ブリッジレポート
(4829) 日本エンタープライズ株式会社

スタンダード

ブリッジレポート:(4829)日本エンタープライズ 2020年5月期第3四半期決算

ブリッジレポートPDF

 

植田 勝典 社長

日本エンタープライズ株式会社(4829)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

情報・通信

代表者

植田 勝典

所在地

東京都渋谷区渋谷1-17-8

決算月

5月

HP

http://www.nihon-e.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

188円

40,133,000株

7,545百万円

2.0%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

2.00円

1.1%

3.99円

47.1倍

124.30円

1.5倍

*株価は04/03終値。ROE、BPSは前期末実績。

 

連結業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主帰属利益

EPS

DPS

2016年5月(実)

5,530

219

252

327

8.07

3.00

2017年5月(実)

4,838

192

229

99

2.45

2.00

2018年5月(実)

3,892

174

257

166

4.11

2.00

2019年5月(実)

3,413

242

292

97

2.44

2.00

2020年5月(予)

3,850

275

300

160

3.99

2.00

* 予想は会社予想。単位は百万円、円。

 

 

日本エンタープライズ株式会社の2020年5月期第3四半期決算の概要と通期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2020年5月期第3四半期決算概要
3.セグメント別事業概況
4.2020年5月期業績予想
5.今後の注目点
<参考:CSR・ESG活動>
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 20/5期3Q(累計)は前年同期比8.9%の増収、同145.0%の営業増益。キッティングの伸長と脱通信キャリアプラットフォームを進めるコンテンツの底打ちでクリエーション事業が同14.9%増加した他、ソリューション事業もシステムの受託開発を中心に同1.3%増と堅調に推移。売上が増加する中、貸倒引当金の戻し入れや人件費の減少で販管費が減少したため、営業利益率が7.3%と4.0ポイント改善した。

     

  • 通期予想に変更はなく、前期比12.8%の増収、同13.5%の営業増益。4Q(3-5月)はキッティングを中心にクリエーション事業の堅調な推移が見込まれる中、AI・IoT・セキュリティ関連でのシステム開発の検収の増加と端末周辺事業の寄与でソリューション事業が伸びる。1株当たり2円の期末配当を予定している(予想配当性向50.2%)。

     

  • 通期予想に対する進捗率は、売上高68.0%(通期実績ベースの前年同期61.8%)、営業利益69.9%(同27.5%)。クリエーション事業の業績モーメンタムやソリューション事業でのシステム開発の検収が期末に集中する傾向を考えると、新型コロナウイルス感染症の影響を比較的受けにくい業界であることを踏まえ、通期業績の達成に不安は少ない。ドライブレコーダー機能を追加した個人向けアプリ「ATIS交通情報」や青果の扱いを始めた「いなせり市場」、更には在宅型コールセンターシステム『T-Macss HomeCloud』等で、期初予想にどれだけ上積みできるか注目していきたい。

     

     

1.会社概要

モバイルソリューションカンパニーを標榜。個人向けスマートフォンアプリの開発・提供、企業向けシステム開発、モバイルキッティング、e コマース、AI チャットボット等のサービスを提供しており、事業セグメントは、自社IP(Intellectual Property)を活用したアプリケーションやシステムを提供する「クリエーション事業」と企業の業務用ソフトウェアやシステムの開発を請け負う「ソリューション事業」に分かれる。また、新たなサービスの創出に向け、IoTやビジネスソリューション事業にも取り組んでいる。
2001年2月16日に大阪証券取引所ナスダック・ジャパン市場(現JASDAQ市場)へ株式上場。2007年7月10日の東京証券取引所市場第二部への市場変更を経て、2014年2月28日に同市場第一部の指定を受けた。

 

【経営理念】

同社の経営理念は「綱領・信条・五精神」及び「日エン経営原則」に刻まれており、「これを繰り返し学ぶ事で基本理念を永遠に堅持していく」事が同社社員の責務。こうした正しい考えと正しい行動の下にこそ、長い目で見た「株主価値の極大化」、すなわち「資本という大切な“お預かりもの”を1円もムダにせず、最大化していくことが可能である」と言うのが同社を率いる植田社長の考えである。そもそも同社は、「社業を通じて社会のお役に立ちたい」という強い一念から植田社長が興した会社であり、様々なIT機器を通して便利で面白い多種多様なコンテンツを制作し提供する事でユーザーの満足度を高めると共に社会貢献していく事を目指している。こうした植田社長の経営哲学の下、創業初年度の経常利益は、ほぼ全額が日本赤十字社・各地社会福祉協議会・児童養護施設等に寄付され、東日本大震災の折には、被災した方々の支援と東北地方の復興に寄与するべく日本赤十字社に寄付が行われた。

 

 

1-1 企業グループ連結子会社8社、非連結子会社1社

連結子会社は、アプリ/WEBサイト企画・開発・運用、業務支援等の(株)ダイブ、交通情報を中心にした情報提供の交通情報サービス(株)、アプリ/システム開発~運用、デバッグ等の(株)フォー・クオリア、音声通信関連ソリューションの(株)and One、スマートフォン向けキッティング支援ツール等の(株)プロモート、アプリ/システム開発、HEMS等の(株)会津ラボ、太陽光発電の山口再エネ・ファクトリー(株)、電子商取引サービス「いなせり」の企画・開発・運営を手掛ける いなせり(株)の国内8社。非連結子会社は、コンテンツ運営等を行うNE銀潤(株)の国内1社。

 

 

1-2 事業概要

事業は、クリエーション事業とソリューション事業に分かれ、19/5期の売上構成比は、それぞれ54.3%、45.7%。

 

 

クリエーション事業 : 自社IP(Intellectual Property)を活用したアプリケーション・システムの提供
コンテンツサービス、ビジネスサポートサービス、及び太陽光発電等、自社で保有する権利や資産を活用したサービスを提供している。

 

コンテンツサービス
総合電子書籍サービスやゲーム等のエンターテイメント系のコンテンツ、「ATIS交通情報サービス(交通情報)」、「女性のリズム手帳(ヘルスケア)」、「フリマjp(フリマ)」、更には一般消費者向け魚介ECサイト「いなせり市場」といったライフスタイル系のコンテンツを提供している。

 

エンターテインメント

・話題のコミック・小説を中心に、ビジネス・実用書・雑誌・写真集等、多彩なジャンルをカバーした総合電子書籍サービスやエンターテインメント関連のコンテンツ

 

 

ライフスタイル

・渋滞マップなど全国の道路情報の確認や、各種サービスを利用しながら手持ちのスマートフォンで走行状況を撮影できるドライブレコーダー機能を搭載した実用アプリ

・月間20万人のユーザーに向けて、女性のための「美」と「健康」をサポートするアプリや、ブランド品からファッションアイテム、電化製品までオールジャンルの商品を取扱うフリーマーケットアプリ

・一般消費者が、豊洲市場の仲卸の目利きに適った水産物や青果を購入できるECサイト

 

 

(同社資料を基に作成)

 

 

ビジネスサポートサービス
キッティング作業における人的負担の軽減と生産性・正確性を向上させる支援ツール『Kitting-One』の開発・販売及び『Kitting-One』を使ったキッティング作業の代行を行う「キッティングサービス(役務の提供)」、車両動態管理クラウド『iGPS on NET』等の提供も手掛ける「ATIS交通情報サービス」、操作性・柔軟性に優れたビジネスフォン環境を提供するIP-PBXソフトウェア『Primus』等の開発・販売を行っている「音声ソリューション」、東京魚市場卸協同組合所属仲卸業者のインターネット水産物販売サイト「いなせり」の運営といったサービスを提供しており、新規事業・サービスの開発につなげるべく、IoT・ブロックチェーン等の実証事業も手掛けている。

 

キッティング

・人的作業の軽減を可能とし「生産性」「正確性」の向上を実現できるキッティング作業支援ツール「Kitting-One」の開発・販売、及び「Kitting-One」を使ったキッティングサービス(役務)の提供

ATIS交通情報

・高速・貸切バス等の運送業、運輸・物流業、配送・引越業等の法人向けに、全国の高速・一般道路の渋滞、事故、規制情報等最新の交通事象をマップ上で確認できるクラウド型の交通情報サービス『ATIS on Cloud』の提供

・ケーブルテレビ、コミュニティFM、新聞社等へのデータ配信提供等のストック型ビジネス展開

音声ソリューション

・操作性・柔軟性に優れたビジネスフォン環境を提供するIP-PBXソフトウェア『Primus』やVoIPエンジン『Primus SDK』の開発・販売

教育・調達・観光

・eラーニング、リバースオークション、観光促進等

いなせり

・水産物や青果物を扱う飲食事業者向けECサイト『いなせり』を東京魚市場卸協同組合(仲卸)等との連携により運営

実証事業

・「ブロックチェーンと多機能『SMART PLUG』を活用した電力取引」の実証事業(株式会社エナリスとの共同事業)

(同社資料を基に作成)

 

その他
山口県での再生可能エネルギーによる地域活性化事業。小中学校体育館の屋根に設置した太陽光発電設備を活用して環境や再生可能エネルギーについて学べる環境を提供している。

 

 

ソリューション事業 : 企業の業務用ソフトウェアやシステムの受託開発
システム開発・運用サービスとその他に分かれる。システム開発・運用サービスでは、クリエーション事業で培ったノウハウを活かし、受託開発(スクラッチ開発)を中心としたトータルソリューションサービスに力を入れている他、中古端末買取販売サービスの育成に取り組んでいる。トータルソリューションサービスでは、アプリ開発やサイト構築等の受託に加え、サーバ設計~構築、運用監視、デバッグ、カスタマーサポート、コンサルティング等をワンストップで提供している。

 

一方、中古端末買取販売サービス(端末周辺事業)は、キッティングサービス(役務の提供)や支援ツール導入の取引先である企業や携帯電話販社を中心に仕入先が順調に拡大しており、端末の安定調達に向けた取り組みが進んでいる。また、取り扱い台数の増加に伴い販売先の新規開拓も進んでいる。

 

電気通信事業法が一部改正され、2019年10月から携帯端末と通信料金の完全分離が実施された。これにより携帯端末価格の値引きが抑制されるため、中古端末の需要拡大が予想される(既に中古端末のマーケットは、スマートフォンを中心に拡大傾向)。

 

システム開発・運用サービス

ソリューションサービス

需要が増えている、AI、IoT、セキュリティ関連システムにフォーカスし、コンサルティングから開発、保守・運用まで、市場のニーズに合わせたトータルソリューションサービスを提供。

中古端末買取販売サービス

中古端末を買い取りバイヤーに販売するサービス。厳正なグレーディング(査定)に加え、リファービッシュ(中古品等の端末を新品に準じる状況に仕上げる)の提供を目指している。

その他

広告代理業務等。

(同社資料を基に作成)

 

2.2020年5月期第3四半期決算概要

2-1 第3四半期(累計)連結業績

 

19/4期

3Q(累計)

構成比

20/4期

3Q(累計)

構成比

前年同期比

売上高

2,406

100.0%

2,619

100.0%

+8.9%

売上総利益

1,086

45.1%

1,151

44.0%

+6.0%

販管費

1,007

41.9%

959

36.6%

-4.8%

営業利益

78

3.3%

192

7.3%

+145.0%

経常利益

127

5.3%

233

8.9%

+82.4%

親会社株主帰属利益

29

1.2%

153

5.8%

+423.1%

* 単位:百万円

 

前年同期比8.9%の増収、同145.0%の営業増益
売上高は前年同期比8.9%増の26億19百万円。キッティングの伸長と脱通信キャリアプラットフォームを進めるコンテンツサービスの底打ちでクリエーション事業が同14.9%増加した他、AI、IoT、セキュリティ等の分野でトータルソリューションを展開したソリューション事業も同1.3%増と堅調に推移した。
営業利益は同145.0%増の1億92百万円。大型のキッティング案件の獲得やコンテンツサービスにおける非通信キャリアのプラットフォームへのシフト等で原価率が上昇したものの、売上の増加で吸収して売上総利益が同6.0%増加した。一方、販管費は、広告宣伝費が増加したものの、貸倒引当金の戻し入れや人件費の減少等で同4.8%減少した。
最終利益が1億53百万円と前年同期の29百万円を大きく上回ったのは、子会社の損益改善等に伴う税負担率の低下による(57.0%→26.7%)。

 

 

クリエーション事業

 

19/5期

3Q(累計)

構成比

20/5期

3Q(累計)

構成比

前年同期比

コンテンツ

944

70.6%

940

61.2%

-0.4%

ビジネスサポート

348

26.0%

554

36.1%

+59.2%

その他(太陽光発電)

45

3.4%

42

2.7%

-5.7%

セグメント売上高

1,337

100.0%

1,536

100.0%

+14.9%

連結調整前利益

367

27.5%

481

31.3%

+31.1%

* 単位:百万円

 

キッティング支援の好調でビジネスサポートサービスが前年同期比59.2%増と伸びる一方、AppStoreやGooglePlay等の通信キャリア以外のプラットフォームへの展開とゲームを中心とするエンターテインメントコンテンツの増加でコンテンツサービスがほぼ前年同期並みの売上(同0.4%減)となった。その他(太陽光発電)は天候等の影響で同5.7%の減収ながら、概ね横ばいの推移となった。

 

ソリューション事業

 

19/5期

3Q(累計)

構成比

20/5期

3Q(累計)

構成比

前年同期比

システム開発・運用

1,063

99.5%

1,081

99.9%

+1.7%

その他

4

0.5%

0

0.1%

-87.1%

セグメント売上高

1,068

100.0%

1,082

100.0%

+1.3%

連結調整前利益

107

10.1%

138

12.8%

+28.5%

* 単位:百万円

 

スクラッチ開発を中心とした受託開発や深刻化している人手不足問題にマッチした業務支援サービスを中心に前年同期比1.7%の増収となり、第3四半期(累計)における過去最高の売上を計上した(18/5期以降)。尚、前年同期のその他には、広告代理の収益(4百万円)が計上されている。

 

2-2 第3四半期(12-2月)

 

19/5-1Q

2Q

3Q

4Q

20/5-1Q

2Q

3Q

売上高

775

835

794

1,007

871

888

859

売上原価

405

458

456

536

484

502

480

販管費

337

332

337

307

304

333

321

うち広告宣伝費

29

26

35

41

36

38

34

営業利益

32

44

1

163

82

52

57

経常利益

43

52

31

164

93

60

78

原価率

52.3%

54.9%

57.4%

53.3%

55.6%

56.6%

55.9%

販管費率

43.6%

39.8%

42.4%

30.5%

34.9%

37.6%

37.4%

* 単位:百万円

 

第3四半期(12-2月)の売上高は前期四半期比8.1%増の8億59百万円。クリエーション事業が同18.2%増加したものの、季節要因でソリューション事業が同3.1%減少した。一方、営業利益は同3,919.8%増の57百万円。利益率の高いクリエーション事業の売上構成比の上昇で原価率が1.5ポイント改善するとともに、貸倒引当金の戻し入れや人件費の減少等で販管費が同4.7%減少した。

 

クリエーション事業

 

19/5-1Q

2Q

3Q

4Q

20/5-1Q

2Q

3Q

コンテンツ

331

309

303

347

322

317

300

ビジネスサポート

122

118

106

152

211

156

186

その他

19

15

10

17

19

13

9

売上高

473

443

420

517

552

487

496

セグメント利益

145

125

96

181

178

158

144

* 単位:百万円

 

通信キャリアプラットフォーム向けの減少をカバーできずコンテンツサービスが前期四半期比0.8%減少したもののキッティング支援の好調でビジネスサポートサービスが同74.4%増加した。

 

ソリューション事業

 

19/5-1Q

2Q

3Q

4Q

20/5-1Q

2Q

3Q

システム開発・運用

300

390

373

487

319

400

362

その他

1

2

1

2

0

0

0

売上高

301

392

374

489

319

400

362

セグメント利益

28

46

32

91

45

49

43

* 単位:百万円

 

人手不足問題にマッチした「業務支援サービス」が増加したものの、スクラッチ開発を中心とした「受託開発」が年度末(検収が集中する)を控えて減少した。

 

 

2-3 財政状態

 

19年5月

20年2月

 

19年5月

20年2月

現預金

4,345

4,539

負債

822

841

流動資産

5,154

5,291

純資産

5,213

5,294

固定資産

881

844

負債・純資産合計

6,035

6,135

* 単位:百万円

 

3.セグメント別事業概況

3-1.クリエーション事業

キッティング : (株)プロモート
端末導入時に端末を初期設定(キッティング)する『Kitting-One』を用いたキッティング台数が、2020年2月に25万台を突破した。『Kitting-One』はキッティング作業を行うRPAツールであり、主に4種類のツールで構成されている。大手企業で導入され、利用実績を積み上げている。

 

『Kitting-One』は、端末毎の個別設定機能、設定時と作業完了後の画像比較による差異検出機能、業界初のエビデンス出力機能を備え、手作業の約10倍の生産性を誇る。2019年8月に特許(第6560065号)を取得した。法人企業での端末導入の増加やGIGAスクール構想(後述)を追い風に更なる利用増が期待できる。
尚、GIGAスクール構想では、Society5.0時代に生きる子供たちの将来を見据え、児童生徒へ一人一台の端末と高速大容量通信ネットワークの整備を目指している。

 

『ATIS交通情報』ドライブレコーダー : 交通情報サービス(株)
2019年12月に機能追加した『ATIS交通情報』アプリのドライブレコーダーを改良した。子画面化することでドライブレコーダーを起動しても渋滞情報の閲覧が可能になり、子画面はタップすることで拡大が可能である。実用性の向上に向け、更なる改良に取り組んでいく考え。
尚、『ATIS交通情報』アプリは、交通事象をリアルタイムでマップ上にて確認できる個人向けアプリ。ドライブレコーダー機能を備え、市販のスマートフォンホルダーにスマートフォンを設置し、アプリを起動するだけでドライブレコーダーとして使用可能。衝撃検知時の動画は、前後10秒間、30秒間、60秒間から選択でき、手動録画も可能である。

 

「いなせり」 : いなせり(株)
豊洲市場の高品質な魚介商品を購入できる鮮魚eコマースとして、一般消費者向け鮮魚eコマース「いなせり市場(BtoC)」と飲食事業者向け鮮魚eコマース「いなせり(BtoB)」を展開している。「いなせり市場」では、2020年3月に青果の取り扱いを始め、サブスクリプション型「豊洲直送フルーツお楽しみ月額定期便」を開始した。更なる利用者数の拡大につなげていく考え。一方、「いなせり」では、新型コロナウイルスの影響による豊洲市場の売上減少に対し、飲食事業者及び仲卸業者への応援企画として、3月25日から4月7日にかけて「送料無料キャンペーン」を実施した。引き続き登録者数の増加と利用社数の拡大に取り組んでいく。

 

IP-PBXサービス : (株)and One
コールセンター運営企業向けにオペレーター業務の在宅勤務を支援する在宅型コールセンターシステム『T-Macss HomeCloud』(ティーマックスホームクラウド)の提供を2020年2月に開始した。2019年10月に(株)クロノスと共同開発したクラウド型コールセンターシステム『T-Macss』を改良したシステムである。オペレーターの自宅のインターネット回線に『T-Macss』の電話機と回線をつなぐだけで利用可能。コールセンターを運営する法人企業側では、クラウドでコールセンター業務を一括管理できる。新型コロナウイルス対策として時宜を得たシステムだが、新型コロナウイルス終息後も、働き方改革や女性の労働参加を支援するシステムとして需要が見込まれる。

 

実証実験 : (株)会津ラボ
2019年4月に採択された「再生可能エネルギー関連技術実証研究支援事業(後述)」の一環で、2019年12月から約3カ月、ブロックチェーン技術を活用した「模擬DR(ディマンド・レスポンス)実証実験」を実施した。DRとは、卸市場価格の高騰時や系統信頼性の低下時に、電気料金価格の設定やインセンティブの支払いを前提に需要家の電力消費パターンを変化させる(電力の使用を抑制させる)事。「模擬DR実証実験」では、福島県内等の一般家庭約300世帯に「SMART PLUG」を配布し、専用のスマートフォンアプリを通じて節電要請を行い、節電状況に応じて付与するインセンティブ効果や、消費電力の記録・分析から得られる効果の検証を行い、DRの有効性を測定した。実証実験の結果、ベースラインに対し概ね電力が削減されたことを証明し、DRの有効性を確認することができた。実証実験で培った技術や知見を再生可能エネルギーの普及に向けて活用していく考え。
尚、「再生可能エネルギー関連技術実証研究支援事業」とは、福島県が、県内の民間企業等を対象に、東日本大震災後に新たに研究開発を進めてきた再生可能エネルギー関連技術について、その事業化・実用化のための実証研究事業を支援する仕組み。

3-2.ソリューション事業

ソリューション事業では、システム開発・運用サービスとして、ソリューションサービスと、今後の市場拡大が期待できる中古端末買取販売サービス(端末周辺事業)を提供している。

 

ソリューションサービス

AI、IoT、セキュリティ関連システムに関する、コンサルティングから開発、保守・運用まで、市場のニーズに合わせたトータルソリューションサービスを提供している。

中古端末買取販売サービス

中古端末を買い取り、バイヤーに販売する。厳正なグレーディング(査定)とリファービッシュ(中古品等の端末を新品に準じる状況に仕上げる)を特徴とする。

 

ソリューションサービス
企業によるIT投資の増額基調が続く中、働き方改革やオリンピック等を背景に需要が拡大している、AI、IoT、セキュリティ関連システムにフォーカスして、コンサルティングから、開発、保守・運用までを一貫してカバーするトータルソリューションサービスを提供している。同社グループのシステム開発は受託型システム開発が中心だが、(株)ダイブが常駐型業務支援サービスを展開している。法人営業及びシステム開発を通じて培った課題解決力を基にした人材育成に力を入れており、大手キャリア等、各種企業でサービスが拡大中である。顧客課題創出、グランドデザイン策定、人材戦略立案・調達、営業戦略立案等の業務支援サービスやプロジェクトマネジメントといった上流工程を担う人材の育成と営業強化により、サービス領域を広げていく考え。

 

中古端末買取販売サービス(端末周辺事業)
調査会社によると、電気通信事業法改正とSIMフリー端末の流通量増加で、2020年の中古端末販売は前年度比7.9%の増加が見込まれる。また、2020年以降も増加傾向が続き、2025年には2019年比1.6倍に拡大するとみられている。
良好な事業環境を生かすためには仕入れの拡大が不可欠である。このため、同社はリファービッシュによる個人情報流出の懸念払しょくを強みに、既存事業で培った既存顧客をベースに幅広く仕入れ先を開拓していく考え。

 

(同社資料より)

 

4.2020年5月期業績予想

4-1 通期連結業績

 

19/5期実績

構成比

20/5期予想

構成比

前期比

売上高

3,413

100.0%

3,850

100.0%

+12.8%

営業利益

242

7.1%

275

7.1%

+13.5%

経常利益

292

8.6%

300

7.8%

+2.5%

親会社株主帰属利益

97

2.9%

160

4.2%

+63.6%

*単位:百万円

 

通期予想に変更はなく、前期比12.8%の増収、同13.5%の営業増益
第4四半期(3-5月)は、ソリューション事業において、AI・IoT・セキュリティ関連でのシステム開発の検収が増加する中、端末周辺事業の収益貢献が始まる。クリエーション事業も、キッティングの堅調な推移が見込まれる他、時宜をとらえたIP-PBXサービス等の貢献が見込まれる。コンテンツサービスにおいては、引き続き通信キャリア以外のプラットフォームへの展開に力を入れる。

 

通期では、クリエーション事業、ソリューション事業共に前期比増収が見込まれ、連結売上高が38億50百万円と同12.8%増加する見込み。売上の増加につれて営業利益も2億75百万円と同13.5%増加するが、実証実験の終了による補助金収入の減少で経常利益が同2.5%の増の3億円とにとどまる見込み。ただ、特別損失の一巡等で最終利益は同63.6%増の1億60百万円と大きな伸びが見込まれる。

 

配当は1株当たり2円の期末配当を予定している(予想配当性向50.2%)。

 

 

5.今後の注目点

通期予想に対する進捗率は、売上高68.0%(通期実績ベースの前年同期61.8%)、営業利益69.9%(同27.5%)、経常利益77.7%(同37.1%)、最終利益95.7%(同16.7%)。
ソリューション事業において、期末にかけてシステム開発の検収が増加してくることや、クリエーション事業もキッティングをけん引役に堅調な推移が見込まれ、かつ、新型コロナウイルス感染症の影響を比較的受けにくい業界であることを考えると、通期業績の達成に不安は少ない。ドライブレコーダー機能を追加した個人向けアプリ「ATIS交通情報」、サブスクリプション型「豊洲直送フルーツお楽しみ月額定期便」を開始した「いなせり市場」、更には在宅勤務を支援する在宅型コールセンターシステム『T-Macss HomeCloud』等で、期初予想にどれだけ上積みできるか注目したい。

 

 

<参考:CSR・ESG活動>

同社は、創業以来の企業理念(「我々は商人たるの本分に徹しその活動を通じ社会に貢献し、文化の進展に寄与することを我々の真の目的とします」)の下、社業を通じて顧客、取引先、株主・投資家、地域社会、従業員等すべてのステークホルダーの物心共の幸せに貢献する事がグループの社会的責任と認識し、CSR・ESG活動の一環として下記の取組みを進めている。

 

環境(E)面では、太陽光パネルによる発電(山口県宇部市)等を通じ持続可能な社会の実現に向けた取組みを進めている。

 

社会(S)面では、新技術創出支援に力を入れており、総務省が実施し、株式会社角川アスキー総合研究所が業務実施機関として運営する、これからの日本を創るInnovator(開拓者)を支援する「異能vationプログラム」に協賛し、新技術の創出を支援している。また、慈善事業・支援活動として、創業初年度の経常利益ほぼ全額を日本赤十字社・各地社会福祉協議会・児童養護施設等に寄付して以来、毎年、最終利益の1%の寄付を行っている。東日本大地震の際は、被災された方々の一日も早い復興を願い、日本赤十字社通じて義援金を拠出した。この他、一般社団法人インターネットコンテンツ審査監視機構(I-ROI)が認定するDCA資格取得等を通じて、インターネットによる健全な情報発信を推進する等、健全な情報発信にも力を入れている。

 

* 同社資料より

 

ガバナンス(G)面では、顧客満足への取組みとして、「お客様第一主義を貫く」ことを「日エン経営原則」に掲げ、品質・価格・サービスの全てにおいて顧客の要望に真摯に向き合い、顧客満足を追及している。また、品質へのコミットメントとして、「ダントツ品質」をスローガンに顧客の期待を超える価値の提供に努めている他、「カスタマーサポートセンター」を自社で運営し、的確・迅速な顧客の要望への対応や寄せられた要望のサービスや商品への反映による改善・品質向上に取組んでいる。
ステークホルダーに対しては、同社に対する理解を深めてもらうべく、適時かつ適切な経営状況・事業活動状況の開示に努めている。特に株主に対しては、株主総会を株主と直接対話する貴重な場と考え、多くの株主が出席できるよう、毎年8月に東京都内のホテルで開催している事に加え、同社への理解を深めてもらうべく、株主総会会場に同社サービスが実体験できる場を設けている他、映像で案内している。社員に対しては、社員が個々の能力を十分に発揮できるよう、「毎週2日のノー残業デー」、「子育て支援」などワーク・ライフ・バランスに配慮した、職場環境づくりに努めている他、社員の親睦と健康増進を図るため、社内クラブ活動を支援している。
この他、情報保護への取組みとして、「情報セキュリティ基本方針」並びに「個人情報保護方針」を定め、同社が取扱う情報資産の適切な保護・管理に努めている。また、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格である「ISO27001認証」を取得している。

 

(同社資料より)

 

 

<参考:コーポレート・ガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成

組織形態

監査役会設置会社

取締役

5名、うち社外2名

監査役

3名、うち社外2名

 

◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2019年08月23日)
基本的な考え方
当社グループは、経営目標の達成の為に取締役会が行う意思決定について、事業リスク回避または軽減を補完しつつ、監査役会による適法性の監視・取締役の不正な業務執行の抑止、また、会社の意思決定の迅速化と経営責任の明確化を実現する企業組織体制の確立により、株主利益の最大化を図ることがコーポレート・ガバナンスと考えております。

 

<実施しない主な原則とその理由>
<補充原則4-1-3:CEOなどの後継者計画>
当社は、経営陣幹部向けに「植田塾」を開催し、経営者として求められる「戦略思考」「リーダーシップ」等の資質の醸成を図っておりますが、現在、最高経営責任者等の後継者計画の策定を行っておりません。今後、後継者候補の育成計画の策定及び監督を検討してまいります。なお、計画の策定にあたっては、十分な時間と資源をかけて後継者候補の育成が行われていくよう努めます。

 

<原則4-11:取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件>
当社の取締役会は、取締役は7名以内、監査役は4名以内の規模で構成しております。社外取締役は2名程度、監査役は過半数を社外監査役とすることを基本的な考え方としております。現在、当社の取締役会には、女性若しくは外国人の取締役・監査役は存在しておりませんが、取締役会としての役割・責務を実効的に果たすための多様性と適正規模を両立した形で構成していると認識しております。将来的には、ジェンダー及び国際性の面における多様性の確保に努めてまいります。また、当社は監査役として公認会計士を1名選任しており、財務会計に関する適切な知見を有している監査役を選任しております。

 

<開示している主な原則>
<原則5-1:株主との建設的な対話に関する方針>
 当社では、「IR活動の基本姿勢と開示基準」、「情報開示の方法と情報の公平性」、「将来の見通しについて」、「IR自粛期間について」からなるIR基本方針を策定しており、当社ウェブサイトにて公表しております。
 ●IR基本方針
    URL:https://www.nihon-e.co.jp/ir/management/line.html

 

現在、当社ではこのIR基本方針に基づき、株主との建設的な対話という観点から、以下の取り組みを積極的に実施しております。
(1)当社では常務取締役管理本部長を内部情報管理責任者に指定し、経理部、総務部、人事・広報部等のIR活動に関連する部署を管掌し、日常的な部署間の連携を図っております。
(2)社内各部門の会社情報については、内部情報管理責任者が一元的に把握・管理し、的確な経営判断のもと、有機的な連携に努め、IRに関連する他部署との情報共有を密にすることで、連携強化を図るよう努めております。
(3)広報・IRグループにおいて、株主・投資家からの電話取材やスモールミーティング等のIR取材を積極的に受け付けると共に、アナリスト向けに決算説明会を開催し、社長又は常務取締役が説明を行っております。
(4)IR活動及びそのフィードバック並びに株主異動等の状況については、適宜取締役会へ報告を行い、取締役や監査役との情報共有を図っております。
(5)投資家と対話をする際は、当社の公表済みの情報を用いた企業価値向上に関する議論を対話のテーマとすることにより、インサイダー情報管理に留意しております。

 

 

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