は縮小。フリーCFはプラスに転じた。 株式の発行による収入が減少し、財務CFはマイナスに転じた。 キャッシュポジションは上昇した。 (4)トピックス ◎インドのプリペイドプロセッサーを子会社化 2018年7月、インドにおいてギフトカード・プリペイドカード事業を展開する ValuAccess Service Pvt Limitedの全株式を取得し子会社化した。 (ValuAccess Servic社概要) ValuAccess Service社は2008年創業で、プリペイドカード、ギフトカードの発行管理サービスの他、ギフトカードモール事業などを手掛けている。 インド最大手クラスのドラッグストアやファストフードなど9ブランド、5,370店舗への導入実績を有しており、過去6か月間に約1,000店舗規模で導入店舗数が増加するなど、順調に事業を拡大している。 (子会社化の背景) 海外事業を今後の成長戦略の柱の一つとする同社は東アジア及び東南アジアを中心に事業を進めているが、インドにおいても高額紙幣の廃止やQRコード決済サービスの急速な普及など、キャッシュレス決済へのシフトが鮮明で注目度の高い市場となっている。 ValuAccess Service社のサービスを導入済の業態(ドラッグストアやファストフード)は、バリューデザインがこれまで導入実績を持つ業態と同一であることに加え、プリペイド入金額の他、クーポン・ボーナス・ポイント等を一元管理可能なサービス設計などがバリューデザインのサービス設計思想とも近いことから、これまでバリューデザインが培った5万店舗以上の導入事例・ノウハウとValuAccess Service社のローカルスタッフによる市場の知見を活用することで、7%超の経済成長率と約 13 億の人口を擁する世界有数の巨大市場を取り込む機会が生まれるとバリューデザインでは考えValuAccess Service社を子会社化した。 取得価格は株式取得価格約300万円、アドバイザリー費用等1,000万円の合計約1,300万円。 ◎りそなグループが提供する「りそなキャッシュレス・プラットフォーム」へハウスプリペイド管理機能を提供 りそなグループが2018年11月以降に提供開始予定の、「りそなキャッシュレス・プラットフォーム」へ「バリューカードASPサービス」の機能を提供することとなった。 (「りそなキャッシュレス・プラットフォーム」概要) りそなグループのりそな銀行、埼玉りそな銀行、近畿大阪銀行が、流通業(小売・飲食店)やサービス業の法人顧客及びその利用者である個人顧客を対象に「決済」をトータルサポートする加盟店サービス。 加盟店向けには国内の主要な決済ツールに対応する端末を、加盟店の利用者には会員カードやポイントカード機能と加盟店独自のプリペイドカード、銀行口座からの即時・後払い決済、クレジットカード・デビットカード等の各種決済機能、おつり貯蓄や電子レシート機能など様々な機能を備えた「提携ウォレットアプリ」が提供される。 <「提携ウォレットアプリ」機能概要> ① 会員カード、クーポン管理・利用、ポイント機能・利用、店舗検索機能等 ② 加盟店独自のプリペイドカード機能 ③ 銀行口座からの即時決済機能 ④ 銀行口座からの後払い機能 ⑤ 国際ブランドのデビットカード・クレジットカード決済機能 ⑥ おつり貯蓄機能 ⑦ 電子レシート機能(家計簿アプリとの連携) (バリューデザインが提供する機能) バリューデザインは上記「りそなキャッシュレス・プラットフォーム」の機能のうち、「②加盟店独自のプリペイドカードサービスの提供」を行う。 QR コードを使用したスマホ決済と複数のカード管理を可能とするウォレットサービスおよび銀行口座からのチャージ等に対応するとともに、流通業を中心とした6万店舗以上へのハウスプリペイドカードを活用した販促・集客サービスの導入実績とノウハウを背景に、「りそなキャッシュレス・プラットフォーム」加盟店とその利用者向けへの、ハウス電子マネーを使ったサービスの提供支援を行う。
 
 
2019年6月期業績見通し
増収も積極的な投資の実行で損失へ 売上高は前期比3.4%増の21億23百万円と予想。システム利用料売上高は前期比13.5%の13億4百万円と、顧客ベースの拡大とともに引き続き堅調。中長期的成長を見据えたアライアンスの構築や超大手顧客への導入に注力することなどから、直接営業よりも代理店開拓を優先させることから初期売上高は同9.4%減少の8億19百万円と減収を予想している。 営業利益は1億97百万円の損失。キャッシュレス化の進展、海外事業の進捗などから現在を大きな成長機会と捉え、向こう3年程度の投資計画を今期前倒しして実行。システム投資、人材の確保や教育など投資額を約3億円拡大する予定だ。 (2)今期投資イメージ 今期の投資内訳は以下の通り。 システム開発においてはQR決済との連携が重要なポイントとなる。 人材採用・教育においては拡大するニーズを取り込むとともに、顧客層が従来の中小・中堅から大型・超大型に広がりを見せ始めているのに対応し、営業社員のレベルアップも必要となる。 その他においては海外事業の拡大・スピードアップを図る。 前2018年6月期の投資は約0.8億円であったことから仮に同水準の投資であれば営業利益計上は可能であるが、前述のように現在を成長・飛躍のための絶好の機会ととらえており、積極的な投資を実行する。
 
 
対面市場における事業機会と戦略
同社のビジネスフィールドである対面決済市場における今後の事業展開および成長戦略は以下の通り。 (1)キャッシュレス決済急拡大への対応 急拡大が見込まれるキャッシュレス決済において同社では独自のポジショニングを活かして既存サービスを通じた新たな収益機会の獲得を目指している。 2018年4月に経済産業省が発表した「キャッシュレス・ビジョン」によれば、日本のキャッシュレス決済比率は2016年で20.0%。これを以下のような各種施策により2025年までに40%へ引き上げ、将来は世界最高水準の80%を目指すとしている。 (2015年の各国キャッシュレス決済比率は韓国89.1%、中国60.0%、カナダ55.4%、イギリス54.9%、アメリカ45.0%など日本を大きく上回っている。) (施策例) 加盟店手数料の改善に向けた、低コストの決済サービス創出 キャッシュレス決済における技術的仕様やデータの標準化 金融機関におけるオープンAPIの導入 キャッシュレス決済導入に対する税制面の優遇措置 そうした環境下、対面決済市場においては、「金融機関や大手非決済事業者による少額決済サービスへの参入」、 「低コスト決済サービス需要や税優遇などを足掛かりにモバイルペイメントサービスが大きく普及」、「決済事業者間の競争激化」、「キャッシュレス決済に対する更なる付加価値需要の増大」といった動向がみられる。 こうした中、同社では自社のポジショニングおよび収益拡大施策を以下のように考えている。 ①同社のポジショニング 「決済の汎用性」と「決済のタイミング」の2軸で主要キャッシュレス決済サービスを整理すると以下のように位置付けられる。 クレジットカード、汎用電子マネーがどこでも使える利便性を提供するのに対して、同社を含めたハウス電子マネーは決済に加えて販促や顧客囲い込みを行う点が大きな特色であり、他の決済手段との棲み分けや連携が可能である。 「汎用決済」と「囲い込み」それぞれのメリットを生かした、相互補完的なサービスを提供していく中で、特に急速に普及するモバイル決済との連携は大きな収益機会に結び付くとハウス電子マネーの導入企業数及び店舗数No.1である同社は考えている。 ②モバイル決済との連携施策 キャッシュレス化を大きく牽引すると目されるモバイル決済との連携では、導入先におけるハウス電子マネー利用の更なる活性化と、新たな収益スキームの構築を企図し、以下の3形態を想定している。 店舗ごとにカードを保有するのは利用者にとっては不便であることから、ハウスカードをデジタル化しモバイルで利用できるようにする。 高リピート率の店はハウス電子マネーを、他はモバイル決済等の使い分けが可能であり、利用者メリットの高さと利便性を両立し、利用額の増大が見込まれる。 モバイル決済用に紐づけた銀行口座やクレジットカードからハウス電子マネーをチャージする。 チャージの利便性を高め、入金額増大を図る。 既存導入先にたいし各種モバイル決済の導入を支援する。 追加サービスとして付加価値を提供する。 ③営業戦略のアップデート 従来の販売パートナー(代理店)との提携強化の他、キャッシュレス化に伴う各種動向に対応することでアプローチ可能範囲を大幅に拡大し、増員した営業人員で「面」を押さえる。 特に、モバイル決済の利用により端末やカード投資の負担なくハウス電子マネー導入が可能になることはハードルを大きく引き下げることとなり、導入企業数及び店舗数の大幅増加に繋がると考えている。 (2)ハウス電子マネー普及の本格化 施策①:加速する需要増への対応 多数の成功事例を受け、「様子見」状態だった企業の導入意欲が顕在化している。 同業態のスーパー・ドラッグストアや飲食チェーンのほか、これまで事例のなかった業態である超大手飲食チェーンやホームセンターなど、中・大型案件の引合いが増加しており、人員増強で需要に対応していく。 大手や超大手企業に対しては開拓及び継続においてコンサルティング的要素が求められることから、人数の確保のみでなく、レベルアップのための教育研修が必要である。 施策②:導入効果を高める施策の展開 成功企業においては更に効果を高めるサービスのニーズが高まっている。 主力業態(飲食、スーパー・ドラッグストア)における現状のハウス電子マネー利用率は7~10%程度。 成功事例をベースにしてピーク状態の顧客ニーズに応じたソリューションを開発・拡販し、5~10%の底上げ=システム利用料の増大を図る。 具体的な施策は、「モバイル対応(決済手段の拡張)対応」、「データ分析機能の強化」、「顧客コミュニケーション機能のモバイル対応」など。 (3)海外事業の土台の構築 国内のハウスプリペイドカード事業は、全国展開の飲食チェーンなど大手顧客を獲得した創業6期目にあたる2012年6月期ころから急カーブを描いて成長していった。 現在の海外事業はタイ、マレーシア、シンガポールでフラッグシップ顧客であるローカル大手企業を獲得し、まさに国内事業同様の成長軌道に入る途上にあると同社では考えている。 各国でフラッグシップ顧客の獲得が完了したため、今後は販促費を投入し稼働率の高い自己利用型ハウス電子マネーの普及に努めて収益化を図りつつ、前述のインドのケースのような更なるM&Aの機会も検討する。 (4)当面の見通し及び今後の成長イメージ 今期は積極的な投資により損失となるが、来期黒字回復、翌々期の営業利益ベースでの過去最高更新を目指している。 今期の積極投資を契機に国内事業、海外事業をそれぞれドライブさせるとともに、国内外で獲得した顧客基盤を活用して新たな決済・販促サービスを将来的に展開し、25年6月期には、国内事業60億円、海外事業30億円、新規事業10億円の合計100億円の売上達成を目指している。
 
 
尾上社長に聞く
尾上社長に現在の状況、今後の方向性、投資家へのメッセージなどを伺った。 Q:「今期システム開発および人材採用・教育に大きな投資を行う予定ですが、現在の御社はどういうステージにいるのでしょうか?」 A:「まさに大きく変化、飛躍するタイミングであると考えています。ベンチャーとしての長所をキープしながらも、全社挙げてより大きなチャレンジを進めて行きます。」 まさに大きく変化、飛躍するタイミングであると考えています。 これまでは顧客も比較的中小、中堅企業が中心で当社もスピードを最も重視し、いわばベンチャーとしての対応でした。 ただこれからは大手や超大手企業のウェイトが上昇する見込みであり、そうした顧客の満足度を高めるには、ベンチャーとしての良さを伸ばしながらも、品質管理や適切な人材リソースの配置などにも配慮し、より洗練された仕組みの構築や顧客アプローチを行う必要があります。 そのためには社員の意識を変革させるとともに、より働き甲斐のある職場としていかなければなりません。 組織サーベイによるストレスや課題の抽出およびそれに会社としてどう対応していくかを社員に向けて発信することに加え、人事・評価制度の見直しによって給与格差の調整などにも取り組んでいきます。 ベンチャーとしての長所をキープしながらも、全社挙げてより大きなチャレンジを進めて行きます。 Q:「海外事業の現在および今後の見通しをお聞かせください。」 A:「飲食店・小売店向けで大きく成長してきた当社のノウハウはローカルのプロセッサーにとって大きな魅力となっており、有力なローカル・プロセッサーとのアライアンスが期待できます。また、タイ、シンガポール、マレーシアでフラッグシップとなるローカル大手顧客を獲得することが出来たことで、大きくドライブする素地は整ったと考えています。加えて、アジア市場に参入しようとしているハウス電子マネー企業は国内外共に今のところ見当たらず、当社にとって今が大きなチャンスです。」 プリペイドカードビジネス発祥の地である米国では、ギフト需要が中心となって市場が拡大してきましたが、日本ではギフトではなく、飲食店や小売店での決済手段およびポイント制度導入によって市場が形成され、当社のプリペイドカードだけでも約1兆円と、クオカードと匹敵するまでの取扱高への成長も視野に入っています。 アジア市場も同様に、ギフトやプレゼント需要では市場の大きな拡大は望みにくく、飲食店・小売店向けで大きく成長してきた当社のノウハウはローカルのプロセッサーにとって大きな魅力となっており、有力なローカル・プロセッサーとのアライアンスが期待できます。 また、タイ、シンガポール、マレーシアでフラッグシップとなるローカル大手顧客を獲得することが出来たことで、数期前の国内事業同様、大きくドライブする素地は整ったと考えています。 加えて、アジア市場に参入しようとしているハウス電子マネー企業は国内外共に今のところ見当たらず、当社にとって今が大きなチャンスです。 Q:「では最後に株主や投資家へのメッセージをお願いします。」 A:「囲い込みおよびキャッシュレスニーズは国内外で大きく拡大しており、有望な市場環境の下、当社が成長するための素地はほぼ出来上がったと考えています。現在はまだ投資段階であり今期は損失計上の見込みですが、これまでに培ったノウハウや実績を武器に圧倒的なシェアを獲得する戦略を推進している当社を是非中長期の視点で応援していただきたいと思います。」 国内市場におけるキャッシュレス化の進展に加え、海外でも経済発展と共に電子化の進展は外すことのできない重要なキーワードとなっています。 汎用マネーの広がりと共に、「囲い込み+キャッシュレス」ニーズは国内外で大きく拡大しており、加えてマーケットは日本、アジアにとどまらず、アフリカも動き始めており、その市場規模はますます大きなものとなっていくことが見込まれます。 そうした有望な市場環境の下、当社が成長するための素地はほぼ出来上がったと考えています。 現在はまだ投資段階であり今期は損失計上の見込みですが、これまでに培ったノウハウや実績を武器に圧倒的なシェアを獲得する戦略を推進している当社を是非中長期の視点で応援していただきたいと思います。
 
 
今後の注目点
第4四半期の初期売上およびシステム利用料売上は第3四半期終了時点の見込みを大きく上回り、システム利用料売上は過去最高を記録した。 顧客企業数の伸びは1桁にとどまったものの既存顧客における利用が順調に増加するとともに顧客の大型化が進んでいることがわかる。 今期は2021年6月期の営業利益過去最高更新及びそれ以降の安定した利益成長実現のための積極投資により再び損失とはなるが、利益率の極めて高いシステム利用料売上の成長は同社の事業基盤を着実に強化している。 国内外事業における施策の進捗を見守りたい。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
◎コーポレートガバナンス報告書 最終更新日:2017年10月13日 <基本的な考え方> 当社は、株主・従業員・取引先、すべてのステークホルダーとの良好な関係を維持し、透明性の高い健全なコーポレート・ガバナンス体制及び企業倫理の構築に向け、鋭意努力を行っております。また、遵法の精神に基づきコンプライアンスの徹底、経営の透明性と公正性の向上及び環境変化への機敏な対応と競争力の強化を目指して、最適な経営管理体制の構築に努めてゆく方針であります。 <実施しない主な原則とその理由> 「当社はコーポレートガバナンス・コードの基本原則について、全て実施いたします。」と記述している。