ブリッジレポート
(4323) 日本システム技術株式会社

プライム

ブリッジレポート:(4323)日本システム技術 2020年3月期決算

ブリッジレポートPDF

 

 

 

平林 武昭 社長

日本システム技術株式会社(4323)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

情報・通信

代表取締役社長

平林 武昭

所在地

大阪市北区中之島二丁目3番18号 中之島フェスティバルタワー29階

決算月

3月末日

HP

http://www.jast.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,678円

5,363,246株

8,999百万円

5.4%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(倍)

28.00円

1.7%

-円

-倍

1,154.07円

1.45倍

*株価は6/29終値。発行済株式数は直近期決算短信より(発行済株式数から自己株式を控除)。ROE、BPSは前期末実績。
*21/3期のEPS予想は未定。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2017年3月(実)

14,223

571

623

410

78.26

25.00

2018年3月(実)

15,630

741

785

579

110.36

28.00

2019年3月(実)

16,868

856

870

317

60.58

28.00

2020年3月(実)

18,019

970

1,021

-30

-5.76

28.00

2021年3月(予)

-

-

-

-

-

-

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下同様。
*21/3期の連結業績予想は、新型コロナウィルス感染症が同社グループに与える影響を合理的に把握することが困難であるため未定。

 

日本システム技術の2020年3月期決算概要などについて、ブリッジレポートにてご報告致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2020年3月期決算概要
3.2021年3月期業績見通し
4.今後の計画・方針
5.今後の注目点
<参考:コーポレートガバナンスについて>

 

 

今回のポイント

  • 20/3期の売上高は前期比6.8%増の180億19百万円。売上高はGAKUEN事業、医療ビッグデータ事業中心に増加したものの、前期の大幅増収の反動で大学及び公共系案件が減少したシステム販売事業で減少した。事業規模拡大に伴う販管費等のコスト増、不採算プロジェクトの発生及び一部子会社の業績低迷が影響したソフトウェア事業で利益の減少が大きくなったものの、GAKUEN事業と医療ビッグデータ事業の増収効果化が寄与し、営業利益は同13.9%増益の9億70百万円となった。

     

  • 21/3期の会社計画は、新型コロナウィルスの世界的な感染拡大による影響を精査中であり、現時点において同社グループに与える影響を合理的に把握することが困難であるため未定とされた。同社は、今後、連結業績予想の開示が可能となった時点で、速やかに公表する方針である。一方、配当は、安定配当の観点より、前期と同額の期末28円/株の予定。

     

  • GAKUEN事業と医療ビックデータ事業が好調に推移する中、ソフトウェア事業において不採算プロジェクトが発生したことと、マレーシアのVirtual Calibreグループの業績が低迷したことは非常に残念であった。今期においてはプロジェクト管理の徹底により不採算プロジェクトの発生を防止することができるのか、また、マレーシア国内大手を主要クライアントに持ち、ニーズにフィットしたSAPエンジニア部隊を編成し質の高いサービスを提供してしているVirtual Calibreグループの業績が回復傾向を強めるのか注目される。

     

     

1.会社概要

ソフトウェア事業(20/3期売上構成比67.0%)、GAKUEN事業(同17.0%)、及びシステム販売事業(同8.7.%)、医薬ビックデータ事業(同7.3%)を行っている。

 

<沿革>

設立は、1973年3月。JAST(同社)の特徴である教育機関向け業務パッケージには、90年代前半から取り組んでおり、94年10月に学校事務支援統合システムパッケージソフト「GAKUENシリーズ」の販売を、98年8月に大規模大学向けERP「GAKUEN REVOLUTION(学務)」の販売を、2000年2月に学校関係者間の情報ネットワークを実現する統合型Webサービスシステム「UNIVERSAL PASSPORT」の販売を、それぞれ開始。01年11月のジャスダック上場を経て、03年2月に東証二部に株式を上場、2017年6月に一部へ市場変更した。

 

 

<特徴>

1.全ての基本は経営理念
「情報化の創造・提供による社会貢献」をモットーとして、いかなる企業系列にも属さない完全独立の立場を堅持することにより、業種、技術分野、プラットフォーム等を問わず、常に最新の技術に挑戦しつつ、自由な立場で幅広い分野の開発業務に取り組むことを経営の基本方針としている。

 

この基本方針に則り、顧客、株主、社員、社会がそれぞれWin-Win(双方有益)の関係を築くべく、「四方良し」の理念を掲げ、それぞれの価値を最大化し、全体としての企業価値を高めることにより、安定的成長を実現することを目標としている。

 

また、このような成長の原動力となるのは従業員一人一人の情報システム開発に対する情熱と顧客への誠心誠意のサービスであり、そのためには人間力の研鑽が何よりも先行すべきである、との信念に基づいた「人づくり」経営に徹することにしている。

 

(経営理念の基本的考え方)
「天爵を修めて人爵これに従う」=天爵を修めることで、はじめて人爵を与えられる。人爵を得て、その結果として天爵を与えられることはない。

 

2.完全独立系で広範な情報サービスの提供と自社ブランド拡大
メーカーや系列等一切の成約を受けず、自由な立場で広範な分野のサービスを提供することが出来る。
以下の4事業をメインとしている。

 

(事業セグメント)
1.ソフトウェア事業(ソフトウェアの受託開発) ⇒ SIerの側面
①ビジネスアプリケーション
各業界向けにシステムの提案から開発、運用、保守まで一貫したITサービス
②エンジニアリングアプリケーション
カーナビやAV機器組込システム、CAD、構造分析、自動車設計、交通管制など通信・制御システム
③その他自社ブランドサービス
・金融機関向けパッケージソリューション【JASTブランド】
 地銀、信金、信組向けCRM/SFAシステム【BankNeo】
・スマートデバイス【JASTブランド】
 観光アプリ「京都禅寺巡り」他、スマホアプリ
 ビジネス向け、スマートデバイスを活用したトータルソリューション

 

2.GAKUEN事業(大学経営ソフトウェアパッケージの開発、販売)【JASTブランド】
⇒ パッケージメーカーの側面
大学経営システムのトップブランド「GAKUEN」シリーズ戦略的を中核とした、文教ITのトータルソリューション

 

3.システム販売事業(マルチベンダー/ITインフラの構築) ⇒ 販社(BtoB)の側面
文教・公共系マルチベンダーのITインフラ構築を中核とする独自のサービス

 

4.医療ビックデータ事業(医療情報データの点検分析及び関連サービス)【JASTブランド】
⇒ 医療BIの側面
レセプト自動点検、ジェネリック通知、各種分析サービス、データヘルス計画、ニ次点検業者向けシステム提供、AI活用による生活習慣改善支援など医療関連のビックデータソリューション

 

3.グループ拠点及びグローバル展開
大阪と東京の2本社制を敷いており、早くから海外に開発拠点を展開している事も特徴。また、2006年8月には、大学向けマーケットを中心とする文教分野での業容拡大を図るべく、首都圏の大規模大学を中心に、システム機器等の販売で実績のあるアルファコンピュータ(株)の全株式を取得した。これにより、パッケージ、情報機器及びネットワーク等を一貫して提供する大学向けSI(システム・インテグレーション)事業の大規模展開が可能となった。
加えて、JMICS(医療情報サービス)を独立事業化、2013年7月には(株)ODKソリューションズの発行済株式総数の3.66%を取得、資本提携をおこない、文教分野での相互事業拡大を狙う。また、2016年5月には広範な分野でシステム・ソリューションビジネスを展開する総合ソフトウェア開発企業である(株)アイエスアールを子会社化。東京エリアでの事業拡大およびSI サービスの強化に寄与するものと期待される

その他、2017年11月には㈱コウェルへの出資及び協業強化。これにより、日本及びベトナムにおけるグローバル・アウトソーシング拡大、パッケージ商材の開発、ITエンジニアの採用・育成等を協業することが可能となった。更に、2018年4月にJAST Asia Pacific Co., Ltdを同社の99.97%の出資によりタイに設立。2018年10月にマレーシアの独立系システムコンサルティング会社であるVirtual Calibreグループ3社(Virtual Calibre SDN. BHD. 、Virtual Calibre MSC SDN. BHD.、Virtual Calibre Consulting SDN. BHD.)の株式を取得し、連結子会社化した。また、2019年5月には、シンガポールのAG NET PTE. LTDの連結子会社化によりHRM((Human Resource Management)分野への新規参入を果たした。今後もASEAN地域における更なる事業拡大を目指す。

 

(同社決算説明会資料より)

 

4.国内トップシェアの大学業務パッケージ及びその進化
大学向け経営改革ソリューションとして提供している統合業務パッケージは、1994年10月の発売以来、402校(20年5月20日現在)への導入実績を有し、文教マーケットにおいて高い評価を受けている。

 

特徴は、大規模な総合大学から小規模の短期大学に至るまで、主要業務を全方位でカバーしているため、パラメーターの設定だけで大学個々のニーズに柔軟に対応できる事。つまり、カスタマイズの必要がないため、ユーザーは導入時及びその後の運用・メンテナンスに関わるトータルコストを削減する事ができる。なお、1案件あたりの導入金額は数10万円~数億円と、導入規模により広範囲にわたる。

 

少子化問題への取り組み戦略のひとつとして、大学各校は優秀な学生を確保するべく、学生向けサービスや経営品質の向上に取り組んでいる。しかし、全国に約1,200校あると言われる大学・短大の大半がメインフレーマー等による手作りのシステムやカスタマイズを前提としたパッケージを使っているという。品質・価格両面での優位性に強み。
加えて、当初の事務支援から、運用サービス、KIOSK端末等OEM機器、BCP対策、学生育成支援、経営戦略支援など、大学を取り巻く総合ITサービスに進化している点も特徴である。

 

5.国内唯一の統合医療データ分析サービス「JMICS」
レセプト内容点検を行うことで、定例的にレセプト情報を蓄積し、医療情報基盤を構築。また、健康診断結果情報・加入者情報他を付加することにより、保険事業推進へ更なる活用が望まれる。
提供サービスは、点検サービス、医療費適正化サービス、保険事業支援サービス、事務効率化サービスと多岐にわたり、ワンストップで利用可能。

 

(同社決算説明会資料より)

 

6.その他の特長
(人材重視) ⇒ 品質安定、低コスト体質
*新卒中心の採用と長期的な人材育成
*人材流動の激しい業界内で高い社員定着率を維持

 

(特徴的な営業戦術) ⇒ 性格の異なる4事業の共存共栄に成功
*ソフトウェア事業(受託開発):SE自らがリピート案件発掘、新規顧客は専門営業がソリューション提案
*その他事業:代理店、教育機関、官公庁、健保組合等、異種カスタマ層へのマーケティング展開
*他社とコラボ企画・共同提案

 

(品質、信頼へのこだわり) ⇒ 高いリピートオーダー率、大手顧客との長期取引
*「一括丸投げ」は行わず、社員中心のプロジェクト編成
*請け負ったら顧客が満足するまでやり抜く、途中退場はしない

 

(徹底したコスト管理) ⇒ 問題の早期発見による不採算案件の最小化、低コスト体質
*間接部門を含む全活動をプロジェクト化し原価管理
*コンパクトな本社間接部門

 

2.2020年3月期決算概要

(1)連結業績

 

19/3期

構成比

20/3期

構成比

前期比

売上高

16,868

100.0%

18,019

100.0%

+6.8%

売上総利益

3,840

22.8%

4,412

24.5%

+14.9%

販管費

2,988

17.7%

3,441

19.1%

+15.2%

営業利益

852

5.1%

970

5.4%

+13.9%

経常利益

866

5.1%

1,021

5.7%

+17.9%

親会社株主に帰属する当期期純利益

317

1.9%

-30

-0.2%

-

単位:百万円

 

前期比6.8%の増収、同13.9%の営業増益
20/3期の売上高は前期比6.8%増の180億19百万円。売上高面では、サービス・流通業、金融・保険・証券業、製造業、大学向け案件等が増加したソフトウェア事業や大学向けPP(プログラムプロダクト)販売、EUC(関連システムの個別受託開発)及び仕入販売、導入支援等が増加したGAKUEN事業や、レセプト自動点検サービス及び医療費通知サービス等が堅調に推移した医療ビッグデータ事業で増加した。
20/3期の営業利益は前期比13.9%増の9億70百万円。GAKUEN事業や医療ビッグデータ事業の売上高の増加が営業利益の増加に寄与した。一方、事業規模拡大に伴う販管費等のコスト増、不採算プロジェクトの発生及び一部子会社の業績低迷によりソフトウェア事業の営業利益は前期を下回った。収益性の高い案件項目の売上増加などにより、売上総利益率は24.5%と前期比1.7ポイント上昇。一方、人件費等を中心に販管費が同19.1%増加し売上高対販管費率が同1.4ポイント上昇したものの、売上高営業利益率は5.4%と同0.3ポイント上昇した。また、営業外収益で補助金収入36百万円(前期は18百万円)を計上したことや、営業外費用で発生した為替差損が17百万円(前期は為替差損27百万円)と前期より減少したことなどにより、経常利益は同17.9%増の10億21百万円と営業利益の増益率を上回った。
その他、連結子会社であるVirtual Calibre グループにおいて、株式取得時に想定していた収益が見込めなくなったことなどにより、減損損失7億38百万円を計上した。これにより、親会社株主に帰属する当期期純利益は30百万円の赤字(前期は3億17百万円の黒字)となった。
特別損失の計上があったものの、配当は28円/株と期初の予定通りとなった。

 

研究開発費は前期比約10%の減少

 

16/3期

17/3期

18/3期

20/3期

前年比

差額

増減率

研究開発の合計

332

458

492

442

-50

-10%

ソフトウェア事業

0

64

54

112

58

107%

GAKUEN事業

286

274

332

245

-87

-26%

医療ビックデータ事業

45

98

65

45

-20

-31%

その他

0

20

39

38

-1

-3%

*単位:百万円

 

20/3期の研究開発費は、ソフトウェア事業で増加したものの、新製品の開発がピークアウトしたGAKUEN事業と先行投資負担がピークアウトした医療ビックデータ事業において減少した。

 

(2)セグメント別動向

 

売上高

セグメント利益

 

19/3期

20/3期

前期比

19/3期

20/3期

増減額

ソフトウェア事業

11,622

12,080

+3.9%

481

78

-83.7%

GAKUEN事業

2,586

3,058

+18.2%

317

711

+123.7%

システム販売事業

1,681

1,566

-6.8%

140

94

-32.3%

医療ビッグデータ事業

977

1,313

+34.3%

-95

93

調整額

-

-

-

8

-7

合計

16,868

18,019

+6.8%

852

970

+13.9%

*単位:百万円

 

 

◎ソフトウェア事業(受託ソフトウェアの個別受託開発)
通信業向け案件が前年を下回ったものの、サービス・流通業、金融・保険・証券業、製造業及び大学向け案件等がそれぞれ増収となり、売上高は堅調に推移した。一方、事業規模拡大に伴う販管費等のコスト増、不採算プロジェクトの発生及び一部子会社の業績低迷により、セグメント利益は減益となった。その結果、売上高120億80百万円(前期比3.9%増)、 営業利益78百万円(同83.7%減)となった。

 

◎GAKUEN事業(大学経営ソフトウェアパッケージの開発・販売及び関連サービス)
大学向けPP(プログラム・プロダクト)販売、EUC(関連システムの個別受託開発)及び仕入販売等が増収となり、売上高30億58百万円(前期比18.2%増)、営業利益7億11百万円(同123.7%増)となった。

 

 

◎システム販売事業(IT機器の販売及び情報通信インフラの構築)
前期の大幅増収の反動で大学及び公共系案件が減少したことから、売上高15億66百万円(前期比6.8%減)、営業利益94百万円(同32.3%減)となった。

 

◎医療ビッグデータ事業(医療情報データの点検、分析及び関連サービス)
レセプト自動点検サービス及び分析・医療費通知サービス等が堅調に推移し、売上高13億13百万円(同34.2%増)、営業利益93百万円(前期は営業損失95百万円)、売上高は事業発足以来最高、セグメント利益は初の黒字化となった。

 

 

20/3期の売上高は、GAKUENやJMICS等の好調により、通信、サービス流通券向けなどの業種構成比が低下した一方、教育機関、医療向けなどの業種構成比が上昇した。
また、大手顧客別では、上位6社向けが38.9%(前期44.3%)と構成比が低下した一方、金融機関直接取引、医療機関・健保組合、GAKUEN事業代理店、国外エネルギー関連公企業などの構成比が高まった。

 

(3)第4四半期(1-3月)の業績推移

 

第4四半期(1-3月)の売上高は概ね拡大基調にある。20/3期第4四半期(1-3期)は、GAKUENやJMICS等の好調により、売上高、営業利益ともに過去と比較し高水準となった。

 

 

(4)財政状態及びキャッシュフロー

<財政状態>

 

19/3月末

20/3月末

 

19/3月末

20/3月末

現預金

4,260

3,909

買入債務

1,128

990

売上債権

4,341

4,502

 短期有利子負債

1,552

1,508

流動資産計

9,610

9,602

流動負債計

5,587

5,168

建物

301

301

 長期有利子負債

11

2

土地

142

142

退職関連引当金

971

994

有形固定資産 

558

571

固定負債計 

1,630

1,601

無形固定資産計

1,180

794

負債合計

7,218

6,770

投資その他の資産計

2,287

2,019

純資産合計

6,418

6,218

固定資産合計

4,026

3,385

負債純資産合計

13,636

12,988

資産合計

13,636

12,988

自己資本比率

46.8%

47.7%

 *単位:百万円

 

20年3月末の総資産は19年3月末比6億48百万円減の129億88百万円。資産面ではのれんや減損に伴う顧客関連資産や投資有価証券などが主な減少要因。負債・純資産面では仕入債務や未払金や連結累計期間における親会社株主に帰属する当期純損失の計上による利益剰余金などが主な減少要因。自己資本比率は19年3月末の46.8%から47.7%へ0.9ポイント上昇した。

 

<キャッシュ・フローの状況>

 

19/3期

20/3期

前期比

営業キャッシュ・フロー

1,342

417

-925

-68.9%

投資キャッシュ・フロー

-1,063

-527

536

-

フリー・キャッシュ・フロー

278

-109

-388

-

財務キャッシュ・フロー

1,157

-185

-1,342

-

現金及び現金同等物の期末残高

4,204

3,908

-296

-7.1%

*単位:百万円

 

CFの面から見ると、売上債権やたな卸資産の増加などにより営業CFのプラスが縮小した。連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出の減少額の縮小などにより投資CFのマイナスが縮小したものの、フリーCFがマイナスに転じた。また、短期借入金の減少などにより、財務CFもマイナスへ転じた。この結果、20/3月現在のキャッシュポジションは若干減少した。

 

(5)トピックス

◎新製品(金融機関向け預り管理システム)「Cloud BankNeo 預り管理」のサービス開始(2019年4月)
当システムは、金融機関の渉外担当者が顧客から物品・現金等を預り、保管・返却までの業務を効率化、事務堅確化、ペーパーレス化することによるコスト削減を目的としたシステムをパブリッククラウド基盤上にて実現するもの。 渉外担当者により本システムへ入力された情報は、営業店の業務管理用端末とリアルタイムに連携しているため、渉外担当者と事務担当者との間で、効率的に処理を進めることが可能となる。また、処理状況はパソコン画面でリアルタイムに確認できるため、預り物件の管理面強化や処理漏れ防止に繋げることが可能。更に、預り時や返却時は、タブレット画面上での顧客による電子サインにより処理が完了となるため、受取証(紙帳票)の発行は不要となり、印紙代等のコスト削減にも大きく貢献する。

 

◎AG NET PTE. LTD. を子会社化(2019年5月)
AG NET社は、シンガポールの独立系ソフトウェア会社であり、自社開発のHRM(Human Resource Management)クラウドシステムを保有し、2006年の設立以来、シンガポール国内及びASEAN地域を中心とした約700の組織に 40,000人を超えるユーザーを持つ、当該分野における国内トップクラスのソリューションベンダー。AG NET社が同社グループになることで、同社グループのブランド商材においてこれまでカバーできていなかったHRM分野で新たな商材が加わることとなる。HRMは、人事、休暇申請や経費精算のワークフロー、給与計算、テレワーク支援、従業員のパフォーマンス管理といったHRMの全方向をカバーしており、シンガポールのみならず、ASEAN全域へのビジネス基盤拡大、在ASEAN の同社子会社の事業拡大につながるものと期待される。

 

◎テラスカイ社との資本業務提携(2019年9月)
クラウドインテグレーションのリーディングカンパニーであるテラスカイ社との資本業務提携を開始した。BankNeoをはじめ、Salesforce.com、Amazon Web Serviceなど、両社のソリューション・得意分野を有効活用し、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を通じて、企業価値の更なる向上を図る方針である。、同社はこの資本業務提携のため、2019年11月22日の取締役会において、自己株式57,377株を1株につき1,220円でテラスカイ社へ処分する決議を行った。

 

◎のれん・顧客関連資産の減損損失計上(2019年9月)
同社は、、マレーシアの連結子会社である Virtual Calibreグループの株式取得時に発生したのれん等について、昨年の同国の政権交代に伴う開発投資の延伸及び景気減速に伴う受注減等の影響により、Virtual Calibre グループの業績が当初想定した計画を下回って推移していることから、今後の計画の見直しを図り、当初想定期間内での回収が困難であるとの判断のもと、今第2四半期に 約7億22百万円をのれん等の減損損失として特別損失に計上した。減損損失の内訳はのれんが399百万円、顧客関連資産が322百万円。なお、当該資産の回収可能価額は使用価値により測定しており、回収可能価額についてのれんを148百万円、顧客関連資産を119百万円と評価している。

 

◎生活習慣改善支援装置に係る特許出願及びパイロット運用開始(2019年12月)
健康保険組合では、事業の一つである保健指導を実施しても、対象者本人の自覚が薄い場合には、改善活動への取り組みが進まないという課題がある。その原因として、健康診断結果と保険指導基準値との比較だけでは、保健指導の必要性がより高い受診者を的確に抽出できないという問題があり、結果として面談や指導を受けられない、治療を開始しても中断してしまうという事態が発生している。この問題への解決策として、同社は国立大学法人京都工芸繊維大学及びSGホールディ ングスグループ健康保険組合との三者共同研究の成果として本装置を開発した。 また、今回本装置に関して特許を出願するとともに、SGホールディングスグループ健康保険組合に対して、本装置のパイロット運用を開始した。本装置により、三者での共同研究成果である“重症化発症モデル”から導き出された重症化が予測される対象者のリスト(重症化予測者リスト)を元に、個人ごとに適した発症予防の動機付けの支援が可能となった。

 

◎新型コロナウィルス感染拡大防止に向けたeラーニング学習支援システム「UNIVERSAL PASSPORT」の無償提供(2020年3月)
同社は、2020年2月25日に厚生労働省から発表された「新型コロナウィルス感染症対策の基本方針」を受け、2020年4月新学期からの授業運営を支援するため、学生がインターネットを利用して学習できる大学向け統合型Webサービスシステム「UNIVERSAL PASSPORT」のeラーニング機能の無償提供を開始した。

 

◎ECサイト構築支援サービスの開始
同社は、Shopify Inc.(所在地:カナダ)とパートナー契約を締結して、「Shopify」を利用した「ECサイト構築支援サービス」を開始した。本サービスは、以前からのニーズと、新型コロナウィルス感染症の拡大防止策による外出自粛、生活様式の変化で高まる電子商取引へのニーズに対応するサービスである。 ECプラットフォームは世界175ヶ国で利用されているShopifyを採用し、サイト構築と立上げ後のシステム運用を素早く、低価格でサービスを提供する。また、マーケティング支援、要望に応じた追加機能開発にも対応することでECサイトの構築、運営をワンストップで支援。①ECサイトを活用した商品・サービスの販路拡大を検討したい、②自社商品、サービスの魅力を世の中に広めたい、③アフターコロナ・ウィズコロナ時代の新しい生活様式への対応が急務、などの要望や課題を持つ顧客において、今後採用の拡大が期待される。

 

3.2021年3月期業績見通し

(1)通期連結業績見通し

 

20/3期 実績

構成比

21/3期

構成比

前期比

売上高

18,019

100.0%

-

-%

-%

営業利益

970

5.4%

-

-%

-%

経常利益

1,021

5.7%

-

-%

-%

当期純利益

-30

-0.2%

-

-%

-%

*単位:百万円

 

21/3期の連結業績予想は未定
同社は、今年度のスローガンのキーワードとして「変革とスピードで未来のJASTを創造しよう」を掲げ、単なる“変化”ではなく“変革”に向けて、圧倒的なスピードで挑戦する。受託開発型ビジネスでは、DX推進、サービスビジネス化等の構造改革を加速し、ブランド事業では全サービス、アイテム毎にトップを目指すとともに、引き続きアライアンスやグローバル化を推進し、また、新しいビジネスアイデアの創出と事業化等により、継続的成長を果たす方針である。
しかし、21/3月期の連結業績予想は、新型コロナウィルス感染拡大による同社グループの事業活動への影響を現時点において合理的に算定することが困難であるとの判断により、未定とされた。 業績予想については、今後開示が可能となった時点で速やかに開示する予定である。
一方、業績予想は未定ではあるものの、前期と同額の期末28円/株を予定。同社は、安定配当を28円/株と定めている。

 

新型コロナウィルスの影響
同社は、①営業・開発含め、在宅やリモートでの事業継続が容易なビジネスモデル、②影響軽微な顧客・業種に展開(金融、通信、文教、健保、自治体等)、③資材調達に係る心配がほぼないという強みを有しており、新型コロナウィルスの影響は軽微との認識を持っている。一方で、影響が中位以上の分野の一部顧客プロジェクトは新規案件がストップとなる懸念や今後感染再拡大等で状況がさらに悪化かつ長期化すれば影響の拡大が避けられないとの現状分析を行っている。

 

事業

新型コロナウィルスの影響アウトルック

ソフトウェア

・サービス・流通:影響はあまりないものの、一部で大きい。

・金融、通信:影響はあまりないか小さい。

・製造:影響はあまりないものの、一部で中位程度の影響がある。

・他(官公庁、教育等):影響はあまりないか小さい。

GAKUEN

案件により影響はあまりないか小さい。一部需要の増加も予想される。

システム販売

案件により影響はあまりないか小さい。一部需要の増加も予想される。

全体

案件により影響はあまりないか小さい。一部需要の増加も予想される。

 

研究開発計画
研究開発費は、前期の4億42百万円から総額では減少する見込みも、テーマ数は増加し内容も濃厚。同社では次の収益源を構築する時期と定めている。
事業ごとの研究開発費の動向は、以下の通り。
・ソフトウェア事業は前期比で減少もBankNeoは次世代製品開発や機能強化に注力。その他ソフトウェアはメガソリューション拡大やSI派生新商材を強化する。
・GAKUEN事業も前期比で減少もRX新製品やアプリの開発を強化する。
・医療ビッグデータ事業は前期比で増加。JMICSにおいて、AI・統計機能の強化やサービス拡大を図る。
・その他分野では、AI、生体認証、自然言語、最新技術研究など分野で基礎研究や新商材の開発を強化する。

 

 

4.今後の計画・方針

(事業ポートフォリオの中期構想)

事業構想

事業のすがた

1. 事業構成

・既存SI:JASTブランド、の規模比を同等に

・首都圏の拡大に注力

2. 既存SIは高付加価値分野へシフト

3. 「メガソリューション」への注力

JASTの立ち位置

1. 業界の第一階層へ

2. アライアンスの推進(社内・外協業、M&A等)

3. グローバル化を加速(ASEAN、中国等)

4. 人財・処遇の超一流化

現行の下記中期構想を進行期中にローリングする予定である。

 

(主要事業の施策)

*GAKUEN事業
【成長戦略】
*最新次世代RX製品の追加コンポーネントリリース
*COVID-19適応商材の開発
*AI、生体認証等“今時”のテクノロジー適用拡大

 

*医療ビッグデータ事業
「JMICS」は、月間レセプト処理数約800~1,000万枚/総契約先数200超というボリュームへ拡大したのみならず、レセプト点検からビッグデータとICTの融合による医療情報ソリューションに進化した。
国策による追い風と、規模・技術優位性を活かし、更に利活用ビジネスの新領域(医療費適正化、データヘルス、API関連強化)の拡大を図る。また、基礎研究領域において、アカデミア連携等によるシーズ創出や医療商材開発を強化する。その他、機械学習、高度統計アプローチ等によるサービスのハイエンド化やCOVID-19の対応として研究への参画や商材開発を実施する。

 

*「Bank Neo」
導入実績は46行となり、現在は20行以上と商談が進んでいる。現在は、新製品「預り管理」が活況。今後も預り管理に続く特化商材の開発を強化するとともに、マーケットに応じた“ライト”、”ニッチ”、”クラウド”戦術を推進する。

 

*ASEAN商材の展開

(同社決算説明会資料より)

 

新会社「Virtual Calibre」
新たに連結子会社となったVirtual Calibre社の強みは、①国営エネルギー会社等のマレーシア国内大手を主要クライアントに持ち、②ニーズにフィットしたSAPエンジニア部隊を編成しサービス提供することに長けており、③手堅い収益モデルで高利益体質を堅持し、④JASTと理念面で酷似し、在ASEAN企業としては経営陣や社員間の結束が固い点などがあげられる。
また、Virtual Calibre社買収の狙いとしては、①世界最大かつ最高シェアの総合業務アプリSAP市場へ進出できること、②ASEANの新拠点確保及び既存ASEAN子会社とのシナジーによるグローバル事業の拡大が図られること、③中長期的にブランド商材の現地での拡大やASEAN以遠へのグローバル展開のチャンスが広がることなどがある。
次世代インメモリ/クラウドシステムS4/Hanaへの中長期的シフト、2025年問題等もあり、今後SAP技術者の需要が高まるトレンドは不変と思われ、マレーシア及び日本におけるSAPを活用したサービスの拡大が見込まれる。

 

新会社「AG NET」
新たに連結子会社となったAG NET社の強みは、シンガポールの独立系ソフトウェア会社であり、自社開発のHRM(Human Resource Management)クラウドシステムを保有し、2006年の設立以来、シンガポール国内及びASEAN地域を中心とした約700の組織に 40,000人を超えるユーザーを持つ、当該分野における国内トップクラスのソリューションベンダーであること。
また、AG NET社買収の狙いとしては、①同社グループのブランド商材においてこれまでカバーできていなかったHRM分野で新たな商材が加わること、②となる。HRMは、人事、休暇申請や経費精算のワークフロー、給与計算、テレワーク支援、従業員のパフォーマンス管理といったHRMの全方向をカバーしていることなどがあげられる。
シンガポールのみならず、ASEAN全域へのビジネス基盤拡大、在ASEAN同社子会社の事業拡大につながるものと期待される。

 

 

5.今後の注目点

同社は、医療機関・健保組合、大学等教育機関、金融機関等の顧客を多数抱えることから新型コロナウィルス感染症拡大が業績へ与える影響は比較的軽微と言えそうである。こうした環境下、GAKUEN事業は開発投資がピークアウトし売上高の拡大が今後利益の増加へダイレクトに結び付くタイミングとなっている。また、同社は新型コロナウィルス感染症対策で苦労する教育機関に対し、2020年4月新学期からの授業運営を支援するため、学生がインターネットを利用して学習できる大学向け統合型Webサービスシステム「UNIVERSAL PASSPORT」のeラーニング機能の無償提供をいち早く開始した。こうした、社会的貢献は、同社に対する教育機関からの信頼に結び付き、いずれGAKUEN事業の業績拡大へ結び付くものと期待される。今後のGAKUEN事業の業績動向が注目される。同様に、先行投資負担の継続で赤字が継続していた医療ビックデータ事業も先行投資負担のピークアウトと売上高の拡大により、今後利益が出やすい局面に差し掛かってきた。主要顧客である医療機関・健保組合においても、新型コロナウィルス感染症拡大の影響は小さい業種と思われ、今後同事業の業績が急激に悪化することは想定しずらい。データ分析、データヘルス等のレセプト点検以外の売上高増加が今後どの様なインパクトを持って医療ビックデータ事業の業績拡大へ結び付くのか注目される。
こうした中、ソフトウェア事業において不採算プロジェクトが発生したことと、マレーシアのVirtual Calibreグループの業績が不振となったことは、非常に残念であった。今期においてはプロジェクト管理の徹底により不採算プロジェクトの発生を防止することができるのか、また、国営エネルギー会社等のマレーシア国内大手を主要クライアントに持ち、ニーズにフィットしたSAPエンジニア部隊を編成し質の高いサービスを提供してしているVirtual Calibreグループにおいても業績の回復傾向が強まるのか注目される。

 

 

<参考:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態及び取締役、監査役の構成>

組織形態

監査役会設置会社

取締役

8名、うち社外2名

監査役

3名、うち社外2名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
更新日:2020年6月26日

 

<実施しない主な原則とその理由>

原則

実施しない理由

【原則1-2.株主総会における権利行使】

 <補充原則1-2-4>

機関投資家、海外投資家を含め株主が議決権を行使しやすい環境作りに取り組んでまいります。当社では、2020年6月開催の定時株主総会より、インターネットによる議決権電子行使ができる環境を整備いたしました。また、招集通知の英訳につきましては、海外投資家の比率を勘案しながら、導入するか否かを判断してまいります。なお、海外投資家に会社状況を理解していただくべく、決算短信及び主要な開示事項の英訳版につきましては、当社ホームページに掲載しております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づいて開示している主な原則>

原則

開示内容

【原則1-4政策保有株式】

政策保有株式に関する方針及びその議決権行使についての基準は以下のとおりであります。

 ・政策保有に関する方針

 当社は株式の持ち合いは行わないことを原則としております。業務提携その他経営上の合理的な理由から株式を保有する場合には、目的に応じた保有であることを定期的に確認いたします。

・政策保有株式の保有の適否の検証

 取締役会で個別の政策保有株式について、保有目的の適正性、保有に伴う利益およびリスクが資本コストに見合っているか等を定期的に精査・検証いたします。

 ・政策保有に係る議決権の行使についての基準

 政策保有株式に係る議決権行使についての具体的な判断基準は、政策保有先の中長期的な企業価値向上の観点から当該企業の経営状況等を勘案し、議決権行使助言会社の基準も参考に、株主全体の利益につながるか否かを判断して、各議案について適切に議決権を行使いたします。

【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】

当社は、株主との建設的な対話を通じ、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するように努めております。株主との建設的な対話を促進するための体制整備に関し、株主との対話を統括する役員としてIR担当部門、経営企画部門を統括する役員を指定し、株主との対話を補助する各部門間の情報共有を正確かつ確実に行ってまいります。また、決算説明会や個人投資家向け説明会を通じ、代表取締役自身が株主と直接対話する場を設けております。なお、株主との対話に際しては、インサイダー情報の漏洩防止に努めております。

 

 

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