ブリッジレポート
(7242) カヤバ株式会社

プライム

ブリッジレポート:(7242)KYB 2020年3月期第2四半期決算

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大野 雅生 社長執行役員

KYB株式会社(7242)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

輸送用機器(製造業)

代表取締役社長執行役員

大野 雅生

所在地

東京都港区浜松町2-4-1 世界貿易センタービル

決算月

3月末日

HP

https://www.kyb.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

3,265円

25,748,431株

84,068百万円

-15.0%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

未定

-

109.62円

29.8倍

5,734.39円

0.6倍

*株価は11/29終値。発行済株式数、DPS、EPS、BPSは20年3月期第2四半期決算短信より。ROEは前期実績。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

税引前利益

当期利益

EPS

DPS

2016年3月(実)

355,320

4,327

2,825

-3,161

-12.37

11.00

2017年3月(実)

355,316

19,247

18,852

14,544

56.93

12.00

2018年3月(実)

393,743

20,885

20,881

15,202

595.09

150.00

2019年3月(実)

412,214

-28,496

-29,510

-24,757

-969.18

0.00

2020年3月(予)

390,000

6,500

6,000

2,800

109.62

未定

*単位:円、百万円。予想は会社予想。16年3月期よりIFRSへ移行。16年3月期より当期利益は親会社の所有者に帰属する当期利益。2017年10月1日を効力日として10:1の株式併合を実施。18年3月期のDPSは株式併合考慮の金額。EPS、DPSともに遡及して調整していない。20年3月期の配当は未定。

 

KYBの2020年3月期第2四半期決算概要などをお伝えします。

 

目次

今回のポイント
1.免震・制振用オイルダンパー検査工程における不適切行為について
2.会社概要
3.2020年3月期第2四半期決算概要
4.2020年3月期業績予想
5.2017中期経営計画の進捗
6.今後の注目点
<参考1:2017中期経営計画>
<参考2:コーポレートガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 20年3月期上半期の売上高は前年同期比2.5%減の1,976億円。円高及び米中貿易摩擦に伴う中国市場低迷の影響を受けた。AC事業、HC事業ともに減収。セグメント利益は同25.9%増の119億円。AC事業は収益性改善で増益。HC事業は受注減により減益。営業利益は前年同期の113億円の損失から45億円の黒字に転換。前年同期に計上した製品保証引当金繰入額の減少や米国独占禁止法関連損失が今上期はなかったことが主要因。

     

  • 通期業績業績予想を下方修正した。20年3月期の売上高は前期比5.4%減の3,900億円の予想。今後の中国建設機械市場の動向等を加味した。セグメント利益に変更はない。営業利益は同66.5%減の65億円の予想。免震・制振用オイルダンパーに関する製品保証対策費等が増加する可能性を織り込んだ。免制震関連費用の減少により当期利益は黒字転換を見込んでいる。配当は現時点では未定。

     

  • 業績予想を下方修正したが、本業の稼ぎを示すセグメント利益については見通しを据え置いている。セグメント利益は2017年度以降半期100億円レベルで安定的に推移していること、免制震関連費用の減少により当期利益は黒字転換を見込んでいることなどから、業績面ではボトムアウトしたと株式市場は見ているようだ。

     

  • ただ、事業環境自体は良好とは言いがたいことに加え、AC事業、HC事業とも解決すべき課題克服の途上である。次の中期経営計画につなぐ1年として下半期にどれだけ上積みを行っていけるかを注目したい。

     

1.免震・制振用オイルダンパー検査工程における不適切行為について

(概要)

2018年10月、KYBおよび子会社カヤバシステムマシナリー株式会社が製造・販売している免震・制振用オイルダンパーの一部について、性能検査記録の書き換え行為により、大臣認定の性能評価基準に適合していない、または、顧客の基準値を外れた製品を建築物に取り付けていた事実が判明した。
調査の結果、2019年9月30日時点で991件・12,113本の不適合品および不明品を認識している。

 

 

(対応と進捗)

 

 

(再発防止策)

2019年2月に国土交通省に提出した調査報告書では、今回の不適切行為の原因として、「規範意識の欠如」、「真実と向き合わない風土」、「受注ありきの工場運営」など9点を、また、これに対応した再発防止策の切り口として「厳格な規範意識の醸成と企業風土の改革」、「事業性の評価、事業運営体制及び情報共有体制等の見直し」、「検査体制・方法の改善」、「内部監査・統制体制の強化」の4つを挙げている。

 

これを受けて同社では再発防止策の進捗状況を3ヶ月毎に公表することとしている。
2019年9月30日時点の第2回進捗状況(2019年10月16日公表)の概要は以下の通りである。

 

 

(業績への影響)

本件に関する製品保証引当金として、2018年度に351億46百万円を費用計上した。2019年9月末の本件に関する製品保証引当金残高は308億37百万円となっている。
今後の進捗により、追加で引当金を計上することとなった場合は業績に重要な影響を及ぼす可能性があると同社では認識している。

 

2.会社概要

独立系油圧機器国内最大手企業。油圧技術をベースに、「四輪車」、「二輪車」、「建設機械」、「産業車両」、「航空機」、「鉄道」、「特装車両」など幅広い分野で製品や技術を提供している。
四輪車用ショックアブソーバで国内シェア40%、グローバルシェア15%など、多くの製品で高いシェアを有する。

 

【2-1 沿革】

1919年11月に発明家であり創業者である萱場資郎が開設した「萱場発明研究所」がルーツ。
1927年1月に個人経営の萱場製作所を創業し、航空機用油圧緩衝脚、カタパルト等を製作した。
1935年3月に株式会社萱場製作所を創立。
第二次世界大戦終結後、1956年6月に製品の販売・サービスを目的に萱場オートサービス㈱を設立。
1959年10月には東京証券取引所に株式を上場した。
1974年7月、米国にKYB Corporation of Americaを設立し、北米の市販市場へ進出。この後、積極的にアジア、ヨーロッパなど海外市場へ進出する。
1985年10月に商号をカヤバ工業株式会社に変更。
2015年10月にはブランドイメージをより強固にすることを目的に、商号をカヤバ工業株式会社からKYB株式会社に変更。

 

【2-2 企業理念・経営理念】

◎ロゴ
2015年に商号を「カヤバ工業株式会社」から「KYB株式会社」に変更した意図にあるように、同社ではKYBブランドをグローバルベースでより強固なものとしたいと考えている。
そのため、下記のように「KYB」のロゴにもその意味、想いを込めている。

 

 

(ロゴに込めた意味)
心地よい日差しと植物の伸びやかな成長そして時代の風にしなやかに対応するイメージを表現しています。Bには液圧を象徴するデザインを付加し、斜体文字によりスピード感、先進性、成長性、革新性を表わしています。

 

(カラー)
愛、情熱、熱意等の意味を表わす「赤」。太陽の暖かさ、熱さと生命を育む力強さが時代を切り開くイメージを与えます。一歩先のモノづくりとつながる前進色の赤でもあります。

(同社websiteより)

◎KYBブランドステートメント

 

 

精緻な品質や確かな技術という製品の特性をステートメントで表現している。
一般生活者や取引先へ確かな品質を提供することが、ステークホルダーの「Advantage(優位性)」につながるだけでなく、確かな品質によって社員の一人ひとりが世の中を変えていくことを実感できる、モノづくりの喜びが社員の「Advantage(長所)」ともなるという意味が込められている。

 

◎経営理念
人々の暮らしを安全・快適にする技術や製品を提供し、社会に貢献するKYBグループとして、2018年10月に判明した不適切行為に対する自省から、経営理念、企業行動指針を改定した。
(経営理念)

規範を遵守するとともに、何事にも真摯に向き合います。

高い目標に挑戦し、より活気あふれる企業風土を築きます。

優しさと誠実さを保ち、自然を愛し環境を大切にします。

常に独創性を追い求め、お客様・株主様・お取引先・社会の発展に貢献します。

 

(経営ビジョン)

人財育成

方針や戦略を深く理解し、情熱をもって目標を完遂できる人財を育成する。

技術・商品開発

世界のお客様が感動し、安心し、そして信頼される商品を提供する。

モノづくり

お客様が満足する商品をつくる喜びと躍動感に溢れ、同時に現場主義に徹した緊張感ある工場にする。

マネジメント

企業の社会的責任を常に自覚し、効率のよいグループ経営を行う。

 

(企業行動指針)
下記URLを参照
https://www.kyb.co.jp/company/guidelines.html

 

【2-3 同社を取り巻く環境】

(1)市場環境
同社の業績に大きな影響を及ぼすのは、自動車市場と建設機械市場。
同社では2市場の現在及び今後についてそれぞれ以下のように認識している。

 

➀自動車市場

自動車の世界需要は米国発の貿易戦争激化や英国のEU離脱交渉等により不透明感があるものの、世界経済は成長展望にあり更なる拡大が見込まれる。

市販市場は新興国中心に拡大見込み。

 

同社は新車用ショックアブソーバ(SA)を、Tier1として自動車メーカーに直接供給しているほか、アフターマーケット向けにも代理店などを通じて部品商、修理工場などに供給している。同社では前者を「OEM」、後者を「市販」と呼んでいる。
アジア、中東などでは日本車の人気が高く、市販市場は同社にとって重要なマーケットである。

 

 

(同社資料より) 

 

②建設機械市場

中国市場は米中貿易摩擦の影響等により頭打ちと予想。

欧米市場は、都市型建機としてのミニショベル需要が好調。

インド市場は成長鈍化。

 

6t以上のショベルは、地域によっては頭打ち、6t未満のショベルは高需要が継続すると会社側では見ている。

 

 

 

(同社資料より)

 

(2)競合状況
①AC事業
国内では、ホンダが33.4%の株式を保有するショーワ(7274、東証1部)、日立のグループ会社である日立オートモーティブ(非上場)などが競合となる。
グローバルでは独・Sachs、米・Tennecoなど。Sachs社は歴史も古く、欧州系自動車メーカーとの関係が深い。

 

市販市場の同社シェアは約2割弱。国内ではトキコ(日立製作所がM&Aし非上場。現在は日立オートモーティブの一ブランド)、グローバルではMonroe(Tennecoの市販ブランド)など。
二輪車用ショックアブソーバではホンダとの関係が深いショーワ、ステアリングではジェイテクト(6473、東証1部)、日本精工(6471、東証1部)等と競っている。

 

②HC事業
同社で最も売り上げ比率が高いパーツであるシリンダでは、中国メーカーなどが力を伸ばしている。
同社が高い技術力を有するコントロールバルブでは、ナブテスコ(6268、東証1部)など、走行モータではナブテスコ、不二越(6474、東証1部)などが競合である。また日本の最大手建設機械メーカーは多くのパーツを内製化している。

 

コード

社名

売上高

増収率

営業利益

増益率

営業利益率

ROE

時価総額

PER

PBR

5994

ファインシンター

40,000

-1.2%

1,700

+1.0%

4.3%

4.9%

8,968

14.9

0.5

6268

ナブテスコ

288,500

-2.1%

24,100

+10.1%

8.4%

12.1%

420,449

24.8

2.3

6471

日本精工

860,000

-13.3%

32,000

-59.6%

3.7%

10.4%

583,241

25.8

1.0

6473

ジェイテクト

1,440,000

-5.3%

45,000

-32.4%

3.1%

4.6%

466,869

25.9

0.9

7212

エフテック

221,000

-6.1%

5,000

-24.0%

2.3%

6.9%

13,809

12.5

0.3

7242

KYB

390,000

-5.4%

20,600

-6.4%

5.3%

-15.0%

84,068

29.8

0.6

7274

ショーワ

271,000

-5.5%

27,000

-10.4%

10.0%

18.2%

173,173

10.7

1.5

※売上高、営業利益は今期会社予想、単位は百万円。ROEは前期実績。
時価総額は11月29日終値ベース。単位は百万円。PER(予)・PBR(実)は11月29日終値ベース 、単位は倍。
KYBの営業利益はセグメント利益(売上高から売上原価、販管費を控除して算出)。

 

中国を中心としたマーケットの低迷もあり、リストの全企業が通期業績予想を下方修正した。

 

【2-4 事業内容】

(1)セグメント
事業セグメントは四輪車用・二輪車用油圧緩衝器、パワーステアリング等で構成される「AC事業」、建設機械向けを中心とした産業用油圧機器からなる「HC事業」、コンクリートミキサ車など特装車両、航空機向け機器、免震・制振用オイルダンパー、電子機器などを取り扱う「その他」の3つ。

 

 

①AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業
四輪車用油圧緩衝器、二輪車用油圧緩衝器、四輪車用油圧機器、その他製品で構成されている。

 

2020年3月期第2四半期構成比

製品

売上高

構成比

主な製品

四輪車用緩衝器

860

72.4%

ショックアブソーバ

二輪車用緩衝器

127

10.7%

フロントフォーク、リアクションユニット

四輪車用油圧機器

175

14.7%

ベーンポンプ、CVT用ポンプ、EPS

その他製品

26

2.2%

ATV用機器、ステイダンパ

合計

1,189

100.0%

-

(単位:億円)

 

<主要製品>
◎四輪車
(ショックアブソーバ)
車体の振動を吸収する役割を持つ製品で、スプリングを伴い、車体とタイヤの間に取り付けられている。

 

 

 

(同社HPより)

 

自動車には、乗り心地や操縦安定性を向上させる機構である「サスペンション」が搭載されている。
サスペンションの機能は主に路面の凹凸を車体に伝えない緩衝装置としての機能と、車輪、車軸の位置を決め、車輪を路面に対して押さえつける機能の2つがある。
基本的には、車軸の位置決めを行うサスペンションアーム、車重を支えて衝撃を吸収するスプリング、スプリングの振動を減衰するショックアブソーバ(ダンパ)で構成される。

 

自動車は路面の凸凹からくる衝撃に対しスプリングを縮めることで吸収するが、スプリングの特性上、一旦収縮したスプリングは元の位置に戻ろうと反発する。
特にスプリングの上端にはボディー、下端には重量のあるタイヤやブレーキなどを含むサスペンションがつながっており、スプリングは慣性力により元の位置に戻る以上に伸び、縮みを繰り返してしまう。
この余分な揺れをできるだけ早く抑え、車体を安定させるのがショックアブソーバの役割である。

 

(同社HPより)

 

ショックアブソーバが適切に機能している車両は、

スプリングの無駄な動きを抑え、乗り心地を確保

ブレーキ性能が向上

コーナリングがスムーズ

 

など、快適な運転を実現することができる。

 

スプリングの縮みや伸びの作動を制御し、振動を抑える働きをする力のことを「減衰力」というが、この「減衰力」を作り出すのに大きな役割を果たしているのが、同社が創業以来培い、磨き上げてきた「油圧技術」である。

 

ショックアブソーバ本体筒にはオイルが入っていて、その筒の中をピストンが移動する。
ピストンには穴があけられており、揺れと合わせピストンが移動する時に穴を通過するオイルの抵抗が「減衰力」となる。また、車体の揺れの度合い、速さなどによりピストンが移動するスピードが変化するが、ピストン移動速度が速いほど「減衰力」は大きくなる。これを「減衰力特性」という。

 

(同社HPより)

 

優れた技術に支えられた同社のショックアブソーバは世界中の多くの自動車メーカーに評価され、後述するように高いシェアに繋がっている。また、ショックアブソーバは走行距離や経年により劣化し、その機能が低下するため、通常は初年度登録から5年以上、または走行距離10万km以上で交換が必要と言われている。
この交換需要=市販市場も同社にとっては大きな事業機会となっている。

 

(ステアリング)
自動車の「走る」、「曲がる」、「止まる」という基本機能の一つの「曲がる機能」を分担するのがステアリング装置。

 

 

(同社HPより)

 

ドライバーが行うハンドルの回転を、油圧式のパワーアシストユニットでサポートし、タイヤを操舵する「油圧式ステアリング(PS)」と、ハンドルの回転を、モータ、コントローラ、トルクセンサ等からなる電動タイプのパワーアシストユニットでサポートし、タイヤを操舵する「電動ステアリング(EPS)」がある。

 

「PS」は、油圧の力により、わずかな操作でのステアリング操作が可能で、危険回避にも素早く対応できるなど安全運転に不可欠な装備。一方、バッテリーを動力源とした「EPS」電動タイプは、自動車のエンジンを動力源とした「PS」に比べ、自動車の燃費を向上させることができる。

 

*高機能EPSアクチュエータ

 

*乗用車向け油圧パワステ用ベーンポンプ

 

 

◎二輪車
(サスペンション)
路面のコンディションを問わず、車体への突き上げを最小化させ、快適性を追求している。

 

 

(同社HPより)

 

*リアクッションユニット
車体の姿勢を保ち、路面からの振動、衝撃を吸収することで乗り心地を向上させる。

 

 

(同社HPより)

 

②HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業
産業用油圧機器、その他製品から構成されている。

 

2020年3月期第2四半期構成比

製品

売上高

構成比

主要製品

産業用油圧機器

621

93.4%

シリンダ、バルブ、ポンプ、モータ

その他油機

44

6.6%

鉄道用ダンパ、鉄道用ブレーキ

合計

665

100.0%

-

*単位:億円

 

<主要製品>
ショベルカーなど建設機械の駆動系機構は、下の図にあるようにコントロールバルブ、ピストンポンプ、走行モータ、旋回モータ、シリンダなどの各パーツで構成されているが、各種アクチュエータ(油圧や電動モータによって,エネルギーを並進または回転運動に変換する駆動装置)を制御し、走行、旋回、アームの屈伸などの動作をスムーズに行うのが、建設機械の「頭脳」であるコントロールバルブ。
同社のコントロールバルブは、お家芸の油圧技術に電気制御を組み合わせることにより高度な制御を可能としている。
また、同社はこれらのパーツを全て製造している数少ないメーカーである。
全てのパーツを自社で製造しているため、建機メーカーに対してシステム提案ができる点が、同社の大きな競争優位性となっている。

 


 

*ショベル用コントロールバルブ

 

*走行用モータ

 

 

*油圧シリンダ

 

 

(同社HPより)

 

③特装システム等(システム製品及びその他の合計)
特装車両、航空機用油圧機器、システム製品、電子機器などから構成される。

 

2020年3月期第2四半期構成比

製品

売上高

構成比

主な製品

特装車両

43

34.7%

コンクリートミキサ車

航空機用油圧機器

26

21.0%

アクチュエータ、ホイール、ブレーキ

装置・電子他

54

44.3%

免震・制振用オイルダンパー、舞台装置、通信端末

合計

122

100.0%

-

*単位:億円

 

コンクリートミキサ車は、高い混錬、排出性能を誇り、国内シェアは約80%を占めている。
航空機においては、各種アクチュエータ、軽量化アキュムレータ、ホイールブレーキなど、信頼性の高い製品を提供している。

 

 

 

 

(2)顧客・商流
◎顧客
主要顧客は以下の通り。
このうち、グローバルベースでトヨタ製自動車の約6割には同社のショックアブソーバが搭載されているほか、日産で約3割、ホンダで約1割など、高いシェアを誇っている。

 

 

日系

非日系

AC事業

トヨタ自動車

日産自動車

ジヤトコ

ヤマハ発動機

スズキ

SUBARU

三菱自動車

ホンダ

いすゞ

ダイハツ

日野自動車

PSA

ルノー

フォルクスワーゲン

ダイムラー

クライスラー

HC事業

日立建機

住友建機

クボタ

コベルコ建機

竹内製作所

ヤンマー建機

コマツフォークリフト

キャタピラー

トラスミタール ボンフィグリオリ

斗山

三一重工

 

◎商流
前述のように、新車向けOEMと、中古車向け市販という2つの商流でショックアブソーバの供給を行っている。
売上高はOEMの方が大きいものの、自社ブランドで販売をしている市販用製品は収益性も高く、同社としては今後もグローバルに拡大を狙う市場である。

 

同社の市販用ショックアブソーバは現在世界を走行している日米欧自動車の約9割に搭載が可能である。
このカバー率の高さを支えているのが、トヨタをはじめとした大手自動車メーカーとの強固な関係だ。

 

(3)グローバルネットワーク
日本を含む24か国にグループ会社48を有し、強固なグローバルネットワークを構築している。

 

 

グループ会社

日本

1

14

アジア

7

18

欧州

12

8

米州

3

7

合計

23

47

(2019年9月末現在)

 

 

(4)研究開発
(体制)
日本、北米、欧州、中国、タイの5極に開発拠点を設け、グローバルな最適開発・生産体制を確立している。
日本以外の開発拠点は基本的には、モデル製品の開発、性能向上・低コスト化など商品力向上のための開発を手掛け、長期的視点に立った研究開発は日本において、基礎技術研究所(神奈川県相模原市)、生産技術研究所(岐阜県可児市)2つの技術研究所を中心に取り組んでおり、独創性に優れた先行技術等の研究開発を行っている。

 

また、工機センター(岐阜県可児市)に生産技術研究所や各工場で培われた生産設備設計のノウハウを集約し、先進性および信頼性の向上を図った設備、治工具の内製化を強化・推進している。
また、電子技術センター(神奈川県相模原市)では、電子機器の設計・評価技術の集約を行い、開発力を高め、製品開発から試作評価、そして量産までがスムーズかつスピーディーに実施できるような体制を整えている。
製品の高機能化・システム化については、独自開発のほかに、顧客あるいは関連機器メーカーとの共同研究開発を推進しており、産学交流による先端技術開発にも積極的に取り組んでいる。

 

(R&D費推移)
13年3月期以降、売上高に対するR&D費の水準についての意識を高め、現在は2%程度で推移している。

 

 

(注力分野)
性能向上、高機能化・システム化への対応や軽量化・省エネ・環境負荷物質削減などエネルギーや環境問題に配慮した製品開発を進めているが、生産技術力の強化も図っている。
また、グローバル化の加速に伴い、国際感覚を身につけた人財の育成や、標準化されたマネジメントシステムの構築を含めた戦略的なグローバル生産・販売・技術体制の完成を目指している。

 

近年特に力を入れているのが自動運転に関連した製品開発だ。
その一つが、EPS(電子ステアリング)とショックアブソーバの統合技術。ドライバーの技量や判断にかかわりなく、様々な路面状況でも自動的により快適、スムーズな運転を可能にする技術は自動運転車には絶対に不可欠なものと考えている。

 

また、「ステアリング・バイ・ワイヤ」も今後重要性が増大する技術であるとみている。
通常はステアリング操作はステアリングシャフトを通じステアリングギアボックス、タイヤへと伝達されるのに対し、
「ステアリング・バイ・ワイヤ」は、電子信号によってステアリングの操作を伝達するもの。
タイヤから伝わる振動が少ないので疲れにくく、強い横風が吹き、車体が左右に持っていかれた場合、今までのステアリングであれば運転手が意図してステアリングの操作により復元させなければならなかったが、「ステアリング・バイ・ワイヤ」であれば自動的にアジャストされるなどのメリットがある。それに加え、「ハンドルは右前」である必要がなく、デザイン、機能を含め自動車の在り方を大きく変える可能性に注目が集まっている。
実用化にはまだ課題が残るものの、独創的なEPS技術として更なるブラッシュアップを進めている。

 

【2-5 特長と強み】

◎様々な製品で高いシェア
四輪用ショックアブソーバのOEM供給で国内シェア40%、グローバルシェア15%のほか、建設機械用油圧機器シリンダのグローバルシェア31%、コンクリートミキサ車国内シェア79%など、多くの製品で高いシェアを有している。

 

◎優れたコア技術
この高シェアは、世界最大手の地位をフォルクスワーゲンやGMと競っているトヨタ自動車における社内シェアがグローバルベースで約6割であることが示すように、同社製品に対する顧客の信頼度の高さによるものであり、この信頼のベースは創業時より100年という長い時間の中で培い、磨き上げてきた「油圧」についての優れた技術力に他ならない。

 

ショックアブソーバや免震・制振用オイルダンパーに代表される「振動制御技術」と、ショベルカーのコントロールバルブや電動パワーステアリングに代表される「パワー制御技術」の2つのコア技術が多くの顧客に高く評価され、様々な場面で広く用いられている。

 

【2-6 ROE分析】

 

16/3期

17/3期

18/3期

19/3期

ROE (%)

-2.0

9.3

8.8

-15.0

売上高当期利益率(%)

-0.89

4.09%

3.87

-6.01

総資産回転率(回)

0.95

0.96

0.99

0.97

レバレッジ(倍)

2.35

2.37

2.30

2.59

 

3.2020年3月期第2四半期決算概要

(1)連結業績概要

 

19/3期2Q

構成比

20/3期2Q

構成比

前年同期比

売上高

202,789

100.0%

197,638

100.0%

-2.5%

売上総利益

40,229

19.8%

38,787

19.6%

-3.6%

販管費

30,761

15.2%

26,868

13.6%

-12.7%

セグメント利益

9,468

4.7%

11,919

6.0%

+25.9%

営業利益

-11,300

-

4,498

2.3%

-

税引前利益

-12,369

-

4,205

2.1%

-

四半期利益

-11,972

-

1,666

0.8%

-

*単位:百万円。セグメント利益は日本基準の営業利益に相当。四半期利益は親会社の所有者に帰属する四半期利益。
19年3月期より、連結損益計算書の「その他の収益」に計上していた「ロイヤルティ収益」及び「金型補償に関する収益」を、「売上高」に含めて計上することに変更しており、18年3月期についても変更を反映した組替後の数値を記載している。

 

円高により減収も、収益性は大幅に改善し黒字転換
売上高は前年同期比2.5%減の1,976億円。円高及び米中貿易摩擦に伴う中国市場低迷の影響を受けた。AC事業、HC事業ともに減収。
セグメント利益は同25.9%増の119億円。AC事業は収益性改善で増益。HC事業は受注減により減益。
営業利益は前年同期の113億円の損失から45億円の黒字に転換。前年同期に計上した不適切行為に関する製品保証引当金繰入額や米国独占禁止法関連損失が今上期はなかったことが主要因。
不適切行為における適合化など状況が進捗したことから前期計上した免震・制振用オイルダンパーの製作費用並びに免震用オイルダンパーの交換工事に要する費用、構造再計算費用等の製品保証引当金について繰入及び取崩を行った影響額、及び対応本部の人件費等の諸費用をその他の費用に計上。製品保証引当金の2019年9月末残高は、308億37百万円。

 

◎地域別売上動向

地域

売上高

構成比

前年同期比

日本

897

45.4%

+0.8%

欧州

334

16.9%

-1.9%

米国

177

9.0%

-3.4%

中国

161

8.1%

-18.7%

東南アジア

142

7.2%

-6.2%

その他

265

13.4%

+0.4%

合計

1,976

100.0%

-2.5%

*単位:億円

 

欧州、米国は為替の影響もあり減収。中国市場は自動車および建機共に低調。
海外売上高比率は前年同期の56.1%から54.6%に低下した。

 

(2)セグメント別動向

売上高

19/3期2Q

構成比

20/3期2Q

構成比

前年同期比

AC事業

123,722

61.0%

118,892

60.2%

-3.9%

HC事業

67,224

33.1%

66,507

33.7%

-1.1%

特装システム等

11,842

5.8%

12,239

6.2%

+3.4%

合計

202,789

100.0%

197,638

100.0%

-2.5%

セグメント利益

 

 

 

 

 

AC事業

4,351

3.5%

6,925

5.8%

+59.2%

HC事業

5,594

8.3%

4,070

6.1%

-27.2%

特装システム等

-477

-

924

7.5%

-

合計

9,468

4.7%

11,919

6.0%

+25.9%

*単位:百万円。利益の構成比は売上高利益率。

 

①AC事業

製品

売上高

構成比

前年同期比

四輪車用緩衝器

86,023

72.4%

+1.1%

二輪車用緩衝器

12,726

10.7%

-9.4%

四輪車用油圧機器

17,512

14.7%

-20.0%

その他製品

2,632

2.2%

-2.1%

合計

118,892

100.0%

-3.9%

*単位:百万円

 

地域

売上高

構成比

前年同期比

日本

334

28.1%

-6.7%

欧州

293

24.6%

-3.6%

米国

142

11.9%

-1.4%

中国

81

6.8%

-12.9%

東南アジア

130

10.9%

-5.1%

その他

209

17.6%

+3.5%

合計

1,189

100.0%

-3.9%

*単位:億円

 

円高による下押し影響はあったが、四輪車用緩衝器(OEM)の収益性改善や固定費削減効果により減収も増益となった。

 

②HC事業

製品

売上高

構成比

前期比

産業用油圧機器

62,130

93.4%

-1.7%

その他油機

4,377

6.6%

+8.7%

合計

66,507

100.0%

-1.1%

*単位:百万円

 

地域

売上高

構成比

前期比

日本

459

69.0%

+4.8%

欧州

41

6.2%

+10.8%

米国

30

4.5%

-16.7%

中国

80

12.0%

-23.8%

東南アジア

12

1.8%

-14.3%

その他

42

6.3%

0.0%

合計

665

100.0%

-1.1%

*単位:億円

 

主要顧客からの受注減少に対して固定費削減が追い付かず減収減益となった。

 

(3)財務状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

19年3月末

19年9月末

 

19年3月末

19年9月末

流動資産

235,105

212,375

流動負債

206,979

198,878

 現金等

56,092

39,454

 営業債務等

87,189

75,541

 営業債権等

107,426

100,331

 借入金

54,255

57,081

 棚卸資産

59,591

60,311

非流動負債

78,451

87,772

非流動資産

205,969

226,993

 借入金

44,046

38,415

 有形固定資産

161,368

182,494

負債合計

285,430

286,650

 無形資産

7,532

7,180

資本合計

155,643

152,718

 その他の金融資産

22,983

21,621

 利益剰余金

86,536

87,850

資産合計

441,074

439,368

負債純資産合計

441,074

439,368

*単位:百万円。現金等は現金及び現金同等物。営業債権等は、営業債権及びその他の債権。営業債務等は営業債務及びその他の債務。

 

現金等、営業債権等の減少で流動資産は前期末比227億円減少。有形固定資産の増加などで非流動資産は同210億円増加し、資産合計は同17億円減少の4,394億円となった。
営業債務等の減少で流動負債は同81億円減少。その他の金融負債の増加等で非流動負債は同93億円増加し、負債合計は同12億円増加の2,867億円となった。資本合計は同29億円減少し1,527億円。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は前期末の33.9%から0.6ポイント低下し、33.3%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

19/3期2Q

20/3期2Q

増減

営業CF

9,313

896

-8,417

投資CF

-12,554

-11,500

+1,054

フリーCF

-3,241

-10,604

-7,363

財務CF

-4,312

-5,142

-830

現金同等物残高

35,092

39,454

+4,362

*単位:百万円。

 

製品保証引当金の減少などで営業CFのプラス幅は縮小。フリーCFのマイナス幅は拡大した。リース負債の返済による支出増などで財務CFのマイナス幅は拡大。キャッシュポジションは上昇した。

 

 

4.2020年3月期業績予想

(1)通期業績予想

 

19/3期

構成比

20/3期(予)

構成比

前期比

修正率

進捗率

売上高

4,122

100.0%

3,900

100.0%

-5.4%

-4.9%

50.7%

セグメント利益

220

5.3%

206

5.3%

-6.4%

0.0%

57.9%

営業利益

-285

-

65

1.7%

-

-66.5%

69.2%

当期利益

-248

-

28

0.7%

-

-80.0%

59.5%

単位: 億円。予想は会社側発表。セグメント利益は日本基準の営業利益に相当。当期利益は親会社の所有者に帰属する当期利益。

 

業績予想を下方修正。減収も黒字転換。
業績予想を下方修正した。売上高は前期比5.4%減の3,900億円の予想。今後の中国建設機械市場の動向や円高による為替の影響等を加味した。セグメント利益に変更はない。営業利益は65億円の予想。免震・制振用オイルダンパーに関する製品保証対策費等が増加する可能性を織り込んだ。免制震関連費用の減少により当期利益は黒字転換を見込んでいる。
為替(平均レート)の前提は第3四半期以降1USD=105円、1ユーロ=115円。通期では1USD=106.81円、1ユーロ=118.21円(前年度は1USD=110.91円、1ユーロ=128.40円)。尚、配当は現時点では未定としている。

 

(2)セグメント別動向

売上高

19/3期

構成比

20/3期(予)

構成比

前期比

修正率

進捗率

AC事業

2,458

59.6%

2,329

59.7%

-5.2%

-3.2%

51.0%

HC事業

1,406

34.1%

1,317

33.8%

-6.3%

-7.4%

50.5%

特装システム等

258

6.3%

254

6.5%

-1.6%

-6.6%

48.2%

合計

4,122

100.0%

3,900

100.0%

-5.4%

-4.9%

50.7%

セグメント利益

 

 

 

 

 

 

 

AC事業

98

4.0%

119

5.1%

+21.4%

+41.7%

58.2%

HC事業

119

8.5%

76

5.8%

-36.1%

-34.5%

53.6%

特装システム等

3

1.2%

11

4.3%

+266.7%

+83.3%

84.0%

合計

220

5.3%

206

5.3%

-6.4%

0.0%

57.9%

*単位:億円。利益の構成比は売上高利益率。

 

①AC事業

製品

売上高(予)

構成比

前期比

修正率

進捗率

四輪車用緩衝器

1,679

72.1%

-1.1%

-2.9%

51.2%

二輪車用緩衝器

282

12.1%

-3.1%

-2.1%

45.1%

四輪車用油圧機器

319

13.7%

-24.2%

-3.0%

54.9%

その他製品

50

2.1%

0.0%

-15.3%

52.6%

合計

2,329

100.0%

-5.2%

-3.2%

51.0%

*単位:億円。

 

②HC事業

製品

売上高(予)

構成比

前期比

修正率

進捗率

産業用油圧機器

1,233

93.6%

-6.8%

-8.1%

50.4%

その他油機

84

6.4%

+1.2%

+2.4%

52.1%

合計

1,317

100.0%

-6.3%

-7.4%

50.5%

*単位:億円。

 

AC事業は、数量ベースでの四輪車用緩衝器の増加が牽引し増益。ただ自動車市場が弱含むため利益率の伸びは鈍化する見込み。
HC事業は、中国・東南アジアでの建設機械需要の鈍化および中国市場における主要顧客のシェア低下により減収減益を見込んでいる。

 

5.2017中期経営計画の進捗

(1)2019年度基本方針

2017中計最終年度の今期は以下のような基本方針を掲げ、「痛みを伴う改革を乗り越え、利益体質への転換を図る」1年であると位置づけている。

 

*コンプライアンス遵守と安全最優先の企業文化の徹底・定着化
*免制震オイルダンパーの早期適合化
*不採算事業・拠点の撤退を含む見極め実施、集約再編、コア事業へ特化
*競争力のある新商品の開発、革新的モノづくりの推進

 

次の中期経営計画においてはAC事業については、高収益かつ事業環境が良好(高シェア×高成長)なフィールドを中心とした製品展開を、HC事業については収益性向上を目指していく。

 

(同社資料より)

 

(2)各事業の取り組み

①AC事業
「顧客の需要地のシフトに合わせた拠点統廃合と高付加価値品の開発・拡販により成長軌道を描く」ことを中期方針とし、以下の課題に取り組んでいる。

 

*抜本的構造改革の完遂
市場・顧客および事業戦略に合わせた最適レイアウトを目指す。

 

欧州再編

SAは拠点間の製品移管を21年度完了予定。スペインの油圧ポンプ生産拠点KSSは製品移管を開始し21年度に閉鎖する。

二輪再編

小型製品のタイからベトナムへの移管を20年度に完了する。インド二輪メーカーTVS機種の中国からインドへの移管を19年度に完了する。

EPS再編

国内不採算機種は撤退し、中国生産に軸足を移し事業再編を推進する。

SA市販

中国市販については販社の中国生産拠点への統合は完了した。生販技構造改革案策定(原低・販売チャンネル)は19年度に完了予定。

 

*収益基盤の安定化
量販向けショックアブソーバのグローバル仕様統合は、統合標準仕様を整備中で19年度に完了する。
SAの革新的モノづくりによる生産性向上については、設備仕様を設計中で、20年度より設備制作を開始する。

 

*持続的成長
引続き高付加価値品の開発や拡販に取り組んでいる。付加価値製品受注・拡販は現在のところ、提案64件、引合9件、量産7件。ジャーマンプレミアム3向けに新技術のプレゼンを開始した。
拡大基調にあるSUV/EV/ピックアップトラック車両向製品の受注・拡販は、引合2件、受注5件、量産2件という進捗である。

 

②HC事業
「市場変動に左右されない安定した売上高、利益の確保」を中期方針に掲げ、ショベルを基盤としながら、攻めきれていない成長市場への拡販を強化する。

 

*抜本的構造改革の完遂
中型ショベル用コントロールバルブラインの移管はやや遅れたが2019年度中に移管が完了する予定。
相模工場へのモータ製品の集約については、中国工場含む再編レイアウトが決定し、工程整備に着手した。20年9月に集約再編が完了する予定である。

 

こうした移管や集約によって、生産能力を落とさずにライン数を削減し、ラインのフレキシブル化促進により、数量変動に強い体質を実現する考えだ。

 

*収益基盤の安定化
今後も安定的に高い需要が続くと見込まれるミニ・超大型用ショベルについては、需要が安定的であり、生産能力増強により高シェアを維持し、市場変動に左右されにくい体質を目指し活動中である。

 

*持続的成長
ローダー用バルブやインド市場での農機向けHST(Hydraulic Static Transmissio:油圧モータを閉回路で繋いだ無段変速機).やフォークリフト用ギヤポンプなど、非建機市場向け製品の拡販活動を推進中である。

 

6.今後の注目点

業績予想を下方修正したが、本業の稼ぎを示すセグメント利益については見通しを据え置いている。セグメント利益は2017年度以降半期100億円レベルで安定的に推移していること、免制震関連費用の減少により当期利益は黒字転換を見込んでいることなどから、業績面ではボトムアウトしたと株式市場は見ているようだ。
ただ、事業環境自体はまだ良好とは言いがたいことに加え、AC事業、HC事業とも解決すべき課題克服の途上である。次の中期経営計画につなぐ1年として下半期にどれだけ上積みを行っていけるかを注目したい。

 

<参考1:2017中期経営計画>

同社は今期2017年度(2018年3月期)を初年度、2019年度(2020年3月期)を最終年度とする3年間の中期経営計画を策定、実行中である。

 

(1)数値目標
「A GLOBAL KYB -CHALLENGE & INNOVATION-」のスローガンの下、2017年度は「抜本的構造改革の完遂」、2018年度及び2019年度は「持続的成長」、「収益基盤の安定化」、「経営課題の解決」に取り組んでいる。

 

(2)各事業の目指す姿
①AC事業

中期方針

顧客の需要地のシフトに合わせた拠点統廃合と高付加価値品の開発・拡販により成長軌道を描く

事業部制(サスペンション/ステアリング/モーターサイクル事業部) 導入によるスピードアップ

重点取り組み

・市場・顧客の事業戦略に合わせた最適レイアウトと能力増強

新興国市場への進出と既存拠点の見直し

・電子技術を活用した高付加価値品の開発・拡販 自動車用電子制御サスペンションの拡販、二輪車用電子制御サスペンションの開発

・革新ライン導入による既存製品のコストダウン

ショックアブソーバの売上本数は前期7,200万本(OE70%、市販30%)を、2020年度は8,800万本(OEM 68%、市販32%)へ引き上げる。
ポイントは以下の通り。

SA(OEM)

ACの屋台骨であるショックアブソーバで確実に稼ぐ

(施策)

・5極開発体制強化による顧客満足度向上

・需要のあるエリアへの能力増強

・高付加価値品の市場投入

・革新ライン開発・導入を軸として競争力の維持・拡大を図る

SA(市販)

2020年度販売目標28百万本必達

(施策)

・伸長市場での販売会社設立などエリアの強化

・人気車種向け新規SAアプリ開発・投入

・SA周辺部品アプリの開発・投入

・コイルスプリングなどを地産地消推進による為替リスクヘッジを軸として目標達成を図る

SA

革新的モノづくり

革新的モノづくりのグローバル展開を加速

少子化に対応し、品質の安定化をコンセプトとしている

自動溶接・組立・検査、コンパクト塗装設備などで、全体生産性25%向上、自動化率75%を目指す

二輪

余剰能力を適正化、開発・生産革新で利益の出る事業体へ

インド、ベトナム、インドネシアを強化。中国、タイなどを再編

システム製品

付加価値の高いシステム製品の開発を強化

2020年以降を見据え、電子制御サスペンション、自動運転対応などに取り組む

 

②HC事業

中期方針

市場変動に左右されない安定した売上高、利益の確保

ショベルを基盤としながら、攻めきれていない成長市場への拡販を強化

重点取り組み

・最適生産体制の確立 コントロールバルブ開発・生産体制の再編で確実に稼ぐ

・農機、鉄道、その他の成長市場への拡販地域の要求にマッチした製品戦略、開発で拡販を図る

 

ポイントは以下の通り。

最適生産体制の確立

グループ力を活かした一貫ラインでさらに高収益な体質へ。

(施策)

・コントロールバルブの一貫ラインを構築する。新ラインにより、鋳物と加工・組立の一貫ライン構築により生産性15%向上が見込まれるほか、工場間輸送を廃止。

生産と開発の拠点統合により開発期間を短縮し、製品力の向上が期待できる。

農業機械向け製品

地域に合った製品戦略で農機向け製品の拡販を進める。

(施策)

・日本エリア:自動制御・無人運転に対応できる電子化製品の開発、システム対応

・北米エリア:大容量対応の製品開発。自動制御・自動運転に対応できる電子化製        品の開発

・中国エリア:既存製品の競争力強化

鉄道向け製品

海外市場への拡販と新製品戦略で拡大を図る。

注目市場として、中国、インド、北米、日本を挙げている。

(戦略)

・中国:高速(250~300km/h)鉄道・都市間鉄道向けのパッシブダンパ等の拡販 (現地生産によるコストダウン)

・インド他:日本連合での拡販を後押し

・日本:豪華列車、特急列車、次期新幹線をターゲットにアクティブサスペンションシステム拡販

 

③その他
ポイントは以下の通り。

特装車両事業

国内需要の取り込みと、成長するインド市場に合わせた生産体制・技術力の強化で特装事業の売上拡大を図る。

インドにおいては、「生コン排出性能が高い」、「生コン積載時の重心が低く走行安定性が高い」といった技術面の強みに加え、販売面でも「日本企業への信頼感」が同社の強みとなっている。

 

<参考2:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査役会設置会社

取締役

6名、うち社外2名

監査役

4名、うち社外2名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日: 2019年7月16日

 

<基本的な考え方>
当社は、持続的な成長と企業価値向上の実現を通してステークホルダーの期待に応えるとともに、社会に貢献するという企業の社会的責任を果たすため、取締役会を中心に迅速かつ効率的な経営体制の構築ならびに公正性かつ透明性の高い経営監督機能の確立を追求し、以下の経営理念および基本方針に基づき、コーポレートガバナンスの強化および充実に取り組むことを基本的な考え方としております。

 

≪経営理念≫
「人々の暮らしを安全・快適にする技術や製品を提供し、社会に貢献するKYBグループ」
1.高い目標に挑戦し、より活気あふれる企業風土を築きます。
2.優しさと誠実さを保ち、自然を愛し環境を大切にします。
3.常に独創性を追い求め、お客様・株主様・お取引先・社会の発展に貢献します。
≪基本方針≫
1.当社は、株主の権利を尊重し、平等性を確保する。
2.当社は、株主を含むステークホルダーの利益を考慮し、それらステークホルダーとの適切な協働に努める。
3.当社は、法令に基づく開示はもとより、ステークホルダーにとって重要または有用な情報についても主体的に開示する。
4.当社の取締役会は、株主受託者責任および説明責任を認識し、持続的かつ安定的な成長および企業価値の向上
 ならびに収益力および資本効率の改善のために、その役割および責務を適切に果たす。
5.当社は、株主との建設的な対話を促進し、当社の経営方針などに対する理解を得るとともに、当社への意見を経営の
 改善に繋げるなど適切な対応に努める。

 

信頼回復に向けて
 当社は、ステークホルダーとの適切な協働やその利益の尊重、健全な事業活動倫理などについて、当社としての価値観を示し、私たち一人ひとりが遵守すべき行動準則として、「企業行動指針」を制定し、国内外の事業活動の第一線にまで広く浸透し、遵守されるよう、努力してまいりました(原則2-2)。一例としましては、企業行動指針の説明会開催、各種コンプライアンス教育の実施、コンプライアンス教育の昇格要件化、対象従業員との1対1の点検活動、内部通報制度の周知徹底を行なっております。これらの場を含め、様々な機会を通じて、私たちが企業活動を通じて社会に提供している製品・サービスは、多くの人々の生命・身体や財産の安全に関わるものであること、私たち一人ひとりが直接的にも間接的にも品質経営に従事しており、個々の業務の緩みが社会全体に影響を及ぼすことがありうることを厳しく自覚して、緊張感を持って日々の業務に向き合うこと、あらゆる職場で、都合の悪いニュースをすぐに報告して、問題の芽が小さなうちに解決する考え方「Bad News 1st」を実践することなどについても広く浸透させ、遵守するよう努めてまいりました。
 しかしながら、2018年10月16日以降に、プレスリリースにて公表いたしましたとおり、出荷していた免震・制振用オイルダンパーの一部について、性能検査記録データの書き換え行為などが行われ、大臣認定の性能評価基準に適合していない、または、お客様の基準値を外れた製品を建築物に取り付けていた事実が判明いたしました。
 対象物件の所有者の皆様、居住者の皆様、建設・設計関係の皆様、株主の皆様、対象物件を利用されている皆様をはじめ、社会の皆様に多大なるご心配とご迷惑をおかけしておりますことを、改めて心より深くお詫び申し上げます。
 当社としましては、国内外の事業活動の第一線である従業員「一人ひとり」に企業行動指針が深く浸透し、遵守されるよう不退転の決意をもって努力してまいる所存です。

 

 

<実施しない主な原則とその理由>

原則

実施しない理由

(補充原則4-1-3 最高経営責任者などの後継者計画)

当社は、最高経営責任者などの後継者計画は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のための重要課題と認識しております。2016年度より代表取締役と社外取締役とで構成する指名委員会を設置し、指名手続きにおける透明性の向上を図っております。

今後、最高経営責任者などに求められる要件、育成方針などについて、当社を取り巻く経営環境や当社の企業風土なども踏まえて総合的に検討するとともに、取締役会による監督体制のあり方についても検討してまいります。

(原則4-11 取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件)

当社は、女性取締役がおりませんが、特に性別等の個人属性による区別をすることなく、経営に多様な価値観を取り入れるに適任と判断した人物を4-11-1に記載のとおり、取締役会全体の知識、経験(国際経験を含む)、能力などのバランスに十分配慮しつつ、取締役に登用しております。

 

<開示している主な原則>

原則

開示内容

原則1-4【いわゆる政策保有株式】

(1)政策保有に関する方針

当社は、中長期的な企業価値向上の観点から、事業戦略上や事業運営上の信頼関係や取引関係の維持または強化が見込まれる株式については、成長性や経済合理性を総合的に判断し、必要と認められる政策保有株式を保有しております。個別の政策保有株式については、毎年取締役会において保有の便益が当社資本コストに見合っているか等の観点から保有継続の合理性を検証し、合理性が薄れたと判断した株式については、売却を検討いたします。

 

(2)議決権行使に関する方針

当社は、政策保有株式の議決権行使にあたって、株式発行会社の経営方針や事業戦略を十分に確認した上で、当社の中長期的な企業価値向上に資するかどうかを議案ごとに検討し、判断しております。

原則5-1【株主との建設的な対話に関する方針】

当社は、株主などとの建設的な対話を促進するために、グローバル財務統轄役員が統轄し、経理本部のIR室が株主および投資家の皆様への対応を実施しております。対話を充実させるために、IR室は社内の関連部門と連携し、適切に対応できる体制を整えております。当社は、社長およびグローバル財務統轄役員が経営戦略や財務状況を説明するアナリストおよび機関投資家向け決算説明会を半期に一度開催しております。また、個別面談にも随時対応するとともに、国内外のカンファレンスへの参加や個別の海外IR活動を通じて、海外の株主および機関投資家の皆様とも積極的なコミュニケーションを図っております。IR活動を通して頂いた皆様の意見や要望などは、取締役会および経営陣に定期的にフィードバックし、情報を共有しております。株主および投資家の皆様との対話において、お互いに不利益を被ることがないよう、インサイダー情報の取り扱いには十分留意し、決算日翌日から決算発表日までの期間はサイレント期間として、株主および投資家の皆様との対話の制限や社内の情報管理の徹底を図っております。

 

 

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