ブリッジレポート
(2334) 株式会社イオレ

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ブリッジレポート:(2334)イオレ vol.2

(2334:東証マザーズ) イオレ 企業HP
吉田 直人 社長
吉田 直人 社長

【ブリッジレポート vol.2】2019年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「「pinpoint及びその他運用型広告」へのシフトが成果をあげ、売上が順調に伸びた。当面は規模拡大を最優先に、強みを活かす事ができる「pin・・・」続きは本文をご覧ください。
2018年12月5日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社イオレ
社長
吉田 直人
所在地
東京都港区高輪3-5-23
決算期
3月末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2018年3月 1,550 169 155 91
2017年3月 1,157 116 112 127
2016年3月 950 19 14 -159
株式情報(11/16現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,681円 2,305,979株 3,876百万円 13.1% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
- - 6.90円 243.6倍 469.64円 3.6倍
※株価は11/16終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
イオレの2019年3月期上期決算の概要と通期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
日本全国の部活動、サークル、PTA等の団体活動従事者向けに提供するグループコミュニケーション支援サービス「らくらく連絡網」、大学生に特化したアルバイト求人情報提供サイト「ガクバアルバイト」、及びアルバイト求人情報ポータルサイト「らくらくアルバイト」の運営、pinpointブランドで展開する運用型広告の販売・運用、及びセールスプロモーション等を展開している。

自社メディア(「らくらく連絡網」、「ガクバアルバイト」、「らくらくアルバイト」)を活用した広告や掲載料・送客成果報酬を中心にしたビジネスモデルから、運用型広告を中心にしたビジネスモデルへの転換を図っている。
 
 
【ビジネスモデル】
「らくらく連絡網」は、「らくらく連絡網」内での広告掲載や有料版提供等で収益をあげている。ユーザー登録時に、性別、生年月日、職業、居住地域、配偶者の有無、子供の有無、大学学部、活動エリア等の情報を入力する必要があり、サービスを通して詳細なユーザーデータベースを構築できる。「pinpoint及びその他運用型広告」ではこのユーザーデータベースとアドテクノロジーを駆使して広告配信を行っており、他社には真似のできない高い精度でターゲット層に広告配信できる。また、「ガクバアルバイト」では「らくらく連絡網」の大学生ユーザーのデータベースを活用し、「らくらくアルバイト」では学生以外のユーザーデータベースも活用している。

同社が強みを持つ人材採用広告市場がメディア掲載型広告から運用型広告へシフトしつつある事を踏まえ、販売リソースを自社メディアの広告枠販売から運用型広告にシフトさせている。他社メディアに広告配信する運用型広告は自社メディアへの広告掲載に比べて一回当たりの収益性は低いものの、継続性は高く、LTV(顧客生涯価値)では優る。
 
pinpoint及びその他運用型広告
「らくらく連絡網」のデータを蓄積管理するDMPを用いたDSP広告等の広告運用サービスと「Indeed」をはじめとした広告代理・運用サービスを提供している。

ネット広告市場では、DSP等のアドテクノロジー広告市場が拡大しており、2017年に3,300億円を超えている(同社資料より)。アドテクノロジーはネット上で特定の個人に的確な広告を配信する技術であり、過去に見たサイトや購買履歴を分析し、0.1秒以内にサイト閲覧者の好みや関心に合わせて最適な広告を端末に配信する。このため、広告ターゲットか否か、を特定する技術の開発競争が激化しており、その際、同社が保有しているような詳細なユーザーデータは大きな強みとなる。
アドテクノロジーを駆使した広告は運用型広告とも呼ばれ、その主流は、複数の媒体やアドネットワークの広告枠を一括で買い付けて配信するDSP(Demand Side Platform)広告。DSP業者のシステムに接続して運用を行い、運用に際しては、的確なターゲット属性への広告配信を実現するため、サイトアクセスログ、購買データ、広告出稿データ等の様々なデータを管理するDMP(Data Management Platform)を活用する。DMPを使う事で、特定ユーザーへの広告配信や属性別の広告配信が可能になり、広告効果を高める事ができる。
同社の強みは、「らくらく連絡網」で蓄積した、性別、生年月日、職業、居住地域、配偶者の有無、子供の有無、大学学部、活動エリア等、670万人を超えるユーザー情報(ビッグデータ)を有する事。このビッグデータを基に独自のDMP「pinpoint」を構築しており、他社が真似のできない高い精度でターゲット層への的確な広告配信を実現している。
 
 
らくらく連絡網
「らくらく連絡網」は、団体やグループでの活動に必要な出欠確認や日程調整、アンケート、安否確認等を、メールの一斉送信で簡単に行う事ができる。「らくらく連絡網」のユーザーは、部活動、サークル、ゼミ、子供の習い事や少年スポーツチーム、PTA等、何らかの団体・集団活動に参加しており、団体単位で加入して団体活動の出欠確認、日程調整、重要情報の通達等にらくらく連絡網を利用している(大学生・院生セグメントでは、4人に1人が利用)。
利用は原則無料だが、ユーザー(会員)登録時に、性別、生年月日、職業、居住地域、配偶者の有無、子供の有無、大学学部、活動エリア等の情報を登録する必要がある。サイト内でのバナー広告の掲載やメールマガジンの配信等に伴う広告収入、あるいは商品サンプリングやテストモニター等のタイアップ広告の配信に対する成果報酬を収益源としており、利便性を高めた有料版も用意している。
 
ガクバアルバイト及びらくらくアルバイト
「ガクバアルバイト」は、「らくらく連絡網」を入口とした、大学生に特化したアルバイト求人情報提供サイト。収益モデルは掲載料型。一方、「らくらくアルバイト」は仕事情報提供元の連携求人メディアからの案件を幅広く搭載し、一括応募ができるアルバイト求人情報ポータルサイト。大手求人メディアをクライアントとし、収益モデルは送客成果報酬型。
 
 
19/3期の方針と進捗状況及び下期の取り組み
 
【19/3期の方針】
同社は精緻な自社データベースを活用した人材採用広告に強みを持っている。これまではメディア掲載型を中心に人材採用広告事業を展開してきたが、人材採用広告市場は、メディア掲載型広告からSNSや自社HPを活用した運用型広告へシフトしつつあり、今後、運用型広告代理店の参入等による競争激化が予想される。また、運用型広告はLTV(LifeTimeValue:顧客生涯価値)が高く、ストック型のビジネスでもある。このため、同社は競争が激化する前に一定のシェアを確保すると共に、スポット型(メディア掲載型)からストック型への収益モデルの転換を図るべく、運用型広告に軸足を移した。19/3期は、下記3方針に基づき取り組みを進めている。
 
(1)pinpointを中心とした運用型広告の販売と運用への注力
人材採用広告市場のメディア掲載型広告から運用型広告へのシフトが急速に進んでおり、ネット専業広告代理店の人材採用広告市場への参入による競争激化が予想される。このため、早期に運用型広告で一定のプレゼンスを確立する。
 
(2)OEM代理店の営業支援体制を強化
特に高い成長が期待できる新卒採用広告市場において、運用型広告でマーケットシェアを確立するべく、OEM代理店のネットワークを拡大させ、直販だけではない効率的な拡販体制を構築・強化する。
 
(3)データベースの連携強化によるアドテクノロジーの推進
他社データベースとの連携を強化し、新たな顧客層の開拓を進める。
 
【上期の進捗状況と下期の取り組み】
(1)pinpointを中心とした運用型広告の販売と運用に注力
この上期の事業環境は、期初の想定通り、採用広告市場の構造変化が急速に進み、運用型広告の需要の伸びも顕著だった。こうした中、同社の売上は「pinpoint及びその他運用型広告」をけん引役に前年同期比19.3%増加した。「pinpoint及びその他運用型広告」は売上が同74.6%増と伸び、前年同期は38.9%だった売上構成比が57.0%に上昇。売上の過半を占める事業となった。
 
 
下期の取り組み
「求人広告市場における運用型広告の需要の取り込みは順調だが、今後は、運用型広告の需要のすそ野を中小企業にも広げる必要があり、そのための採用ページの構築と最適化の支援が必要となる」。また、「求人企業にとってのコスト効率の追求に応えていく必要や、顕在(求職)層だけでなく、潜在層へのリーチ等の取り組みも必要となる」、というのが同社の考え。 中小企業の採用活動における運用型広告出稿活動を後押しすると共に需要を取り込むべく、2019年2月に出稿支援ツール「JOBOLE(ジョブオレ)」(次項参照)をリリースする予定。
 
 
(2)OEM代理店の営業支援体制の強化
現在、OEM代理店(pinpointに独自の付加価値を付けて独自の名称で販売する業者)は4社。この上期は、営業支援体制の強化が奏功し、OEM代理店の売上が前年同期比4.3倍に拡大した。pinpointの導入は、採用広告市場だけでなく、販促領域でもが広がっている。具体的には、この上期の「pinpoint及びその他運用型広告」の取扱件数は前年同期比34.8%増加したが、このうち件数ベースで80%程度を占める人材系の取扱件数が同43.4%増加し、同20%程度の販促系の取扱件数も流通やメーカーを中心に同10.6%増加した。
 
(3)データベースの連携を強化し、アドテクノロジーを推進
上期末の「らくらく連絡網」の会員数は673万人(17/3期上期末664万人、18/3期同669万人)、有効団体数は382万団体(17/3期上期末379万団体、18/3期同381万団体)と、いずれも前年同期末の実績を上回り、データの蓄積が進んだ。引き続きデータベース連携を進め、らくらく連絡網以外の利用可能なデータの量と質を高めていく。 尚、現在、提携データにより約2,000万人超のユーザー情報を格納している。
 
 
上記の他、ユーザーの利便性と運用効率の向上を念頭に「ガクバアルバイト」のフルリニューアルを実行中である。また、新しいメディアとして、「らくらくアルバイト」に続く中途採用ポータルの開発を計画しており、ジョブオレとの連携をベースに開発を進める予定。
 
 
2019年3月期上期決算
 
 
「pinpoint及びその他運用型広告」をけん引役に前年同期比19.3%の増収、営業損失ながら期初予想を上回る着地
売上高は前年同期比19.3%増の8億14百万円。「pinpoint及びその他運用型広告」の拡大を基本方針に、体制強化とOEM代理店強化に努めた結果、「pinpoint及びその他運用型広告」の売上が前年同期の2億65百万円から4億64百万円に同74.6%増加した。

営業損益は11百万円の損失。仕入れが発生する「pinpoint及びその他運用型広告」の売上増で原価率が11.2ポイント上昇し、売上総利益が同5.3%減少した。一方、販管費は、営業戦略の転換に伴う体制の整備で人件費等が増加した他、「らくらくアルバイト」の拡大に伴う費用増や上場維持費等の増加もあり、3億64百万円と同24.3%増加した。

「らくらく連絡網」の上期末の会員数は673万人(前年同期末比0.7%増)、有効団体数は38万団体(同0.4%増)。団体属性は、スポーツ系サークル25.2%、学校教育21.8%、趣味系サークル19.5%、友達・仲間15.7%、ボランティア組織10.1%、仕事関係7.7%。
「ガクバアルバイト」の上期の新規登録者数は8万人(前年同期比19.8%増)、「らくらくアルバイト」の上期末の会員数は142万人(前年同期末比18.6%増)。
 
 
 
上期末の総資産は前期末と比較して1億08百万円減の13億24百万円。季節要因等で、現預金、売上債権、仕入債務、純資産等が減少した。自己資本比率80.8%(前期末75.5%)。
 
 
CFの面では、税引前利益の減少等で営業CFが減少したものの、定期預金の払戻等で投資CFが改善した。
 
 
2019年3月期業績予想
 
 
通期予想を上方修正、前期比22.6%の増収、同82.3%の営業減益を見込む
上期業績及び足元のトレンドを織り込み、通期予想を上方修正した。「pinpoint及びその他運用型広告」へのシフトやOEM代理店の拡大等、新たな挑戦を、下期も積極的に進めていく考え。

自社メディアは売上の減少が見込まれるものの、「pinpoint及びその他運用型広告」をけん引役に売上高が前期比22.6%増の19億円と伸び、営業費用の増加を吸収して30百万円の営業利益を確保できる見込み。
 
 
今後の注目点
「pinpoint及びその他運用型広告」へのシフトが成果をあげ、売上が順調に伸びた。当面は規模拡大を最優先に、強みを活かす事ができる「pinpoint及びその他運用型広告」に注力していく考え。自社メディアについては、「らくらく連絡網」の使い勝手の更なる改善とサービス提携や拡張のための柔軟性の確保、将来利益の拡大に向けた「らくらくアルバイト」の検索エンジンの最適化、更には新しい収益の柱としての中途求人メディア向けポータルサイトの開発等の取り組みを進め、利益水準を維持・向上させていく考え。今後の展開に期待したい。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書   更新日:2018年06月27日
基本的な考え方
当社は、「新しいテクノロジーを駆使し、今までになかった新しい便利、新しいよろこびを創り出し、世の中を応援し、社会に貢献してゆく」という経営理念のもと、株主、取引先、従業員及び地域社会等といったステークホルダーの期待と信頼に応え、継続的かつ健全な成長と発展による企業価値の最大化を実践するにあたっては、コーポレート・ガバナンスの構築が必要不可欠であり、経営の重要課題のひとつとして位置づけております。
このような認識のもと、コーポレート・ガバナンス体制の強化に努めることが経営の健全性、効率性及び透明性の維持、向上を図り、決算や経営戦略等についての説明責任を適時適切に果たしていくことが、すべてのステークホルダーに対する責任であると考えております。
 
<実施しない原則とその理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則を実施してまいります。