ブリッジレポート
(2884) 株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス

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ブリッジレポート:(2884)ヨシムラ・フード・ホールディングス 2020年2月期第2四半期決算

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吉村 元久

代表取締役CEO

株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス(2884)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

食料品(製造業)

代表取締役CEO

吉村 元久

所在地

東京都千代田区内幸町二丁目2番2号 富国生命ビル18階

決算月

2月

HP

http://y-food-h.com

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

967円

22,164,295株

21,432百万円

6.3%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

0.00円

-

15.41円

62.8倍

195.83円

4.9倍

*株価は10/30終値。発行済株式数、DPS、EPSは20年2月期第2四半期決算短信より。ROE、BPSは19年2月期決算短信より。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2016年2月(実)

12,833

328

328

461

23.33

0.00

2017年2月(実)

16,241

493

530

353

16.28

0.00

2018年2月(実)

20,035

494

554

419

19.19

0.00

2019年2月(実)

23,716

354

420

263

12.04

0.00

2020年2月(予)

28,181

645

660

341

15.41

0.00

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。

 

株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングスの2020年2月期第2四半期決算概要などをお伝えします。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2020年2月期第2四半期決算概要
3.2020年2月期業績見通し
4.事業戦略
5.今後の注目点
<参考:コーポレートガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 優れた商品や技術力を有しながらも、事業承継など様々な問題を抱えている全国の中小食品企業をM&Aによりグループ化。中核スキルである「中小企業支援プラットフォーム」により問題を解決し、グループ各社を活性化することで、グループ全体の成長を図っている。投資ファンドや大企業に対する圧倒的な優位性、強固な参入障壁が強み。近年は、海外のM&Aにも注力中。

     

  • 食品業界において独自なビジネスモデルを構築し、「グループ企業数の拡大による成長」と「既存グループ会社の業容拡大による成長」の2つのエンジンによって成長を追求している。

     

  • 20年2月期第2四半期の売上高は前年同期比29.4%増の148億2百万円、営業利益は同203.8%増の4億81百万円、EBITDAは同71.2%増の8億46百万円。国内既存事業は原材料高止まり、人件費および運送費上昇等で低調だったが、前期M&AしたSHIN HIN、今期M&Aによりグループ化した2社(Pacific Sorby、森養魚場)などの寄与により大幅な増収増益。期初予想も大幅に上回った。

     

  • 通期業績予想に変更は無い。売上高は前期比18.8%増の281億81百万円、営業利益は同82.0%増の6億45百万円の予想。売上高、営業利益ともに過去最高を更新する。既存グループ会社の伸長に加え、M&Aした3社が寄与する。上期の業績予想を上方修正したが、原材料高止まりの影響、Pacific Sorby、森養魚場は今期のM&Aである点、現在進行中の案件のタイミングなどもあるため、通期予想は据え置いている。

     

  • 国内の既存事業は低調だったもののほぼ計画通りということで、減損の対象となるような企業は無いということだ。ただ、人件費、原材料、運賃などが増加しても価格を上げることができないといういわば合理性を無視して事業を継続するという環境がいましばらくは続くものと同社は見ており、より積極的な海外展開こそが自社の取るべき道であると考えている。

     

  • その意味で、シンガポール3社間のシナジーに加えて、純和食品のゼリーが適切な利益を確保できる価格で市場に受け入れられていることが示すように、日本製食品の海外展開は強力な成長ドライバーとなり得るだろう。日本製品の海外販売は現時点では売上高の1%程度ということであり、今後の進捗が注目される。

     

  • また株価も堅調に戻りつつある中、ワンランク上のステージでの活動のために必要と同社が考えている資金調達に向けた動きにも引き続き注目していきたい。

     

1.会社概要

優れた商品や技術力を有しながらも、事業承継など様々な問題を抱えている全国の中小食品企業をM&Aによりグループ化。中核スキルである「中小企業支援プラットフォーム」により問題を解決し、グループ各社を活性化することで、グループ全体の成長を図っている。投資ファンドや大企業に対する圧倒的な優位性、強固な参入障壁が強み。近年は、海外のM&Aにも注力中。

 

【1-1 沿革】

大和證券株式会社、モルガン・スタンレー証券株式会社の事業法人部で上場企業の資金調達やM&Aなどを手掛けていた吉村氏は、ある時、経営難に陥っているが買い手の見つからない食品会社を紹介される。
元より、大和證券在籍中の米国MBA留学時から「食」を通じて日本がもっと高く評価されるべきだと強く感じていた吉村氏は、2008年3月、(株)ヨシムラ・フード・ホールディングスの前身となる(株)エルパートナーズを設立し個人でこの食品会社を引受け、それまでに培ってきた経験やネットワークなどを活用して活性化に取り組んだところ、黒字化に成功。
この評判を聞き、多くの中小食品会社が支援を求めてきたところ、1社ごと個別に手掛けるのではなく、持株会社体制の下で、商品開発、製造、販売などの各機能を相互に補完することにより効率的に成果も上げることができると判断し、2009年8月、商号を(株)ヨシムラ・フード・ホールディングスとした。

 

以降も、事業承継問題を抱えたり、単独での経営に行き詰まったりした企業のグループ化を進めていく。大手食品会社や投資ファンドと競合しない独自のポジショニングや売却しないというポリシーが評価され、日本たばこ産業(JT)などから出資を受けるとともに、業容も拡大。2016年3月に東証マザーズに上場し、2017年3月には東証1部に市場変更した。
日本企業のみでなく、シンガポール、台湾など、海外企業のグループ化も進め、更なる成長を追求している。

 

【1-2 市場環境・設立の背景】

日本全国の中小企業の支援・活性化を目的として設立された同社は、中小食品企業を取り巻く状況について以下のように述べている。
(同社有価証券報告書、同社資料を基にインベストメントブリッジが抜粋・要約・編集)

 

(中小食品企業を取り巻く状況)
*日本食は世界的にも極めて高い評価を受け注目されている分野であると同時に、国内の食品産業は1990年代から一貫して事業所数、雇用者数、GDPの面から最大の業種であり、日本が誇る基幹産業。
*企業数の99%は中小企業で、それぞれが優れた商品や技術力を有している。
*しかし、少子高齢化等により国内の市場規模は縮小し続けており、一部の中小食品企業にとっては、単独での生き残りが難しい経営環境が続いている。
*そのため、多くの企業が事業継続をあきらめて廃業や事業停止を選択せざるを得ない状況となっている。

 

(中小企業の事業承継の状況)
*経営者の平均引退年齢は70歳前後となる中、経営者の平均年齢は59.7歳に達し、今後10年間で約50%の経営者が平均引退年齢を迎えることが予想される。
*そうした中、国内企業の3分の2にあたる66.4%が後継者不在となっており、既に事業承継を終えた、もしくは事業承継の準備をおこなっている企業は、社長が60歳代でも約36%にとどまるなど、事業承継の準備は進んでいない。
*加えて、2018年の中小企業の休業・廃業件数は46,724件と前年の約21,000件から倍増している。
(中小企業庁「中小企業白書」(2019年版)、㈱帝国データバンク「全国社長年齢分析(2019年)」、㈱帝国データバンク全国「後継者不在企業」動向調査(2018年)、㈱帝国データバンク 事業承継に関する企業の意識調査(2017年)、東京商工リサーチなどより)

 

(中小食品企業における事業承継の受け皿の状況)
*中小食品企業における事業承継ニーズが高まる一方で、受け皿となる会社や組織は少ない。
*中小食品企業は大企業が受け皿となるには規模が小さいことが多い。
*また、投資ファンドは、単独での高い成長と数年以内の売却を主な目的としていることから成熟市場にある中小食品企業は投資対象になりにくい。
*こうしたことから事業承継の担い手は圧倒的に不足している。

 

【1-3 事業内容】

同社グループは、ヨシムラ・フード・ホールディングスを持株会社として、グループ会社18社で構成されている。
ヨシムラ・フード・ホールディングスは、食品の製造および販売をおこなう中小企業の支援・活性化を目的とし、後継者難に面している中小食品企業をM&Aでグループ化。グループ全社の経営戦略の立案・実行および経営管理をおこなうとともに、グループ会社に対し、営業、製造、仕入物流、商品開発、品質管理、経営管理といった機能ごとに支援および統括を行っている。

 

①ビジネスモデル
同社は食品業界において独自なビジネスモデルを構築しており、2つのエンジンによって成長を追求している。

 

一つはグループ企業数の拡大による成長。
2008年の創業以来、同社が受け皿となることで、事業承継や経営難など問題を抱える中小食品企業が廃業・事業停止に至ることを防ぎ、それらの問題を解決してきた。
2019年6月時点でグループ会社は18社まで拡大。近年は日本企業のみでなく海外企業のグループ化にも注力している。
案件のファインディング(発掘)は、M&A仲介会社、地銀を中心とした地方金融機関、弁護士、会計士が中心だが、今後はコスト面からも社内の発掘機能を拡充していく方針だ。

 

もう一つが、既存グループ会社の業容拡大による成長。
優れた製品や技術を持ちながらも、販路がない、人手が足りない、経営管理が不十分などの理由で成長できない企業に対し、「中小企業支援プラットフォーム」が各機能別に統括することで、課題を解決し各社の業容拡大を支援している。

 

(同社資料より)

 

「中小企業支援プラットフォームとは?」
この独自のビジネスモデルの核となるのが、同社が食品の製造・販売に特化して取り組んできた実績とノウハウの蓄積により構築した「中小企業支援プラットフォーム」だ。

 

持株会社として、グループ全社の経営戦略の立案・実行および経営管理をおこなう同社は、各グループ会社が行う業務(営業、製造、仕入物流、商品開発、品質管理、経営管理など)を、同社の統括責任者が、会社の壁を超えて横断的に統括し、有機的に結び付けて経営を支援することで、各社経営基盤の強化を図っている。

 

例えば、優れた製品を持っているが売上が伸び悩んでいるA社には、全国的な販売網を有するB社の販路を利用したり、販売ノウハウを活用したりするといったことである。また、上場企業である同社の信用力を活用した資金調達力によって安定した資金繰りを実現している。
統括責任者にはグループ内で最もノウハウを有した人物が就くことにより、こうした連携をより効果的なものとしている。

 

このように、グループ全体で各グループ会社の優れた商品や技術、販路や製造ノウハウといった「強み」を共有し、人材・資金・販路不足といった「弱み」を補完する仕組みが「中小企業支援プラットフォーム」である。

 

(同社資料より)

 

②セグメント
セグメントは、「製造事業セグメント」と「販売事業セグメント」の2つ。

 

 

◎製造事業セグメント
それぞれの会社が独自の商品を開発、製造し、卸売業者等を通じて日本全国のスーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストア等への販売を行っている。

 

(製造事業セグメント グループ会社)

会社名

特色

楽陽食品株式会社

(東京都足立区)

 

国内6カ所の工場で、チルドシウマイおよびチルド餃子を製造販売している。チルドシウマイの生産量は国内トップシェア。主力商品「チルドシウマイ」は19年2月期 約2,812万パック販売。

株式会社オーブン

(愛媛県四国中央市)

 

供給量が限られた広島県産カキを調達する独自のルートをもち、かきフライを主力商品として、鶏なんこつのから揚げやささみフライ等を製造販売

している。

白石興産株式会社

(宮城県白石市)

明治19年創業、宮城県白石市特産の白石温麺を主力商品とし、伝統的な製法により製造される乾麺等の製造販売をおこなっております。

株式会社ダイショウ

(埼玉県比企郡ときがわ町)

ピーナッツバターのパイオニアであり。独自の製法により作られる「ピーナッツバタークリーミー」は1985年の販売開始以来続くロングセラー商品。

株式会社桜顔酒造

(岩手県盛岡市)

1973年、岩手県の地場の10の酒蔵が結集して設立。日本最大の杜氏集団である「南部杜氏」の技により生み出された日本酒は、フルーティな味わいで高い評価。

株式会社雄北水産

(神奈川県足柄上郡大井町)

船上で捕獲直後にマイナス50度からマイナス60度で瞬間冷凍される船凍品のマグロ等を使用したねぎとろ、まぐろ切り落としを製造販売。

純和食品株式会社

(埼玉県熊谷市)

 

埼玉県HACCPを取得するなど、万全な生産管理体制を構築しており、ゼリーの製造においては新興企業ながら、大手GMSに評価されるなど、技術力と商品力には定評がある。

栄川酒造株式会社

(福島県耶麻郡磐梯町)

 

1869年、会津若松で創業。「日本名水百選指定磐梯西山麓湧水群」の清らかな名水を仕込水に、澄みきった自然環境の中で、人の五感を最大限に生かした伝統的手造りを継承しながら口当たり柔らかな飲み飽きしない清酒を醸造している。

株式会社エスケーフーズ

(埼玉県大里郡寄居町)

チルド・冷凍とんかつ等の製造販売を主力とし、顧客ニーズに対応する製品を生産している。また、商社等を介さず、直接仕入れ、直接販売もおこなっている。

株式会社ヤマニ野口水産

(北海道留萌市)

半世紀にわたり、北海道特産品である鮭とばや、にしん等を熟練工によって独自の製法により製造販売している。

JSTT SINGAPORE PTE.LTD.

(シンガポール)

シンガポールにおいて、空輸で運ばれた新鮮な日本産の魚介類等を使用し、寿司、巻物、おにぎり等の製造販売を行っている。

株式会社おむすびころりん本舗

(長野県安曇野市)

自社開発のフリーズドライ装置により、製菓原料、非常食等を製造している。「水もどり餅」は、スペースシャトル「エンデバー」に携行されたことで有名。

株式会社まるかわ食品

(静岡県磐田市)

浜松エリアにおける餃子の有名店。こだわりぬいた素材を創業以来秘伝のレシピにより餃子の製造・販売をおこなっている。

PACIFIC SORBY PTE. LTD.

(シンガポール)

冷凍水産品や鮮魚を仕入れ、自社にて加工もしくは卸売にてシンガポールのホテルや病院等へ販売を行っている。主な取扱商品は、カニ、ロブスター、エビ、サーモン等の冷凍水産品及びシンガポール近海で漁獲される鮮魚など。

株式会社森養魚場

(岐阜県大垣市)

岐阜県内3カ所に養魚場を構える全国でもトップクラスの規模と設備力を誇る鮎養殖企業。業界老舗企業として業歴は50年を超え、高い養殖技術と「清流の国ぎふ」の豊富な地下水を活かしながら、技術者により管理された大規模養殖設備の中で高品質な鮎を養殖している。

 

◎販売事業セグメント
販売機能と企画機能を強みとし、消費者のニーズを捉えた商品を企画開発し、主に業務用チャネルへの販売をおこなっている。また、独自の調達ルートや販売ルートを活用することで、グループ各社への原材料の供給やグループ各社の商品の販売を行い、販路拡大の役割も担っている。

 

(販売事業セグメント グループ会社)

会社名

特色

㈱ヨシムラ・フード

(埼玉県越谷市)

業務用食材の企画・販売を主とし、自社で物流機能を持たず、販売先へ直送するビジネスモデルを構築している。

㈱ジョイ・ダイニング・プロダクツ

(埼玉県越谷市)

冷凍食品の企画・販売をおこなっている。日本全国の生活協同組合に直接口座を有しており、それを活用してグループ商品の販売もおこなっている。

SIN HIN FROZEN FOOD PRIVATE LIMITED(シンガポール)

アジア各地の有力な水産会社から高品質かつ安心・安全な冷凍水産品および冷凍水産加工品を仕入れ販売している。

 

【1-4 特徴と強み】

①事業承継の受け皿としての優位性
M&Aにおける有力なプレーヤーは、大手食品会社や投資ファンドなどであるが、同社は主として以下の3点で確固たる競合優位性を有している。

 

*受け皿としての広範な受容力
同社ではグループ化した会社の売却を目的としておらず、短期的な業績回復を図るだけでなく、中長期的な視点から会社の持続的な成長の実現を目指している。そのため、事業規模が小さく成長に時間がかかる企業や、成長のための経営資源が不足しているような企業などを含め、幅広い中小企業の受け皿になることができる。
この点で、対象とする企業規模について一定のスケールが必要な大手食品会社、投資ファンドとの大きな差が生まれている。
また、売却してキャピタルゲインを得ることが目的の投資ファンドの場合、中小食品企業のオーナー経営者の信頼を得ることは容易ではなく、この点でも、中期的な視点で持続的成長を目指すグループ一体経営を実践している同社は大きなアドバンテージを有している。

 

*高度なM&A実行力
創業以来、中小の食品関連企業を多数グループ会社化し、その後の再成長を実現してきたため、食品業界の市場環境・商習慣、中小食品企業特有のリスク等を熟知しており、数ある中小企業の中から強みを持つ企業を選ぶ優れた目利き力を有する。
加えて、デューデリジェンスや交渉のノウハウ、知見の蓄積も豊富であり、M&Aの実行力は極めて高い。

 

*幅広いネットワークを通じた豊富かつ良質なM&A情報
都市銀行、地方銀行、信用金庫、証券会社などの金融機関や、M&Aアドバイザリー業務をおこなう企業等との幅広いネットワークを構築しており、豊富な中小食品企業のM&A情報を収集することができる。
また「食品業界に特化」「売却を目的としていない安心感」といった要因により、量のみでなく同社のニーズに則した質の高い情報を得ることもできている。

 

②中核スキル:中小企業支援プラットフォーム
グループ全体で各グループ会社の優れた商品や技術、販路や製造ノウハウといった「強み」を共有し、人材・資金・販路不足といった「弱み」を補完する仕組みである「中小企業支援プラットフォーム」によって、グループ会社の活性化を実現しており、その実績は高く評価されている。

 

【1-5 配当政策・株主優待制度】

(配当政策)
株主に対する利益還元を重要な経営課題の一つと位置付けているが、現在は成長過程にあると考えているため、現金は設備投資等による積極的な事業展開およびプラットフォーム拡充による経営基盤の強化を図るための投資等に充当させることが、株主に対する最大の利益還元に繋がると考えている。
このため設立以来配当は実施しておらず、今後においても当面の間は、事業拡大のための投資および既存事業の必要運転資金とする方針である。将来的には、各事業年度の経営成績および財政状態を勘案しながら株主への利益還元を検討していく方針だ。

 

(株主優待制度)
保有株式数に応じて以下のような株主優待を実施している。

保有株式

優待回数

優待内容

300~499株

年1回(毎年2月末日現在の株主名簿に記載された株主)

800円相当の同社グループ製品を贈呈

500株~2,499株

年1回(毎年2月末日現在の株主名簿に記載された株主)

1,500円相当の同社グループ製品を贈呈

2,500株以上

年2回(毎年2月末日および8月31日現在の株主名簿に記載された株主)

それぞれ4,000円相当の同社グループ製品を贈呈

 

優待内容(イメージ)

 

(同社HPより)

 

2.2020年2月期第2四半期決算概要

(1)連結業績概要

 

19/2期2Q

構成比

20/2期2Q

構成比

前年同期比

期初予想比

売上高

11,438

100.0%

14,802

100.0%

+29.4%

+4.9%

売上総利益

2,534

22.2%

3,112

21.0%

+22.8%

-

販管費

2,376

20.8%

2,630

17.8%

+10.7%

-

営業利益

158

1.4%

481

3.3%

+203.8%

+45.5%

経常利益

201

1.8%

504

3.4%

+149.6%

+49.0%

四半期純利益

131

1.2%

232

1.6%

+76.2%

+30.5%

EBITDA

494

4.3%

846

5.7%

+71.2%

+44.8%

*単位:百万円。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。EBITDAはM&A取得費用を除く。

 

大幅な増収増益、期初予想を上回る。
売上高は前年同期比29.4%増の148億2百万円、営業利益は同203.8%増の4億81百万円、EBITDAは同71.2%増の8億46百万円。
国内既存事業は原材料高止まり、人件費および運送費上昇等で低調だったが、前期M&AしたSHIN HIN、今期M&Aによりグループ化した2社(Pacific Sorby、森養魚場)などの寄与により大幅な増収増益。
期初予想も大幅に上回った。

 

(2)セグメント動向

 

19/2期2Q

構成比

20/2期2Q

構成比

前年同期比

売上高

 

 

 

 

 

 製造事業

8,897

77.8%

10,330

69.8%

+16.1%

 販売事業

2,540

22.2%

4,472

30.2%

+76.0%

 合計

11,438

100.0%

14,802

100.0%

+29.4%

営業利益

 

 

 

 

 

 製造事業

270

3.0%

423

4.1%

+56.7%

 販売事業

101

4.0%

297

6.7%

+194.6%

 調整額

-212

-

-239

-

-

 合計

158

1.4%

481

3.3%

+203.8%

*単位:百万円。営業利益の構成比は売上高営業利益率。

 

*製造事業セグメント
M&Aによりグループ入りしたPacific Sorby、森養魚場の2社が寄与した。
純和食品は海外輸出及びナショナルブランド商品の販売が好調に推移したことにより増収。
JSTTは主力店舗の改装、移転により売上が一時的に減少した。

 

*販売事業セグメント
グループ入りしたSHIN HINが寄与した。

 

③財務状態とキャッシュ・フロー
◎主要BS

 

19年2月末

19年8月末

 

19年2月末

19年8月末

流動資産

9,643

11,514

流動負債

7,248

9,015

 現預金

2,085

2,809

 仕入債務

2,298

2,892

 売上債権

3,525

4,495

 短期有利子負債

3,565

4,239

 たな卸資産

3,766

3,986

固定負債

3,336

5,582

固定資産

5,537

8,148

 長期有利子負債

3,183

5,266

 有形固定資産

2,312

3,098

負債

10,585

14,598

 無形固定資産

2,794

4,254

純資産

4,595

5,064

 投資その他の資産

430

795

 利益剰余金

2,038

2,270

資産合計

15,180

19,663

負債純資産合計

15,180

19,663

 

 

 

有利子負債合計

6,748

9,506

*単位:百万円

 

M&Aなどで資産合計は前期末比44億円増加の196億円。
M&Aに伴い有利子負債が同27億円増加し、負債合計は同40億円増加の145億円。
利益剰余金の増加などで純資産は同4億円増加の50億円。
自己資本比率は前期より5.6%低下し22.7%。

 

◎キャッシュ・フロー

 

19/2期2Q

20/2期2Q

増減

営業CF

214

905

+691

投資CF

-431

-2,927

-2,495

フリーCF

-216

-2,021

-1,804

財務CF

220

2,768

+2,548

現金同等物残高

1,537

2,796

+1,258

*単位:百万円
税引前当期純利益の増加などで営業CFのプラス幅は拡大。子会社株式の取得による支出が大幅に増加し投資CFおよびフリーCFのマイナス幅は拡大。
借入金の増加により財務CFのプラス幅は大きく拡大。キャッシュポジションは上昇した。

 

3.2020年2月期業績予想

(1)業績予想

 

19/2月期

構成比

20/2月期 (予)

構成比

前期比

進捗率

売上高

23,716

100.0%

28,181

100.0%

+18.8%

52.5%

営業利益

354

1.5%

645

2.3%

+82.0%

74.6%

経常利益

420

1.8%

660

2.3%

+57.1%

76.4%

当期純利益

263

1.1%

341

1.2%

+29.5%

68.0%

EBITDA

963

4.1%

1,165

4.1%

+20.9%

72.6%

*単位: 百万円。予想は会社側発表。

 

業績予想に変更無し。2桁の増収・増益。売上・営業利益は過去最高更新へ。
業績予想に変更は無い。売上高は前期比18.8%増の281億81百万円、営業利益は同82.0%増の6億45百万円の予想。売上高、営業利益ともに過去最高を更新する。
既存グループ会社の伸長に加え、M&Aした3社が寄与する。
上期の業績予想を上方修正したが、原材料高止まりの影響、Pacific Sorby、森養魚場は今期のM&Aである点、現在進行中の案件のタイミングなどもあるため、通期予想は据え置いている。

 

4.事業戦略

同社は食品業界において独自なビジネスモデルを構築し、「グループ企業数の拡大による成長」と「既存グループ会社の業容拡大による成長」の2つのエンジンによって成長を追求している。
また、事業を持続的に成長させるための人材確保・育成にも注力している。

 

(1)成長戦略

①グループ企業の拡大による成長
【1-2 市場環境・設立の背景】で触れたように、事業承継問題はますます深刻化しており、同社における2019年2月期のM&A紹介件数は100件を超えるなど、M&A案件数は増加の一途を辿っている。
また、案件の中でも後継者不在案件の割合が増加している。
外部環境に加え、上場による同社認知度向上もあり、今後も案件数は増加することが見込まれる。事業承継の受け皿としての優位性を活かして、着実に実行件数を増大させていく。

 

また、2017年のJSTT、2018年のSHIN HINと、シンガポール企業2社をグループ化した同社は、2019年にはPACIFIC SORBY PTE. LTD.をグループ会社化した。
シンガポールにおいては、オーナー同士のネットワークが強固で、今後も様々な案件が生まれてくると期待している。
またグループ入り後も、元より良好なリレーションを有しているため、販路の活用などシナジーも生み出しやすいという利点もある。
今後は海外においてもM&Aによる成長を一段と追求していく考えだ。

 

シンガポールでは、2015年以降高齢化が加速する一方で生産年齢人口は減少が予測されており、日本同様後継者不在によるM&Aニーズの高まりが予想される。
同社においても、ここ数年、既に海外企業へのクロスボーダー案件数は増加傾向にある。高齢化の進行という外部環境もあるが、JSTT及びSIN HINを譲り受けた実績により、積極的な取組姿勢が海外でも評価されていると同社では見ている。
また、台湾も後継者不在という同様なニーズがあることから有望な市場と認識している。

 

(同社資料より)

 

②既存グループ会社の業容拡大による成長
引続き「中小企業支援プラットフォーム」の相互補完・相互成長機能をブラッシュアップし、既存事業の業容拡大とともに、新たにグループ入りした企業を強力に支援していく。

 

加えて、こちらの成長戦略においても海外事業の拡大に取り組んでいく。

 

シンガポール大手スーパーの寿司コーナーで、自社工場で製造する寿司やおにぎりの販売や日本製品の輸入販売を行っているJSTTでは、純和食品のゼリー、桜顔酒造の日本酒、おむすびころりんのふりかけ、ヤマニ野口水産のいくら、オーブンのカキフライ、ダイショウのピーナッツバターなどを使用または販売している。
中でも純和食品のゼリーは日本で製造してシンガポールまで運び手数料を払い適切な利益を確保できる価格を付けても良好な売れ行きであり、十分な競争力を有している。
今後も先入観を持つことなく、様々な日本商品の海外展開を進めていく考えだ。

 

また、アジア各地の有力な仕入先より高品質な冷凍水産品を仕入れ、シンガポール国内及びアジア各国の卸業者、小売業者、飲食店等へ販売しているSHIN HINでは、JSTTへ寿司原料を供給することによりJSTTの仕入コスト低減に寄与しているほか、純和食品のゼリー、オーブンのカキフライを販売している。

 

一方2019年4月にグループ会社化したPACIFIC SORBYでは、同社が製造する一次加工済み原料をSIN HINがもつ顧客へ販売するほか、SIN HINとの共同購買も進めていく。加えて、同社の持つホテルや病院への販路におけるJSTT製造の寿司やおにぎりの販売、日本国内グループ企業の商品の販売も目指している。

 

このように、今後も市場の成長が予想されるアジア地域において、さらなる事業拡大を目指す同社は、効率的かつ強固な管理体制を構築するために2019年4月、シンガポールに地域統括会社「YOSHIMURA FOOD HOLDINGS ASIA PTE. LTD.」を設立した。
「M&Aによる規模の拡大」「中小企業支援プラットフォームを用いたシナジー効果による成長」と、日本で行ってきたビジネスモデルを、シンガポールを拠点としてアジアでも展開する。
SGX(シンガポール取引所)や香港取引所など海外市場への上場も視野に入れており、資金調達力・信用力の強化、認知度の向上を通じた成長も目指している。
創業者は第一段階として持分の一定部分を売却することでキャッシュアウトができ、次いで上場による更なるアップサイドを期待することができるため、会社売却のインセンティブとして有効であると同社では考えている。

 

(2)経営基盤の強化

上記2つの成長戦略を進めるうえで最も必要なのが人材の確保と育成である。

 

同社はこれまで、オーナーの個人商店である中小企業に赴いて適切なハンドリングを行うためには、内部から優秀な人材をピックアップして育成していく方針を中心としてきた。
ただ、グループ会社数の増加に伴い支援体制の強化が急務となってきたため外部人材の採用にも力を入れることとした。
大手食品会社や総合商社で豊富な経験を積んだ人材を採用できているということだ。

 

5.今後の注目点

国内の既存事業は低調だったもののほぼ計画通りということで、減損の対象となるような企業は無いということだ。
ただ、人件費、原材料、運賃などが増加しても価格を上げることができないといういわば合理性を無視して事業を継続するという環境がいましばらくは続くものと同社は見ており、より積極的な海外展開こそが自社の取るべき道であると考えている。
その意味で、シンガポール3社間のシナジーに加えて、純和食品のゼリーが適切な利益を確保できる価格で市場に受け入れられていることが示すように、日本製食品の海外展開は強力な成長ドライバーとなり得るだろう。
日本製品の海外販売は現時点では売上高の1%程度ということであり、今後の進捗が注目される。
また株価も堅調に戻りつつある中、ワンランク上のステージでの活動のために必要と同社が考えている資金調達に向けた動きにも引き続き注目していきたい。

 

<参考:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査役会設置会社

取締役

5名、うち社外2名

監査役

3名、うち社外3名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2019年5月31日

 

<基本的な考え方>
当社は、株主の皆様をはじめとして、顧客、取引先、従業員、地域社会等のステークホルダーの方々との信頼と協働によってこそ、持続的な成長と中長期的な企業価値を創造できると考えております。
そのため、当社では経営の健全性、透明性、効率性を確保する基盤として、コーポレート・ガバナンスの継続的強化を経営上の最重要課題としており、意思決定の迅速化、業務執行に対する監督機能の強化、取締役に対する経営監視機能の強化、および内部統制システムを整備することで、会社の透明性・公平性を確保し、すべてのステークホルダーへのタイムリーなディスクロージャーに努めてまいります。

 

<実施しない主な原則とその理由>

原則

実施しない理由

<補充原則1-2-4>

議決権の電子行使につきましては、現時点では採用しておりません。また、招集通知の英訳につきましてもおこなっておりません。今後の当社株式の海外投資家等の株主の比率を考慮しながら実施を検討してまいります。

<補充原則4-1-2>

当社は、中期経営計画を策定しておりますが、当社のビジネスの柱であるM&Aによる拡大を織り込むことが難しいことから現時点では開示しておりません。今後は、株主の皆様のより一層の理解を得られるよう、成長にむけた中長期的なビジョンの公表等を検討してまいります。

 

<開示している主な原則>

原則

開示内容

<原則1-4 政策保有株式>

当社は、取引関係の維持・強化等を目的として、限定的かつ戦略的に株式を保有いたします。この場合、取引関係の維持・強化によって得られる利益とリスク、資本コスト等を総合的に勘案し、当社の企業価値の増加に資するか否かの観点から、投資の可否を判断いたします。取締役会は、毎年個別の政策保有株式について、保有に伴う便益、リスクが資本コストに見合っているか、中長期的な観点から当社の企業価値の向上に資するかどうかについて経済合理性等を検証し、保有の意義が必ずしも十分でないと判断される銘柄については、縮減を図ります。また、議決権の行使にあたっては、中長期的な視点で企業価値向上につながるか、または当社の株式保有の意義が損なわれないかを判断基準として、適切に行います。株式価値を毀損するような議案については、会社提案・株主提案にかかわらず、肯定的な判断をおこないません。

<原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針>

 

 

当社のIR活動は、代表取締役CEOをトップとして、管理本部をIR担当部署としております。株主や投資家に対しては、アナリスト・機関投資家向け会社説明会を定期的に開催して株主との対話の充実に努めており、それらの結果は、都度、取締役及び経営幹部に報告しております。

 

 

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