ブリッジレポート
(3937) 株式会社Ubicomホールディングス

東証1部

ブリッジレポート:(3937) Ubicomホールディングスvol.1

ブリッジレポートPDF

 

 

青木 正之 社長

株式会社Ubicomホールディングス(3937)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

情報・通信

代表取締役社長

青木 正之

所在地

東京都文京区小石川2-23-11 常光ビル9階

決算月

3月末日

HP

http://www.ubicom-hd.com/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,254円

11,483,360株

14,400百万円

24.7%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

未定

-

38.60円

32.5倍

147.18円

8.5倍

*株価は5/15終値。発行済株式数は直近決算短信より。ROE、BPSは前期実績。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2016年3月(実)

2,926

193

232

-4

-0.49

0.00

2017年3月(実)

2,992

237

289

112

10.60

0.00

2018年3月(実)

3,208

322

355

212

19.08

0.00

2019年3月(実)

3,555

564

591

368

32.57

5.00

2020年3月(予)

4,021

671

710

443

38.60

未定

*予想は会社側予想。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下、同様。

 

株式会社Ubicomホールディングスの会社概要、今後の成長戦略、業績動向、青木社長へのインタビューなどをお伝えします。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2019年3月期決算概要
3.2020年3月期業績予想
4.今後の成長戦略
5.青木社長に聞く
6.今後の注目点
<参考:コーポレートガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 「国策」に合致したソリューション提供による成長を追求する唯一無二のグローバルイノベーションカンパニー。ITソリューションサービスを幅広い市場に向けて提供するグローバル事業と、レセプト点検ソフトをはじめとする医療関連ソリューションを手掛けるメディカル事業を展開。

     

  • 「深刻化するIT人材不足の解消」、「膨張を続ける国民医療費の適正化」、「医療ビッグデータの活用」といった社会的課題に対し同社独自のソリューションを提供し、確実に需要を取り込み、成長を続けている。

     

  • 「フィリピン開発拠点の900名に上るトップクラスのエンジニア集団」、「強固な顧客基盤」に加え、「グループ内外を問わない仲間意識」も同社の大きな特長・強みである。

     

  • 19年3月期の売上高は前期比10.8%増の35億55百万円。グローバル事業において新規顧客を中心とした案件受注が増加したほか、メディカル事業においても既存商品の伸長に加え、新商品発売も市場拡大に寄与した。営業利益は同75.1%増の5億64百万円。両事業ともに高収益モデルを確立し、人材中心に実施した積極的な戦略的投資を吸収。大幅増益を達成した。営業利益、経常利益は5期連続で過去最高を更新した。

     

  • 20年3月期の売上高は前期比13.1%増の40億21百万円、営業利益は同19.0%増の6億71百万円、経常利益は同20.1%増の7億10百万円の予想。引続き両事業とも好調に推移。今後の更なる利益積み上げを見据えた「戦略的投資」を吸収したうえで2桁の増益を目指す。営業利益・経常利益ともに6期連続で過去最高益を更新する見込み。配当は現時点では未定としているが、初配となった前期に続き今期も利益水準に応じて適切な株主還元を実施する考えだ。

     

  • 2020年度に向け既存ビジネスを継続的に拡張させながらも、両事業とも収益性の高い次世代ソリューションビジネスを大きく伸張させ、経常利益の半分を次世代ソリューションビジネスで創出し、売上高経常利益率20%以上の実現を目指している。

     

  • 青木社長へのインタビューを行った。株主・投資家に対しては「2019年3月期、初めて配当を実施することとした。今後は増配により配当性向も引き上げていきたいと考えている。また一方で、今来期と投資もしっかりと行うが、それ以上にパフォーマンスを上げて株主や投資家の皆様の期待に応えていくので、是非中長期の視点で応援していただきたい。」とのメッセージを送っている。

     

  • 同社の利益率が急速に上昇している。19年3月期の営業利益率(外部顧客への売上高ベース)は前期に比べクローバル事業、メディカル事業でそれぞれ6.8%、3.2%上昇。会社全体でも5.9%の上昇となった。本文中でも触れたように、グローバル事業ではコアソリューションの横串的展開が加速していること、メディカル事業では好調な既存事業に加え、次世代型レセプトチェックシステム「Mighty Checker® EX」のリリースによりストック型の高収益モデルが確立したことが主要因。今期の予想売上高経常利益率は17.7%。2020年度(2021年3月期)に20%以上を目標としているが、達成のためには両事業ともにサブスクリプションモデルをいかに早期に構築できるかがカギとなる。「Automation/RPA:自動化」、「Analytics:分析」、「AI:人工知能」から成る「3A」の更なる横串的展開および新規マーケット開拓の進捗に期待したい。

     

1.会社概要

「国策」に合致したソリューション提供による成長を追求する唯一無二のグローバルイノベーションカンパニー。
ITソリューションサービスを自動車、金融、医療、製造/ロボティクス等の幅広い市場に向けて提供するグローバル事業と、レセプト点検ソフトをはじめとする医療関連ソリューションを手掛けるメディカル事業を展開。約900名に上るトップクラスのエンジニア集団を擁するフィリピン子会社の開発拠点は同社の強力な競争優位性の源泉である。
高収益であるストック型ビジネスの拡大、Win-Winインベストメントモデルによる協業や戦略的提携を通じた更なる成長により、2020年度売上高経常利益率20%以上を目指している。

 

【1-1沿革】

元より起業意欲が旺盛であった青木 正之氏は、2005年3月に株式会社ワールドの新規事業子会社である株式会社WCLの代表取締役社長就任後、国内外で様々な新規事業のシーズを探していると、訪問したフィリピンで多くの若く優秀なエンジニアが活気に満ちて仕事をしていることを知る。折から日本企業において社内業務のIT化が進行する中、フィリピンでシステム開発を行うことで幅広いシステムソリューションを低コストかつグローバルに提供すれば需要を確実に取り込みことができると考え事業化を決意。2005年12月に株式会社AWS(現:株式会社Ubicomホールディングス)を設立した。
ICT化の進展というフォローの風に加え、優秀なトップエンジニアを多数擁するフィリピン開発拠点の競争優位性を武器に顧客開拓が順調に進み業容は拡大。2016年6月、東証マザーズに上場した。2017年7月に(株)Ubicomホールディングスに社名変更後、同年12月には東証1部に市場変更。

 

【1-2 経営理念・ビジョン】

唯一無二のグローバルイノベーションカンパニーとして以下3つの経営ビジョンを掲げている。

1.他社に先駆けた市場の創造・イノベーションの実現

2.グローバル展開

3.ニッチ分野における唯一無二のソリューション提供企業であり続けること

 

労働力不足解決や医療費適正化に代表される、「国策」に合致したソリューション提供による成長を追求しており、同時に自社の社会的な責務・存在意義であるとも考えている。

 

【1-3 事業内容】

1-3-1 概要
国際化や少子高齢化など社会構造の変化や、医療生命科学・ロボット・人工頭脳の分野における技術革新を新規ビジネス創出のチャンスと捉え、戦略的事業ドメインと位置付ける自動車、金融、医療、製造・ロボティクス分野において、「3A」(「Automation/RPA:ソフトウェアテストあるいは製造ラインの検査工程の自動化」、「Analytics:分析」、「AI:人工知能」)領域を中心とした同社独自のコア・ソリューションを開発し、多くの顧客企業に提供している。

 

1-3-2 同社を取り巻く事業環境
(1)深刻化するIT人材不足
経済産業省「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」(2016年6月10日発表)によれば、「IT需要は中長期的に引き続き増加する見込みである一方、人口減少に伴い、労働人口(特に若年人口)が減少することから、今後、IT人材の獲得は更に難しくなり、IT人材不足は今後より一層深刻化する可能性が高い。」と述べている。
2015年の人材不足規模が約17万人なのに対し、2030年には高位シナリオで約79万人、中位シナリオでも約59万人が不足すると推計している。
中でも、大幅な市場拡大が予想される「ビッグデータ」、「IoT」、「AI」といった先端IT技術に関する不足規模は、2015年現在の約1.5万人が2020年には約4.8万人まで拡大すると試算している。
加えて、日本においては英語の壁が欧米最先端技術に対するアクセスの障害となっており、我が国のIT人材不足は極めて深刻である。

 

(経済産業省「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」 2016年6月10日発表より)

 

(2)膨張を続ける国民医療費とレセプト点検強化
2017年度の概算医療費(労災・全額自費等の費用を含まない。医療機関などを受診し傷病の治療に要した費用全体の推計値である国民医療費の約98%に相当)は42.2兆円と2015年度の41.5兆円を上回り過去最高を記録した。
高齢化の進展に伴い医療費は増大傾向にあることから各健康保険の財政状況は悪化が続いており、保険料負担軽減に向け、各健康保険はレセプト点検の強化による医療費適正化を進めている。

 

(レセプトとは?)
現在の保険診療制度の下では、医療機関が受け取る診療報酬のうち、患者が支払う医療費は最大3割で、7割以上は健康保険組合、共済組合、市区町村などが負担する。
患者が受けた診療について、医療機関がこれら公的機関に保険負担分の支払いを請求するための医療診療の明細書をレセプトと呼び、レセプトを発行するレセプト業務は医療機関の収益の大部分を支える大切な業務である。
提出されたレセプトは、審査支払機関で厳重な確認作業が行われ、レセプトの記載内容に誤りがあると、審査支払機関からレセプトを差し戻されたり(返戻)、診療報酬点数を減点されたりすることがある。返戻された場合には、レセプトを精査・修正して、再提出しなければならず、適切なレセプトを提出することは効率的な医療機関経営を行うにあたり極めて重要な作業である。
2009年5月には、医療機関は原則としてオンラインによるレセプトの請求が義務付けられるようになった。
審査支払機関における審査強化の動きも重なり、オンラインへの対応、レセプトチェックの精度と効率引き上げは、医療機関経営における重要課題となっている。

 

 

(3)急成長が見込まれる医療ビッグデータ市場
高齢化進展に伴う社会保障制度見直しの中で、医療の質を維持・向上させながら、効率化を図ることで医療費を抑制することが求められている。
そのためのカギが、レセプトデータ、電子カルテデータ、健診データ等の診療行為に基づくデータの活用であり、データ活用を通じた地域の医療課題の解決、研究開発や医療機関経営の効率化などが期待されている。

 

2018年5月に施行された「次世代医療基盤法」は、医療機関が取り扱う医療情報を、個人情報保護に配慮しつつ円滑に利活用できる仕組みを整備するために制定された法律である。
同法においては今後実現が期待されることとして、「ICTの技術革新を利用した治療の効果や効率性等に関する大規模な研究を通じて、患者に最適な医療を提供する」点を挙げており、医療ビッグデータの活用が製薬・保険・医療機器分野における先端的研究開発や新産業創出につながる事が期待されている。
ある民間調査によれば、2025年度の医療ビッグデータビジネスの国内市場はビッグデータ活用治療・診断システム関連を中心に約8,300億円と試算しており、今後の順調な拡大が見込まれている。

 

「国策」に合致したソリューション提供による成長を追求する同社は、以上のような「深刻化するIT人材不足の解消」、「膨張を続ける国民医療費の適正化」、「医療ビッグデータの活用」といった社会的課題に対し同社独自のソリューションを提供し、確実に需要を取り込み成長を続けている。

 

1-3-3 注力する事業領域
新しい時代を切り拓く「3A」分野を戦略的な技術領域と位置付け、これらをベースとした事業拡大に注力している。

分野

現状及び今後

Automation/RPA

ソフトウエア自動化のエンジンを確立しており、ロボティックス(ロボット工学)・RPA(ロボットによる業務自動化)を推進。

大手ロボティクス、FAメーカーにリーチしたマーケットの拡大を目指している。

Analytics

日本におけるNo.1レセプト点検ソフトのMightyシリーズや分析ツールの開発フェーズを終え、データの質・量の向上を図り、医療関連のビッグデータ分析を行うエンジンをつくり、今後は新たなマネタイズモデル実現に向けたフェーズへ移行。

その他、工場や船舶会社などに向けた予知保全のソリューションを提供。

AI

音声AI、チャットボット(自動会話プログラム)、自動券売機等のAI音声といった開発を終え、今後は自動車のSDL(カーオーディオとスマートフォンを連携させるスマートデバイスリンク)に音声AIを用いた車載向けAI機器のソリューション開発に注力する。加えて自動走行車搭載デバイスへの応用も見据えており、本格普及期には、大きな利益を持続的にもたらすストックビジネス化を目指している。

 

1-3-4 セグメント
セグメントは、ITソリューションサービスを自動車、金融、医療、製造・ロボティクス等の幅広い市場に向けて提供するグローバル事業と、レセプト点検ソフトをはじめとする医療関連ソリューションを手掛けるメディカル事業の2つ。

 

(1)グローバル事業
◎概要
フィリピンの100%子会社であるAdvanced World Systems, Inc.およびAdvanced World Solutions, Inc.を主要開発拠点に、自動車、金融、医療、製造・ロボティクスを重点対象業種として、組込みソフト開発、デバイスドライバ開発、ミドルウェア開発、Windows/Linuxアプリ開発、IoTアプリ開発などを行っている。
同社では「3A」(「Automation/RPA:自動化」、「Analytics:分析」、「AI:人工知能」)を戦略的技術領域と定義し、独自のコアソリューションを展開しているが、その高度なソリューション開発力の源泉が、約900名に上るトップクラスのエンジニアを擁するフィリピン開発拠点であり、強力な競争優位性を生み出している。(詳細は【1-4 特徴と強み】を参照)

 

◎顧客
顧客企業は自動車、製造業、医療、金融関連と多岐にわたる。
前述のように日本ではIT人材不足が深刻化していることに加え、開発・運用にかかるコスト削減ニーズが根強いが、英語がネイティブで日本語も堪能な約900名に上るトップクラスのエンジニアを擁する同社はこうしたニーズを着実に取り込んでいる。
加えて多数の国内大手顧客との長年に亘る豊富な開発実績は同社に対する信頼・評価を一段と高めている。

 

(2)メディカル事業
◎概要
100%子会社である株式会社エーアイエスが、医療機関等に関わる医療情報システムのソフトウエア商品の開発・販売、受託開発、医療ビッグデータ分析エンジンの提供及びコンサルテーションを行っている。
医療現場の業務効率を改善し経営品質を高める「Mightyシリーズ」製品は、その豊富かつ有用な機能が高く評価され、2019年3月末時点では、国立大学病院の約58%(26施設)、20床以上の病院の約35%(3,009施設)、19床以下のクリニックの約12%(12,000施設)、合計約15,000施設が導入するトップシェア製品である。

 

◎主力製品
①レセプト点検ソフト「Mighty Checker®」
レセプト点検の効率化・厳格化が求められる中、1999年にレセプト点検ソフト「Mighty Checker®」を他社に先駆けてリリースした同社は、その有用性が高く評価されレセプト点検ソフトのリーディング企業としてのポジションを確立。2019年3月期にはレセプト点検にAIを導入した次世代レセプトチェックシステム「Mighty Checker® EX」をリリースし、その地位を揺ぎ無いものとしている。

 

主として以下のような機能により医療機関のレセプト業務を強力にバックアップしている。

製品名

特長

Mighty Checker® PRO Advance

・医科レセプト点検ソフトウエアの普及型システム

・病名・医薬品・医療行為の適応症を点検

・査定・返戻対策の点検(突合点検・縦覧点検・算定日チェック等)

・算定支援機能による点検(指導料等で算定できる可能性がある項目をチェック)

Mighty Checker® PRO Analyze

・医科レセプト点検ソフトウエアの上級システム

・点検結果を分析し、効率的な点検業務を提案

・査定・返戻対策に加え、レセプト点検結果を活用した、より効率的な点検結果の活用が可能

・査定返戻データ取り込みによりスムーズなデータベース修正を実現し、査定返戻の抑止を強化

Mighty Checker® EX

・2018年秋にリリースしたMighty Checkerシリーズの新製品

・徹底的にユーザビリティを重視し、レセプト点検にAIを導入した次世代レセプトチェックシステム

 

②オーダリングチェックソフト「Mighty QUBE® PRO」
Mighty Checker®のデータベースを活用し、疾患と診療行為・投薬の適応性、用法用量等を処方オーダー時に点検し、不適応のものや、病名が漏れているケースへエラーを出すシステム。オーダリング時の人為的な誤入力・誤操作を防ぐことで、医療事故(ヒヤリ・ハット)や査定(減額)を防止する。
同製品も経営の質向上に大きく貢献する点が評価され、多くの医療機関での導入が進んでいる。

 

【1-4 特徴と強み】

1-4-1 フィリピン開発拠点の900名に上るトップクラスのエンジニア集団
沿革でも触れたように、青木社長が現地視察を重ねた中で開発拠点として最適と判断したフィリピンは、同社競争優位性の源泉であると同時に今後の成長戦略を牽引する極めて重要な役割を担っている。
前身を含め20年以上に亘る開発実績を有するフィリピン開発拠点の主な特徴は以下のとおりである。

 

①グローバル開発の最適地「フィリピン」
フィリピンは若年層中心に長期的な人口増加が続く人口ボーナス期に入っていることなどから平均して年6%近い経済成長を続けており、特に若年層は活力にあふれ、上昇志向が強まっている。
加えて英語が公用語であるためグローバルで活躍できる素地が整っていること、ITリテラシーが高いこと、ASEANの中心に位置しアクセスも良好であることなどから、グローバルベースでのIT開発拠点として最適である。

 

②超一流の人材を採用
フィリピン開発拠点には現在約900名という多くのエンジニアが在籍しているが、「量:人数」のみでなく「質:優秀さ」においても他に例を見ないレベルの高さを誇っている。
長年の実績に裏打ちされ、フィリピン開発拠点に対するエンジニア志望者の評価は高く、入社希望者は毎年約4,000名に上るが、採用されるのはわずか160名程度で合格率は約4%と極めて狭き門となっている。
またエンジニアの約7割がフィリピン大学を始めとした同国上位3校の出身者であり、まさに超一流の人材を獲得することができている。

 

③独自の教育・研修プログラムによる戦力化
超一流の人材を採用しても、それだけではトップクラスのエンジニア集団を構築することはできない。
戦力となる真のトップエンジニアに育て上げるための研修・教育制度こそが、他社が容易にキャッチアップすることのできない強力な差別化要因の一つである。

 

同社グループは今から16年前の2003年4月、フィリピンに自社研修センター「ACTION」を設立し運営を開始した。
「ACTION」における研修プログラムは同社が自社開発したもので、IT基礎概念、先進技術、対人ソフトスキル、日本語の4カテゴリーで構成され、PhilNITS(フィリピン国家情報技術者試験)と日本語検定4級の合格を目標に5カ月間の研修を実施する。
研修終了後、研修生はボードメンバーに対して成果を発表し面接評価を経て初めてプロジェクトへの参加がアサインされる。優秀な学生であっても実際に仕事を任されるまでの道のりはけっして楽なものではないが、こうしたハードルを乗り越えたプログラム卒業者は高度な技術力と日本語環境における業務遂行能力を有することから日本のIT市場において圧倒的な優位性を発揮しており、同社成長の強力なエンジンとなっている。
また、同社ではチャレンジングで最先端を行くプロジェクトが常に多数稼動しているため、やる気に溢れた優秀な人材に活躍の場を与えており、この点も同社グループが就職先としてフィリピンにおいて大きな人気を得ている要因の一つでもある。

 

④ソリューション開発力の更なる高度化・強化
既に他社を凌駕する高いソリューション開発力を有する同社だが、そのアドバンテージを更に強固なものとすべく2017年に設立したのが「先端技術開発センター」である。
同センターでは約60名の先端技術者がAIやビッグデータ分析に特化しており、そのネイティブな英語力を活かし世界的なトップ研究者に繋がることで最先端技術にアクセスできる体制を構築している。
これにより短期間かつ低コストで高付加価値プロトタイプ(試作品)を量産し、日本の大手顧客に直接提供することが可能となったため、同社の提案力は飛躍的に向上している。

 

⑤外部から高評価を獲得
高いハードルを越えてプロジェクトに参画することができたトップエンジニア達の活躍は外部から高く評価され数々の受賞歴に結びついている。
*2016年、日本の情報処理技術者試験のアジア版共通統一試験で同社エンジニア2名がトップ3に入賞。
*2017年、「国際ICTアワード」においてフィリピン子会社AWSがフィリピン全土NO.1のベストソフトウエアカンパニーを受賞。
*自社研修プログラム「ACTION」がフィリピンeサービスアワードにおいて企業プログラム部門賞等を6年連続で受賞。

 

1-4-2 強固な顧客基盤
グローバル事業、メディカル事業ともに圧倒的な競争優位性を武器に強固な顧客基盤を構築している。
後述の成長戦略における、サブスクリプションモデルによるストック型ビジネスの拡大、Win-Winインベストメントモデルにおける成長企業と顧客企業のマッチングなどにおいてもこの強固な顧客資産は大きな役割を果たすものと思われる。

 

1-4-3 グループ内外を問わない仲間意識
青木社長は海外を含めた従業員およびその家族を「仲間」と位置付け、全員が笑顔を絶やさず常に明るく前向きに、現状に満足することなく1人1人がオーナーシップを持って時代を先取りすることによって飛躍する企業グループであることも同社グループの強みの一つであると考えている。

 

このフラットな関係性を重視する仲間意識は、グループ内だけではなく、グループ外に対しても向けられている。
同社の重要な成長戦略の一つである「Win-Winインベストメントモデル」は高成長が期待されるベンチャー企業に対して、資金・マーケティング・開発環境など様々な角度からその成長を支援するものだが、企業規模の違いや株主と出資先といった関係を超え、ともに成長を目指す「仲間」であるとの意識を根底に置いていることが、ベンチャー企業の成長に向けたモチベーションの一段の向上に繋がると期待できる。この点は一般的なVCやCVCとの大きな違いであろう。

 

【1-5 ROE分析】

 

 

15/3期

16/3期

17/3期

18/3期

19/3期

ROE(%)

4.9

-

12.2

17.7

24.7

 売上高当期純利益率(%)

1.24

-0.16

3.76

6.63

10.37

 総資産回転率(回)

1.33

1.46

1.44

1.36

1.27

 レバレッジ(倍)

2.97

2.62

2.25

1.96

1.87

*総資産回転率及びレバレッジは期首・期末平均を使用。有価証券報告書・決算短信を元に(株)インベストメントブリッジが計算。

 

直近3期、収益性の回復に伴いROEは大きく上昇した。
20年3月期の売上高当期純利益率は前期を上回る11.0%の予想であり、ROEの更なる上昇が見込まれる。

 

【1-6 株主還元】

同社は株主への利益還元を経営の最重要課題の一つとして認識しつつも、これまでは将来の事業展開と経営体質の強化のための内部留保の拡充を優先してきたが、昨今の受注の拡大及び堅調な業績の進捗に加えストック型の高収益モデルの基盤を確立したことを踏まえ、19年3月期、初めて配当を実施することとした。配当予定は5.00円/株で、配当性向は15.4%。
今後はサブスクリプション事業モデルへの転換による安定的なキャッシュ・フローの創出をベースに、人材・研究開発・新規事業開発などの積極的な投資を実施しながらも、配当性向30%以上を目指して株主還元策の拡充にも注力する考えだ。

 

2.2019年3月期決算概要

(1)業績概要

 

18/3月期

構成比

19/3月期

構成比

前期比

期初予想比

修正予想比

売上高

3,208

100.0%

3,555

100.0%

+10.8%

-1.8%

+0.9%

売上総利益

1,289

40.2%

1,555

43.7%

+20.6%

-

-

販管費

966

30.1%

991

27.9%

+2.6%

-

-

営業利益

322

10.0%

564

15.9%

+75.1%

+24.3%

+15.2%

経常利益

355

11.1%

591

16.6%

+66.4%

+23.1%

+15.5%

当期純利益

212

6.6%

368

10.4%

+73.2%

+30.8%

+12.4%

*単位: 百万円。予想は会社側発表。修正予想比は2018年11月の修正予想との比較。

 

増収・大幅増益。5期連続で過去最高益更新。
売上高は前期比10.8%増の35億55百万円。グローバル事業において新規顧客を中心とした案件受注が増加したほか、メディカル事業においても既存商品の伸長に加え、新商品発売も市場拡大に寄与した。
営業利益は同75.1%増の5億64百万円。両事業ともに高収益モデルを確立し、人材中心に実施した積極的な戦略的投資を吸収。大幅増益を達成した。営業利益、経常利益は5期連続で過去最高を更新した。

 

(2)セグメント別動向

 

18/3期

構成比

19/3期

構成比

前期比

グローバル事業

2,038

63.5%

2,272

63.9%

+11.5%

メディカル事業

1,169

36.5%

1,282

36.1%

+9.6%

連結売上高

3,208

100.0%

3,555

100.0%

+10.8%

グローバル事業

271

13.3%

457

20.1%

+68.8%

メディカル事業

371

31.7%

446

34.9%

+20.4%

調整額

-319

-

-340

-

-

連結営業利益

322

10.0%

564

15.9%

+75.1%

*単位:百万円。売上髙は外部顧客への売上高。営業利益の構成比は売上高利益率

 

(グローバル事業)
ソフトウエアテストあるいは製造ラインの検査工程の「自動化」や「分析」等の同社コア技術を搭載した独自エンジンが稼働し、収益性の高い案件を積み上げた。
また、高度なソリューション開発力が評価され、外資系大手自動車メーカーや大手コンピューターゲームメーカーを含む15社の大手企業の新規案件を獲得した。
グローバル事業部においては医療・自動車・製造・電機メーカーなど、エンタープライズ事業部においては金融・フィンテック領域におけるプロジェクトが倍増した。
加えて、人的リソースを効率的に運用する体制を構築し機会損失を回避した結果、エンタープライズ事業部では稼働率が10ポイント以上上昇した。

 

(メディカル事業)
次世代レセプトチェックシステム「Mighty Checker® EX」を投入したところ、大手病院グループを含む多数の病院から引き合いがあるなか、売上高トップクラス医療グループ内の病院での導入が決定するなど、好調な立ち上がりとなっている。今後は同医療グループ全体への拡販を推進する。
医療の効率化や病院経営の改善など新たな需要の取り込みにより、レセプト点検ソフトウエア市場におけるリーディングカンパニーとしての磐石な収益基盤が構築されると会社側は考えている。
また、Mighty Checker、Mighty Qubeともに営業利益率が一段と上昇し、サブスクリプションモデルを確立することができた。これをうけ、今後を見据えた戦略的投資を実施したが、これを吸収し増益となった。

 

(3)財政状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

18/3末

19/3末

 

18/3末

19/3末

流動資産

2,048

2,532

流動負債

1,031

1,210

現預金

1,210

1,637

短期借入金

69

120

売上債権

504

553

前受金

496

645

固定資産

438

561

固定負債

162

192

有形固定資産

79

72

長期借入金

35

15

無形固定資産

122

79

負債

1,193

1,403

投資その他の資産

236

409

純資産

1,293

1,690

資産合計

2,487

3,093

負債・純資産合計

2,487

3,093

単位:百万円。

 

現預金の増加等で資産合計は前年末に比べ6億6百万円増加の30億93百万円となった。
前受金の増加等で負債合計は同2億9百万円増加の14億3百万円。
利益剰余金の増加で純資産は同3億96百万円増加の16億90百万円。
この結果、自己資本比率は前期末から2.6ポイント上昇し54.6%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

18/3期

19/3期

増減

営業CF

294

567

+273

投資CF

-80

-206

-125

フリーCF

214

361

+147

財務CF

-51

58

+109

現金同等物残高

1,175

1,602

+426

単位:百万円。

 

投資CFのマイナス幅は拡大したが、営業CFの範囲内であり、フリーCFのプラス幅は拡大。
短期借入の実施により財務CFはプラスに転じた。
キャッシュポジションは上昇した。

 

3.2020年3月期業績予想

◎業績予想

 

19/3月期

構成比

20/3月期(予)

構成比

前期比

売上高

3,555

100.0%

4,021

100.0%

+13.1%

営業利益

564

15.9%

671

16.7%

+19.0%

経常利益

591

16.6%

710

17.7%

+20.1%

当期純利益

368

10.4%

443

11.0%

+20.3%

*単位: 百万円。予想は会社側発表。

 

2桁の増収増益。利益は過去最高を更新へ。
売上高は前期比13.1%増の40億21百万円、営業利益は同19.0%増の6億71百万円、経常利益は同20.1%増の7億10百万円の予想。
引続き両事業とも好調に推移。今後の更なる利益積み上げを見据えた「戦略的投資」を吸収したうえで2桁の増益を目指す。
営業利益・経常利益ともに6期連続で過去最高益を更新する見込み。
配当は現時点では未定としているが、初配となった前期に続き今期も利益水準に応じて適切な株主還元を実施する考えだ。

 

4.今後の成長戦略

4-1 各セグメントの成長戦略

独自のコアソリューションによって成長してきた同社は、更なる高収益モデルを確立するためグローバル事業、メディカル事業ともに以下のような取り組みを強化している。
加えて、次の収益の柱とすべく新規事業の立上げにも取り組んでいく。

 

4-1-1 グローバル事業 ~「横串的」展開と次世代型ソリューションで収益力アップ~
同社では、「3A」領域において開発したそれぞれの技術を自動車、製造・ロボット、医療、金融など重点事業ドメインにコアソリューションとして応用・提供することを「横串的」展開と呼んでおり、一つの開発リソースを複数のコアソリューションに応用・展開することで収益性の向上を図っている。
加えて、サブスクリプションモデルによるストック型の次世代ソリューションの開発・提供にも取り組み、一段の収益力アップを目指している。目標とする粗利率は60%以上としている。

 

(同社資料より)

 

4-1-2 メディカル事業 ~医療最適化ソリューションのリーディング企業へ~
同社パッケージソフトの粗利率は「Mighty Checker®」、「Mighty QUBE®」ともに7割を超え、収益性は現在でも極めて高いが、今後もさらに高付加価値を進めて高い収益性を維持・継続する。

 

今期以降は前期投入した次世代レセプトチェックシステム「Mighty Checker® EX」の市場浸透を進める。
同社の強みである、「15,000医療法人の声」、「30年以上に渡り蓄積された技術力・データ」、「グループの経営資源」の活用により、「Mighty Checker® EX」は機能およびユーザビリティーが大幅に向上し、他社製品に対し圧倒的な優位性を有している。
加えて、「サブスクリプションモデルの確立による磐石な収益体制」、「営業および開発に対する積極的な投資」、「グループ技術力の活用による分析エンジンやクラウドエンジンの更なる革新」といった経営資源の優位性も同社は有しており、「2つの優位性」を武器に、大手グループ病院や学会アカデミックとの直接取引を推進する。

 

さらに医療データの取り扱いや、医療システムの設計・開発・導入に関してこれまでに蓄積してきたノウハウや技術力を活用し、医療ビッグデータ分析におけるITソリューション提供も新規事業として立ち上げる。
新たなストック型ビジネスの創出により、国内医療ビッグデータ分析市場におけるリーディング企業へと進化するのがメディカル事業における成長戦略・ビジョンである。

 

医療ビッグデータ分析ビジネスにおける差別化戦略として重要な要素は、「①エンジンプラットフォームの構築」、「②データの質・量・価値の向上」、「③データ分析事業推進に係る知財戦略」の3つであると同社では考えており、それぞれ以下のような協業・アライアンスを進め、強化を図っている。

 

①エンジンプラットフォームの構築

2017年5月、株式会社セールスフォース・ドットコムが運営する「Salesforce1 IoTジャンプスタートプログラム」に賛同し、テクノロジーパートナーとして医療ビッグデータ分析サービスの提供を開始した。

Ubicomグループが手掛ける医療ビッグデータソリューションと、セールスフォース・ドットコムが提供するビジネスアプリケーションおよびAIとの連携が実現し、Salesforce App Cloudを活用した分析ソリューションを医療機関やライフサイエンス企業に向けて提供することが可能となった。

今後、グローバルでトップシェアをもつセールスフォース・ドットコムのパートナーとして、医療データの監視、モニタリング、データの変化による様々な予見などをソリューションとして提供する。ネットワークを介した多様なデバイス連携を可能にするとともに、3A戦略(「Automation/RPA:自動化」、「Analytics:分析」、「AI:人工知能」)の下、医療におけるIoT、AI、ビックデータ分析関連事業の早期収益拡大を目指す。

②データの質・量・価値の向上

2017年12月、株式会社イーエムシステムズ(4820、東証1部)と業務提携に向けた覚書を締結した。

イーエムシステムズは、国内で培ったシステム技術やデータ管理ノウハウをもとに、クリニック・診療所向け、薬局向け、介護サービス事業者向けにシステムの開発・販売・保守を行っており、それぞれのシステム間で三位一体のネットワークを結ぶことで、医療と介護のシームレスな情報連携が行える環境を提供している。

 

イーエムシステムズ約20,000件およびUbicomグループ約15,000件の顧客基盤に加え、開発技術や海外拠点などの経営資源を相互に活用して、最新のIT技術を活かした医療の質・安全向上のためのITソリューションサービスの拡充を目指す。

他にも、世界最大の医療情報データ取扱企業との協業も開始した。

③データ分析事業推進に係る知財戦略

2018年2月、東京大学医学部附属病院所属医師と共同で「医薬品処方量適正化システム」を発明し、東京大学と共同で特許を取得した。

Ubicomグループはレセプト点検ソフトのリーディングカンパニーとして確固たる地位を確立しているが、さらに先端テクノロジーに基づく知財戦略を今後の事業戦略に活用すべく研究を進めており、中長期を見据えた知財創造の一環として、今回の特許を取得した。

 

このシステムは、同社グループが長年蓄積してきた、レセプトデータチェックや医療ビックデータ分析のノウハウを活用したもの。

医療機関が所有する医薬品処方データを統計処理し、医師が医薬品の用量・投与日数を入力する際に、医薬品投与量の実情(実績値)に則した統計数値を画面上に表示することにより、疾病や患者の状態に応じた適切な処方量、投与日数を参照することが可能になる。

今後は、同システムから得られた処方データと疾病との関連性を分析することで、より詳細な疾病ごとの医師の処方行為に対する意思決定のサポートも可能となり、これら医療ビックデータ解析は、医療機関の経営や医師に対する支援に留まらず、患者を含めた医療社会全体の安心・安全への寄与が期待できる。

今後も引き続き国立病院・大学病院を含めたアカデミアとの連携・協業を通じ、中長期的視点で知財戦略を強化していく考えだ。

 

4-1-3 新規事業の立上げ
更なる高収益体制を目指し、新規事業として「高単価」モデルをベースとした、前述の医療ビッグデータ分析事業のような社会問題解決型ビジネスを立ち上げる、
その際最も必要なのは高度人材の活用であるため、積極的な人材投資を実行する。

 

4-1-4 次世代型ソリューションビジネスによる利益創出 ~売上高経常利益率20%以上へ~
上記のような両事業の取り組みの結果として、2020年度に向け既存ビジネスを継続的に拡張させながら、収益性の高い次世代ソリューションビジネスを大きく伸張させ、経常利益の半分を次世代ソリューションビジネスで創出することを目指している。

 

(同社資料より)

 

次世代ソリューションビジネスにおけるマネタイズ方法は、分析エンジンライセンス使用料、カスタマイズ・ロイヤリティ、保守・メンテナンス料といったサブスクリプションモデル。

 

10~20%の売上高経常利益率を目途とするアプリ開発、パッケージ開発など磐石な既存ビジネスに、30~40%の利益率を目標とする横串機能を強化したストック型ビジネスである次世代ソリューションビジネスを組み合わせた事業ポートフォリオ構築により、19年3月期14.5%(予想)の売上高経常利益率を2020年度には20%以上まで引き上げる考えだ。

 

4-2 戦略投資の実行

同社では次世代型ソリューションビジネスによる利益創出を実現するためにはこれまでに例を見ない規模・内容の戦略投資が不可欠であると考えており、以下のような投資を今期以降、積極的に実行していく。

 

*ソフトウエアの自動化、AIを用いた異常検知、AIチャットボット等、フィリピンにおける先端技術のためのR&D投資
*クライアントの急増に伴う、大規模プロジェクトをリードできる人材の登用
*アジア展開を見据えた、アジアトップ経営者の参画
*新規事業である「高単価」モデル創造に不可欠なAIやRPA等のコンサルティングができる高度人材の増員
*メディカル・金融・自動車といった特定分野でトップクラスの知見を有する人材の獲得

 

4-3 Ubicomグループの目指す姿

4-3-1  独自のアライアンス戦略「Win-Winインベストメントモデル」の推進
同社のコアコンピタンスを活用してグローバル事業、メディカル事業ともに成長スピードを加速させるための独自戦略の1つが「Win-Winインベストメントモデル」である。

 

同モデルは、ロボティクスベンチャーやAIベンチャー、遠隔医療関連企業といった先端技術を持つベンチャー企業を対象に業務・資本提携やM&Aを行うもので、相手先ベンチャー企業には資金面の支援にとどまらず、同社が得意とするフィリピン開発拠点を活用したITソリューション支援や技術サポートに加え、同社の顧客である大手企業とのマッチングなども行い、ベンチャー企業の成長を多角的に支援する。同社にとっても、事業シナジーの発揮、効率的な新規マーケットへの参入、収益機会の増大などを通じた企業価値向上が期待できる。

 

現在までに以下の2件を実現させた。

時期

案件

概要

2018年6月

ユニロボット(株)との資本業務提携

(ユニロボット株式会社概要)

会話を通じてユーザーの個性や趣味・嗜好を学習することを特徴とし、人間の感情を認識するパートナーロボット「unibo(ユニボ)」の開発、パーソナルAIに関する研究開発を行うベンチャー企業。

 

(狙い・アライアンス概要)

Ubicomが注力するメディカル領域およびサービス向けソリューションとの高い親和性や、先進技術の知見を活かした新規ビジネス創出など多大なメリットがあると考えて実施した、協業先への投資を介したWin-Winモデルの第一号案件。

2018年9月

(株)Liquidとの資本業務提携

(株式会社Liquid概要)

生体情報にフォーカスした画像解析技術と機械学習を利用したビックデータ解析技術により高速処理を可能にした認証アルゴリズムを独自に開発。世界で初めて生体認証のみでの本人認証・決済サービスの商用化に成功するなど、次世代の社会インフラを支える技術を生み出した。

 

(狙い・アライアンス概要)

Ubicomが得意とする先進ソリューション及びラボ型オフショア開発、フィリピンにおける事業開発ノウハウを融合し、今後はソリューションプロバイダーとしてのアジア市場開拓、医療分野における新規ビジネス創出、生体認証技術市場における新たな事業の柱の構築に向け協業していく。

19年3月期第4四半期には将来のラボ型開発に向けたテスト開発が終了した。今後実働段階に入っていく。

 

2017年12月にマザーズから東証1部へ市場変更したことで信用力・資金調達力がより一層高まったことで、戦略的なアプローチが採りやすくなったこともあり、今後も積極的に同モデルを推進していく。
現在も複数の案件を検討または交渉中であり、複数案件を早期に実現させると共に、アジアの有力財閥との協業によるにアジア進出にも注力する。

 

4-3-2 ソリューションプロバイダーとしての更なるグローバル展開
経営理念に沿い、国益に資するとともにアジアパシフィック全体の社会問題解決に向けたソリューションの提供を通じ、ソリューションプロバイダーとしての更なるグローバル展開を目指す。

 

4-3-3 目指す姿 ~既存事業をベースにプラスアルファの利益積み上げ~
国策に合致した先進ソリューションを提供する確立された既存事業を引き続き拡大させるとともに、Win-Winインベストメントモデルや新たに着手する社会問題解決型ビジネスなど新規事業を大きくドライブさせ、プラスアルファの利益積み上げを図る。

 

(同社資料より)

 

5.青木社長に聞く

青木正之社長に自社の強み、今後の取り組み、株主・投資家へのメッセージを伺った。

 

Q:「社長が考えるUbicomホールディングスの強み、成長の源泉はどこにあるのでしょうか?」
A:「一番のコアコンピタンスは何かと突き詰めるとフィリピンにおけるエンジニア教育だと考えている。独自に磨き上げてきたこの研修ノウハウは他社が簡単に真似のできるものではないと自負している。」

 

当社のフィリピン子会社は900名に上るトップエンジニアを擁しており、そのソリューション開発力は当社の大きな強みだが、一番のコアコンピタンスは何かと突き詰めるとフィリピンにおけるエンジニア教育だと考えている。
毎年4,000名のリクルートエントリー、それもトップクラスの大学院の卒業生の中から採用されるのは約4%の160名に過ぎない。
彼らは極めてIQは高いが当然日本語は出来ない。ただ、当社で真のトップエンジニアとして活躍してもらうには日本のクライトン企業とのコミュニケーション能力や日本語環境における業務遂行能力を身に付けることが必須だ。
これに対し当社では極めて短期間に日本語検定4級合格レベルまで達するためのノウハウを持っている。IT基礎概念、先進技術、対人ソフトスキルなどの研修プログラムを含め2003年に開設した自社研修センター「ACTION」において独自に磨き上げてきたこの研修ノウハウは他社が簡単に真似のできるものではないと自負している。

 

Ubicom本体のグローバル事業本部のイノベーション戦略担当の執行役員であるタン・ピーターは、プロパー社員から執行役員に昇格したメンバーであり、エンジニアのみならず経営メンバーも育ってきており、大変心強い。
今後もノウハウを更にブラッシュアップしてより効率的にクオリティの高い人材を育成していく考えだ。

 

 

Q:「御社が成長戦略の柱の一つとして注力していくWin-Winインベストメントモデルについて、そこに込めた想いをお話しいただけますか?」
A:「一緒に仕事に取り組む仲間として当社ならではのリソースを提供し、世の中のため、日本のためになるような企業に育っていただきたいと思っている。」

 

これまで我々は若いフィリピン人スタッフを育成し、それをベースに日本の大手企業のお手伝いをしてきた。これからもそうしたサポートを継続、拡大していくが、これに加え今度は我々がベンチャー企業を育てていきたい。
それも資金のみではなく、フィリピン子会社を活用したITソリューション支援や技術サポートに加え、当社の顧客である大手企業とのマッチングなど、当社ならではのリソースを提供する。それによってベンチャー企業が成長すれば、世の中も変わるし、我々も企業価値を向上させることができる。
企業の規模などによるどちらが上、どちらが下といったことなく、一緒に仕事に取り組む「仲間」として、世の中のため、日本のためになるような企業に育っていただきたいと思っている。

 

 

Q:「今後の成長戦略、目指す姿、課題と対応についてもお話しください。」
A:「2020年度に向け既存ビジネスを継続的に拡張させながらも、収益性の高い次世代ソリューションビジネスを大きく伸張させ、経常利益の半分を次世代ソリューションビジネスで創出し、売上高経常利益率は20%以上まで引き上げたい。
また、大手企業との業務提携推進、活躍のフィールドを拡大させるためのアジア企業とのコラボレーションなどにも取り組んでいきたい。」

 

2020年度に向け既存ビジネスを継続的に拡張させながらも、収益性の高い次世代ソリューションビジネスを大きく伸張させ、経常利益の半分を次世代ソリューションビジネスで創出し、売上高経常利益率は20%以上まで引き上げたい。
次世代ソリューションビジネスとは、人・月に関係なく安定的に売上が上がるいわゆるサブスクリプションモデルだ。グローバル事業、メディカル事業双方でその仕組みづくりに取り組んでいる。

 

先程お話ししたWin-Winインベストメントモデルはベンチャー企業との協業モデルだが、最近は大手企業から本格的な業務提携をご提案頂くケースも増えてきた。当社の実力をご評価いただき大変ありがたいと思っている。
具体的なお話はできないが、やはり当社のフィリピン開発拠点を有効にお使いになりたいというニーズがますます大きくなっている。
一方でそうした提携をしっかりと受け入れることのできるキャパシティを広げていかなければならない点は現在の課題と認識しており、フィリピンの体制強化を更に進めていく。
また、活躍のフィールドを拡大させるためにアジア企業とのコラボレーションにも取り組んでいきたい。

 

 

Q:「では最後に株主や投資家へのメッセージをお願いいたします。」
A:「2019年3月期、初めて配当を実施することとした。今後は増配により配当性向も引き上げていきたいと考えている。
また一方で、投資もしっかりと行うが、それを上回るパフォーマンスを上げて株主や投資家の皆様の期待に応えていくので、是非中長期の視点で応援していただきたい。」

 

これまでは将来の事業展開と経営体質の強化のための内部留保の拡充を優先してきたが、2016年6月に東証マザーズに上場して3期目の2019年3月期、初めて配当を実施することとした。
予想配当性向は15%だが、今後は増配できるよう収益を拡大し、配当性向も引き上げていきたいと考えている。
また一方で、次世代ソリューションビジネスの確立に向け投資もしっかりと行うが、それを上回るパフォーマンスを上げて株主や投資家の皆様のご期待に応えていくので、是非中長期の視点で応援していただきたい。

 

 

6.今後の注目点

同社の利益率が急速に上昇している。19年3月期の営業利益率(外部顧客への売上高ベース)は前期に比べクローバ事業、メディカル事業でそれぞれ6.8%、3.2%上昇。会社全体でも5.9%の上昇となった。
本文中でも触れたように、グローバル事業ではコアソリューションの横串的展開が加速しており、メディカル事業では既存事業に加え、次世代型レセプトチェックシステム「Mighty Checker® EX」のリリースによりストック型の高収益モデルが確立したことが主な要因だ。
2020年3月期の予想売上高経常利益率は17.7%。2020年度(2021年3月期)に20%以上を目標としているが、達成のためには両事業ともにサブスクリプションモデルをいかに早期に構築できるかがカギとなる。
「3A」の更なる横串的展開および新規マーケット開拓の進捗に期待したい。

 

<参考:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成>

組織形態

監査役会設置会社

取締役

6名、うち社外2名

監査役

3名、うち社外2名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2018年12月20日

 

*基本的な考え方
当社は、「社会にとって無くてはならない、ソリューション提供企業であること」「常にプロフェッショナルであること」「グローバルであること」を経営理念としております。この経営理念のもと、更なる企業価値の向上及びグローバルな競争力を維持していくためには、コーポレート・ガバナンスの充実と強化が重要課題であると認識しております。具体的には、「より効率的かつ健全に事業活動を行うことにより、企業の収益力を高め、株主の利益を最大化することを目標とする」との基本的認識とコンプライアンスの重要性をコーポレート・ガバナンスの基本的な考え方として、株主、従業員、取引先、地域社会等のあらゆるステークホルダーに対して社会的責任を果たし、持続的成長と発展を遂げていくことが重要であるとの認識にたち、コーポレート・ガバナンスの強化に努めております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの実施しない主な原則とその理由>

原則

実施しない理由

【補充原則1-2④ 議決権の電子行使、招集通知の英訳】

現在の当社の株主構成から、電子的な議決権行使の採用、株主総会招集通知の英訳については実施しておりません。これまでの議決権行使比率から、日本語による議決権行使により、大きな支障なく議決権の行使がされているものと判断しております。今後については、海外投資家の議決権の行使状況や外国人株主比率の動向等に留意しながら、その必要性を検討してまいります。

【補充原則4-2① 経営陣の報酬とインセンティブ】

当社の取締役の任期が1年であるため、報酬は前年度の業績により毎年見直されますが、中長期的な業績と連動する報酬や自社株による報酬制度は設けておりません。経営陣の報酬については、中長期的な会社の業績や潜在的リスクを反映させ、健全な企業家精神の発揮に資するようなインセンティブ付けを行うことの必要性は認識しており、今後適切な方法を継続的に検討してまいります。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく主な開示>

原則

開示内容

原則1-4【いわゆる政策保有株式】

当社は、当社グループの中長期的な企業価値向上に資すると判断される場合、株式を政策保有します。当該株式の保有は、業務提携・協業などによる取引関係の維持・強化等、保有目的の合理性が確保されているなどの条件を満たす範囲で行うことを方針としております。また、株式に係る議決権の行使については、議案が当社保有方針と適合するかを勘案したうえで議決権の行使を行うこととしております。

【補充原則4-11③ 取締役会全体の実効性について分析・評価】

当社においては、6名の取締役のうち2名が社外取締役であり、3分の1超となっております。また、代表取締役が議長として、社外取締役及び社外監査役が自由闊達に発言できるよう注力しており、活発な議論を通じて取締役会の一層の機能向上に寄与しております。

更に、取締役会以外においても、代表取締役と社外取締役及び社外監査役間での取締役会の効率性や運営方法も含めた情報収集や意見交換は活発に行われており、事実上評価主体の一翼を担っております。

原則5-1【株主との建設的な対話に関する方針】

株主からの対話の申込みに対して、積極的に対応しております。

当社のIR活動は、財務経理本部と戦略企画本部を担当部署とすることにより、両部署の日常的かつ緊密な連携によるIR体制を整備しており、投資家からの電話取材やスモールミーティング等のIR取材を積極的に受け付けております。

 更に、代表取締役自らが出席する決算説明会の開催及び決算説明の動画の配信を、年2回以上実施しております。

 

 

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