ブリッジレポート
(3537) 昭栄薬品株式会社

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ブリッジレポート:(3537)昭栄薬品 vol.4

(3537:JASDAQ) 昭栄薬品 企業HP
藤原 佐一郎 社長
藤原 佐一郎 社長

【ブリッジレポート vol.4】2019年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「今期の進捗率と過去2期の上期業績の通期実績に対する構成比を比較すると、過去2期を上回る売上高と比べ、営業利益はややスローなようである・・・」続きは本文をご覧ください。
2018年12月19日掲載
企業基本情報
企業名
昭栄薬品株式会社
社長
藤原 佐一郎
所在地
大阪市中央区安土町1-5-1 船場昭栄ビル
決算期
3月末日
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2018年3月 20,198 334 451 314
2017年3月 18,828 297 389 261
2016年3月 18,406 283 326 759
2015年3月 17,897 239 325 219
2014年3月 20,805 279 341 130
株式情報(12/11現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,060円 3,579,105株 3,793百万円 4.5% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
18.00円 1.7% 83.94円 12.6倍 6,424.61円 0.5倍
※株価 12/11終値。発行済株式数は直近期決算短信より。ROEは前期実績。
※2018年12月1日に1株を3株に分割。PBRは株式分割を考慮。
 
昭栄薬品株式会社の2019年3月期第2四半期決算概要、2019年3月期業績見通しなどをお伝えします。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
主に植物系天然油脂を原材料とするオレオケミカル(※)商品の仕入販売を行う化学品商社。幅広い仕入先・販売先を有し、化学品の原材料流通を川上から川下まで広くカバーしている。家庭用洗浄剤を中心とした日用品の企画及び仕入販売を行う日用品事業、地盤改良やコンクリートの補修補強材料等の仕入販売を行う土木建設資材事業も展開。高度な専門性、圧倒的な情報量等の強みを活かし「一番にお声がかかる選ばれる会社」を目指す。今後は新興国化学品の販売拡大、海外における新規顧客開拓に注力し収益の安定的な拡大を追求する。
 
(※)オレオケミカル
パーム油、ヤシ油及びパーム核油等の天然油脂を原材料として生み出される油脂化学品の総称であり、主な種類としては脂肪酸、グリセリン、脂肪アルコール、脂肪アミン、脂肪酸エステルがあげられる。資源に限りがある石油化学品とは異なり、再生産が可能であることや環境負荷が低いこと等の特徴がある。
 
【1-1 沿革】
1937年12月に創業者である鐵野義数(てつの よしかず)氏が大阪市南区(現 大阪市中央区)で、無機薬品を中心とした化学品の卸売事業を手掛ける鐵野商店を開業したのが始まり。1946年4月に昭栄理化学工業所と改称し、主として化学品及び石鹸の原材料の販売を行い、商社としての地盤を築き、また1951年4月から、花王石鹸株式会社(現花王株式会社)の脂肪酸及び脂肪酸誘導体の販売を開始したことを契機に事業を拡大してきた。2000年代に入り中国、タイに拠点を設け調達力を強化。2016年3月、東証JASDAQに上場した。
 
 
 
 
また、同社グループの存在価値、成長の源泉、成長基盤を支える事業活動の基本方針として『一番にお声がかかる選ばれる会社へ』を掲げている。
 
 
【1-3 事業内容】
1.事業概要・ビジネスモデル
創業以来の事業である化学品事業を中心に、同事業で培った事業基盤を活用し事業間シナジー効果を重視して多角化を進め、日用品事業、土木建設資材事業を展開している。
 
 
①化学品事業
以下の2つの商流で主として化学品の原材料および製品の仕入・販売を行っている。
脂肪酸、脂肪アミン、脂肪アルコール、グリセリンといったオレオケミカルを界面活性剤等の原材料として油脂メーカーから仕入れ、界面活性剤メーカー等の中間製品メーカーに販売。
中間製品メーカーが生産した界面活性剤等の化学品を仕入れ、家庭用として石鹸、洗剤、シャンプー、リンス及び化粧品等の最終製品メーカーに、工業用として繊維、紙・パルプ、医薬、食品、洗浄剤、プラスティック、塗料、鉄鋼・金属、合成樹脂、土木建設等の最終製品メーカーに販売。
 
 
仕入先は400社超、販売先は700社超と多数で、販売先の業種も多岐にわたっており、化学品の原材料流通を川上から川下まで広くカバーしている。
 
 
沿革でも触れたように、花王株式会社は1951年以来の長年にわたる主要な仕入先及び販売先となっている。
昭栄薬品は花王のケミカル事業の国内主要代理店であり、総仕入れに占める花王の比率は約4割。
花王のオレオケミカルを界面活性剤等の化学品メーカーに、界面活性剤等を洗浄剤及び香粧品メーカー他の幅広い業界に販売している。

同社取扱いの中心製品である界面活性剤は、代表的なものは石鹸、洗浄剤だが、その機能の多様性から、トイレタリー以外にも、化粧品、食品、医薬品、繊維、合成樹脂、土木建設、紙・パルプ、ゴムなど幅広い業種・分野で利用されている。同社が取り扱う界面活性剤は1,000種類を超えている。
 
界面(表面)とは、2つの性質の異なる物質の境界面のことで、水と油のように2つの混じり合わない物質の間には、必ず界面が存在する。例えば、洗濯中の洗濯機の中では、水と空気の界面、水と汚れの界面、水と衣類の界面、汚れと衣類の界面、洗濯槽と水の界面など、多くの界面が存在している。界面活性剤とは、このような界面に働いて、界面の性質を変える物質のことを指す。
例えば水と油の場合では、界面活性剤は、この界面に働いて界面の性質を変えて水と油を混じり合わせることができる。
 
②日用品事業
界面活性剤に関する専門知識を活用し、「安心・安全」をテーマとして「簡単・便利」を商品コンセプトに、家庭用洗剤、業務用洗浄剤、カビとり剤、化粧品等の商品を企画し、OEM供給を行っている。生産は外部に委託。
主な販売ルートは、生協ルートなどである。

大手ナショナルブランドが主に高い洗浄機能に重点を置いた商品開発を行っているのに対し、同社は「安心・安全」をテーマにしたニッチな商品企画を得意としており、販売チャネルにおける差別化も図っている。
また化学品事業において日用品の原材料となる多種多様な化学品メーカーとの取引があることから、最適な原材料の調達及び生産委託先の選定を効率的かつ機動的に行うことが可能である。
 
 
2016年8月より収益力向上を図り、同社オリジナル商品(靴・ブーツスプレー)の発売も開始。2017年4月にはマットレスや布製のソファー内部のダニを忌避する「マットレスのダニよけスプレー」(実用新案取得済)を発売した。
自社ブランド力の向上に加え、新たな販路の開拓を目的としている。
 
 
③土木建設資材事業
界面活性剤に関する専門性を活用し、①グラウト(薬液注入)工法等の地盤改良に使用する材料・添加剤、②コンクリート補修補強工法に使用する材料・添加剤、③汚染土壌改良の環境改善薬剤等を仕入・販売している。
個別の工事の目的に応じた工法に関する情報提供を含め、環境と安全に配慮した薬剤選定を強みに、工事の現場環境に応じた適切な商品を提案している。
建設会社等が進める新工法開発の原材料に関する技術サポート等を通して、新工法の開発にも貢献している。

多くの同業他社が成形品資材を中心に取り扱うのに対し、同社は土木建設資材を総合的には取り扱わず、「土木建設関連の化学品」に絞り込むことで独自のポジション、独自のプレゼンスを確立している。
 
 
【1-4 特長と強み】
◎独自のビジネスモデル:集中型市場深耕モデル
事業ドメインを「オレオケミカルを中心とした化学品分野」に設定して経営資源を集中している。そうして蓄積された国内外の製品情報、メーカー情報、営業ノウハウ、トレンド情報などの情報資源を日用品事業、土木建設資材事業において有効活用し、それぞれの市場を深耕し企業価値の拡大に結び付けている。
 
◎高度な専門性と圧倒的な情報力
得意先及び仕入先企業は、常に新商品開発、商品リニューアルにおいて、価格、品質、機能、作用及び環境負荷等で課題を抱えており、自社と外部のアイデア等を組み合わせて革新的な価値を創出するオープン・イノベーションを志向する企業が増加している。

そうした事業環境を同社ではビジネスチャンスと捉え、各社の開発テーマや製造上の課題をヒアリングしたうえで、長年にわたって蓄積してきたオレオケミカルおよび界面活性剤に関する豊富な知見・知識を活用して新商品開発の支援を行っている。
具体的な支援としては、商品企画アイデアの提案、商品の特長となる効果に適切な原材料の選定、得意先の要望を踏まえた上でのより効率的な仕入先や生産委託先の選定、仕入先の共有による原材料コストの低減など。
例えば仕入先の工場が事故などで操業停止した際の代替品の調達も可能であり、得意先からは無くてはならない存在となっている。

商品の仕入販売という単なる商社機能の枠を超えた製品開発支援により顧客企業との強固な信頼関係が構築されており、同社の大きな競争優位性となっている。
 
◎グローバルに顧客企業の生産活動を支援
海外拠点として中国・上海に「昭栄祥(上海)貿易有限公司」、タイに「SHOEI TRADING(THAILAND)CO., LTD.」の現地法人を有し、グローバル調達体制を構築。
700社を超える国内外の得意先に対する生産活動を、原材料選定から支援している。
 
◎安定した収益トレンド
幅広い取引先と仕入先、広範な取扱品目、得意先企業との強固な信頼関係により、創業以来安定した売上、利益の拡大を見せている。
 
 
18年3月期のROEは前期とほぼ同水準。事業の特性はあろうが収益性の改善を通じたROEの上昇が期待される。
 
 
2019年3月期第2四半期決算概要
 
 
増収減益
売上高は前年同期比4.9%増の103億28百万円。各事業とも堅調に推移した。
一部原材料価格変動により粗利率は0.3%低下し、売上総利益は同0.3%増にとどまった一方、販管費が同4.2%増加したため、営業利益は同14.2%減の1億49百万円。
受取配当金、為替差益増加により、経常利益は同3.1%減の2億35百万円。
ほぼ計画通りの上期決算となった。
 
 
◎化学品事業
増収減益。
国内主要得意先の生産・販売活動が概ね好調に推移し、香粧品分野を中心とした新規取引先の開拓や既存得意先への輸入商材の拡販に努めた。ただ、利益面では一部原材料の価格変動の影響を受け、利益率が低下し減益となった。
 
◎日用品事業
増収増益。
既存得意先への新アイテムの提案、新規取引先の開拓、インターネット販売の開始による当社オリジナル商品の販売チャネル拡大等に努めた。
 
◎土木建設資材事業
増収増益(営業損失幅縮小)。
地盤改良工事、コンクリート補修補強工事の案件が依然少なく低調となったものの、環境改善工事に使用される薬剤の受注が引き続き好調に推移した。
 
 
現預金、売上債権の減少、投資有価証券の増加で、資産合計は同6億25百万円増加の177億25百万円となった。
負債合計はほぼ変わらず。利益剰余金の増加などで純資産は同6億55百万円増加し、83億19百万円。
この結果自己資本比率は前期末より2.1ポイント上昇し、46.9%となった。
 
 
法人税等の支払いや仕入債務の減少で営業CFは減少。
投資CFはほぼ変わらず、フリーCFは減少。長期借入金の返済による支出や自己株式の取得による支出で財務CFのマイナス幅は拡大。キャッシュポジションは低下した。
 
 
2019年3月期業績予想
 
 
業績予想に変更無し。増収減益を予想
売上高は前期比2.5%増の207億円の予想。引き続き堅調な化学品事業を中心に増収を見込んでいる。
人件費の増加等による販管費の伸びを吸収できず営業利益は同5.3%減の3億16百万円の予想。
18年12月1日付1:3の株式分割を契機に配当予想を修正。前期比実質1円の増配の18円/株を予想。予想配当性向は21.4%。20%以上の配当性向を目標としている。
 
 
◎化学品事業
前期比2.7%増収予想。下期も界面活性剤業界は堅調な推移と見込んでいる。
海外商材の強化や拡販、ゲルベアルコールを含めた高級アルコールやIPMPの拡販を進める。
また最終商品メーカーへの営業に注力するほか香粧品分野の拡販に努める。
上海、タイの海外子会社との連携強化による拡販を図る。
 
◎日用品事業
前期比7.0%増収予想。新規アイテム、新商品の開発を進める。
既存顧客への拡販を図るほか、販売ルートやツールの拡充にも努める。新規顧客開拓も順調に進む。
 
◎土木建設資材事業
東京オリンピック、リニア中央新幹線関連工事やインフラ施設等の老朽化対策のほか、大阪万博など事業環境は良好だが、前期の伸長を考慮し、前期比4.2%の減収を計画。
既存顧客であるメーカー、二次販売店への深掘り営業を進める。
新規商品の開発や拡販にも注力する。
 
 
今後の注目点
今期の進捗率と過去2期の上期業績の通期実績に対する構成比を比較すると、過去2期を上回る売上高と比べ、営業利益はややスローなようである。
化学品事業における利益率の比較的高い輸入化学品の伸びや日用品事業、土木建設資材事業の売上・利益の拡大が、下期にどれだけ積み上げていけるのかを注目したい。
 
 
 
 
<参考1:今後の成長戦略>
 
同社では主力事業である化学品事業の安定的な拡大をベースに、「国内売上高200億円以上、海外売上高比率10%以上」の早期達成を目標としている。
 
 
各事業の取り組みは以下の通り。
 
◎化学品事業
戦略1:新興国化学品の販売拡大
近年新興国メーカーが生産する化学品の品質が急速に向上しているため、採用する企業が増加している。
そこで同社では、新興国における仕入先開拓を推進し、国内外で販売を強化する。
具体的には、新たな殺菌剤「イソプロピルメチルフェノール(IPMP)」を戦略商品と位置付けて、積極的に取引拡大を図る。IPMP以外の戦略商品の発掘、導入も進めていく。

新興国化学品メーカーには、日系メーカーの品質基準を満たすことを提案し、品質改善のための助言を提供するなど協働を進めるほか、具体的に日系企業への納入チャンスを提供し関係を強化する。

同社における輸入化学品の国内売上高は界面活性剤やIPMPを中心に順調に拡大しているが、今後は更にボリューム、スピードをアップさせる計画だ。
 
戦略2:海外における日系企業を中心とした新規得意先開拓
同社の強みである豊富な情報資源を顧客または潜在顧客と共有することにより関係を強化し、国内外で生まれつつある好循環の拡大を図る。
つまり、国内取引で実績のある顧客企業に対しては、同社の中国、タイの海外拠点でも取引を開始する。
一方、国内での実績が無い顧客企業は、まず海外拠点で取引を開始し、その後国内でも取引を開始する。

戦略1にある新興国化学品の提案により、国内化学品を含めたグローバルでの原材料調達支援体制を構築する。
 
 
◎日用品事業
戦略:安心安全をテーマとした商品企画の強化
国内のサプライチェーンを活用し、トレンドにマッチした安心安全な商品企画を更に強化する。
 
◎土木建設資材事業
戦略:二次販売店への販売活動強化
全国の土木建設の情報収集体制を構築するとともに、幅広い需要を取り込んでいく。
 
 
<参考2:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2018年6月27日

<基本的な考え方>
当社グループは、経営の健全性、適法性及び透明性を向上させ、また経営の説明責任を適切に果たすことで、株主の皆様をはじめとするステークホルダーの立場に立って、企業価値を最大化することをコーポレート・ガバナンスの基本的な方針の基礎としております。
当社グループのコーポレート・ガバナンス体制としましては、監査等委員会制度を採用しており、取締役会が意思決定の透明性を確保し、取締役会及び監査等委員会が経営の健全性並びに適法性のチェックに加え、業務執行の妥当性に重点を置いた経営モニタリングを継続して実施できる体制を整備、維持することが、最も重要であると考えております。
また、内部統制システムは、経営の効率性、財務報告の信頼性及びコンプライアンスに重点をおいてその構築を推進し、コーポレート・ガバナンスに関する取組みと相互に連携することで、それぞれの実効性を確保してまいります。

<実施しない主な原則とその理由>
「当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則について、全て実施いたします。」と記載している。

また、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目的に定めたコーポレート・ガバナンスに関する基本方針において、「株主との対話の促進」について、

「当社グループは、株主総会における株主との積極的な対話はもちろんのこと、株主総会以外の場においても、株主との間で建設的な対話の機会を持ち、自らの経営方針等を分かりやすく説明し、その理解を得るよう努める。
(1)取締役会は、株主との建設的な対話を促進するためのIR担当取締役を定め、決算説明をはじめとする投資家向け説明会の実施はもちろんのこと、株主からの対話の申込に対しては、合理的な範囲で対応するものとし、その履行状況について適切に監督する。
(2)取締役会は、経営戦略や経営計画の公表に当たっては、合理的な範囲で収益力、資本効率等に関する目標を示し、これらの実現のための具体的な方策について、可能な範囲で適切に説明を行う。」
と記している。