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(4323) 日本システム技術株式会社

プライム

ブリッジレポート:(4323)日本システム技術 2019年3月期決算

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 平林 武昭 社長

日本システム技術株式会社(4323)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

情報・通信

代表取締役社長

平林 武昭

所在地

大阪市北区中之島二丁目3番18号 中之島フェスティバルタワー29階

決算月

3月末日

HP

http://www.jast.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,652円

5,307,520株

8,768百万円

5.1%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(倍)

28.00円

1.7%

126.24円

13.1倍

1,202.53円

1.4倍

*株価は7/22終値。発行済株式数は直近期決算短信より(発行済株式数から自己株式を控除)。ROE、BPSは前期末実績。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2016年3月(実)

11,821

401

441

291

55.62

25.00

2017年3月(実)

14,223

571

623

410

78.26

25.00

2018年3月(実)

15,630

741

785

579

110.36

28.00

2019年3月(実)

16,868

856

870

317

60.58

28.00

2020年3月(予)

18,650

1,085

1,100

670

126.24

28.00

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下同様。

 

 

日本システム技術の2019年3月期決算概要などについて、ブリッジレポートにてご報告致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2019年3月期決算概要
3.2020年3月期業績見通し
4.今後の計画・方針
5.今後の注目点
<参考:コーポレートガバナンスについて>

 

 

今回のポイント

  • 19/3期の売上高は前期比7.9%増の168億68百万円。売上高は主力のソフトウェア事業、GAKUEN事業を中心に増加した。営業利益は同15.5%増の8億56百万。売上高が増加したソフトウェア事業、GAKUEN事業を中心に増加した。売上高の先行指標となる19/3月末の受注残は、18/9月比約7.4%増加した。

     

  • 20/3期は、売上高が前期比10.6%増の186億50百万円の予想。引き続きソフトウェア事業が売上の増加を牽引する他、その他の全事業で売上が増加する見込み。営業利益は同26.7%増の10億85百万円の予想。ソフトウェア事業の売上拡大と収益性改善に加え、研究開発費のピークアウトが寄与する。配当は前期の28円/株と同額の期末28円/株予定。

     

  • 同社の海外戦略が加速している。新たに連結子会社となったVirtual Calibre社は、SAPエンジニア部隊を編成し質の高いサービスを提供している。また、AG NET社は、人事、休暇申請や経費精算のワークフロー、給与計算、テレワーク支援、従業員のパフォーマンス管理といったHRMの全方向をカバーしている。Virtual Calibre社とAG NET社の買収により今後どの様なシナジー効果を引き出すことができるのか注目される。

     

1.会社概要

ソフトウェア事業(19/3期売上構成比68.9%)、GAKUEN事業(同15.3%)、及びシステム販売事業(同10.0%)、医薬ビックデータ事業(同5.8%)を行っている。

 

<沿革>

設立は、1973年3月。JAST(同社)の特徴である教育機関向け業務パッケージには、90年代前半から取り組んでおり、94年10月に学校事務支援統合システムパッケージソフト「GAKUENシリーズ」の販売を、98年8月に大規模大学向けERP「GAKUEN REVOLUTION(学務)」の販売を、2000年2月に学校関係者間の情報ネットワークを実現する統合型Webサービスシステム「UNIVERSAL PASSPORT」の販売を、それぞれ開始。01年11月のジャスダック上場を経て、03年2月に東証二部に株式を上場、2017年6月に一部へ市場変更した。

 

 

<特徴>

1.全ての基本は経営理念
「情報化の創造・提供による社会貢献」をモットーとして、いかなる企業系列にも属さない完全独立の立場を堅持することにより、業種、技術分野、プラットフォーム等を問わず、常に最新の技術に挑戦しつつ、自由な立場で幅広い分野の開発業務に取り組むことを経営の基本方針としている。

 

この基本方針に則り、顧客、株主、社員、社会がそれぞれWin-Win(双方有益)の関係を築くべく、「四方良し」の理念を掲げ、それぞれの価値を最大化し、全体としての企業価値を高めることにより、安定的成長を実現することを目標としている。

 

また、このような成長の原動力となるのは従業員一人一人の情報システム開発に対する情熱と顧客への誠心誠意のサービスであり、そのためには人間力の研鑽が何よりも先行すべきである、との信念に基づいた「人づくり」経営に徹することにしている。

 

(経営理念の基本的考え方)
「天爵を修めて人爵これに従う」=天爵を修めることで、はじめて人爵を与えられる。人爵を得て、その結果として天爵を与えられることはない。

 

2.完全独立系で広範な情報サービスの提供と自社ブランド確立
メーカーや系列等一切の成約を受けず、自由な立場で広範な分野のサービスを提供することが出来る。
以下の4事業をメインとしている。

 

(事業セグメント)
1.ソフトウェア事業(ソフトウェアの受託開発) ⇒ SIerの側面
①ビジネスアプリケーション
各業界向けにシステムの提案から開発、運用、保守まで一貫したITサービス
②エンジニアリングアプリケーション
携帯電話やAV機器組込システム、CAD、構造分析、自動車設計、交通管制など通信・制御システム
③その他自社ブランドサービス
・金融機関向けパッケージソリューション【JASTブランド】
 地銀、信金、信組向けCRM/SFAシステム「BankNeo」
・スマートデバイス【JASTブランド】
 観光アプリ「京都禅寺巡り」他、スマホアプリ
 ビジネス向け、スマートデバイスを活用したトータルソリューション

 

2.GAKUEN事業(大学経営ソフトウェアパッケージの開発、販売)【JASTブランド】
⇒ パッケージメーカーの側面
大学経営システムのトップブランド「GAKUEN」シリーズ戦略的を中核とした、文教ITのトータルソリューション

 

3.システム販売事業(マルチベンダー/ITインフラの構築) ⇒ 販社(BtoB)の側面
文教・公共系マルチベンダーのITインフラ構築、大型サイネージ端末関連ソリューションなど、独自のサービス

 

4.医療ビックデータ事業(医療情報データの点検分析及び関連サービス)【JASTブランド】
⇒ 医療BIの側面
レセプト自動点検、ジェネリック通知、各種分析サービス、データヘルス計画、ニ次点検業者向けシステム提供など医療関連のビックデータソリューション

 

3.グループ拠点及びグローバル展開
大阪と東京の2本社制を敷いており、早くから海外に開発拠点を展開している事も特徴。また、2006年8月には、大学向けマーケットを中心とする文教分野での業容拡大を図るべく、首都圏の大規模大学を中心に、システム機器等の販売で実績のあるアルファコンピュータ(株)の全株式を取得した。これにより、パッケージ、情報機器及びネットワーク等を一貫して提供する大学向けSI(システム・インテグレーション)事業の大規模展開が可能となった。
加えて、JMICS(医療情報サービス)を独立事業化、2013年7月には(株)ODKソリューションズの発行済株式総数の3.66%を取得、資本提携をおこない、文教分野での相互事業拡大を狙う。また、2016年5月には広範な分野でシステム・ソリューションビジネスを展開する総合ソフトウェア開発企業である(株)アイエスアールを子会社化。東京エリアでの事業拡大およびSI サービスの強化に寄与するものと期待される

その他、2017年11月には㈱コウェルへの出資及び協業強化。これにより、日本及びベトナムにおけるグローバル・アウトソーシング拡大、パッケージ商材の開発、ITエンジニアの採用・育成等を協業することが可能となった。更に、2018年4月にJAST Asia Pacific Co., Ltdを同社の99.97%の出資によりタイに設立。2018年10月にマレーシアの独立系システムコンサルティング会社であるVirtual Calibreグループ3社(Virtual Calibre SDN. BHD. 、Virtual Calibre MSC SDN. BHD.、Virtual Calibre Consulting SDN. BHD.)の株式を取得し、連結子会社化した。また、2019年5月には、シンガポールのAG NET PTE. LTDの連結子会社化によりHRM((Human Resource Management)分野への新規参入を果たした。今後もASEAN地域における更なる事業拡大を目指す。

 

(同社決算説明会資料より)

 

4.国内トップシェアの大学業務パッケージ及びその進化
大学向け経営改革ソリューションとして提供している統合業務パッケージは、94年10月の発売以来、387校(19年5月24日現在)への導入実績を有し、文教マーケットにおいて高い評価を受けている。

 

特徴は、大規模な総合大学から小規模の短期大学に至るまで、主要業務を全方位でカバーしているため、パラメーターの設定だけで大学個々のニーズに柔軟に対応できる事。つまり、カスタマイズの必要がないため、ユーザーは導入時及びその後の運用・メンテナンスに関わるトータルコストを削減する事ができる。なお、1案件あたりの導入金額は数10万円~数億円と、導入規模により広範囲にわたる。

 

少子化問題への取り組み戦略のひとつとして、大学各校は優秀な学生を確保するべく、学生向けサービスや経営品質の向上に取り組んでいる。しかし、全国に約1,200校あると言われる大学・短大の大半がメインフレーマー等による手作りのシステムやカスタマイズを前提としたパッケージを使っているという。品質・価格両面での優位性に強み。
加えて、当初の事務支援から、運用サービス、KIOSK端末等OEM機器、BCP対策、学生育成支援、経営戦略支援など、大学を取り巻く総合ITサービスに進化している点も特徴である。

 

5.国内唯一の統合医療データ分析サービス「JMICS」
レセプト内容点検を行うことで、定例的にレセプト情報を蓄積し、医療情報基盤を構築。また、健康診断結果情報・加入者情報他を付加することにより、保険事業推進へ更なる活用が望まれる。
提供サービスは、点検サービス、医療費適正化サービス、保険事業支援サービス、事務効率化サービスと多岐にわたり、ワンストップで利用可能。

(同社決算説明会資料より)

 

6.その他の特長
(人材重視) ⇒ 品質安定、低コスト体質
*新卒中心の採用と長期的な人材育成
*人材流動の激しい業界内で高い社員定着率を維持

 

(特徴的な営業戦術) ⇒ 性格の異なる4事業の共存共栄に成功
*ソフトウェア事業:SE自らがリピート案件発掘、新規顧客は専門営業がソリューション提案
*その他事業:代理店、教育機関、官公庁、健保組合等、異種カスタマ層へのマーケティング展開

 

(品質、信頼へのこだわり) ⇒ 高いリピートオーダー率、大手顧客との長期取引
*「一括丸投げ」は行わず、社員中心のプロジェクト編成
*請け負ったら顧客が満足するまでやり抜く、途中退場はしない

 

(徹底したコスト管理) ⇒ 問題の早期発見による不採算案件の最小化、低コスト体質
*間接部門を含む全活動をプロジェクト化し原価管理
*コンパクトな本社間接部門

 

2.2019年3月期決算概要

(1)連結業績

 

18/3期

構成比

18/3期

構成比

前期比

売上高

15,630

100.0%

16,868

100.0%

+7.9%

売上総利益

3,345

21.4%

3,840

22.8%

+14.8%

販管費

2,603

16.7%

2,984

17.7%

+14.6%

営業利益

741

4.7%

856

5.1%

+15.5%

経常利益

785

5.0%

870

5.2%

+10.8%

親会社株主に帰属する当期純利益

579

3.7%

317

1.9%

-45.1%

単位:百万円

 

前期比7.9%の増収、同15.5%の営業増益
19/3期の売上高は前期比7.9%増の168億68百万円。売上高面では、通信業及び官公庁向け案件が前年を下回った一方で、製造業、サービス・流通業及び金融・保険・証券業向け案件等が増加したソフトウェア事業や仕入販売、導入 支援、EUC(関連システムの個別受託開発)及び運用サービス等が増加したGAKUEN事業などが牽引し増加した。
営業利益は同15.5%増の8億56百万。売上高が増加したソフトウェア事業やGAKUEN事業などで前期比増加したものの、組織増強等の先行投資負担が増加した医療ビッグデータ事業で減少した。収益性の高い案件項目の売上増加などにより、売上総利益率は22.8%と同1.4ポイント上昇した。売上高対販管費率が同1.0ポイント上昇したものの、売上高営業利益率は、5.1%と前年同期比0.4ポイント上昇した。その他、営業外費用で為替差損が27百万円(前期は為替差益1百万円)発生したことなどにより、経常利益は前期比10.8%の増益と営業利益の増益率を下回った。その他、特別損失で訴訟案件の最終的な決着に伴う和解金3億80百万円を計上したことから親会社株主に帰属する当期純利益は前期比45.1%の減益となった。
特別損失の計上があったものの、配当は28円/株と期初の予定通りとなった。

 

研究開発費用は前期比7%の増加

 

16/3期

17/3期

18/3期

18/3期

前年比

差額

増減率

研究開発の合計

346

332

458

492

+34

+7%

ソフトウェア事業

54

0

64

54

-10

-16%

GAKUEN事業

239

286

274

332

+58

+21%

医療ビックデータ事業

52

45

98

65

-33

-34%

その他

0

0

20

39

+19

+95%

*単位:百万円

 

ソフトウェア事業は、金融機関向けの次世代の開発が増加。GAKUEN事業は、次世代製品の開発とGAKUEN中国版の開発が増加したものの、今後研究開発費はピークアウトする見込み。医療ビックデータ事業は、点検性能向上とサービス拡大に対応したもの。また、その他は新ビジネスの調査と研究に対応したもので今後も増加が予定されている。

 

(2)セグメント別動向

 

売上高

セグメント利益

 

18/3期

19/3期

前期比

18/3期

19/3期

前期比

ソフトウェア事業

10,584

11,622

+9.8%

448

484

+8.1%

GAKUEN事業

2,254

2,586

+14.7%

254

317

+24.8%

システム販売事業

1,816

1,681

-7.4%

46

140

+204.2%

医療ビッグデータ事業

974

977

+0.3%

-12

-95

調整額

-

-

-

4

8

+85.5%

合計

15,630

16,868

+7.9%

741

856

+15.5%

*単位:百万円

 

 

◎ソフトウェア事業(ソフトウェアの受託開発)
通信業及び官公庁向け案件が前年を下回った一方で、製造業、サービス・流通業及び金融・保険・証券業向け案件等がそれぞれ増収となり、売上高は116億22百万円(前期比9.8%増)、営業利益は4億84百万円(同8.1%増)となった。

 

◎GAKUEN事業(大学経営ソフトウェアパッケージの開発・販売)
仕入販売、導入 支援、EUC(関連システムの個別受託開発)及び運用サービス等がそれぞれ増収となり、売上高25億86百万円 (前期比14.7%増)、営業利益3億17百万円(同24.8%増)となった。

 

 

◎システム販売事業(マルチベンダー/ITインフラの構築)
大学向け機器の販売 が減収となったものの、収益性の高い公共系SI(システム・インテグレーション)案件が前年を上回ったため、 売上高16億81百万円(前期比7.4%減)、営業利益1億40百万円(同204.2%増)となった。

 

◎医療ビッグデータ事業(医療情報データの点検、分析及び関連サービス)
レセプト自動点検サービス及び医療費通知サービスが堅調に推移したものの、組織増強等のコスト増先行により、売上高9億77 百万円(前期比0.3%増)、営業損失95百万円(前期は営業損失12百万円)となった。

 

 

19/3期の売上高は、通信、金融・保険・証券向けの業種構成比が低下した一方、製造向けの業種構成比が上昇した。
また、大手顧客別では、上位6社向けが44.3%(前期42.4%)、TIS7.9%(同5.6%)などの構成比が高まった。

 

(3)第4四半期(1-3月)の業績推移

ソフトウェア、パッケージ及びシステム販売は、顧客の検収時期が多くの企業の会計期末にあたる3月に大きく集中し、次いで第2四半期末に当たる9月に集中する傾向がある。そのため、例年同社もの第1、第3四半期連結会計期間の収益は、第2、第4四半期連結会計期間と比較して相当に少額となる特色がある。
同社の一番の稼ぎ時である第4四半期(1-3月)の業績は、売上高、営業利益ともに拡大傾向にある。

 

(4)財政状態及びキャッシュフロー

<財政状態>

 

18/3月末

19/3月末

 

18/3月末

19/3月末

現預金

2,994

4,260

買入債務

2,040

1,128

売上債権

4,991

4,341

 短期有利子負債

226

1,552

流動資産計

9,440

9,610

流動負債計

4,564

5,587

建物

282

301

 長期有利子負債

20

11

土地

142

142

退職関連引当金

1,346

971

有形固定資産 

523

558

固定負債計 

1,498

1,513

無形固定資産計

124

1,063

負債合計

6,062

7,101

投資その他の資産計

2,220

2,287

純資産合計

6,246

6,418

固定資産合計

2,867

3,909

負債純資産合計

12,308

13,520

資産合計

12,308

13,520

自己資本比率

50.4%

47.2%

 *単位:百万円

 

19年3月末の総資産は18年3月末比12億11百万円増の135億20百万円。資産面ではのれん等が、負債・純資産面では短期借入金が主な増加要因。これは、Virtual Calibre グループを買収した影響。自己資本比率は18年3月末の50.4%から47.2%へ若干低下した。

 

<キャッシュ・フローの状況>

 

18/3期

19/3期

前期比

営業キャッシュ・フロー

642

1,342

699

+108.8%

投資キャッシュ・フロー

147

-1,063

-1,211

-

フリー・キャッシュ・フロー

790

278

-511

-64.8%

財務キャッシュ・フロー

38

1,157

1,118

+2,879.4%

現金及び現金同等物の四半期末残高

2,785

4,204

1,419

+51.0%

*単位:百万円

 

CFの面から見ると、前期との比較で、売上債権やたな卸資産の増加などにより営業CFのプラスが拡大した。一方、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出により投資CFがマイナスへ転じたことから、フリーCFのプラスが縮小した。その他、短期借入金の増加などにより、財務CFはプラスが拡大。この結果、期末のキャッシュポジションが大幅に増加した。

 

 

(5)トピックス

◎AG NET PTE. LTD. を子会社化(2019年5月)
AG NET社は、シンガポールの独立系ソフトウェア会社であり、自社開発のHRM(Human Resource Management)クラウドシステムを保有し、2006年の設立以来、シンガポール国内及びASEAN地域を中心とした約700の組織に 40,000人を超えるユーザーを持つ、当該分野における国内トップクラスのソリューションベンダー。AG NET社が同社グループになることで、同社グループのブランド商材においてこれまでカバーできていなかったHRM分野で新たな商材が加わることとなる。HRMは、人事、休暇申請や経費精算のワークフロー、給与計算、テレワーク支援、従業員のパフォーマンス管理といったHRMの全方向をカバーしており、シンガポールのみならず、ASEAN全域へのビジネス基盤拡大、在ASEAN の同社子会社の事業拡大につながるものと期待される。

 

◎Virtual Calibre グループを子会社化(2018年10月)
Virtual Calibreグループ3社(Virtual Calibre SDN. BHD. 、Virtual Calibre MSC SDN. BHD.、Virtual Calibre Consulting SDN. BHD.)の株式を取得し、連結子会社化した。Virtual Calibre社は、マレーシアの独立系システムコンサルティング会社であり、ERPパッケー ジであるSAP製品に係る導入、保守サポート等に特化した事業を営んでいる。また、国営エネルギー産業を中心に大手企業を顧客として持つとともに、独自の収益モデルによる手堅い利益体質を堅持している。今回の子会社化により、マレーシアのみならず、ASEAN全域へのビジネス基盤の拡大、在ASEANの同社子会社の事業拡大及び中長期的な日本でのSAP事業拡大のチャンスが拡がるものと期待される。

 

◎新製品(金融機関向け預り管理システム)「Cloud BankNeo 預り管理」のサービス開始(2019年4月)
当システムは、金融機関の渉外担当者が顧客から物品・現金等を預り、保管・返却までの業務を効率化、事務堅確化、ペーパーレス化することによるコスト削減を目的としたシステムをパブリッククラウド基盤上にて実現するもの。 渉外担当者により本システムへ入力された情報は、営業店の業務管理用端末とリアルタイムに連携しているため、渉外担当者と事務担当者との間で、効率的に処理を進めることが可能となる。また、処理状況はパソコン画面でリアルタイムに確認できるため、預り物件の管理面強化や処理漏れ防止に繋げることが可能。更に、預り時や返却時は、タブレット画面上での顧客による電子サインにより処理が完了となるため、受取証(紙帳票)の発行は不要となり、印紙代等のコスト削減にも大きく貢献する。

 

◎スマホ決済サービス「UNIPA(ユニパ) Pay」のサービス開始(2018年11月)
「UNIPA Pay」は、事業者や大学などが独自の電子マネーを発行でき、スマートフォンに表示させたQRコードを使って、イベントや学園祭などでの決済ができるプラットフォーム。 当サービスは、利用者による事前の申込手続きは不要で、専用アプリのダウンロードとサインアップを行い、現金をチャージすることで電子マネーとして利用が開始できる。商品購入時も、各店舗が用意しているQRコードをスマートフォンで読み取るだけで、支払いを行うことが可能。イベント主催者や各店舗は、店舗や商品別の売上状況をリアルタイムに確認することもできる。 当サービスは、佛教大学(京都府京都市)の学園祭(11月2日~4日)で利用された。

 

◎生活保護受給者健康管理支援システム提供開始(2018年12月)
同社は、自治体向け「生活保護受給者健康管理支援システム」を開発し、大阪市へ平成30年10月より提供を開始した。本システムでは、複数年のレセプトを活用し、様々な条件から指導対象者を抽出、対象者の通院歴、疾病状況、服薬状況等の容易な把握を実現し、各福祉事務所におけるデータに基づいた受給者への指導を支援する。また、特定健康診査結果や受給者に関する記録など、レセプト以外の外部データへの対応も予定しており、より詳細な受給者の状況把握が可能となる。指導対象となる受給者のレセプトを元に生活習慣病の罹患状況や服薬状況を把握する他、適正受診など医療扶助適正化観点において支援・指導をサポートするシステムであり、自治体生活保護に対し、これまでより強力な健康増進・医療扶助適正化に向けたPDCAサイクル推進のサポートが期待される。

 

 

3.2020年3月期業績見通し

(1)通期連結業績見通し

 

19/3期 実績

構成比

20/3期 予想

構成比

前期比

売上高

16,868

100.0%

18,650

100.0%

+10.6%

営業利益

856

5.5%

1,085

6.4%

+26.7%

経常利益

870

5.6%

1,100

6.5%

+26.4%

当期純利益

317

2.0%

670

4.0%

+110.7%

*単位:百万円

 

前期比10.6%増収、同26.7%営業増益予想
同社は、今年度のスローガンのキーワードとして「Vision Venture Value Velocity~4つのVで結果を勝ち取ろう~」を掲げ、開発業務、営業戦術、内部管理等の全てにおいて、更に変化・変革のスピードを上げ、部門・個人の目標必達に邁進することで、受託開発型ビジネスの案件規模拡大及び収益性・生産性の向上と、自社ブランド製品を核とする同社主導型ビジネスの一層の拡大を推進すると同時に、それらの既存商材に続く、新たな商材を発信するための最先端テクノロジーを中心とした研究開発や、自社ブランドの海外を含めた販売戦略の強化並びにM&Aを含めたアライアンスの拡大等により継続的成長を目指す方針。
20/3期の会社計画は、売上高が前期比10.6%増の186億50百万円の予想。引き続きソフトウェア事業が売上の増加を牽引する他、その他の全事業で売上が増加する見込み。
営業利益は同26.7%増の10億85百万円の予想。ソフトウェア事業の売上拡大と収益性改善に加え、GAKUEN事業を中心に研究開発費がピークアウトすることが寄与する。売上高営業利益率は6.4%の予想と前期比で0.9ポイント上昇する計画。当期純利益が前期比110.7%増となるのは、前期に計上した和解金がなくなる反動。
配当は前期の28円/株と同額の期末28円/株を予定。予想配当性向は22%。安定配当を28円/株と定め、今後業績が上振れた場合は増配を検討する方針。

 

会社計画の20/3期の営業利益は、前期比2億29百万円増加を見込む。
その内訳は以下のとおり。

増減要因

増益幅(億円)

ソフトウェア事業の拡大と収益性向上

約+1.1

GAKUEN事業の増益

約+3.6

医療ビックデータ事業の増益

約+0.7

その他販売管理費等の増加(一般管理費増、新規事業推進等)

約▲3.1

 

研究開発費は、18/3期に4億58百万円、19年3月期に4億92百万円を計上したが、今期はGAKUEN事業の次世代製品の開発ピークアウトなどにより減少する計画。ソフトウェア事業では「BankNeo」の次世代製品及び機能強化、GAKUEN事業では「GAKUEN」の新製品・サービス、医療用ビックデータ事業では「JMICS」の性能強化・向上、サービス拡大へ投下する予定。その他、新規事業と先端技術の開発と研究に関連する研究開発費は積極的に投入する方針。

 

売上高の先行指標となる19/3月末の受注残高は45億95百万円と、18/9月末の42億78百万円、18/3月末の42億71百万円から増加した。

 

 

4.今後の計画・方針

(事業ポートフォリオの中期構想)

事業構想

事業のすがた

1. 事業構成

・既存SI:JASTブランド、の規模比を1:1に

・首都圏の拡大に注力

2. 既存SIは高付加価値分野へシフト

3. 「メガソリューション」への注力

JASTの立ち位置

1. 業界の第一階層へ

2. アライアンスの推進(協業、M&A等)

3. グローバル化を加速(ASEAN、中国等)

4. 人財・処遇の超一流化

 

 

(主要事業の施策)

*GAKUEN事業
【成長戦略】
*次世代RX製品の追加リリース
*AI関連商材の開発、他事業とのシナジー創出
*グローバル展開:中国版収益化
【新製品のコンセプト】
*Webポータルシステム
多彩な学生サービス/教務サービス機能/ポートフォリオ/授業開始等プッシュ通知
*LMS
アクティブラーニング/スマートフォンやタブレットを活用したeラーニング/遠隔授業・授業収録・授業のWeb配信
*電子マネー
学内電子マネーで決済やポイントサービスを実現
*IRソリューション(BIツール)
大学向け分析機能を充実、IR部門の作業効率向上
*グローバル機能
2ヵ国語対応を標準搭載

 

*医療ビッグデータ事業
「JMICS」は、月間レセプト処理数700~800万枚/総契約先数200超というボリュームへ拡大したのみならず、レセプト点検からビッグデータとICTの融合による医療情報ソリューションに進化した。
国策による追い風と、規模・技術優位性を活かし、更に領域(医療費適正化、データヘルス、API関連強化)の拡大と高収益化を図る。また、産・学とのアライアンスの拡大(アカデミア・他企業との協業)により先鋭的分析・利活用サービスを強化するとともに、AI・ディープラーニング関連テクノロジーの組込等により、さらなる成長を目指す。

 

*「Bank Neo」
導入実績は34行となり、現在は30行以上と商談が進んでいる。今後も次世代製品の開発と機能強化に注力する。融資支援、経営管理、相続のみならず、スムーズな預り管理が強化されたことから今後導入銀行数の増加が期待される。

 

*新会社「Virtual Calibre」
新たに連結子会社となったVirtual Calibre社の強みは、①国営エネルギー会社等のマレーシア国内大手を主要クライアントに持ち、②ニーズにフィットしたSAPエンジニア部隊を編成しサービス提供することに長けており、③手堅い収益モデルで高利益体質を堅持し、④JASTと理念面で酷似し、在ASEAN企業としては経営陣や社員間の結束が固い点などがあげられる。
また、Virtual Calibre社買収の狙いとしては、①世界最大かつ最高シェアの総合業務アプリSAP市場へ進出できること、②ASEANの新拠点確保及び既存ASEAN子会社とのシナジーによるグローバル事業の拡大が図られること、③中長期的にブランド商材の現地での拡大やASEAN以遠へのグローバル展開のチャンスが広がることなどがある。
次世代インメモリ/クラウドシステムS4/Hanaへの中長期的シフト、2025年問題等もあり、今後SAP技術者の需要が高まるトレンドは不変と思われ、マレーシア及び日本におけるSAPを活用したサービスの拡大が見込まれる。

 

*新会社「AG NET」
新たに連結子会社となったAG NET社の強みは、シンガポールの独立系ソフトウェア会社であり、自社開発のHRM(Human Resource Management)クラウドシステムを保有し、2006年の設立以来、シンガポール国内及びASEAN地域を中心とした約700の組織に 40,000人を超えるユーザーを持つ、当該分野における国内トップクラスのソリューションベンダーであること。
また、AG NET社買収の狙いとしては、①同社グループのブランド商材においてこれまでカバーできていなかったHRM分野で新たな商材が加わること、②となる。HRMは、人事、休暇申請や経費精算のワークフロー、給与計算、テレワーク支援、従業員のパフォーマンス管理といったHRMの全方向をカバーしていることなどがあげられる。
シンガポールのみならず、ASEAN全域へのビジネス基盤拡大、在ASEAN同社子会社の事業拡大につながるものと期待される。

 

5.今後の注目点

今後成長が期待される医療ビッグデータ事業は、従来の主力事業であったレセプト点検のみならずデータ分析やデータヘルス等のより付加価値の高い点検以外の業務が拡大している。レセプト点検で入手した顧客基盤とデータベースを武器に今後も収益性の高い業務の拡大が期待される。前期は、組織増強等のコスト増加によりセグメント赤字が拡大したものの、今期以降これまでの投資の回収期に入ってくるものと予想される。前期の積極的な先行投資が今後どの様な効果をもたらすのか、医療ビッグデータ事業の業績動向が注目される。
また、同社の海外戦略が加速している。新たに連結子会社となったVirtual Calibre社は、国営エネルギー会社等のマレーシア国内大手を主要クライアントに持ち、ニーズにフィットしたSAPエンジニア部隊を編成し質の高いサービスを提供している。今後拡大が予想されるSAPを活用したサービスの提供において、強力な武器を手に入れたと言えよう。加えて、AG NET社は、シンガポール国内及びASEAN地域を中心とした約700の組織に 40,000人を超えるユーザーを持つ他、人事、休暇申請や経費精算のワークフロー、給与計算、テレワーク支援、従業員のパフォーマンス管理といったHRMの全方向をカバーしている。Virtual Calibre社とAG NET社の買収が今後同社へどの様なシナジー効果をもたらすのか注目される。

 

<参考:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成>

組織形態

監査役会設置会社

取締役

8名、うち社外2名

監査役

3名、うち社外2名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
更新日:2019年6月26日

 

<実施しない主な原則とその理由>

原則

実施しない理由

【原則1-2.株主総会における権利行使】

 <補充原則1-2-4>

機関投資家、海外投資家を含め株主が議決権を行使しやすい環境作りの必要性は認識しております。議決権行使プラットフォームの利用につきましては議決権行使率や機関投資家の比率を、招集通知の英訳につきましては海外投資家の比率を、それぞれ勘案しながら、導入するか否かを判断してまいります。なお、海外投資家に会社状況を理解していただくべく、決算短信及び主要な開示事項の英訳版につきましては、当社ホームページに掲載しております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づいて開示している主な原則>

原則

開示内容

【原則1-4政策保有株式】

政策保有株式に関する方針及びその議決権行使についての基準は以下のとおりであります。

 ・政策保有に関する方針

 当社は株式の持ち合いは行わないことを原則としております。業務提携その他経営上の合理的な理由から株式を保有する場合には、目的に応じた保有であることを定期的に確認いたします。

・政策保有株式の保有の適否の検証

 取締役会で個別の政策保有株式について、保有目的の適正性、保有に伴う利益およびリスクが資本コストに見合っているか等を定期的に精査・検証いたします。

 ・政策保有に係る議決権の行使についての基準

 政策保有株式に係る議決権行使についての具体的な判断基準は、政策保有先の中長期的な企業価値向上の観点から当該企業の経営状況等を勘案し、議決権行使助言会社の基準も参考に、株主全体の利益につながるか否かを判断して、各議案について適切に議決権を行使いたします。

【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】

当社は、株主との建設的な対話を通じ、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するように努めております。株主との建設的な対話を促進するための体制整備に関し、株主との対話を統括する役員としてIR担当部門、経営企画部門を統括する役員を指定し、株主との対話を補助する各部門間の情報共有を正確かつ確実に行ってまいります。また、決算説明会や個人投資家向け説明会を通じ、代表取締役自身が株主と直接対話する場を設けております。なお、株主との対話に際しては、インサイダー情報の漏洩防止に努めております。

 

 

 

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