ブリッジレポート
(2196) 株式会社エスクリ

スタンダード

ブリッジレポート:(2196)エスクリ 2020年3月期決算

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渋谷 守浩 社長

株式会社エスクリ(2196)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

サービス業

代表取締役社長兼最高執行責任者

渋谷 守浩

所在地

東京都港区西新橋2-14-1 興和西新橋ビルB棟

決算月

3月

HP

https://www.escrit.jp/

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

402円

11,986,500株

4,818百万円

6.2%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(実)

未定

-

未定

-

638.52円

0.6倍

*株価は6/19終値。各数値は20年3月期決算短信より。新型コロナウイルス感染拡大の影響により今期予想は未定。

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

EPS

DPS

2017年3月(実)

29,477

1,343

1,224

713

59.89

12.00

2018年3月(実)

31,700

1,950

1,830

665

55.72

12.00

2019年3月(実)

33,302

2,191

2,123

1,078

90.01

12.00

2020年3月(実)

31,430

1,546

1,499

455

38.79

16.00

2021年3月(予)

-

-

-

-

-

-

*単位:百万円、円。新型コロナウイルス感染拡大の影響により今期予想は未定。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。(以下、同様)

 

株式会社エスクリの2020年3月期決算概要などをご紹介致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2020年3月期決算概要
3.2021年3月期業績予想
4.今後の注目点
<参考:コーポレートガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 2020年3月期の売上高は前期比5.6%減の314億30百万円。ブライダル関連は前期出店施設が通期稼働したものの、2019年10月の台風19号発生により挙式日程変更等の影響があったことに加え、年度終盤に新型コロナウイルスの感染リスク拡大により、多数の挙式披露宴が翌年度以降に延期となり減収。建築不動産関連は前期に大型不動産売上があったため減収。販管費は前期並みであったが減収により営業利益は同29.4%減の15億46百万円。保有固定資産のうち一部施設に係る減損損失7億50百万円を特別損失に計上したため当期純利益は同57.7%の減益。配当は当初予定どおり、16円/株を実施する。

     

  • 新型コロナウイルス感染拡大に伴う影響により2021年3月期は赤字となる見込みだが、業績予想を合理的に算定することは困難なため配当予想とともに未定としている。業績予想の算定が可能となった段階で速やかに公表する。

     

  • 20年3月期は、15年3月期の営業利益を上回り過去最高を更新する計画であったが、新型コロナウイルスの影響により残念ながら減収減益となってしまった。21年3月期予想は未定であるため、投資家としては四半期開示を待つよりないが、可能であれば営業状況など定性情報を期待したいところである。

     

  • ウエディング関連企業にとっては厳しい事業環境ではあるが、同社の競争優位性であるソフトを重視した独自の事業戦略を軸に、「エンターテイメント性を追求したウエディング企業」としてシェアアップの機会とできるか注目したい。

     

     

1.会社概要

専門式場、ゲストハウス等多様な業態で全国に展開するウェディングサービス企業。駅ビル・駅近の出店に特徴を持つ。ソフトを重視した独自の事業戦略、同業他社を凌駕する売上・利益の成長が大きな強み・特長。アニメやゲームなどのキャラクターとのコラボ企画による集客にも注力。渋谷社長のリーダーシップの下、事業基盤の強化を進め更なる成長を追求している。

 

【1-1沿革】

(株)リクルート(現:(株)リクルートホールディングス)でブライダル関連情報誌「ゼクシィ」 創刊の中核メンバーであった岩本博氏(株式会社エスクリ 代表取締役会長兼最高経営責任者)はブライダル産業に日々接している中で、他社にはないある差別化を図れば大きな成長を実現することができると考え、自らブライダル事業の立上げを決意。2003年6月に同社を設立。
その差別化要因とは「ハードではなくソフト」つまり、人財の力をコアバリューとし、多様なスタッフが能力や専門性を最大限発揮し、高収益のビジネスモデルを構築することであった。
当時はハウスウェディングなど、豪華な施設を売りとするウェディングが主流だったのに対して、ゲストにとっては利便性がより重要と考え、駅近のビル内にチャペルとバンケットを開設。煌びやかなハウスウェディングではなくても、ハードに頼らずソフトの力で、顧客は十分満足していただけると考えた。
この差別化戦略は見事に的中し、「ビルインのモデルといえばエスクリ」との評価も得て、急速に業容は拡大。他社の参入も始まる中、首都圏中心に好立地への出店を加速させるためには資金調達が必要と考え、2010年3月、東証マザーズに上場し、2012年11月には東証1部に市場変更した。
しかし、急激な出店とM&A(1年間で13会場増加)により、人的リソースが不足、既存店を含め営業戦力が希薄化したことで、2016年2月に上場以来初の業績下方修正(売上12%減、営業利益66%減)を発表。加えて、本来は立て直しに注力すべき経営幹部が部下を連れて辞任したことなどで社内は大いに動揺した。
この創業以来の危機に際し、トップとして立て直しに取り組んだのが代表取締役社長兼最高執行責任者である渋谷 守浩(しぶたに もりひろ)氏である。渋谷氏の強力なリーダーシップの下、立て直しを着実に進めている。

 

【1-2 企業理念・ビジョン】

社名「エスクリ」は、は「STAFF CREATE」に由来する。

 

「時代が変わっても、「人の力」は変わらない。信頼できるスタッフ、信頼できるチームで、顧客の期待を超えていく。」
「人の力をコアバリューとし、多様なスタッフが能力や専門性を最大限に発揮し、お互いに活かし合える企業体をめざしています。能力の高いスタッフが最高のサービスでお客さまに満足させる。「人財の力」で成功を収めていく、人が主役のビジネスをつくっていきます。」
(同社ウェブサイトより)

 

同社がハードに頼らずソフト、最も重要な経営資源である人財が最大限に活躍できる環境作りに注力するのはこの哲学に起因する。

 

【1-3市場環境】

(1)市場環境概観
民間調査会社の調べによれば、日本の挙式披露宴・披露パーティー(国内で手配された海外挙式含む)市場は、年率1%弱のペースで市場規模縮小が続いている。
その要因は、主に以下の2点。

 

①人口減少に伴う婚姻件数の減少
比較的人口の多かった団塊ジュニア世代が40 代後半へと年齢を重ねる一方、平均初婚年齢に相当するである1980 年代後半~1990年代生まれの29~30 歳前後の人口は今後減少を辿る。

 

②結婚関連の物品・サービスに関する支出の抑制傾向
披露宴を行わない「ナシ婚」、両親とごく親しい友人のみを招待する少人数のパーティーなど、多様な価値観の広がりとともに、結婚関連の物品・サービスに関する支出を抑制し、実生活の充実を優先するといった行動が広がっている。
また、既に婚礼施設が供給過多の状態となっている一方で、いまだ一定のけん引力を有する新規施設開業が行われており、来館や受注を獲得するための時間的、人的コストは益々増大していくことが予想されるとしており、経営難に面するブライダル業者も増加しているようだ。ただ、縮小傾向に歯止めがかかることは見込みにくいものの、市場規模は依然として約1.4兆円と大きく、エスクリでは独自の戦略でこの需要を着実に吸い上げて今後も更に成長を実現できると考えている。

 

◎同業他社

コード

企業名

売上高

増収率

営業利益

営業増益率

営業利益率

時価総額

PER

PBR

ROE

2196

エスクリ

-

-

-

-

-

4,818

-

0.6

6.2

2198

アイ・ケイ・ケイ

-

-

-

-

-

17,434

-

1.3

11.0

2418

ツカダ・グローバルホールディング

-

-

-

-

-

16,254

-

0.4

7.0

2424

ブラス

-

-

-

-

-

2,877

-

0.9

10.6

4331

テイクアンドギヴ・ニーズ

-

-

-

-

-

8,997

-

0.4

4.3

4696

ワタベウェディング

-

-

-

-

-

3,587

-

0.3

6.5

*単位:百万円、倍。時価総額、PBRは2020年6月19日終値ベース。ROEは前期実績。全社とも新型コロナウイルス感染拡大の影響により今期予想は未定。

 

 

【1-4 事業内容】

(1)セグメント
ブライダル関連事業と建築不動産関連事業の2セグメントで構成されている。

 

 

①ブライダル関連事業
全国34会場の直営施設に加えて提携施設を通じた挙式・披露宴の企画・運営等のブライダルサービス、ホテルスタイルの施設を通じた宿泊サービス、レストランスタイルの施設を通じたレストランサービス、各種パーティーの企画・運営の宴会サービスを提供している。

 

直営のブライダルでは、「施設スタイルにこだわらない都市型ブライダルオペレーター」として、多様化する顧客のニーズに応えるため、様々なスタイルの直営挙式・披露宴施設の運営を行っている。
顧客である新郎新婦やゲストに対する「施設の貸し切り感」、「オリジナル感」の演出を重視し、挙式・披露宴で提供される衣装、装花、引出物、料理、飲料、演出等を顧客のこだわりに合わせてトータルプロデュースする「オーダーメイド型の婚礼サービス」を提供している。

 

特に、衣装、装花、演出に関しては社内における内製化を推進しており、外注取引企業ではなく自社の従業員が直接顧客と打ち合わせを行うことにより、顧客の細かなこだわりにも対応し、一層の顧客満足度の向上を目指している。
また、運営施設のうち、バンケット(披露宴会場)が複数ある施設に関しては、それぞれのバンケットに専用のチャペル又はロビースペースを設置することにより、「施設の貸し切り感」の演出を行っている。

 

ブライダル業界では、「施設の貸し切り感」、「オリジナル感」演出のために一軒家の邸宅風施設であるゲストハウス型施設が多いが、同社は、同様の演出が可能で、かつ出店立地に最適なスタイルでの出店を実施している。
さらに、レストランやホテルの事業者が行うブライダルサービスの一括運営受託も行っている。

 

(同社ウェブサイトより)

 

②建築不動産関連事業
グループ会社の株式会社渋谷が、飲食店や小売店を中心とした施設の内外装工事の請負及び設計監理業務、戸建住宅やマンションの建築、コンテナ事業、コンサルティングサービス等を行っている。

 

【1-5 特徴と強み】

(1)ソフトを重視した独自の事業戦略
ハードには、トレンド・ブームがあり、それは必ず変化すると考える同社では、「ハードによる集客優位性の限界」を長期的成長の阻害要因ととらえ、ソフトパワーを重視している。
優秀なスタッフによる「高いオペレーションスキル」をベースに、「ブライダルパーティー会場運営ビジネス」を展開している。
また、様々な企業とのアライアンスによる差別化等、ハードの形態は異なっても集客を高め、過度な投資を実施しなくても高い顧客満足度を獲得できるオペレーションノウハウの構築を進めている点も、他社には見られない大きな特徴である。

 

この鍵となるのが、「人財戦略」「出店戦略」「ワンストップサービス戦略」の3事業戦略。
これら3戦略により、業界内で圧倒的な差別化を図り、ブライダル業界における新しいスタンダードおよびハードやスタイルのはやり廃りに左右されない安定的なビジネスモデル確立を目指している。

 

①人財戦略
社員が働きがいを感じ、進化し続け、組織として最大限に力を発揮することが重要であると考えおり、個人の能力開発および自由闊達で風通しのよい組織づくりに取り組んでいる。
人財が継続して働ける職場環境を創造し、なおかつ女性活躍推進企業としてライフステージの変化に伴う働き方の支援や、福利厚生の充実、キャリア形成支援等、様々な施策を推進している。
こうした取り組みが、同社最大の競争優位性であるソフトパワーの醸成に繋がっている。

 

②出店戦略
約1.4兆円と言われるブライダル市場において、現在のメインストリームであるゲストハウスウェディングでさえもシェアは約2割程度と言われている。

 

これまでの経験や検証から「ハードによる集客優位性には限界がある」と考える同社は、特定のスタイルという狭い市場ではなく、全てのドメインで収益の可能性を追求している。
そのために、ホテル・レストラン・ゲストハウス・専門式場と、多様な施設スタイルで事業展開し、変化するマーケットニーズに応えることを軸としている。
同時に、新規出店のみでなく既存店の改修による集客力向上も重視しており、安定・着実な成長実現こそがステークホルダーの期待に応えることであるとも考えている。

 

③ワンストップサービス戦略
ブライダル業界では、ドレスやヘアメイク、装花などを外部の業者に委託するのが一般的だが、そこには顧客の要望に充分応えることができないという大きなデメリットが生じる。
同社では前述のように、衣装、装花、演出に関しては社内における内製化を推進しており、こうしたワンストップサービス体制を強化し、更なる顧客満足度の向上を図っていく。

 

(2)同業他社を凌駕する売上・利益の成長
P3の同業他社比較の表の中から、エスクリおよび同社よりも売上規模の大きい3社(ツカダ・グローバルホールディング、テイクアンドギヴ・ニーズ、ワタベウェディング)の売上高及び営業利益の時系列推移を比較したのが下のグラフであるが、売上、利益ともに同社の伸びが一頭地を抜いている。
この成長のベースにあるのが、創業来の理念であり、渋谷社長が強力に推進する「ソフトの力」である。

 

【1-6 ROE分析】

 

13/3期

14/3期

15/3期

16/3期

17/3期

18/3期

19/3期

20/3期

ROE (%)

32.3

34.4

32.6

6.9

12.7

10.7

15.6

6.2

 売上高当期純利益率(%)

5.72

5.69

6.20

1.37

2.42

2.10

3.24

1.45

 総資産回転率(回)

1.53

1.57

1.33

1.18

1.15

1.18

1.28

1.30

 レバレッジ(倍)

3.69

3.86

3.95

4.27

4.55

4.32

3.79

3.27

 

【1-7 ESGへの取り組み】

社名の由来にもあるように、人の力をコアバリューとする同社は、働きやすい環境作りに向け、ESGのうち特に「Social(社会)」
について様々な施策を積極的に推進している。

 

(1)健康経営の推進
以下のような「Escrit健康経営宣言」を掲げている。

 

Escritは、お客様に最高の幸せの瞬間を届けるため、従業員一人ひとりが、心身共に健康であり、いきいきと仕事に取り組んでいくことが、最も重要だと考えています。

 

「従業員の安全と健康の確保、快適な職場環境づくりは企業活動の基礎である」という考えの下、Escrit従業員・会社が一体となって、健康で長く働くことのできる環境の整備に向けて、これから一層積極的に取り組んでいくことを宣言します。

代表取締役社長 渋谷守浩

 

①主な取り組み
「健康経営」をEscrit全体で実践していくために、健康管理(定期健康診断の結果分析、ワークライフバランスの実現)、疾病予防(感染症、生活習慣病の予防、女性特有の疾病対策)、メンタルヘルス管理、継続的な運動の促進などに取り組んでいる。

 

②評価
*「健康経営優良法人2020」認定を取得
2020年3月、健康経営の推進に関する取組みが評価され、経済産業省と日本健康会議より「健康経営優良法人2020(大規模法人部門)」の認定を受けた。

 

健康経営優良法人認定制度とは、地域の健康課題に即した取組や日本健康会議が進める健康増進の取組をもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度。

 

*「東京都スポーツ推進企業」「スポーツエールカンパニー」に認定
「東京都スポーツ推進企業」「スポーツエールカンパニー」に認定された。

 

「東京都スポーツ推進企業認定」は、従業員が行うスポーツ活動の促進や、スポーツ分野におけるアスリート・団体・大会などへの支援を実施している企業を認定するもの。
エスクリでは、従業員スポーツ活動の促進のため、各種スポーツイベント、エスクリ「絆」駅伝の開催や、部活動を行っているほか、採用したトップアスリートに部活動のコーチとして活躍してもらう場を設けるなどの施策を行っている。
その他にもアスリート支援(フェンシング女子エペ日本代表の鈴木穂波選手を雇用)とスポーツ文化への貢献(卓球プロリーグの「T.T彩たま」とパートナー契約締結等)に積極的に取り組んできた。こうした取り組みが「東京都スポーツ推進企業」認定に繋がった。

 

「スポーツエールカンパニー」制度は、運動不足である「働き盛り世代」のスポーツの実施を促進し、スポーツに対する社会的機運の醸成を図ることを目的として、従業員の健康増進のためにスポーツの実施に向けた積極的な取り組みを行っている企業をスポーツ庁が認定するもので、従業員の健康管理を考え戦略的に取り組んでいる企業の社会的評価の向上を図ることを目的としている。

 

 

(2)女性の活躍に向けた各種施策と実績
①主な取り組み
ウエディングプランナー、ドレススタイリスト、フラワーコーディネーターなど、女性が活躍する場面が多い同社では、19年3月末で全社員のうち7割が女性社員。
性別やライフステージに左右されず、誰もが実力によって正当に評価される会社を目指すとの想いから、女性活躍推進を中期経営計画の方針の一つとしている。

 

この方針に基づき以下のような「女性活躍推進に関する取り組み」を行っている。

取り組み

概要

女性の産前期間の不安解消と体調管理しやすい環境を整備

*「スタート面談」の実施

安心して産前期間を過ごせるように体調面や業務面で配慮してほしいことを上司や人事担当者と面談する。

 

*通院時間の確保

体調管理を行うために、勤務時間中に検診のための通院時間を確保する。(男性の付き添いも可能)

産前産後制度の拡大と男性の休暇取得促進

*産前休業の拡大

取得できる産前休業を法定の産前6週から産前8週に拡大する。

 

*男性の休暇取得促進

子どもが誕生した日から翌々月末までの間に最大8日間の休暇取得を推奨する。(出産時の立会にも使用可能)

復職前面談を実施し、円滑な復職を支援

*「カムバック面談」の実施

復職後の働き方を具体的にイメージしてもらえるように勤務時間の希望等について、上司や人事担当者と面談する。

復職後における子育てと仕事の両立を支援

*慣らし保育応援

子どもの慣らし保育期間に関する出勤を免除する。

 

*短時間勤務・子の看護休暇の拡大、時間外勤務の制限

育児短時間勤務を、子どもが小学校入学までに拡大する。

時間外勤務の制限を、子どもが小学校入学までに拡大する。

子の看護休暇を、子どもが中学校卒業までに拡大する。

 

加えて、女性のみに限らず、全社員に働きやすい環境を提供したいとの考えから、「労働時間の適正化に関する取り組み」「女性相談窓口の設置」「管理職者向けマネジメント研修」「全社員向け研修」「女性社員向けキャリアアップ研修」等にも注力している。

 

②実績
こうした取り組みの結果、女性活躍は下記のグラフのように目に見える実績となって表れているほか、「支援制度を活用することで育児も仕事も楽しんでいます。将来的には、働く女性社員の目標になれるようになりたいですね。」(同社ウェブサイトより)といった声も寄せられており、従業員満足度は着実に高まっているようだ。

 

 

時短勤務者数は50名を目標としていたが、19年3月末に達成したため次の目標を策定中。
女性管理職比率は2022年度 50%を目標としている。

 

③評価
*厚生労働大臣より「えるぼし」の認定取得
2018年7月、ブライダル企業として初めて女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づき、女性の活躍推進に関する取り組みが優良な企業として、厚生労働大臣より「えるぼし」の認定をうけた。

 

「えるぼし」認定は、女性活躍推進法により、女性の活躍推進に関する状況等が優良な企業に対して、厚生労働大臣が認定する制度で、「採用」「継続就業」「労働時間等の働き方」「管理職比率」「多様なキャリアコース」の5つの評価項目がある。
「えるぼし」は、現在約2万社が申請し、約600社が認定されている狭き門だが、上記のような女性活躍推進の取り組みが、基準を超えていることが認められ認定を取得することができた。

 

*「準なでしこ」認定を取得
2020年3月、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する女性活躍に優れた上場企業として、「準なでしこ銘柄」の認定を受けた。

 

なでしこ銘柄は、「女性活躍推進」に優れた上場企業を「中長期の企業価値向上」を重視する投資家にとって魅力ある銘柄として紹介することを通じて、企業への投資を促進し、各社の取組を加速化していくことを狙いとし、経済産業省と東京証券取引所が共同で2012年度より選定している。

 

エスクリの女性活躍推進施策(主に、経営戦略への組み込みや環境やルールの整備、管理職の意識改革等)が評価された結果、「なでしこ銘柄」に準ずる企業(次点企業)として、「準なでしこ」に選定された。

 

(3)全契約社員の正社員化を実施
従業員の長期的なキャリア形成の観点から、2018年8月、契約社員全員の正社員化を決定した。
同社では、ウエディングプランナー、ドレススタイリスト、フラワーコーディネーター等多数の職種において、契約社員が多数活躍しているが、契約社員制度を廃止し、新設した転勤のない正社員制度(地域限定正社員)へと転換する。
現在契約社員として従事している従業員は、社内で重要な役割を担っており、同社では雇用をとりまく環境の変化や、女性の社会進出の状況をふまえ、従業員が安心して長期キャリアの形成に取り組めるようにする。

 

2.2020年3月期決算概要

(1)連結決算概要

 

19/3期

構成比

20/3期

構成比

前期比

期初予想比

売上高

33,302

100.0%

31,430

100.0%

-5.6%

-8.6%

売上総利益

18,695

56.1%

17,944

57.1%

-4.0%

-8.1%

販管費

16,504

49.6%

16,397

52.2%

-0.6%

-3.7%

営業利益

2,191

6.6%

1,546

4.9%

-29.4%

-38.2%

経常利益

2,123

6.4%

1,499

4.8%

-29.4%

-37.5%

当期純利益

1,078

3.2%

455

1.5%

-57.7%

-68.6%

*単位: 百万円

 

新型コロナウイルスの影響もあり減収減益
売上高は前期比5.6%減の314億30百万円。ブライダル関連は前期出店施設が通期稼働したものの、2019年10月の台風19号発生により挙式日程変更等の影響があったことに加え、年度終盤に新型コロナウイルスの感染リスク拡大により、多数の挙式披露宴が翌年度以降に延期となり減収。建築不動産関連は前期に大型不動産売上があったため減収。
販管費は前期並みであったが減収により営業利益は同29.4%減の15億46百万円。
保有固定資産のうち一部施設に係る減損損失7億50百万円を特別損失に計上したため当期純利益は同57.7%の減益。
配当は当初予定どおり、16円/株を実施する。

 

(2)セグメント別動向

 

19/3期

構成比

20/3期

構成比

前期比

期初予想比

売上高

 

 

 

 

 

 

 ブライダル関連

28,671

86.1%

28,115

89.5%

-1.9%

-7.5%

 建築不動産関連

4,631

13.9%

3,314

10.5%

-28.4%

-17.2%

 合計

33,302

100.0%

31,430

100.0%

-5.6%

-8.6%

セグメント利益

 

 

 

 

 

 

 ブライダル関連

3,016

10.5%

2,480

8.8%

-17.8%

-31.7%

 建築不動産関連

282

6.1%

135

4.1%

-52.1%

+50.0%

 調整額

-1,107

-

-1,069

-

-

-

 合計

2,191

6.6%

1,546

4.9%

-29.4%

-38.2%

*単位:百万円。営業利益の構成比は営業利益率。

 

(ブライダル関連)
減収減益。
前期出店の2施設が通期稼働したものの、台風19号の影響による挙式の日程変更があったことに加え、新型コロナウイルスの感染リスク拡大により、2月下旬から3月中に予定されていた挙式披露宴約1,000件のうち、400件余りが翌年度以降に延期となった。

 

◎受注状況
2月下旬~3月施行が次期以降に延期したことによりCore Bridal Service の3月末受注残件数は増加。休業による受注減とキャンセル発生により、4月末時点の受注残前期比はCoreBridalで0.7%増、New Bridalで 4.7%減となっている。

 

*Core Bridal Service

 

19/3期

20/3期

前期比

施行件数

5,304

5,266

-0.7%

受注件数

6,989

6,839

-2.1%

受注残件数

4,064

4,395

+8.1%

平均組単価

3,779

3,729

-1.7%

*単位:千円

 

*New Bridal Service

 

19/3期

20/3期

前年同期比

施行件数

3,259

3,224

-1.1%

受注件数

3,790

3,718

-1.9%

受注残件数

1,673

1,762

+5.3%

 

*Core Bridal Service:エスクリ直営施設の列席者30名以上の挙式・披露宴を対象。
*New Bridal Service:子会社、運営受託、少人数婚、得ナビ(提携会場分)、リゾート婚の数値が含まれる。
海外送客分については、上記と重複する顧客もいるため数値から除外。

 

(建築不動産関連)
減収減益。
前期に大型の不動産リノベーション物件の販売があったため減収となった。

 

(3)財務状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

19/3月末

20/3月末

 

19/3月末

20/3月末

流動資産

7,661

6,499

流動負債

8,852

8,464

 現預金

4,814

4,130

 仕入債務

1,464

1,072

 売上債権

298

263

 短期借入金

2,520

2,174

 販売用不動産

810

816

固定負債

8,945

7,284

固定資産

17,452

16,729

 長期有利子負債

5,720

4,111

 有形固定資産

12,182

11,118

負債合計

17,798

15,749

 投資その他の資産

5,182

5,564

純資産

7,316

7,478

資産合計

25,114

23,228

 利益剰余金

6,208

6,499

 

 

 

負債純資産合計

25,114

23,228

 

 

 

自己資本比率

29.1%

33.7%

*単位:百万円

 

現預金の減少および減損損失計上による有形固定資産(建物及び構築物)の減少などで資産合計は前期末比18億円減少の232億円。
借入金及び社債の減少などで負債合計は同20億円減少し157億円。
純資産は同1億円増加の74億円。
自己資本比率は前期末より3.1%上昇し、32.2%となった。

 

なお、新型コロナウイルスの感染拡大による影響を鑑み、手元資金を厚くしておくことで経営の安定性を高めることを目的として、2020年4月末に取引先金融機関8社から総額28億円の借入を行った。
借入期間は1~10年で、借入金利は基準金利+スプレッド。

 

 

◎キャッシュ・フロー

 

19/3期

20/3期

増減

営業CF

3,164

2,918

-246

投資CF

-831

-1,203

-372

フリーCF

2,333

1,714

-618

財務CF

-2,341

-2,347

-6

現金同等物残高

4,568

3,934

-634

*単位:百万円。

 

税金等調整前当期純利益の減少などで営業CFおよびフリーCFのプラス幅は縮小。
キャッシュポジションは低下した。

 

(4)トピックス

①指名報酬委員会を設置
2020年5月、取締役の指名や報酬等に関する手続きの公正性・透明性・客観性を確保し、コーポレートガバナンス体制の充実を図ることを目的とし、取締役会の任意の諮問委員会である「指名報酬委員会」を設置した。

 

「取締役の選任・解任(株主総会決議事項)に関する事項」「代表取締役の選定・解職に関する事項」「取締役の報酬に関する事項」「その他経営上の重要事項で、取締役会が必要と認めた事項」について審議し、取締役会に対して答申する。
指名報酬委員会の委員は、取締役会の決議によって選任された3名以上の取締役で構成し、その過半数は独立社外取締役とする。

 

②「ラヴィマーナ神戸」をオープン
2020年3月、兵庫県神戸市中央区に「ラヴィマーナ神戸」を開設した。
神戸空港島の西岸に位置しておりアクセスが良好で、広大な敷地のなかに2つの独立型チャペル、9つのパーティー会場を有しており、リゾートウェディング、緑に囲まれたナチュラルウェディング双方に適した施設である。

 

③積極的にリニューアルを実施
2020年3月期には、16施設のリニューアルを実施した。多様化する顧客のニーズに応えるとともに、既存施設の付加価値を高めることでさらなる集客力と顧客満足度向上を目指す考えだ。

 

④経団連に入会
2019年12月、一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連)に公認入会した。

 

国が掲げる「Society 5.0 for SDGs」の実現に向け経団連の活動への積極的な参加および会員企業との連携に努めるとともに、今後も女性従業員が活躍できる環境づくりや多様化する結婚式のニーズに応えブライダル市場の活性化に取り組む考えだ。

 

3.2021年3月期業績予想

◎連結業績および配当予想について

新型コロナウイルス感染拡大に伴う影響により2021年3月期は赤字となる見込みだが、業績予想を合理的に算定することは困難なため配当予想とともに未定としている。業績予想の算定が可能となった段階で速やかに公表する。

 

4.今後の注目点

20年3月期の営業利益は、15年3月期を上回り過去最高を更新する計画であったが、新型コロナウイルスの影響により残念ながら減収減益となってしまった。
21年3月期予想は未定であるため、投資家としては四半期開示を待つよりないが、可能であれば営業状況など定性情報を期待したいところである。
ウエディング関連企業にとっては厳しい事業環境ではあるが、同社の競争優位性であるソフトを重視した独自の事業戦略を軸に、「エンターテイメント性を追求したウエディング企業」としてシェアアップの機会とできるか注目したい。

 

 

<参考:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態、取締役の構成

組織形態

監査役会設置会社

取締役

4名、うち社外2名

監査役

3名、うち社外2名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2019年6月20日

 

<基本的な考え方>
当社は、顧客、株主、取引先、社員、社会というすべてのステークホルダー(利害関係者)から信頼を得ることが企業価値を持続的に向上させていくことにつながると考えております。そのためには、経営の効率性と透明性を確保し、健全性の高い組織を構築することが必要不可欠であり、コーポレートガバナンスに対する取り組みが極めて重要であると考えております。
そのため、当社は、社員全員が当社の基本的な価値観や倫理観を共有するために「企業行動規範」を制定し、周知徹底を図っております。

 

また、当社は、経営の効率性を確保するため、企業の成長による事業の拡大に合わせて組織体制を適宜見直し、各組織部門の効率的な運営および責任体制の確立を図っております。
さらに、経営の透明性を確保するため、監査役会による取締役会の業務執行ならびに法令、定款および当社諸規程の遵守を図るべく内部統制機能を充実させ、迅速かつ適切な情報開示を実現すべく施策を講じております。
今後も企業利益と社会的責任の調和する誠実な企業活動を展開しながら、株主を含めたすべてのステークホルダーの利益に適う経営の実現および企業価値の向上を目指して、コーポレートガバナンスの充実を図ってまいります。

 

<実施しない主な原則とその理由>

原則

開示内容

【補充原則4-1-2 中期経営計画】

当社は現在、中期経営計画は方針のみ開示し、数値目標は開示しておりませんが、単年度では、当該期初に業績予想を開示し、予想数値との乖離が生じた際は、詳細な要因分析を行い、次期以降の計画に反映しております。

【補充原則4-10-1 取締役の選任・報酬などの重要な事項に関する検討にあたり独立社外取締役の適切な関与・助言】

取締役および経営幹部の選任については、独立社外取締役が出席する取締役会において各候補者について審議のうえ決定しております。報酬については、取締役会で一任を受けた代表取締役社長が、株主総会で決定された報酬の範囲内で、役員報酬に関する社内規程に基づき決定しており、現在は独立社外取締役の関与及び助言は得ておりませんが、今後、より透明性を確保できるような体制構築に向けて取り組んでまいります。

<各原則に基づく主な開示>

原則

開示内容

【原則1-4. いわゆる政策保有株式】

当社の政策保有株式にかかる基準については次のとおりであります。

(1)政策保有目的による株式については、原則としてこれを保有しない。

(2)今後、持続的な企業の向上に資する案件が出てきた場合には、そのリスクとリターン等に関する十分な議論に加え、保有の目的を明確化させたうえで、取締役会の決議を経て判断をする。

【原則5-1. 株主との建設的な対話に関する方針】

 

「IR活動の基本方針」として、HP上に以下の方針を掲載しております。

 

当社に関する情報を公平かつタイムリーに提供し続けることをIR活動の基本方針としています。これらの活動を通して、株主・投資家の皆様とのコミュニケーションを図り、健全な企業経営の実現、株主価値の最大化を目指してまいります。また、株主との対話については、管理本部を管掌する取締役を、IR担当取締役としており、個別面談を含めた積極的な対応をしております。

更に当社の情報を多くの方々に届けるために、アナリスト向けの説明会を開催しております。

https://www.escrit.jp/ir/disclo/

 

 

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