ブリッジレポート
(6543) 株式会社日宣

スタンダード

ブリッジレポート:(6543)日宣 vol.4

ブリッジレポートPDF

 

大津 裕司 社長

株式会社日宣(6543)

 

 

会社情報

市場

東証JASDAQ

業種

サービス

代表取締役社長

大津 裕司

所在地

東京都千代田区神田司町2-6-5 日宣神田第2ビル

決算月

2月末日

HP

https://www.nissenad.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,399円

1,951,300株

2,729百万円

8.7%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

42.00円

3.0%

120.67

11.6倍

1,395.09円

1.0倍

*株価は4/25終値。発行済株式数は19年2月末。ROE、BPSは前期実績。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2015年2月(実)

3,939

180

190

84

50.79

20.00

2016年2月(実)

4,338

344

331

199

117.56

25.00

2017年2月(実)

4,690

375

418

259

151.71

38.00

2018年2月(実)

4,711

342

380

654

336.64

42.00

2019年2月(実)

5,021

304

341

229

118.52

42.00

2020年2月(予)

5,582

330

344

233

120.67

42.00

*予想は会社側予想。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。16年11月1日付で1:20の株式分割を実施。EPS、DPSは遡及して計算。
*単位:百万円、円

 

株式会社日宣の2019年2月期決算概要などをご紹介します。

目次

今回のポイント
1. 会社概要
2. 2019年2月期業績概要
3. 2020年2月期業績見通し
4. 今後の注目点
<参考:コーポレートガバナンスについて>

今回のポイント

  • 放送・通信業界、住まい・暮らし業界、医療・健康業界を主要顧客とし、課題解決のための戦略立案から、プロモーション設計、制作・開発、実行・運用までをワンストップで提供。「総合力」、「小回り」、「きめの細かさ」を武器として競争優位性の高いポジショニングに成功している。VR(仮想現実)技術などを用いたデジタル領域拡大に注力。「売上高100億円、経常利益10億円、デジタル領域構成比30%」の早期達成を目指している。

     

  • 19年2月期売上高は前期比6.6%増の50億21百万円。大手飲食チェーンや大手ドラッグストアが牽引した。営業利益は同11.2%減の3億4百万円。売上総利益も同6.0%増加したが、デジタルや中国など新規サービスへの先行投資や人件費及びM&A関連費用の増加を吸収できなかった。前期に固定資産売却益を計上していたため当期純利益は同65.0%の減益となった。2019年1月に通期予想を下方修正。ほぼ修正予想通りの着地となった。

     

  • 20年2月期の売上高は前期比11.1%増の55億82百万円、営業利益は同8.7%増の3億30百万円の予想。前期同様その他業界が牽引する。放送・通信、住まい・暮らしも回復。今期も戦略的先行投資を実施するが増収効果で増益を見込んでいる。配当は前期と同じく42.00円/株の予定。予想配当性向は34.8%。

     

  • 上期は好調であったが、残念ながら売上・利益とも下期にブレーキがかかってしまった。医療・健康業界、その他業界は今期も最高売上更新と期待が大きいが、やはり売上構成の大きい放送・通信業界、住まい・暮らし業界の伸長が望まれる。一方で、成長戦略の一つとしているM&Aに関しては日産社子会社化という進捗を見た。どのようにシナジーを発揮していくのかを注目したい。

     

1.会社概要

放送・通信業界、住まい・暮らし業界、医療・健康業界を顧客とし、企業の課題解決のための戦略立案から、プロモーション設計、制作・開発、実行運用までをワンストップで提供。「総合力」、「小回り」、「きめの細かさ」を武器として競争優位性の高いポジショニングに成功している。
Web広告やVR(仮想現実)技術を用いた接客支援等のデジタル領域拡大に注力。「売上高100億円、経常利益10億円、デジタル領域構成比30%」の早期達成を目指している。

 

【1-1沿革】

日本画家を志していた大津裕司社長の祖父大津健二郎氏は神戸の高級美術印刷会社でデザイナーとして活躍。その後、太平洋戦争に出征、復員した1947年4月、神戸市で前身となる広告会社 宣伝五洋社を創業した。
一般的な広告の取り扱いに加え、神戸という土地柄から造船会社が行う進水式のコーディネートや、百貨店の催事企画・ポスターの制作などを手掛ける中、戦後復興景気の中心産業であった繊維業界にも顧客層を広げていく。
昭和30年代に帝人株式会社の大ヒット商品となった「ホンコンシャツ(半袖のワイシャツ)」の発売にあたり、高級感ある包装パッケージを手掛けたのも同社であり、優れたデザイン・クリエイティブ力や商品プロモーション力、印刷までワンストップで手掛ける利便性が顧客に高く評価される。優良な業界・顧客に直接取引により優れた企画やクリエイティブを提供するという同社の特徴は創業時から綿々と受け継がれている。
1955年、更なる事業拡大を志向し東京営業所を開設。
東京で顧客開拓を進める中、1972年には現在の主要顧客の1社である旭化成ホームズの取り扱いを開始した。その後、放送・通信業界、医療・健康業界にも顧客層を広げ売上、利益は着実に伸張。
2017年2月、東京証券取引所JASDAQ市場へ上場した。

 

【1-2 企業理念・経営理念】

全社員の物心両面の幸福を追求します。

社員が喜んで仕事をする会社であることが、お客様への提供価値を高め、株主をはじめステークホルダーを重視した経営に繋がる。

ユニークなコミュニケーションサービスの提供によって、お客様の経営に貢献します。

私たちのゴールはお客様のビジネス課題を解決すること。特化型のマーケティングに基づき、他にはないコミュニケーションの仕組み、メディア、コンテンツ、エクスペリエンスを創造。

 

【1-3 同社を取り巻く環境】

◎広告市場の変化
従来の広告市場、特にテレビや新聞といったマスメディアを利用した広告ビジネスにおいては、サプライサイドであるメディアや広告代理店にとっては在庫の独占性や排他性が事業展開するうえで最も重要な要素であった。
大手広告代理店は限りのあるTVや新聞のスポット枠をほぼ完全に押さえることで広告主に対する価格リーダーシップを握り、大きな利益を生み出してきた。
ところがマス広告は、右肩上がりの経済成長の終焉と、従来のメディアと比較した際のコストの安さやその本質である双方向性を大きな特徴とするインターネット広告の登場により需要は縮小傾向にある。

 

株式会社電通による「2017年 日本の広告費」によれば、下のグラフが示す通り、日本の総広告費用が過去12年間でほぼ横ばいの中、新聞・雑誌・ラジオ・TVのいわゆるマスコミ四媒体はCAGR(年平均成長率)で2.4%の減少だったのに対し、2005年には3,777億円であったインターネット広告費はCAGR12%で拡大を続け、2014年には1兆円台に乗り、2017年には1.5兆円となった。

 

 

また、折込・フリーペーパー・DMなどプロモーションメディア広告も過去12年では2.0%のマイナスとなっている。
ただ、プロモーションメディア広告の2012年以降の推移をみると、折込やDMはマイナスとなっている一方で、展示・映像、屋外広告の広告費は堅調に増加、POP制作費も2012年比では約7%増加するなど、広告主の費用対効果意識が高まるに連れ、ターゲットを絞ったマーケティングを目的として各媒体の特性を活かしたプロモーションメディア広告の利用が進んでいることが見て取れる。

 

 

消費者の嗜好や行動の多様化が進む中、広告主の「売上増」に繋がるマーケティングやプロモーションに対するニーズは今後より一層強まることが予想される。

 

◎広告・プロモーション関連企業比較

コード

社名

売上高

増収率

営業利益

増益率

営業利益率

時価総額

PER

PBR

2180

サニーサイドアップ

15,000

10.8

500

40.7

3.3%

15,630

47.9

8.7

2411

ゲンダイエージェンシー

9,800

-18.8

480

-31.9

4.9%

7,013

22.6

1.3

2487

CDG

10,500

-3

300

-52.9

2.9%

8,187

20.0

1.5

3977

フュージョン

1,330

10.2

12

235.6

0.9%

745

104.1

3.3

4317

レイ

12,000

4.6

655

-26.9

5.5%

5,531

12.0

1.1

6176

ブランジスタ

3,500

3.9

350

-

10.0%

13,015

64.9

5.3

6543

日宣

5,582

11.2

330

8.7

5.9%

2,730

11.6

1.0

9466

アイドママーケティング

9,800

14

1,050

11.6

10.7%

6,408

8.9

1.7

9782

ディーエムエス

25,662

6.9

1,222

11.3

4.8%

13,522

12.7

1.0

*売上高、営業利益は今期会社側予想。時価総額は直近の四半期末株式数×2019年4月23日終値。PER(予)、PBR(実)は2019年4月25日終値ベース。
*単位:百万円、%、倍

 

日宣はPER、PBRともに低水準にとどまっている。認知度の向上とともに、デジタル領域の拡大、売上高100億円への道筋をより具体的に投資家へ示す必要があるだろう。

 

【1-4 事業内容】

1.事業セグメント
セグメントは「広告宣伝事業」と「その他」。(報告セグメントは広告宣伝事業の1セグメント)

 

①広告宣伝事業

注力する業界を定め、顧客企業と直接取引をし、課題に対して戦略立案・マーケティングから、プロモーション設計、制作・開発、実行運用までを自社サービス、自社メディア、自社コンテンツを用いながら広告ソリューションをワンストップで提供している。

 

(同社資料より)

 

現時点でのサービス提供先は主に下記の3業界。

 

 

≪放送・通信≫
全国CATV局・大手通信キャリア・番組供給会社に、新規加入者獲得・視聴促進等のセールスプロモーションを提供している。

 

中心は全国約100局のCATV各局に対する加入者向けテレビ番組情報誌「チャンネルガイド」(月刊誌)の企画・制作で、発行部数は約150万部/月。
CATV局はCS・BS・地上波・地上波BSまで約130チャンネルを有しており、各番組の紹介記事等を作成するのはもちろん、毎月100局それぞれの番組表を作り分け、見易くかつ正確に編集しなければならない。
そのためにはシステム構築に一定の投資が必要であるとともに、運用についても十分なノウハウの蓄積が必要となるが、これらは高い参入障壁となっており、以前は5社程度あった競合も現在は1社のみとなっている。
日本全国にCATV局は約300局あるが、番組表を作成しているのはうち約240局で同社のシェアは4割。
CATV局にとっては必要不可欠な存在である。

(同社資料より)

 

また、大手通信キャリアが運営する動画配信サービスのレコメンドサイトの運営や各種セールスプロモーションの提供も行っている。

 

≪住まい・暮らし≫
(住宅)
40年以上にわたり大手住宅メーカー「旭化成ホームズ株式会社」のセールスプロモーションを行っている。
提供サービスは、全国キャンペーンの全体設計から個々の広告プロモーションの企画、カタログ、DM、チラシや住宅展示場ツールの制作、イベントの企画運営、WEB・映像制作、空間デザイン等と幅広く、カタログや営業ツールについては在庫管理まで行っている。
近年では、位置情報を活用しターゲットにピンポイントで情報を届け集客する「ジオターゲティング」や、360°映像とVR(仮想現実)を使用した最新の体験型シアタールームなどデジタル関連の新規サービスを提供している。

(同社資料より)

 

======================================================
旭化成ホームズの最新の体験型シアタールーム「HEBEL HAUS TOKYO PRIME SQUARE」

 

2017年1月、旭化成ホームズが東京営業本部(東京都新宿区西新宿2-4-1新宿NSビル)内に、インテリアや設備のショールーム「デザインスタジオ東京」と体験型シアタールーム「THE VISION HEBEL HAUS」を備えた打ち合わせスタジオ「HEBEL HAUS TOKYO PRIME SQUARE」をオープンした。

 

「THE VISION HEBEL HAUS」の概要
・4方向(前・右・左・上)の壁・天井に配した連続型大画面スクリーンに映し出す臨場感あふれる360°映像により、ヘーベルハウスの新商品や最新展示場など約20事例の住空間をバーチャル見学でき、実際に足を運ばなくても何ヶ所もの展示場を気軽に楽しく体感することができる。
・使い方は、ソファに座ったまま手のひらを画面に向けて動かすジェスチャーによるインタラクティブ操作となっている。また専用ゴーグル装着によるVR映像と違い見学者全員が同一体験を共有するため、家族全員で楽しさを共感しコミュニケーションを図ることができる点が特徴である。

(旭化成ホームズリリース資料より)
==============================================

 

(ホームセンター他)
全国のホームセンターで配布される来店客向け無料情報誌「Pacoma」(月刊誌)を企画・発行している。発行部数は約30万部。
メーカーからの広告集稿、ホームセンター企業への同誌の販売が主な売上。
ライフスタイル業界を中心とした顧客企業へ各種販促ツールを提供する他、培ったコンテンツ力を活かし、Webマガジン「Pacoma」を活用したWebプロモーション・PR施策の提供も行っている。

(同社資料より)

 

≪医療・健康≫
(製薬企業)
製薬会社のMR(医療情報担当者)の活動支援を目的として、医師が出演する疾患予防啓発番組(全国のケーブルテレビやラジオで放映)を企画制作している。現在までの制作本数は約700本。
また、製薬企業が主催するセミナーや学会の企画や運営等も受託している、

(同社資料より)

 

(ドラッグストア)
ドラッグストア来店客向け無料情報誌「KiiTa」(季刊誌)を企画・発行し全国約10,000店舗に配布。
また2016年12月からはドラッグストア企業売り場担当者向け無料情報誌「Re:KiiTa」(季刊誌)を発刊している。
両誌は日本チェーンドラッグストア協会の公認情報誌であり、製薬企業などからの広告集稿が売上高となる。

(同社資料より)

 

≪その他≫
上記以外の業界の顧客開拓も積極的に推進している。
特に、ホームセンター、ドラッグストアなど店舗展開を行っている企業を顧客としてきた同社の強みである店舗集客と店頭プロモーションの企画力を生かして店舗網を持つ企業へのアプローチを強化している。

 

直近では、サンドウィッチチェーン店「SUBWAY」を運営する日本サブウェイにおいて、大手総合広告代理店からアカウントを獲得し、媒体の扱いから広告制作・店頭ツールまで全マーケティング施策を一貫して担当することとなった。
キャンペーンのコンセプトの企画から、Web広告を活用した店舗集客、チラシ・ポスター・メニューなど店頭ツールの開発までプランニング・集客・購買促進をトータルに提供している。

(同社資料より)

 

またピザチェーン「ピザハット」を運営する日本ピザハットには、映画コンテンツ「スパイダーマン」の面白さやファン層を活かし、ピザハットのファン拡大と映画の認知度アップのため、「AR(拡張現実)を活用したスパイダーマンとの自撮り体験のSNSを通じた拡散」、「ピザBOXの制作」、「ファンイベントの運営」等をトータルで提供するというキャンペーンの全体設計を企画、実行した。

(同社資料より)

 

②その他

子会社・株式会社日宣印刷が各種商業印刷を受注しているほか、カタログ、パンフレット、チラシ、ダイレクトメール、ポスター等を受注・製造している。
またオリジナルのうちわの柄の貼り機を保有し、製法特許を取得した「エコ紙うちわ」をセールスプロモーションツールとして全国の多業種から受注・製造している。

 

【1-5 特徴と強み】

◎ターゲットとする優良な業界を定めてユニークサービスモデルを構築し規模を拡大
沿革で触れたように、同社は、昭和30年代は繊維業界、40年代は住宅、その後、放送・通信、医療・健康とその時代の成長業界・優良業界を主要顧客として成長してきたが、各業界ごとに広告やSPに対するニーズや課題は異なっている。

 

同社では、業界ごとの特有(ユニーク)な課題やニーズを把握したうえで、集客や売上拡大のための様々な手法を組み合わせた独自性(ユニーク)の高いソリューションをワンストップで提供することができ、これを「ユニークサービスモデル」と呼んでいる。
サービスを提供する中でノウハウを蓄積し、コア部分は内製化を進めて収益性を高めるとともにボリュームを拡大し利益を創出、新たにターゲットとする業界を定めてそこへ進出するというサイクルを繰り返すことで企業規模を拡大している。

(同社資料より)

 

◎ユニークサービスモデルを支える社内体制
同社の大きな特徴である「ユニークサービスモデル」を支えている社内体制も大きな特徴である。

 

同社では顧客との間に代理店を介すことはなく、全て直接取引を行っているため、顧客の属する業界や企業の課題をダイレクトに吸い上げることができる。

 

吸い上げた課題に対してはクリエイティブディレクター、プランナー、コピーライター、ウェブデザイナー、映像ディレクターなどからなる社内の専門チームが最適なソリューションを創造する。
従来は外注が主であったが競争力の強化を目指す大津社長の方針により、10年ほど前からクリエイティブチームの内製化を進めてきた。現在では大手広告代理店などで豊富な経験を積んだスタッフ約30名を擁している。

 

最適なソリューションを創り上げるうえでのコア部分は内製化によってノウハウを蓄積しつつ、それ以外の部分は、優秀な外部協力会社(Web制作、SP制作、用紙、印刷、物流など)と緊密・強固なリレーションシップを構築して活用。顧客にとって最適なソリューションをワンストップで提供している。

 

◎「総合力」をベースとした広告・SP業界における競争優位性の高いポジショニング
広告業界には規模、得意分野によって様々なプレーヤーが存在するが、同社はその独自性である「総合力」により競争優位性の高いポジショニングに成功している。

 

市場環境の項でも触れたように、TVや新聞などマスメディアのマイナス成長が続いている中、広告枠を寡占的に支配するビジネスモデルである大手広告代理店は、ネット広告にも注力を始めてはいるものの、その企業規模を維持するためにはマスメディアで効率的に収益を上げる必要があり、クライアントにPOP、SPのニーズがあったとしてもこれら小回りを利かせなければいけない分野に関しては外注を使う事となるため、十分な顧客満足度を提供することは難しい。

 

一方、ネット広告の拡大に伴い大きく成長し上場企業も多数存在するネット専業の広告代理店は、POP、SPなど「売りの現場」におけるアナログなソリューションを社内に有しておらず、今後もその企業文化や風土からそれらのソリューションを内製するという選択を行う可能性は低いと考えられる。

 

こうした中、広告・SPの企画から制作・実行までを、アナログ・デジタル含め幅広くワンストップでソリューションを提供できる同社の総合力はクライアントにとっては極めて魅力的なものである。
大手広告代理店とネット専業広告代理店のどちらも十分に対応することが難しいフィールドにおいて、「総合力」、「小回り」、「きめの細かさ」を武器としたソリューションを提供できるポジショニングこそが自社の強力な競争優位性であると同社では認識しており、今後もこの地位を更に強固なものとする考えだ。

 

 

2.2019年2月期決算概要

(1)連結業績予想

 

18/2期

構成比

19/2期

構成比

前期比

期初予想比

修正予想

売上高

4,711

100.0%

5,021

100.0%

+6.6%

-6.0%

-1.8%

売上総利益

1,144

24.3%

1,212

24.2%

+6.0%

-

-

販管費

801

17.0%

908

18.1%

+13.3%

-

-

営業利益

342

7.3%

304

6.1%

-11.2%

-19.1%

+1.4%

経常利益

380

8.1%

341

6.8%

-10.3%

-10.6%

+2.3%

当期純利益

654

13.9%

229

4.6%

-65.0%

-10.9%

+1.8%

*当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
*単位:百万円

 

増収減益
売上高は前期比6.6%増の50億21百万円。大手飲食チェーンや大手ドラッグストアが牽引した。
営業利益は同11.2%減の3億4百万円。売上総利益も同6.0%増加したが、デジタルや中国など新規サービスへの先行投資や人件費及びM&A関連費用の増加を吸収できなかった。
前期に固定資産売却益を計上していたため当期純利益は同65.0%の減益となった。
2019年1月に通期予想を下方修正。ほぼ修正予想通りの着地となった。

 

 

上期は好調だったものの、下期は前年同期にあった放送・通信業界の大型キャンペーンが無かったこともあり、計画を下回った。第4四半期は売上、営業利益ともに前年同期を下回った。

 

(2)広告宣伝事業 業界別動向

 

18/2期

19/2期

前期比

放送・通信

2,440

2,344

-3.9%

住まい・暮らし

1,330

1,240

-6.8%

医療・健康

351

581

+65.3%

その他業界

404

687

+69.8%

売上高合計

4,527

4,853

+7.2%

営業利益

322

288

-10.4%

*単位:百万円

 

医療・健康業界、その他業界が好調で売上高は過去最高を更新したが、放送・通信業界、住まい・暮らし業界の不調をカバーできず減収。

 

*放送・通信業界
「チャンネルガイド」に加え、CATV局・番組供給会社・大手通信キャリアからプロモーション施策を受注した。
重点施策の一つとして「チャンネルガイド」のシェア拡大に取り組み、下期より複数局を獲得したが、大手通信キャリアの受注減を補えなかった。

 

*住まい・暮らし業界
主力顧客である旭化成ホームズグループについては営業と制作の一体化を進めたが前期比マイナス3%の減収。
ホームセンター向け無料情報誌「Pacoma」の顧客企業からのセールスプロモーションが不調だった。

 

*医療・健康業界
売上高は過去最高を更新した。
主力顧客の製薬企業の深耕営業がすすみ、イベント運営からSNS施策まで幅広く提供し、売上が拡大した。
期初から開始した大手ドラッグストアチェーン向けコミュニケーション冊子等は、計画通り売上に寄与した。

 

*その他業界
売上高は過去最高を更新した。
昨年開拓した大手飲食チェーンを大きく伸ばした他、中国案件やM&Aによる新規顧客等も寄与した。
デジタル領域の取り組みに関しては、自社メディアを立ち上げたほか、展示会を開催した。

 

(3)財務状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

18年2月末

19年2月末

 

18年2月末

19年2月末

流動資産

2,174

1,902

流動負債

861

614

現預金

1,508

1,094

仕入債務

358

410

売上債権

543

662

短期借入金

87

67

固定資産

2,257

2,307

固定負債

988

937

有形固定資産

1,924

1,899

長期借入金

647

589

建物及び構築物

927

903

負債合計

1,849

1,552

土地

966

966

純資産

2,582

2,657

無形固定資産

18

24

利益剰余金

1,979

2,090

投資その他の資産

313

383

負債純資産合計

4,431

4,209

資産合計

4,431

4,209

自己資本比率

58.3%

63.1%

*単位:百万円

 

現預金減などで流動資産は前期末に比べ2億72百万円減少。固定資産は同50百万円増加し、資産合計は同2億22百万円減少の42億9百万円となった。
長短借入金の減少などで負債合計は同2億97百万円減少の15億52百万円。
自己株式の増加などで純資産は同75百万円増加の26億57百万円。
この結果、自己資本比率は前期末より4.8ポイント上昇し、63.1%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

18/2月期

19/2月期

増減

営業CF

213

-7

-220

投資CF

907

-116

-1,023

フリーCF

1,120

-123

-1,243

財務CF

-896

-202

+693

現金同等物残高

1,488

1,161

-326

*単位:百万円

 

税金等調整前四半期純利益の減少などで営業CFはマイナスに転じ、前期にあった有形固定資産(旧本社土地)の売却による収入が無くなり投資CF、フリーCFもマイナスとなった。
長期借入金の返済額が縮小し財務CFのマイナス幅は縮小した。
キャッシュポジションは低下した。

 

(4)トピックス

①デジタル領域の進捗
2018年5月に自社メディア「NISSENDIGITALHUB」を立ち上げ、AI領域のコンサルティングサービスの提供を開始したほか、2018年6月には新規および既存顧客を集客し、自社のデジタル領域の展示会「Nテク」を初めて開催し、数社からの受注が実現した。
2018年7月に事業開発を目的に、フィンテックファンドに出資した。人員を増強し、自社のソリューションサービスの開発と営業を本格化させている。
デジタル領域の売上高構成比は18年2月期8.4%、19年2月期8.3%と横ばいではあるが自社メディアや自社展示会経由のリード獲得は進んでおり、デジタル起点の顧客開発に注力している。

 

 

(同社資料より)

 

②総合広告企業「日産社」を子会社化
2018年12月、メディア・イベント・PR・Web等を手掛ける総合広告企業である株式会社日産社を100%子会社とした。
日産社は業界における60年の歴史を元に、ゼネコン等を代表とした各クライアントとの良好な関係を築いている。
日産社の2018年3月期は2億49百万円の債務超過であるが、今後は日宣のリソースを活用して日産社の既存顧客へ幅広いサービスを提供することが可能となることから、両社ともに高いシナジー効果が発揮できると考えている。

 

 

3.2020年2月期業績見通し

(1)連結業績予想

 

19/2月期

構成比

20/2月期 (予)

構成比

前期比

売上高

5,021

100.0%

5,582

100.0%

+11.2%

営業利益

304

6.1%

330

5.9%

+8.7%

経常利益

341

6.8%

344

6.2%

+0.9%

当期純利益

229

4.6%

233

4.2%

+1.8%

*当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
*単位:百万円

 

増収増益
売上高は前期比11.1%増の55億82百万円、営業利益は同8.7%増の3億30百万円の予想。
前期同様その他業界が牽引する。放送・通信、住まい・暮らしも回復。今期も戦略的先行投資を実施するが増収効果で増益を見込んでいる。
配当は前期と同じく42.00円/株の予定。予想配当性向は34.8%。

 

(2)業界別動向

 

19/2期

20/2期(予)

前期比

放送・通信

2,344

2,394

+2.1%

住まい・暮らし

1,240

1,384

+11.6%

医療・健康

581

585

+0.8%

その他広告

687

1,052

+53.1%

広告宣伝事業合計

4,853

5,415

+11.6%

*単位:百万円

 

*放送・通信業界
「チャンネルガイド」の新規局の開拓の他、CATV局から4K・8Kのキャンペーンやデジタル施策を受注することで成長を見込む。
放送・通信業界での幅広いネットワークを活用し、多様なサービスを提供していく。

 

*住まい・暮らし業界
旭化成ホームズグループに関して、接客ツール全般を制作しているノウハウを生かし、販売現場(展示場等)へのデジタル技術導入に注力し、売上の回復・拡大を進める。
「Pacoma」は戦略得意先に対して、メディアを運営している広告会社として、Webとリアルの施策を複合的に提案受注し、深耕営業を図る。

 

*医療・健康業界
既存主力顧客の外資製薬企業に対して更なる拡大を目指す他、新規の製薬企業に対して差別性のあるサービスで取引を開始し、既存プロモーション領域におけるシェア拡大を図る。

 

*その他業界
戦略得意先に関してシェアアップ・クロスセルを進めるとともに、新規顧客に関してブランディングやマーケティングオートメーション等を支援する。サービス提供領域を拡大している。
M&Aした日産社の顧客に対してリソースを共有し、売上拡大を図る。

 

(3)各種取り組み

(デジタル領域の取り組み強化)
2018年5月に立ち上げた自社メディア「NISSENDIGITALHUB」のPV、UUは着実に増加している。
これを軸としてサービス提供やイベント企画を行い、顧客獲得およびサービス開発を図る。

 

加えて、Web上でのプロモーションだけでなく、顧客業界を深く理解しているアドバンテージを活かし、事業の拡大に寄与するプロモーション施策を一括して提供することで、大手クライアントを攻略する。
また、メディアを活用したファンマーケティングや販売現場へのサイネージ等の自社の強みを活かしたサービスも展開する。

 

(人材採用・育成の取り組み強化)
これまでは、即戦力・ミドル層を中心に採用を行ってきたが、今後はデジタル時代のマーケティング力・ソリューション力強化のためには若手中心に組織力を高めていくことが必要であると考え、新卒を含めた採用・育成を強化しており、コア人材である正社員採用は順調に進んでいる。
2019年2月期は放送・通信事業の「チャンネルガイド」に携わるアルバイト社員の正社員転換や新卒採用強化、M&Aによる子会社化により、人員が大幅に増加した。
2020年2月期はデジタル領域やミドルマネジメント層の採用や社員の能力開発を進め、組織力の強化を図る。

(同社資料より)

 

(M&Aや提携の方針と進捗)
リソース共有によるシナジー効果や新規顧客獲得を狙い、長期の取引関係のある優良な顧客をもった中小規模の広告会社のM&Aを進める。
加えて、優秀な技術の獲得と事業化、スタートアップのマーケティング支援を目的として、ベンチャーキャピタルを通じた投資等により、優良スタートアップとの関係強化や協力先を開拓する。

 

(今後の成長見通し)
新規顧客開拓やM&A・業務提携により、新しい業界へ進出し、規模を拡大し、早期に売上高100億を目指す。

(同社資料より)

 

4.今後の注目点

上期は好調であったが、残念ながら売上・利益とも下期にブレーキがかかってしまった。医療・健康業界、その他業界は今期も最高売上更新と期待が大きいが、やはり売上構成の大きい放送・通信業界、住まい・暮らし業界の伸長が望まれる。一方で、成長戦略の一つとしているM&Aに関しては日産社子会社化という進捗を見た。どのようにシナジーを発揮していくかも注目したい。

 

 

<参考:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査役会設置会社

取締役

6名、うち社外1名

監査役

3名、うち社外3名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2018年12月27日
<基本的な考え方>
当社は、「ユニークなコミュニケーションサービスの提供によって、お客様の経営に貢献する」、「全社員の物心両面の幸福を追求する」という経営理念のもと、株主をはじめとして、取引先、従業員を含む全てのステークホルダーにとって継続的に企業価値を高めることが重要な経営課題と位置づけております。このため、当社グループの持続的成長と企業価値の最大化を図るとともに、経営の透明性及び効率性を向上させるべく、取締役会及び監査役会の監督機能並びに内部統制システムを通じたコーポレートガバナンスの強化に取り組んでおります。

 

<実施しない主な原則とその理由>
「当社はコーポレートガバナンス・コードの基本原則について、全て実施しております。」と記載している。

 

 

本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。

Copyright(C) 2019 Investment Bridge Co.,Ltd. All Rights Reserved.