ブリッジレポート
(4319) TAC株式会社

スタンダード

ブリッジレポート:(4319)TAC 2020年3月期決算

ブリッジレポートPDF

 

多田 敏男 社長

TAC株式会社(4319)

 

 

会社情報

市場

東証1部

業種

サービス業

代表取締役社長

多田 敏男

所在地

東京都千代田区神田三崎町3-2-18

決算月

3月末日

HP

https://www.tac-school.co.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

200円

18,504,000株

3,700百万円

1.9%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

5.00円

2.5%

22.16円

9.0倍

295.67円

0.7倍

*株価は6/10終値。各数値は20年3月期決算短信より。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2017年3月(実)

20,440

713

692

490

26.49

4.00

2018年3月(実)

20,951

833

735

442

23.93

5.00

2019年3月(実)

20,474

340

409

309

16.74

8.00

2020年3月(実)

20,331

162

260

103

5.58

5.00

2021年3月(予)

20,350

690

684

410

22.16

5.00

*単位:百万円、円。予想は会社予想。数値は発生ベース。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下、同様。

 

 

TACの2020年3月期決算概要等についてご報告致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2020年3月期決算概要
3.2021年3月期業績予想
4.今後の注目点
<参考:コーポレートガバナンスについて>

今回のポイン

  • 20年3月期の現金ベース売上高は前期比0.7%増の203億98百万円。個人教育事業において主力の公認会計士講座や建築士講座等が好調に推移し、出版物の売上も伸張した。発生ベース売上高は同0.7%減の203億31百万円。粗利率は同1.0%低下。粗利は同3.2%の減少。営業費用の抑制などで販管費も同1.0%減少したが吸収できず、発生ベース営業利益は同52.4%減の1億62百万円となった。

     

  • 21年3月期の現金ベース売上高は、前期比0.2%減の203億50百万円、発生ベース売上高は前期比0.1%増の203億50百万円、営業利益は同325.6%増の6億90百万円を予想。売上高は前期並みも、コスト削減により粗利率は2.2%改善し販管費率も0.3%低下。大幅増益を見込んでいる。配当は前期と同じく5.00円/株を予定。予想配当性向は22.6%。

     

  • 今期予想には新型コロナウイルスの感染拡大に伴う校舎の短縮営業や企業研修・学内セミナーの一部延期・中止等による業績への影響を反映していない。今後、新型コロナウイルスの感染拡大が収束した後に新たな業績予想値を集計した結果、業績予想及び配当予想の修正が必要となった場合には、改めて公表する予定である。

     

  • 今期、大幅増益を予想しているが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を反映しておらず、会社側も「短期的にはマイナス方向に作用する可能性が高い」と考えているということで、投資家としてはまず第1四半期の開示を待つよりほかはない。

     

  • 一方、中期的な視点からはコスト構造の抜本的な改革も重要ではあるが、収益源の多様化などを通じたトップラインの拡大が欠かせない。医療人材分野は苦戦が続くが、増進会など、これまでに実施したM&Aの効果発現に向けた取り組みや進捗も知りたいところである。

     

1.会社概要

「資格の学校TAC」として、資格取得スクールを全国展開。社会人や大学生を対象に、公認会計士、税理士、不動産鑑定士、社会保険労務士、司法試験、司法書士等の資格試験や公務員試験の受験指導を中心に、企業向けの研修事業や出版事業等も手掛ける。

 

企業グループ(連結子会社9社、持分法適用関連会社1社、非連結・持分法非適用子会社1社)

会社区分

セグメント

会社名

業務内容

連結子会社

個人教育事業

(株)TAC総合管理

太科信息技術(大連)有限公司

(株)オンラインスクール

教室用ビルの契約・メンテナンス業務等

大連オペレーションセンター(事務・教材視聴チェック等)

インターネットを通じての会員制教育事業

法人研修事業

(株)LUAC

保険関係の企業研修事業

出版事業

(株)早稲田経営出版

(株)TACグループ出版販売

「Wセミナー」ブランドの出版事業

出版事業に関する営業・宣伝等

人材事業

(株)TACプロフェッションバンク

人材紹介・派遣・求人広告事業

(株)医療事務スタッフ関西

医療事務系労働者派遣、レセプト作成業務

(株)クボ医療

レセプト点検業務、レセプト整理業務など

持分法適用関連会社

 

(株)プロフェッションネットワーク

実務家向けWeb情報誌の発行

非連結・持分法非適用子会社

 

泰克現代教育(大連)有限公司

日本式簿記・情報処理教育の企業研修

*2020年3月末。

 

【1-1 沿革】

1980年12月、資格試験の受験指導を目的として設立され、公認会計士講座、日商簿記検定講座、税理士試験講座を開講。2001年10月に株式を店頭登録。03年1月の東証2部上場を経て、04年3月に同1部に指定替えとなった。09年9月には司法試験、司法書士、弁理士、国家公務員Ⅰ種(現・国家総合職)・外務専門職等の資格受験講座を展開していた(株)KSS(旧・早稲田経営出版)から資格取得支援事業及び出版事業を譲受。これにより、会計分野に強みを有する同社の資格講座に法律系講座が加わると共に、公務員試験のフルラインナップ化も進んだ。2013年12月、小中高生向け通信教育事業を柱とする(株)増進会出版社と資本・業務提携契約を締結。2014年6月には医療事務分野への進出を狙い、M&Aを実施。

 

【1-2 強み】

(1)試験制度の変化や法令改正へのきめ細かい対応
同社は、会社設立間もない頃から講師陣が毎年テキストを改訂し、試験制度の変化や法令改正にきめ細かく対応することで他社との差別化を図り受講生の支持を得てきた。事業が200億円規模になると、毎年発生するテキスト改訂コストを吸収することが可能だが、新規参入を考える企業はもちろん、同社よりも事業規模の劣る同業者にとっても、テキストを毎年改訂することは大きな負担である(ノウハウの蓄積が進み、高い生産性を実現していることも強みとなっている)。

 

(2)積極的な講座開発と充実したラインナップ
同社は大学生市場の開拓も含めて積極的に新しい分野(新講座の開設)にチャレンジすることで業界トップに上り詰め、業界初の株式上場を果たした。また、09年には、Wセミナーの資格取得支援事業を譲受し、従来手薄だった法律系講座や公務員試験のラインナップを拡充した。法律系講座及び公務員講座は、会計系3講座(公認会計士、税理士、簿記検定)と共に3本柱を形成し、マーケットの大きい3本柱を中心に多様な講座をラインナップしている。

 

(3)受講生中心主義の下でのサービスの先進性
サービスの先進性も同社の強みである。教育メディアや講師を受講生が自由に選択できるシステムを、資格取得学校市場で最初に導入したのは同社である。その背景にある受講生中心主義の経営姿勢は、テキストの品質と共に、「資格の学校TAC」のブランド醸成に一役買っている。

 

【1-3 ROE分析】

 

2013/3期

2014/3期

2015/3期

2016/3期

2017/3期

2018/3期

2019/3期

2020/3期

ROE(%)

35.5

21.9

4.9

4.8

10.3

8.6

5.7

1.9

 売上高当期純利益率(%)

4.66

3.98

1.06

1.07

2.40

2.11

1.51

0.51

 総資産回転率(回)

1.17

1.16

0.98

0.93

0.94

0.96

0.95

0.97

 レバレッジ(倍)

6.59

4.79

4.68

4.81

4.60

4.27

4.00

3.81

 

収益性およびレバレッジの低下でROEは3期連続の低下となった。今期の売上高当期純利益率は2.0%に上昇し、ROEは7.3%まで回復すると同社では見込んでいる。

 

2.2020年3月期決算概要

売上高について
各講座の受講者は受講申込時に受講料全額を払い込む必要があり(同社では、前受金調整前売上高、あるいは現金ベース売上高と呼ぶ)、同社はこれをいったん「前受金」として貸借対照表・負債の部に計上する。その後、教育サービス提供期間に対応して、前受金が月毎に売上に振り替えられる(同社では、前受金調整後売上高、あるいは発生ベース売上高と呼ぶ)。損益計算書に計上される売上高は、「発生ベース売上高(前受金調整後売上高)」だが、その決算期間のサービスや商品の販売状況は現金ベース売上高(前受金調整前売上高)に反映され(現金収入を伴うためキャッシュ・フローの面では大き
く異なるが、受注産業における受注高に似ている)、その後の売上高の先行指標となる。このため、同社では経営指標として現金ベース売上高(前受金調整前売上高)を重視している。

 

季節的特徴について
同社の四半期毎の業績推移は次のとおり。なお、現金ベース売上高(前受金調整前売上高)は受講申し込み金額を集計した売上高を、発生ベース売上高(前受金調整後売上高)は受講申し込み金額を教育サービス提供期間に対応して配分した後の売上高を、それぞれ表している。
同社が扱う公認会計士や税理士などの主な資格講座の本試験が春から秋(第1~第3四半期)に実施されることや、公務員講座など大学生が主な顧客となる講座の申し込みは春から夏(第1~第2四半期)に集中する等の特徴があるため、第4四半期は申し込み(現金ベース売上高)がその他の四半期に比べて少なくなりやすい傾向がある。一方、賃借料や講師料、広告宣伝費などの営業費用は毎月一定額が計上されるため四半期ごとの偏重は無い。

 

(1)連結業績

 

19/3期

構成比

20/3期

構成比

前期比

期初予想比

現金ベース売上高

20,253

98.9%

20,398

100.3%

+0.7%

-0.2%

発生ベース売上高

20,474

100.0%

20,331

100.0%

-0.7%

-0.5%

差引売上総利益

8,006

39.1%

7,750

38.1%

-3.2%

-2.5%

販管費

7,665

37.4%

7,588

37.3%

-1.0%

-0.6%

営業利益

340

1.7%

162

0.8%

-52.4%

-49.4%

経常利益

409

2.0%

260

1.3%

-36.4%

-19.3%

当期純利益

309

1.5%

103

0.5%

-66.6%

+3.0%

*単位:百万円。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下、同様。

 

売上は横這い、減益
現金ベース売上高は前期比0.7%増の203億98百万円。個人教育事業において主力の公認会計士講座や建築士講座等が好調に推移し、出版物の売上も伸張した。発生ベース売上高は同0.7%減の203億31百万円。
粗利率は同1.0%低下。粗利は同3.2%の減少。営業費用の抑制などで販管費も同1.0%減少したが吸収できず、発生ベース営業利益は同52.4%減の1億62百万円となった。

 

(2)セグメント別動向

セグメント別現金ベース売上高

 

19/3期

構成比

20/3期

構成比

前期比

個人教育事業

11,794

58.2%

11,778

57.7%

-0.1%

法人研修事業

4,256

21.0%

4,423

21.7%

+3.9%

出版事業

3,562

17.6%

3,678

18.0%

+3.3%

人材事業

705

3.5%

585

2.9%

-16.9%

内部売上高または振替高

-64

-

-66

-

-

連結売上高

20,253

100.0%

20,398

100.0%

+0.7%

*単位:百万円

 

セグメント別現金ベース営業利益

 

19/3期

利益率

20/3期

利益率

前期比

個人教育事業

-545

-

-520

-

-

法人研修事業

988

23.2%

1,061

24.0%

+7.4%

出版事業

686

19.3%

730

19.9%

+6.4%

人材事業

105

15.0%

93

16.0%

-11.0%

内部売上高または振替高

-1,116

-

-1,136

-

-

連結営業利益

118

0.6%

229

1.1%

+92.8%

*単位:百万円。

 

【個人教育事業】
減収・営業損失

増収

公認会計士、建築士、行政書士、教員等

減収

公務員(国家一般・地方上級および国家総合職・外務専門職)講座、税理士、中小企業診断士、司法試験、社会保険労務士等

 

消費税増税前の駆け込み需要の反動や新型コロナウイルスの感染拡大に伴う営業時間の短縮等による影響も受けた。
営業費用は前年同期比0.3%減。

 

【法人研修事業】
増収・増益

増収

FP、情報処理、CompTIA、証券アナリスト講座、自治体向け委託訓練

減収

ビジネススクール、コンテンツ提供、提携校

 

講師料、営業のための人件費など営業費用は前年同期比2.9%増。

 

【出版事業】
増収・増益

増収

宅地建物取引士、行政書士、FP、マンション管理士、海外旅行本等

 

8期連続で増収達成。
営業費用は同2.5%の増加。

 

【人材事業】
減収・減益
監査法人、税理士法人、民間企業における人材需要は安定しているが、求人と求職者の条件面における隔たりが広がり、加えて採用における求人広告の効果が低下しているため、人材紹介および広告売上は減収。
人材派遣は、派遣法の改正により稼働数が減少し減収。
医療系人材事業は、前年度に受注した大型案件が未更新となったことで減収。一方で人件費は上昇傾向にあり苦戦が続く。

 

(3)分野別動向

分野別発生ベース売上高

 

19/3期

構成比

20/3期

構成比

前期比

財務・会計分野

3,764

18.4%

3,882

19.1%

+3.1%

経営・税務分野

3,472

17.0%

3,305

16.3%

-4.8%

金融・不動産分野

4,141

20.2%

4,299

21.1%

+3.8%

法律分野

1,492

7.3%

1,465

7.2%

-1.8%

公務員・労務分野

4,927

24.1%

4,637

22.8%

-5.9%

情報・国際分野

1,440

7.0%

1,546

7.6%

+7.4%

医療・福祉分野

299

1.5%

237

1.2%

-20.7%

その他

937

4.6%

956

4.7%

+2.0%

連結売上高

20,474

100.0%

20,331

100.0%

-0.7%

*単位:百万円

 

【マーケット概要】
同社が取り扱う各種資格試験の2019年申込者は251万2千人と、前年の251万4千人を下回り、3年連続の減少となっているが、2010年から2014年までの大幅な減少後は、安定的に推移している。

 

増収

財務・会計、金融・不動産分野、情報・国際分野、その他分野

減収

経営・税務分野、法律分野、公務員・労務分野、医療・福祉分野

 

(財務・会計分野)
主力の公認会計士において年間を通じて申し込みが好調に推移した。

 

(金融・不動産分野)
FP講座、証券アナリスト講座、建築士講座は好調で増収。

 

(情報・国際分野)
情報処理に係る企業向けの研修が第3四半期まで好調に推移。CompTIA関連についても好調だった。

 

(経営・税務分野)
税理士において全体的な受験者数の減少率よりは低く抑えられてはいるものの講座への申し込みが微減。中小企業診断士も低調。

 

(法律分野)
民法改正による需要増加もあったが全体に低調。

 

(公務員・労務分野)
公務員講座(国家一般・地方上級)は、民間の良好な就職状況の影響等により減収。

 

(医療・福祉分野)
大型案件が更新されず減収。

 

(4)受講者数の動向

 

19/3期

構成比

20/3期

構成比

前期比

個人受講者数

131,119

60.8%

126,000

60.8%

-3.9%

法人受講者数

84,450

39.2%

81,118

39.2%

-3.9%

合計

215,569

100.0%

207,118

100.0%

-3.9%

*単位:人

 

分野別受講者数

 

20/3期 受講者数

構成比

前期比

財務・会計分野

33,368

16.1%

-2.6%

経営・税務分野

24,696

11.9%

-2.5%

金融・不動産分野

53,617

25.9%

-4.1%

法律分野

11,212

5.4%

-9.8%

公務員・労務分野

55,936

27.0%

-2.5%

情報・国際/医療・福祉/その他分野

28,289

13.7%

-6.6%

合計

207118

100.0%

-3.9%

 

講座別(個人・法人合算)動向
<増加>
公認会計士講座、建築士講座、証券アナリスト講座など。

 

<減少>
簿記検定講座、税理士講座、宅地建物取引士講座、公務員(国家一般・地方上級)講座など。
法人受講者は、委託訓練は新規受注もあり増加したが、通信型研修、大学内セミナー、提携校は減少。

 

(5)財政状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS項目

 

19年3月末

20年3月末

 

19年3月末

20年3月末

 現預金

5,195

4,287

 仕入債務

524

495

 売上債権

3,871

3,860

 返品調整・廃棄損失引当金

820

813

 たな卸資産

784

865

 前受金

6,044

6,176

流動資産

10,901

9,716

 資産除去債務

637

772

 有形固定資産

4,508

4,746

 有利子負債

6,377

5,187

 無形固定資産

331

300

負債

15,987

14,775

 投資その他

5,744

5,489

純資産

5,498

5,478

固定資産

10,584

10,536

負債・純資産合計

21,486

20,253

*単位:百万円

 

現預金の減少等で流動資産は前期末比11億84百万円減少。投資その他の資産の減少などで固定資産は同48百万円減少。資産合計は同12億32百万円減少し202億53百万円。
借入金の減少などで負債合計は同12億12百万円減少の147億75百万円。
利益剰余金の減少等で純資産は同20百万円減少の54億78百万円。
この結果、自己資本比率は前期末より1.4%上昇し27.0%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

19年3月期

20年3月期

増減

営業CF

93

586

+492

投資CF

372

-153

-525

フリーCF

466

433

-32

財務CF

-242

-1,334

-1,091

現金・現金同等物

5,165

4,257

-908

 

受講料保全信託受益権の増加等で営業CFのプラス幅は拡大。
前期にあった有価証券の売却及び償還による収入がなくなり投資CFはマイナスに転じた。
フリーCFはほぼ変わらず。
短期借入金の減少などで財務CFのマイナス幅は拡大。
キャッシュポジションは低下した。

 

(6)トピックス

◎株主優待割引券の有効期限を延長
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、優待割引券利用機会の確保を目的として、2019年6月下旬に発送した2019年3月末権利確定分の株主優待割引券及び2019年12月上旬に発送した2019年9月末権利確定分の株主優待割引券の有効期限を、それぞれ2ヶ月延長することとした。

 

3.2021年3月期業績予想

(1)連結業績予想

 

20/3期 実績

構成比

21/3期 予想

構成比

前期比

現金ベース売上高

20,398

100.3%

20,350

100.0%

-0.2%

発生ベース売上高

20,331

100.0%

20,350

100.0%

+0.1%

差引売上総利益

7,750

38.1%

8,210

40.3%

+6.0%

販管費

7,588

37.3%

7,520

37.0%

-0.9%

営業利益

162

0.8%

690

3.4%

+325.6%

経常利益

260

1.3%

684

3.4%

+162.3%

当期純利益

103

0.5%

410

2.0%

+296.8%

*単位:百万円。予想は会社側予想。

 

売上は前年並みも大幅増益を予想
現金ベース売上高は、前期比0.2%減の203億50百万円、発生ベース売上高は前期比0.1%増の203億50百万円、営業利益は同325.6%増の6億90百万円を予想。
売上は前期並みも、コスト削減により粗利率は2.2%改善し販管費率も0.3%低下。大幅増益を見込んでいる。
配当は前期と同じく5.00円/株を予定。予想配当性向は22.6%。

 

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う校舎の短縮営業や企業研修・学内セミナーの一部延期・中止等による業績への影響を反映していない。今後、新型コロナウイルスの感染拡大が収束した後に新たな業績予想値を集計した結果、業績予想及び配当予想の修正が必要となった場合には、改めて公表する予定である。

 

(2)各種取り組み

①新型コロナウイルス関連
新型コロナウイルス感染拡大の影響を業績予想には反映させていないが、以下のような影響があると同社では想定している。

 

個人教育事業

・WEBを中心とした通信形態による受講申し込みの増加

・外出自粛及び営業時間短縮による校舎窓口における受講申し込みの減少

法人研修事業

・オンラインやeラーニング研修需要の増加

・対面型の企業研修需要の減少

出版事業

 

・インターネット経由での書籍売上の増加

・外出自粛による書店における書籍売上の減少

人材事業

・就職説明会などのイベント自粛や企業の採用力低下に伴う求人広告の減少等

 

個人教育事業においては、講座ごとに外部環境や市場(受講生)ニーズが異なるため、各講座において適切に対応するほか、法人研修事業においては、取引先(企業、大学等)の要望(実施方法、実施時期等)に応じた研修やセミナーの開催、eラーニングや通信型研修コンテンツの拡充を図る。
また、出版事業では直販サイト(cyber book store)やAmazon等インターネットを通じた注文への迅速な対応や競合他社との差別化を図った商品力の向上を、人材事業においては取引先(監査法人、会計事務所等)の要望に応じた就職説明会の開催や取引先のニーズに応える人材の早期確保など、各事業への影響を最小限に抑え、コロナ収束後の事業環境を見据えた体制の整備に注力する。

 

決算発表日時点において、春期情報処理技術者試験、第155回日商簿記試験、司法試験(短答式)、不動産鑑定士試験(短答式)、公認会計士試験(短答式)、公務員採用試験、FP技能検定試験等が延期または中止となっている。

 

同社の講座は、試験が実施されることを前提に講座の企画・運営を行っているため、試験が中止となった場合には、中止となった試験に関する講座の開講が出来なくなるといった影響があるほか、延期後の日程が未定の状況が長く続いたり、来年度以降の試験の実施や資格取得後の就職状況等に関して不安定な状況が長引いたりすると、講座への申し込みを保留する顧客が増える可能性がある。

 

一方で、資格を保有する専門家は日本社会を支えるインフラとして機能している一面があり、どのような状況下においても一定のニーズがあることに加え、資格取得需要は一般的に不況期に高まることが多いことも考慮すれば、講座への申し込みはさほど変わらない、ないしは、長期的には増加することもあると考えている。

 

費用面では、講師及び従業員に係る人件費、全国に展開している拠点を中心とした賃借料、広告費等は固定費であるため、講座申し込みの変動に伴う売上の増減は、ほぼそのまま、営業利益以下の各段階利益に影響を及ぼすことになる。
これらの結果、全体として業績がどのように推移するかについては、現時点で明確に判断するのは難しい状況だが、短期的にはマイナス方向に作用する可能性が高いと、同社では考えている。

 

②コスト構造の抜本的な改革
引続きコストの抜本的な見直し、改革を続ける。

 

◎賃借料
好景気による低い空室率のもと1‐3割の値上げ基調に対し、削減策として床面積の見直しによる減床・移転を2020年3月期には神戸校、横浜校、八重洲校、水道橋校等で実施した。
減床の効果が1年間寄与した場合の賃料減は、2019年3月期で228百万円、2020年3月期で209百万円。
今期以降も値上げ基調が続く中、床面積の見直しによる減床を継続して推進し、2023年3月期までに約4億円の減額を見込んでいる。

 

◎人件費
インターネットを通じた受付利用の促進や、校舎窓口におけるITの活用など、ITを利用した効率的な業務遂行を図るほか、営業強化のために売上部門へ人材を重点的に配置する。

 

◎広告宣伝費
紙代は上昇傾向にあり、宣伝媒体がネット中心にシフトしていることから、パンフレットのペーパーレス化や、広告宣伝のネットシフトを進める。

 

減床効果は半年~1年後に現れることから稼働状況に基づいた迅速な判断と実行が必要だが、受講生の学習環境は保ちつつ、利益の出る費用構造への転換を目指す。

 

4.今後の注目点

今期、大幅増益を予想しているが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を反映しておらず、会社側も「短期的にはマイナス方向に作用する可能性が高い」と考えているということで、投資家としてはまず第1四半期の開示を待つよりほかはない。
一方、中期的な視点からはコスト構造の抜本的な改革も重要ではあるが、収益源の多様化などを通じたトップラインの拡大が欠かせない。医療人材分野は苦戦が続くが、増進会など、これまでに実施したM&Aの効果発現に向けた取り組みや進捗も知りたいところである。

 

 

<参考:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

8名、うち社外2名

監査役

3名、うち社外2名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2019年6月28日

 

<実施しない主な原則とその理由>

原則

実施しない理由

補充原則1-2(4)

当社の株主構成はその大半が国内の個人株主であり、機関投資家や海外の投資家の割合は限定的なものとなっております。そのため、現時点では議決権電子行使プラットフォームの利用等や招集通知の英訳は実施しておりません。しかしながら、今後、機関投資家や海外の投資家の割合が高まってきた際には、それらを進めていくことを検討してまいります。

原則1-4

当社は、現時点において政策的な目的で保有する上場株式(以下、「政策保有株式」)は保有しておりません。そのため、政策保有株式に係る議決権の行使について適切な対応をするための基準は策定しておりません。

 

 但し、今後、政策保有株式として上場株式を保有する状況になった場合には、政策保有に関する方針の開示、株主総会における政策保有株式に関する説明、政策保有株式に係る議決権の行使に関して、コーポレートガバナンス・コードの趣旨を踏まえ適切に対応いたします。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく主な開示>

原則

開示内容

【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】

株主を含む投資家の方々からの問い合わせ等に対応するため、専門の部署(IR室)を設置しております。問い合わせ事項に関しては、インサイダーに抵触する恐れが高いと判断される情報を除き、適切に対応することとしております。

 

 

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