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(6826) 本多通信工業株式会社

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ブリッジレポート:(6826)本多通信工業 vol.20

(6826:東証1部) 本多通信工業 企業HP
佐谷 紳一郎 社長
佐谷 紳一郎 社長

【ブリッジレポート vol.20】2019年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「久しぶりの業績予想下方修正となってしまったが、佐谷社長によれば次世代車載カメラ(センシングカメラ)向けコネクタを始めとしてSeason・・・」続きは本文をご覧ください。
2018年12月12日掲載
企業基本情報
企業名
本多通信工業株式会社
社長
佐谷 紳一郎
所在地
東京都品川区北品川5-9-11 大崎MTビル
決算期
3月末日
業種
電気機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2018年3月 19,498 2,007 2,109 1,625
2017年3月 17,205 1,425 1,476 1,542
2016年3月 17,119 1,301 1,237 1,364
2015年3月 16,639 1,415 1,565 1,440
2014年3月 14,824 932 975 1,479
株式情報(12/5現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
577円 23,933,198株 13,809百万円 14.2% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
20.00円 3.5% 31.35円 18.4倍 497.85円 1.2倍
※株価は12/5終値。発行済株式数、BPSは直近期決算短信より。ROEは前期実績。
 
本多通信工業の2019年3月期第2四半期決算概要などをお伝えします。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
車載、FA機器、通信インフラ、民生機器用途向けの電気コネクタおよび光コネクタの製造販売を行う。「Segments No.1」を掲げ、特定分野での高い競争力を追求している。長い歴史の中で培われた幅広い設計技術力、産業用機器向けで培った長期信頼性と堅牢性に関するノウハウ、多品種少量生産体制などが特長。子会社ではソフトウエア開発なども手掛けている。グループ認知度の向上に向けて、複数存在していたブランドを「HTK」に統一。グループは同社と連結子会社7社(国内2社、海外5社)の計8社で構成されている。(2018年4月1日現在) 【沿革】 1932年5月に精密ねじ加工業として現在の東京都目黒区で創業。第二次大戦後は、日本電信電話公社(現NTT)の電話交換機用プラグ・ジャック、防衛庁向けプラグ・ジャックを始め、その発展形となるコネクタの製造販売を手掛け、業容を拡大。2001年に東証2部に上場した。だが、ITバブル崩壊で売上が急減。数度のリストラクチャリングを経て、成長路線への復帰と拡大発展をめざし、2008年に松下電工株式会社(現パナソニック株式会社)と資本業務提携契約を締結。2014年2月、約80年に亘って本社を置いていた目黒から品川区へ本社を移転した。 2016年3月、東証1部に上場した。 【経営理念など】 特定分野で特徴あるソリューションを提供することで顧客に「この分野なら本多通信グループに限る」と高く評価される事をめざし、「Segments No.1」を掲げている。 また、新中期経営計画「GC20」策定に際し、グループの企業理念として「Value by Connecting」を新たに掲げた。 豊かな未来のために「人」、「もの」、「情報」をつなぎ、価値を創造し続ける事を目指すというビジョンを示したもの。 【佐谷 紳一郎社長プロフィール】 佐谷紳一郎社長は1957年11月生まれの現在61才。松下電工株式会社(現パナソニック株式会社)では事業戦略企画部門に在籍し、M&Aや他社とのアライアンス締結等に長年に亘り携わってきた。そうした中、コネクタ事業のアライアンス先として幅広い技術力・製品ラインアップを有する企業を調査している中、本多通信工業の実力に着目し、アライアンスを推進、2008年資本業務提携を実現させた。同年、取締役就任。2009年にはパナソニック電工を退社し、同社副社長に就任。2010年4月に同社社長に就任した。社長就任後は中期経営計画「Plan 80」を策定・実行。基本戦略として「Segments No.1」を設定し、複数のニッチ分野でNo.1となることを目指すと共に、様々な構造改革を断行し、黒字体質の確立、財務基盤の安定化を実現した。中期経営計画「DD15」で事業拡大と体質強化を進めた現在は、良い会社(Good Company)かつ過去最高業績更新をターゲットとする新中期経営計画「GC20」を推進中で、ESG経営に注力、ワンランク上の企業作りに取り組んでいる。 【事業内容】 事業セグメントはコネクタ事業と情報システム事業の2つ。 ◎コネクタ事業 <コネクタとは?> 電子回路や光通信において配線基板同士を接続し、電気や信号を繋ぐために用いられる部品・器具のこと。基板をはんだ付けや圧着で接続した場合、分断時にはケーブル切断等が必要になり再接続は困難となるが、コネクタを使用した場合、手または簡易的な工具を用いて容易に繰り返し脱着することが可能であるため、ほぼ全ての電子機器で使用される。 <利用分野> 長年の経験で培われた高い技術力により、以下の6分野を中心に付加価値の高く、顧客志向のコネクタを始めとした製品をラインアップしている。 2018年3月期の分野別売上構成比率(全売上高に対する構成比)は、車載分野35%、FA分野 22%、通信分野17%、民生分野 10%となっている。 最も構成比の高いで車載分野において、安全性や運転性能向上の観点から車載カメラやセンサの搭載台数が増加しているカーエレクトロニクスの成長に対応して投資や製品開発を進めている。 ◎情報システム事業 通信分野でのソフトウエアの重要性が高まる中、1983年に事業をスタート。 システム開発から保守運用まで幅広いソリューションを展開している。なかでも仮想化(*)サーバの構築では業界屈指の技術を有し、クラウドコンピューティングの広がりに貢献している。 世界的ベンダーとの連携により、上流工程からの受注に力を入れている。 *仮想化とは?:1台のサーバ(物理サーバ)を複数台の仮想的なサーバ(仮想化サーバ)に分割して利用する仕組み。それぞれの仮想化サーバではOSやアプリケーションを実行させることができ、あたかも独立したコンピュータのように使用することが可能となる。 サーバ台数の適正化や消費電力を含めた運用管理コストの低減など、企業のITコスト見直しニーズに対応し、注目が集まっている。 また、仮想化環境下ではハードウェア等を新たに購入しなくても新サーバを容易に追加することができるため、ビジネスの変化に迅速かつ柔軟に対応するというITシステムニーズに対する有効なソリューションの一つとなっている。 【特徴と強み】 ①幅広い設計技術力 前述のように、同社のコネクタは、様々な分野で用いられている。 同社は、日本電信電話公社(現NTT)を始めとした多くの顧客からの様々なニーズに対応したカスタマイズによる製品作りに長年取り組んできた。この「顧客密着度の高さ」が、同社の幅広い設計技術力の源泉である。 ②長期信頼性と堅牢性 制御装置に用いられる「1.27mmピッチコネクタ」、FTTH(Fiber To The Home:光通信のための光ファイバーを家屋内に引き込むこと)に用いられる「シャッター付きSC形プラグ」、プロジェクタに用いられる「高耐圧電源用コネクタ」などで強みを持っている。 これらは、顧客から長期信頼性や堅牢性が求められる分野であり、長年に亘って培ってきた同社の技術力や製造能力が顧客に高く評価されている証となっている。こうした強みを活かし、安全性という面でハードルの高い車載分野での売上を大きく伸ばしている。 ③多品種少量生産 同社は現在約4,000品目のコネクタを生産しているが、このうちの月間生産個数が1万個未満の品目数は94%を占める。また生産金額ベースでも1万個未満の生産が62%、1万個以上が38%と、多品種少量生産が同社の特長となっている。 こうした状況に対応し、国内工場、海外工場の2つの車輪で最適なものづくりを行っている。 国内工場(安曇野工場:旧松本工場)は1万個未満の多品種少量生産の拠点。今後も同社の得意技を磨き、迅速な納入を行うため国内で稼動を続ける。 海外工場(深圳工場)は1万個以上の中量品の一気通貫生産を行い、機動力を高め世界で戦うための拠点とする。 一方、多品種少量生産ながらも短納期を実現させ、顧客から発注を受けたら1週間以内での製品配送を確約する「1weekデリバリーサービス」に2013年から積極的に取組んでいる。 現在の取扱品目数はシステム化を進めた安曇野物流ハブの完成によりそれまでの倍にあたる約1,000品目に拡大している。 2020年に向けた目標とする経営指標に「ROE 13%以上」を掲げている。原価低減や新製品開発によるマージンの向上に加え、在庫水準のコントロールによる総資産回転率の向上にも取組んでいく考えだ。
 
 
2019年3月期第2四半期決算概要
通信分野大幅減、対ドル・バーツ高の影響で減収。合理化進めるも補いきれず減益。 売上高は前年同期比4.4%減の91億89百万円。通信分野が大幅減、車載分野も数量は増加したが金額は前年同期並み。第2四半期(7-9月)もタイ販社における個別レート(対ドル・バーツ高)の影響が残った。 営業利益は同43.2%減の5億91百万円。引き続き合理化を進めたが、減収、人件費増や原材料高、対ドル・バーツ高を補いきれなかった。 グローバル製造再編に伴う特別損失2.5億円などで四半期純利益は同52.7%減の3億38百万円となった。 通信分野が5億円の減収。 車載分野は、数量は増加したが低価格品のウェイト上昇で減収。 好調だったFA分野もやや陰り。 情報システムは好調で上期の最高を記録した。 現預金の増加、売上債権の減少で流動資産は前期末とほぼ変わらず。無形固定資産の増加で固定資産は同1億85百万円増加し、資産合計は2億2百万円増加の166億88百万円となった。 長短借入金の増加などで負債合計は同3億20百万円増加の47億72百万円。利益剰余金の減少で純資産合計は同1億18百万円減少の119億16百万円。 この結果、自己資本比率は前期末から1.6ポイント低下の71.4%となった。 売上債権の減少などで営業CFおよびフリーCFのプラス幅は拡大。 長短借入金の増加で財務CFのマイナス幅は縮小。 キャッシュ・ポジションは上昇した。
 
 
2019年3月期業績予想
業績を下方修正。減収減益へ。 通期業績予想を下方修正した。 上期の主な悪化要因(通信分野の減収、タイバーツ高に伴う個別取引レートの悪化)が解消される一方で、下期は設備投資の減退によるFA分野の減収と品種構成による車載分野の伸び悩みにより、低調な水準が続く見通しである。 売上高は前期比6.7%減の182億円の予想。営業利益は同37.7%減の12億50百万円。 下期の利益は、コスト増(人件費、仕入など)、減収・売上構成変化のマイナス影響はあるが、個別取引レートの良化、合理化、価格改定などでカバーし、対上期増益となる見込みである。 第3四半期でダウントレンドに歯止めをかけ、第4四半期(1-3月)の売上高営業利益率は8%近くへの回復を目指している。 足元の業績は低調だが芽吹き始めた仕込みは順調に育っているため、年間配当予想20円/株の修正は行わない。
 
 
今後の取り組み
GC20のSeason2初年度の今期は低調なスタートとなってしまったが、仕込みを育て、2020年度のゴールにつなぐ年と位置付け、下期以降、トップラインの拡大と収益力の回復に努めて施策を展開する。 (1)トップラインの拡大 以下のように新事業、新商品、新顧客で持続的成長を狙う。 ①新事業 2010年度から取り組んでいる光コネクションの事業化を急ぐ。12月にスタートした高精細度の4K/8K放送に伴う電波漏洩問題に対するソリューションとして有効なGI-POFの提案を進めるため、横断プロジェクトで商品化を加速させている。 「映像伝送のHTK」というポジションを確立させ10億円規模の事業に育成する。 ②新商品 一定のシェアを獲得した車載用コネクタ分野において、2017年3月期から着手した次世代車載カメラ(センシングカメラ)向けコネクタを次期牽引役と位置付け開発に注力してきたが、コンペを勝ち抜き搭載が決定した。 今後は2019年モデルへの搭載に向けてパートナー企業と共に量産方法を検討中である。 ③新顧客 バランスのとれた事業ポートフォリオ構築のために新規顧客の開拓が不可欠であると同社は以前から認識してきたが、車載分野においては中国のTier1を重点対象に新用途の提案などを行っている。 中国Tier1は、良いものなら採用決定までの期間が短いという特徴があることから、外資系企業の日本法人トップを務めた人材をキャリア採用し中国メーカーに強い代理店の開拓を積極的に進めているが、既に案件もいくつか出てきており、来期に大きく期待しているという。 FA分野では同社が得意とする少量・長期供給力を武器に顧客層拡大を目指しているほか、民生分野ではこれまではほぼ国内が中心だったSDカードソケット(UHS-Ⅱ)のグローバル拡販に取り組むなど、スピード・即効性を重視した施策を展開していく。 (2)収益力の回復 6%台まで低下した売上高営業利益率をまずは2桁まで回復させ、その後2020年度12%の営業利益率実現に向けて主に以下3つに取り組む。 ①車載用コネクタにおける合理化 ウェイトが高まっている低価格品における価格競争力の向上が急務である。 前期2,000万個生産体制に向け開発に着手した車載カメラ用全自動生産ラインの設置が7月に完了し、本格稼働が始まった。また、ベトナム生産拠点の開設などグローバルな製造再編をよりスピーディーに進める。 ②業務用コネクタにおける付加価値の増加 価格改定に加え、同社が得意とする少量組立・少量部品生産のための積極投資を実施する。 具体的には補助金を活用してカセット金型の導入を進めている。 生産部品変更のためにライン上の金型を付け替え・載せ替えるにあたり、従来の金型においてはほぼ半日かかることもあるが、カセット金型は1~2時間で完了するため、付帯工数の大幅な削減によりトータルでのコストダウンが可能である。また、余分な在庫が発生しないことから、同社が重視するキャッシュマネジメントにも大きく寄与することとなる。 同社では得意とする少量生産の生産技術、モノづくり力をこれからも磨き上げていく考えである。 また前期より顧客への提案を始めた「長期供給ビジネスモデル」に対してはその価値を認め、賛同してくれる顧客も出始めたことから、今後は持続性のある仕組みであることをより明確に顧客及び代理店に示す必要があると考え試行を開始した。 大きな手応えを感じており、同社独自のビジネスモデルとして一日も早い完成を目指している。 ③生産性の向上 基幹システムの刷新と同期してデジタル・トランスフォーメーションを推進する。 また、取引先との間のレガシー業務の廃止や取引の整流化を推進中である。 個別対応や無駄な付帯業務の削減を通じて、サプライチェーンの中で自社だけではなく、仕入先にも顧客にもメリットの生まれる全体最適の実現を働きかけていく。 また、検査業務における画像認識センサを用いたAIロボットの開発を進めているほか、RPA(ロボット・プロセス・オートメーション)の導入による本社業務の可能な限りの自動化にも努めていく。 これらの取り組みについては子会社HTKエンジニアリングと共に進めており、知見、ノウハウを蓄積するとともに今後はソリューションとして外販していくことも検討している。
 
 
今後の注目点
久しぶりの業績予想下方修正となってしまったが、佐谷社長によれば次世代車載カメラ(センシングカメラ)向けコネクタを始めとしてSeason1で行った仕込みが形になってきたことは確かであり、足元は苦しいが必要な投資を今後も継続して実施し、ゴールである2020年度及びそれ以降に繋げていきたいとのことだ。 短期的には下方修正後の予想売上高に対しどれだけ上積みを行うことができるか、中期的には翌期、翌々期にかけての新事業、新商品、新顧客の進捗・実績に注目したい。
 
 
 
<参考1:中期経営計画「GC20」>
全てのステークホルダーから信頼と期待をされる「よい会社」であるとともに、過去最高の売上、利益を更新し持続的成長企業へのスケールアップを目指すのが2021年3月期を最終年度とする新中期経営計画「GC20」。 (1)基本コンセプト GC20の基本コンセプトは、『事業戦略として「Segments No.1戦略の深耕」、プラットフォーム戦略として「コンパクト経営の追求」により価値を創造し続けるGood Companyを目指す。』というもの。 また、Good Companyを持続的なものにするのが、グループ企業理念とコーポレートガバナンス基本方針である。 (2)グループ企業理念 今回のGC20策定に際し、同社ではグループの企業理念として「Value by Connecting」を新たに掲げた。 豊かな未来のために「人」、「もの」、「情報」をつなぎ、価値を創造し続ける事を目指すというビジョンを示したもの。 (3)コーポレートガバナンス基本方針 金融庁と東京証券取引所により策定された「コーポレートガバナンス・コード」が2015年6月1日から適用されるのに先立ち、2015年5月22日、「コーポレートガバナンス基本方針」を公表した。 株主を始めとした全てのステークホルダーとの信頼関係構築のためのコーポレートガバナンスの重要性を深く認識したうえで、最適なコーポレートガバナンスを実現することが自社の責務であると宣言している。 (4)事業戦略 特定分野で特徴あるソリューションを提供することで顧客に「この分野なら本多通信グループに限る」と高く評価される事を目指すのが「Segments No.1戦略」。 これまでも同社では、様々なNo.1商品を生み出してきたが、現在の形ではそれぞれの商品の持続性・継続性は不十分と考えている。 そこで、それぞれのNo.1商品を核に水平展開と次世代化で「Segments No.1 領域」を創り出し、特長のある価値を提供する事で持続的成長を目指していく。 その展開モデルは、現在のSegments No.1商品/サービスを核に、次世代商品やサービスを創出し、顧客の具体的な欲求である「ウォンツ」を解決するというもの。 同社の強みである、スピード、カスタム対応、少量短納期、周辺技術を差異化要因とし、新たな顧客、新たな市場への展開を図る。 分野別のSegments No.1 戦略は以下の通りである。 ①業務用コネクタ Segments No.1 戦略:サービスとの融合戦略で顧客価値を倍化 長年培ってきた堅牢性や長期信頼性というハードの強みに、少量短納期、カスタマイズに加え、コネクタに付随する適切なハーネスもあらかじめ接続するワンストップ受注といった「サービス」を融合させ、顧客満足度を引上げる。 世界的にIoT、4Kや8Kの高画質化ニーズが高まる中、通信分野(海外における光通信化)、FA分野(グローバルな生産性向上ニーズ)、業務分野(セキュリティニーズ)において、堅牢性や長期信頼性といったノウハウの展開や高速POFによる市場創出により、通信分野やFA分野で規模と収益性を堅持する。 ②車載用コネクタ Segments No.1 戦略:ADASコネクタへ進化させ、将来価値を倍化 自動車の安全系機能の進化スピードは目を見張るものがある。 自動車の目となる車載カメラも、パーキングアシストなど「見る」機能から、ADAS(Advanced Driving Assistant System:先進運転支援システム)というコンセプトの下、車線検知、歩行者認識、衝突防止といった「測る」機能がより重要になると同時に、各自動車メーカーに限らずGoogleなど大手IT企業も含め、自動運転システムの開発が加速している。 ADASを構成するものは、車載カメラに加え、センサ、ミリ波レーダー(ミリ波帯の電波を用いて100m程度の範囲の状況を探知可能なレーダーシステム)、レーザー、ECU(エンジンコントロールユニット:エンジンの運転制御を電気的な補助装置を用いて行う際に、それらを総合的に制御するマイクロコントローラ)、電子ミラー、カーナビ、HUD(Head Up Display:フロントガラスに運転者向けの基本的な情報の画像を提供する)など、多岐にわたり、その全てがデジタル高速伝送により情報のやり取りが行われ、コネクタの活躍するシーンはますます拡大する。 こうした流れの中、車載カメラ数量は2014年度から2020年度で約3.5倍の14,000万個に、ADAS市場も同期間に2.5倍の7,700億円に急成長すると見られており、同社では高速伝送、小型化などコネクタメーカーならではのノウハウを注入したADAS用コネクタを開発し、急成長市場に投入する。 販売は、北米のTier1(自動車部品メーカーのうち、自動車メーカーに直接納入する一次サプライヤー)メーカーへの参入を狙う。また、製造においては中国、東アジアに次ぐ拠点づくりの検討を開始している。 ③情報システム Segments No.1 戦略:インテグレーションで事業価値を倍化 サーバ効率化のための仮想化において業界屈指の技術を有しており、現在はクラウドコンピューティングの広がりの中、世界的ベンダーとの連携により、上流工程からの受注に力を入れ高付加価値の一括案件の獲得を進めている。今後は、データの収集から分析までを一括して請け負うビッグデータ基盤ソリューションを提供し、特徴あるSegments No.1の獲得を目指す。 成長市場において、企画から運用までフルサポートする総合提案で収益性の向上にも取り組む。 (4)プラットフォーム戦略:コンパクト経営の追求 以上の様な事業戦略の下で営業利益率の向上を目指す同社だが、繰越欠損が無くなること等から今後の実効法人税率の上昇は避けられず、市場の期待に応える水準のROE、ROAを実現するためには「資産の軽量化/高回転化」、具体的には総資産回転率の引き上げが重要な課題となる。 前期の同回転率は1.39回だったが、以下のような取り組みによって1.4~1.5の達成を目指す。 ROICを意識した事業投資。設備は小型、省スペースおよび転用が可能なものとする。またEMSの活用など、社外リソースとの共創を進める。 ロスや無駄をなくしての生産性向上。製造や業務品質の向上。遊休資産や過剰在庫の極小化に取り組む。 CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の短縮 機動的な資本政策 (5)よい会社に向けて 全てのステークホルダーからの信頼と期待の下、組織力と人材力の強化に最注力し、持続的成長を遂げる「よい会社」を目指す。 (6)数値目標 今期初、GC20の最終年度である2021年3月期の計画を以下のように修正した。売上高は据え置くものの、利益、利益率を引き上げた。
 
 
<参考2:コーポレートガバナンスについて>
◎コーポレートガバナンス報告書 最終更新日:2018年6月25日